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「婦人科から男性不妊を取り戻す。」泌尿器科の男性不妊治療の現状とは?

最終更新日:2021年10月20日

永尾 光一 先生の独自インタビュー取材記事

〇病院名 : 銀座リプロ外科
〇医師  : 永尾 光一 先生
〇アクセス: 有楽町線 銀座一丁目駅 徒歩2分
       銀座線・日比谷線 銀座駅 徒歩4分
       有楽町線 有楽町駅 徒歩6分
〇診療科 : 泌尿器科、形成外科(男性不妊治療、精索静脈瘤検診・手術)
〇経歴  : 昭和63年昭和大学大学院医学研究科修了(医学博士)
平成2年 昭和大学医学部助手(形成外科学講座)
平成2年 川崎病院形成外科部長
平成4年 東邦大学医学部助手(泌尿器科学講座)
平成9年 東邦大学医学部講師(泌尿器科学講座)
平成9年 博慈会記念総合病院泌尿器科部長
平成11年 東邦大学医学部講師(泌尿器科学講座)
平成18年 カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学
平成19年 東邦大学医学部准教授(泌尿器科学講座)
平成19年 北京大学客員教授
平成21年10月 東邦大学医学部教授(泌尿器科学講座)
平成22年4月 東邦大学大森病院 リプロダクション(生殖医療)センター長(併任)
令和3年9月 東邦大学大森病院 尿路再建センター長(併任)

「ザ・ドクター」は、フリーアナウンサーの松本志のぶさんが、医療の最前線で活躍するドクターをご紹介する番組です。

今回は、「銀座リプロ外科 永尾光一ドクター」にスペシャルインタビューを行いました。

松本志のぶアナウンサー(以下:松本アナ)

こんにちは。ドクターインタビューの時間です。
今回のゲストは東邦大学教授で、銀座リプロ外科でも診療されています。永尾 光一ドクターです。
ドクター本日はよろしくお願いいたします。よろしくお願いいたします。

永尾光一ドクター(以下:永尾ドクター)

よろしくお願いいたします。

生殖医療ガイドライン

松本志のぶアナウンサー(以下:松本アナ)

生殖医療ガイドラインというのがあるんですね。
このガイドラインの作成に携われたということですね?

永尾ドクター

今回新しいガイドラインとしては、男性不妊に関して泌尿器科領域の検査を必要であるというような内容が盛り込まれました。

日本生殖医学会というのはほとんどが婦人科医が多いんですね。泌尿器科医はもう非常に少ない。婦人科医は、日常診療で男性不妊に関しては主に精子しか見ておらず、内服薬出したり、それが駄目だったら人工受精、体外受精、顕微受精、それをずっと繰り返しているのが現状です。そこで泌尿器科医に受診させるっていうのはなかなかしていただけないので、婦人科医を説得するのが今回非常に大変でした。

松本志のぶアナウンサー(以下:松本アナ)

先生がその泌尿器科に進まれたたのは何かきっかけがあったんでしょうか?

泌尿器科を選択した理由

永尾ドクター

元々始まりは形成外科医なんですね。
学生実習で色々科を回って、傷の処置で傷を綺麗に仕上げるということに非常に感動したんですね。で、形成外科の中でもさらに細かく手術をやるマイクロサージャリー(※手術用のルーペや顕微鏡を用いて繊細な手術を行う技術)を医者1年目から始めまして、この技術を他でも活かせないかと思い、形成外科の専門医を取りました。お礼奉公も終わっていたので、新たな分野ということで泌尿器科領域に入ってきた経緯があります。

松本アナ

そこから泌尿器科っていうのはどうしてなんでしょう?

永尾ドクター

泌尿器科分野の中でも特に生殖医療というのは、現状ではもうほとんどマイクロサージャリーの世界なんですね。精巣の中から精子を顕微鏡を使って探すとか、顕微鏡を使って精路を再建するとか。後はメインでやってる精索静脈瘤手術も、より細かく丁寧にやらなきゃいけない手術なんですけど、それを行う。最近ではスーパーマイクロサージャリー0.5ミリ以下の吻合を行う技術なんです。そういった技術を用いて、通常の泌尿科医ではできないようなより高度な手術を始めています

松本アナ

「精索静脈瘤」というのはどういうものなんでしょうか?

永尾ドクター

精索静脈瘤というのは一般男性の15%と非常に多いんですね。精巣の周りに血液が鬱血して血流が悪くなって精巣機能が悪くなる病気です。

松本アナ

それをマイクロサージャリーで改善できるということですか?

永尾ドクター

そうです。逆流する悪い静脈を1本1本確実に止めて、なおかつ大事な動脈、リンパ管・神経、それを全て1本1本確認して温存するっていうのが私が始めた「永尾メソッド」という方法なんです。

永尾メソッド

松本アナ

永尾メソッド?先生が確立されたんですか?

永尾ドクター

はい。私がやってる手術と一般泌尿器科がやってる手術がどうも「違うな」っていうのに気づいたんですね。指の再接着とかユニーベンとかリンパ癌吻合って細かいスーパーマイクロサージャリーをやってましたので、泌尿器科医が例えば「静脈を5本を結索した」って手術記録に書いてあるのを見てびっくりしまして。私だとまあ平均30本とか、多い時は60本とか静脈を見つけて丁寧に止めている。「同じ手術なのになんでこんな違うんだ、じゃあこれは名前を付けて永尾メソッドでいこう」ということになりました。

松本アナ

もうなんかすみません、静脈が何10本とかっていうのがまだ通常の私たちの生活の中には出てこない数といいますか、名前といいますか・・・。

永尾ドクター

何故かというとその静脈を1本残すとちょっとそこがダムの決壊じゃないですけど、そこからまた逆流が始まってしまうので、そういった意味で確実に静脈を止めると。なおかつ動脈を止めてしまうと今度栄養欠陥ですので、精巣の血流はさらに悪くなってしまうのでそういったものは残す。
当たり前ですけど、大事なものは全て残して大事でないものは全て止めるというのが基本なんですね。でもそれは実際人によって全然やってるレベルが違うので、名前をつけて「他とは違いますよ。私の手術を受けてください。」ということでやってます。

松本アナ

不可能だと思っていた皆さんが自然妊娠して結びつく可能性が高くなるわけですね。
最初から知っていたらそうしたかったと思う患者さんいっぱいいますよね。

永尾ドクター

そういう意見たくさん受けてます。「今まで体外受精、顕微受精は何のためにやってたんだろう。」と。今では非常に感謝されています。

松本アナ

通常、不妊治療って女性にかかる負担とても重くなると思うんですけど、その女性にかかる負担もかなり軽減されますよね。

永尾ドクター

実は顕微受精の成功率っていうのは、一回あたり20%くらいしかないんですね。それを何回か繰り返すわけなんですけど。男性を治して自然妊娠すれば、女性は妊娠出産は大変ですけど、不妊に関しては楽になる。

松本アナ

これは知らなかったという方たくさんいらっしゃると思います。本当に広めたいと思いますけど、そもそも先生はどうして男性不妊を専門とされたんでしょうか?

男性不妊を専門した理由

永尾ドクター

男性の治療をせずに苦労してる患者さんが非常に多いので、たくさんの方に良くしてあげて、喜んでもらおうというのが第一。後は生殖医療を担当する泌尿器科医が非常に少ないっていうのも、頑張んなきゃいけないなっていう理由ではあります。

松本アナ

実際にそのガイドラインがあるように「泌尿器科に行く」っていう選択肢があると男性も入りやすいと思いますし、それによって女性の負担も軽減されるといったら、もうなんか良いことずくめのような気がしますけれども。

永尾ドクター

今までそうあるべきだったんですけど、なかなか上手くいかなくて。啓発活動にもまあ関与してます。

携わった書籍が100冊以上

松本アナ

あの、本当に驚いたんですがドクター、ご自身の著書を含めて100冊以上の書籍に関わってらっしゃるんですか?

永尾ドクター

著書はですね。あと論文はもっとありますけども・・。
EDにも興味がありまして、その影響でバイアグラとかレビトラシェアリスなどは全部臨床試験担当しましたし、EDに関する著書や、バイアグラの日本で最初の著書も私が書いております。

松本アナ

常に診療し、研究し、書き。そういう活動されてるわけですよね。お休みはされてますか?

永尾ドクター

年1回、1日くらいは休みますけども、現状ではやっぱり大学が忙しいので・・。なおかつ今回の銀座リプロの手術をなぜ始めたかというと、婦人科に行ってお手伝いするのでは、結局婦人科のルールの中で行わなきゃいけないので、もうこれは一歩踏み出して泌尿器科が独立してどんどん手術できる環境でやろうということで、銀座リプロの方にお世話になってますね。

診療のときに気を付けていること

松本アナ

診察に当たる時に心がけていることは何になりますでしょうか?

永尾ドクター

やっぱり患者さんの意向というのが非常に大事だと思うので、誤って理解しないように患者さんの話を聞いて、何を求めているのかを確実に捉える、ということが一つ。あとはまあやはり手術の技術レベルをさらに今より上げる。よりシンプルにするというのが目的です。私もそろそろ後継者を沢山作らなきゃいけないので、やっぱりそのスーパーマイクロサージャーで発掘して、教育していきたいなと思ってます。

NPO法人男性不妊ドクターズ

松本アナ

永尾ドクターは「NPO法人男性不妊ドクターズ」を立ち上げていらっしゃるんですね。

永尾ドクター

生殖医療専門医が集まって男性不妊の啓発をしていこうというものです。きっかけは昔の産婦人科医会のガイドラインの男性不妊に関する記載の中で「男性不妊は内服薬、人工授精、体外受精、顕微授精」と、泌尿器科の診察に関してはあまり記載がなかったんです。そういったことでショックを受けまして、婦人科の中に何度も申し出を行ったんですけれども、なかなか難しい。婦人科に申し入れても無理であろうと当時は考えていたので、一般の方々に啓発活動をやろうと、と。で、厚労大臣とかを招いて会を開いたり、そういった活動で啓発活動を続けています。

松本アナ

実際、多分あの世の中には広がってきてはいますよね。

永尾ドクター

今回の生殖医療ガイドラインの中で保険診療の話題もありましたので、一緒に取り上げられてるケースが多いです。

永尾ドクターが目指す未来

松本アナ

永尾ドクターの目指す夢をお聞かせいただけますでしょうか。

永尾ドクター

婦人科から男性不妊を取り戻し、泌尿器科医の生殖医療専門医をどんどん増やしていきたいと思っております。

松本アナ

ありがとうございました。今回は先進的な男性不妊治療で、日本の未来を明るく照らす永尾光一ドクターにお話しを伺いました。ドクター、どうもありがとうございました。

永尾ドクター

ありがとうございました。


インタビュアー

松本志のぶ

静岡県浜松市出身。上智大学外国語学部卒業後、日本テレビに入社。「24時間テレビ」総合司会、「行列のできる法律相談所」レギュラーMCなどを務め、報道・情報・ニュース・バラエティ各種番組で活躍。2009年よりフリーアナウンサーとして、TBS「教科書にのせたい!」レギュラーMCなども務め、また、テレビだけでなく、報知新聞「報知映画賞」選考委員や、クラシックコンサートの司会、子どものための読み聞かせコンサートでの朗読など、活動の場を広げている。