オンライン診療対応クリニック病院検索・クリニック動画紹介のイシャチョク

007はどうするのだろう

2021年10月22日
(画像=flag of UK on government building/stock adobe.com)

イギリスで進むオンライン診療

最近こんなニュースを読んだ。

イギリスの大衆紙の記事で、著名な推理小説家が「ジェームズ・ボンド」は時代遅れのヒーローだというものだ。

その小説家は、007が「大英帝国の衰退に対する解毒剤」であり、「現代社会では、もはや居場所がない」と感じているため、そろそろボンドを殺すべきだという提案をしているのだ(当然実在しないから、映画や小説の中でという意味です)。

「ジェームズ・ボンドは1950年代の困難な時代を、ある種のイギリス人が乗り切るための代理人」であり、今の時代には合わず、ストーリーを関連させることは無理だと述べている。

21世紀の今、007シリーズの映画はどのように見えるのだろう。時代と共に、原作とかけ離れざるをえないジェームズ・ボンド。それでも映画は頑張っている。

現在公開中の007シリーズは24作品目である(シリーズ外を含めると25作品)。第1作目の公開から60年近く経ち、現在のボンド役は6代目である(今回は6代目最後の作品らしい)。

伝統ある王室(皇室)、車は右ハンドル、赤い郵便ポスト、美味しいウィスキーを作る、インド以外でカレーの消費量が高い国など、意外と日本との共通点が多い国イギリス。

イギリスでもコロナの影響により、他の国と同様にオンライン診療の利用・普及が加速しました。

007を生んだ国、イギリスの医療事を少し覗いてみました。

目 次

1, 英国の医療事情

2, 英国におけるオンライン診療の促進

3, 頼れる民間企業

4, バビロンによるAI診療の開拓

5, 映画のMI 6とは違う

英国の医療事情はオンライン診療(telemedicine)で変わりつつあります。従来の問題点を克服することで、より便利になり、国民に寄り添うものとなっています。それは、政府が推し進めている政策の1つでもあるのですが、同時に政府の医療への対応の遅れを浮き彫りにします。さらに、民間のオンラインプラットフォームを活用により促進されている状況は、米国と同様です。しかし、結果としてオンライン診療の普及が合理的に促進されたのです。

1, 英国の医療事情

(画像=Pandemic Coronavirus. Close up of young woman with surgical mask with the UK flag on it. Concept of Coronavirus, COVID-19, health emergency and quarantine/stock adobe.com)

●NHSとGP

イギリスには、国が運営するNHS(National Health Service:国民健康サービス)という無料の医療供給サービスがあります。医療を統括する国の機関の1つで、医療機関での診療が無料で受けられるサービスです。

(但し、歯科、眼科、処方箋などは有料)

そして、GP(General Practitioner : 一般開業医)という一般家庭を対象とした医師が、幅広く相談を受けるプライマリ・ケアを供給しています。日本でいう「かかりつけ医」になります。NHSでの医療サービスを受ける際に最初に行くところです。

長期滞在する外国人もNHSのサービスを受けることが可能です。近くにあるGP診療所への登録が義務化されています。登録後は、医師に予約して診療を受けることができます。

●イギリスの医療費も高い?  

NHSの医療費は無料です。

ですが、歯科医療や眼科検診、処方箋は、保険適用外です。また、待ち時間が短く比較的サービスが充実している私立病院は、基本的に自費診療になります。1回の診察代は、約数十ポンドから数百ポンドかかります(1£約150円)。例えば風邪の診察では、初診代込みで約1万5千円、盲腸で入院すると約100万〜150万円くらい掛かります。同じ治療でも、病院によって料金が異なります。

●医療費はどの国も悩みの種

実はイギリスでは、医療費が国家予算を圧迫していて、医療費を抑制する取組が早くから始まっていました。

EUも含めイギリスにおいても、高齢化、労働力不足、慢性疾患の罹患率(りかんりつ)の増加、公的医療への支出の増加などが、医療のデジタル化への移行を進める主な要因となっているのです。

そのため新型コロナウイルスが発生する以前より、NHSでは医療機関にオンライン診療を導入するよう求められていたのです。

2, 英国におけるオンライン診療の促進

(画像=United Kingdom High Resolution Health Concept)

●2005年にはスタート

イギリスでもオンライン診療が進んでいます。

「Connecting for Health」という国家プロジェクトが進められました。これは、NHSのITインフラの維持・開発する役割を担う保健情報学局の一部として、2005年に設立されました。

英国保健省の主導権の一部をNHSに移動し、3万人の一般開業医を300の病院と接続することで、認可された医療専門家の記録をアクセス可能にして、安全に提供するというものでした。

(2013年にConnecting for Healthはなくなり、保健ソーシャルケア情報センターというところで活動は継続されています)

●オンライン診療の実証実験

イギリスでは2008年〜2010年にかけて、オンライン診療(遠隔診療)の実証事業を行いました。

患者は約3,000人で、肺疾患、糖尿病、慢性心不全の3つの病気を対象としたものでした。その結果、オンライン診療(遠隔診療)を実施したことで、直接の対面診療よりも死亡率がなんと45%も減ったのです。

この事業はオンライン診療だけではなく、オンライン診療と対面診療の組み合わせとして行われました。そして、このオンライン診療の実証事業により、患者を1年延命させるためには、コストが1,300万円も必要となることが分かったのです。

この当時のイギリスでは、通常医療におけるコストの限度額を1人あたり420万円に設定していました。オンライン診療は、そのコストをはるかに超える高額医療であることが明らかになったのです。

その要因は、オンライン診療用の医療機器と通信に掛かるコストが予想以上に掛かったとみられています。

●NHSの問題と課題

イギリスの世論では、NHSのシステムは既に破綻しているとも言われています。

イギリスでは、GP(かかりつけ医)の予約が取りづらいだけでなく、診療の予約は2~3週間待つのは当たり前で、医師や看護師の人材不足によるサービスの質の低下も含めて、国民の不満は増すばかりでした。ですから、診察までの待ち時間が短い私立病院を利用する人も多いのですが、高い診療代が発生します。

さらに移民の増加により、医療費は膨らみ続け、医療費による国家予算の圧迫を改善するためには、オンラインの導入は必要に迫られた状況でもあったのです。

●オンライン診療の取組は終われない


オンライン診療の予約は多くの患者さんから支持を得ます。その結果、オンライン診療を活用する計画の見直しに取組むことになります。

2018年にメイ首相はNHSの予算拡大を行います。その予算に基づき、2023年までに全てのイギリス市民のためのmHealth(モバイルヘルス:携帯情報端末による医療への導入・アクセス)を予見する取組であるデジタル事業の長期計画を発表します。

翌2019年には、イギリスの国民保健サービスは、5年間で遠隔医療と遠隔診療を標準化する案を提唱します。

そこに新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、オンライン診療は更に拡大することになるのです。

政府はGP(一般開業医)に対して、対面診療からオンライン診療へ切り替えるよう指示を出します。

このトップダウンは、日本も是非参考にすべきです。(世論も含めていろいろと難しいかな?)

その後民間企業により、ビデオ通話によるオンライン診療の機能が提供されます。このツールにより、オンライン診療が1日に3万件以上行われることになります。

この流れの中で、大手の薬局も薬のオンラインサービスを開始します。「オンライン・ドクターサービス」というサイトでは、ウェブ上で症状を伝えれば、かかりつけ医の処方箋がなくても、オンラインで処方箋を受け取れるサービスを行いました。

イギリスでも、国民の医療体制における不満の解消がオンライン診療の普及・拡大に繋がっています。

そしてここでも、他の国同様、新型コロナウイルスの感染拡大による危機に対応することが追風となったのです。

生命の危機を回避するための対応・措置は人類の歴史でもあります。新型コロナウイルスの感染拡大は、オンライン診療に足踏みしていた政府や社会の背を押したという事になります。

「歴史から学ぶ」と言う言葉を耳にします。それを忘れるのも、また人類なのです。

←戻る