最終更新日:2022年10月14日
どうみゃくこうか動脈硬化

こちらの記事の監修医師
大分大学医学部附属病院
西田 陽登
概要
動脈硬化とは、血管壁の内側にコレステロールなどが付着して血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態です。加齢や生活習慣病と呼ばれる糖尿病や高血圧、高脂血症などの脂質異常症、肥満、喫煙などが原因で発症します。動脈硬化は全身の血管に生じ、様々な健康障害・臓器障害を引き起こします。例えば、脳への血流を担保する血管が障害を受けると脳梗塞を起こしたり、大動脈に硬化が生じると解離性大動脈瘤といった命に関わる病気を引き起こしたりすることがあります。動脈硬化の治療としては、糖尿病などの生活習慣病に対する治療が重要となります。血管狭窄(狭くなること)が進行している場合には、血管内治療(ステント治療やカテーテル治療など)や外科的治療(バイパス手術など)が行われます。
原因
動脈硬化には、加齢による変化もありますが、主には糖尿病、高血圧、高脂血症などの脂質異常症、肥満、喫煙などを原因として発症します。動脈硬化には3つの種類(アテローム性動脈硬化、中膜硬化、細動脈硬化)がありますが、ほとんどの患者さんはアテローム性(粥状)硬化です。これは大動脈や冠動脈といった太い動脈の内側に、コレステロールなどの脂質から成る粥状物質(アテローム:おかゆのようなどろどろとした物質・脂質の塊)が溜まって盛り上がったものです。他にも、大動脈や下肢(足)の動脈、頚部(首)の動脈の中膜にカルシウムがたまる「中膜硬化」があります。さらに、長期的な高血圧症が主な原因で、脳や腎臓の中の細い動脈が硬くなる「細動脈硬化」があります。
症状
動脈硬化そのものでは症状が現れることはありません。しかし、動脈硬化が全身各所で進行すると、その血管に支配された臓器に関連した症状が現れるようになります。脳梗塞を発症すると、手足のしびれや麻痺、言語障害などの症状が現れます。心臓の冠動脈も動脈硬化性病変が起こりやすい部位であり、狭心症や心筋梗塞などの病気が引き起こされます。激しい胸痛や胸の圧迫感、冷や汗、吐き気などの症状が現れます。下肢の血管に動脈硬化が起こり、閉塞性動脈硬化症を発症すると、歩くと下肢が痛くなり、休むと症状が改善する間歇性跛行という歩行障害の症状がみられます。また、腎臓の血管が障害を受けると、初期では高血圧やむくみがみられ、のちに乏尿などの腎不全に至ります。大動脈が影響を受けると解離性大動脈瘤となって突然の胸痛が起こることもあります。
検査・診断
動脈硬化を引き起こす基礎疾患である、生活習慣病などを調べるために、血液検査(HbA1c、中性脂肪など)や血圧・体重・腹囲測定などがあります。また、血管の硬化の状態や程度を観察するために、超音波やCT、MRI、血管造影などの画像検査も重要です。
治療
生活習慣を見直したり、禁煙したり、動脈硬化が進行しにくい状況をつくります。そして同時に内服薬で異常値の回復を目指します。狭くなっている血管を広げるために、カテーテル治療によりステント留置やバルーン拡張などを行い、新しく血液のとおり道をつくることで血流を担保するバイパス手術を選択することもあります。心筋梗塞は「発症後6時間以内の処置によって生死が分かれる」と言われており、発症から6時間以内に血液の流れを再開させることが非常に重要となる。
予防/治療後の注意
肥満、とくに内臓脂肪型肥満の改善は、動脈硬化の危険因子である生活習慣病の改善にも役立ちます。ウエストのあたりが太くなってきたら、内臓脂肪が増えている可能性があります。動物性脂肪の摂取を減らし、野菜を増やすなどの食生活に気をつける、適度の運動を取り入れるなど、肥満改善に取り組みましょう。また、禁煙を開始することは全ての危険因子の病気の改善につながります。

こちらの記事の監修医師
大分大学医学部附属病院
西田 陽登
〇診療科目:病理診断科
<経歴経歴>
大分大学医学部医学科を卒業後、大分大学医学部附属病院にて初期研修を修了。
後期研修医として病理診断の研鑽を積み、それと並行して医学博士を取得。
現在は、全身の臓器を対象とした病理診断に従事している。