最終更新日:2022年10月14日
こうくうかんじだしょう口腔カンジダ症
こちらの記事の監修医師
医療法人社団徳昌会 パラシオン歯科医院
小山 安徳
概要
口腔カンジダ症とは、口の中にいるカンジダという真菌(カビ)によって引き起こされる感染症です。成人の40~50%にカンジダはいるとされるほど、多くの人の口の中にいる細菌になります。健康な人の場合には発症することはほとんどありませんが、常在菌のバランスが崩れることでカンジダ菌の増殖に繋がり発症に至ります。口腔カンジダ症は、急性型と慢性型があります。また、経過・症状から、急性偽膜性カンジダ症、急性萎縮性カンジダ症、慢性肥厚性カンジダ症、慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症の4型に分類されます。口腔カンジダ症は、生命を脅かすものではないため、適切に治療を行うことで治癒する疾患です。
原因
口腔カンジダ症の原因は、常在菌のバランスが崩れることで発症します。そのバランスが崩れる原因として、がん治療による抗がん剤や放射線治療・糖尿病・HIV(エイズウイルス)・高齢などによる体力低下や免疫力低下がおこります。また、長期にわたって抗菌薬を服用していることによっても常在菌バランスが崩れる原因となります。その他には、歯垢・歯石によって口の中が汚れている状態、ドライマウスや入れ歯の使用も発症の原因となります。また、カンジダは口角の発赤やびらん・亀裂を伴う口角炎といった疾患の原因にもなることが多々あります。舌疼痛の約1/9、味覚異常の約1/5といった症状もカンジダによって引き起こされる原因といわれています。
症状
口腔カンジダ症は、偽膜性と萎縮性があり、出現する症状が異なります。急性偽膜性カンジダ症の症状は、頬・口蓋・口唇や舌の粘膜表面に灰白色や乳白色の白苔が出現します。この白苔はガーゼなどで拭き取れますが、拭き取った後の粘膜表面には発赤やびらん状態になっています。急性萎縮性カンジダ症および慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症の症状は、白苔の出現がなく、発赤やびらん状態がみられます。偽膜性よりもヒリヒリとした痛みを伴います。また、しびれや味覚異常を伴う場合もあります。口腔カンジダ症が進行すると慢性肥厚性カンジダ症となり、白苔を拭き取ることが難しくなります。そして、白い膜が厚くなります。
検査・診断
口腔カンジダ症は、綿棒で粘膜をこすり検体を採取し培養する細菌培養検査や血液検査、生検などを必要にあわせて行います。
治療
口腔カンジダ症は、カンジダが口の中にいても症状がなければ、治療の必要はないとされています。軽症の場合には、うがいや口腔ケアにより症状改善を待ちます。治療薬として基本的にはミコナゾール、イトラコナゾール、アムホテリシンBといった抗真菌剤を使用します。そして、原因となっている疾患がある場合にはその治療を行い、原因となる薬剤がある場合には投薬中止を検討します。全身的な疾患のない場合では、抗真菌剤の投与によって短期間で症状はなくなります。また、慢性肥厚性カンジダ症は抗真菌剤のみでは完治まで長期間を要してしまうため、病変が狭い範囲に限られている場合には外科的切除が行われます。治療が進み眼でみえる範囲で病変の消失を確認できたからといって抗真菌剤の投与を中止すると再発しやすいため、2~3週間程度は経過観察を行う必要があります。
予防/治療後の注意
高齢者は、摂食・嚥下機能の低下により、増殖したカンジダ菌を誤嚥し別の疾患を引き起こす場合があります。そのためにも口腔内の衛生状態を保つことが大切になります。義歯を装着している場合は、義歯洗浄剤を使用して義歯をキレイな状態にすることも大切になります。治癒後も定期的な口腔ケアを受けることで再発防止に繋がります。
こちらの記事の監修医師
医療法人社団徳昌会 パラシオン歯科医院
小山 安徳
診療科 : 歯科、小児歯科、矯正歯科、口腔外科、訪問歯科
【経歴】
1989年3月 東京歯科大学卒業
1989年5月 三井生命保険相互会社 歯科診療所 勤務
1990年4月 三井生命保険相互会社 歯科診療所 診療医長に就任
2003年2月 パラシオン歯科医院にて、夜間診療をスタート
2009年7月 歯学博士の学位を受領
2016年4月 パラシオン歯科医院 診療医長に就任
2019年4月 東京歯科大学 非常勤講師