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  • Apple Watchが命を救う?自覚困難な「不整脈」対策にウェアラブルデバイスが有効なワケ【専門医が解説】

最終更新日:2022年4月13日

Apple Watchが命を救う?自覚困難な「不整脈」対策にウェアラブルデバイスが有効なワケ【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
東京ハートリズムクリニック
桑原 大志 先生

※画像はイメージです/PIXTA

不整脈のなかには、命を脅かすリスクの高いものがあり、命を守るためには、いち早く不整脈が起きていることに気づく必要があります。不整脈を診断するには心電図をとることが必須であり、実は、心電図をとるうえで有効なのがApple Watchをはじめとした「ウェアラブルデバイス」だと、東京ハートリズムクリニックの桑原大志院長はいいます。それぞれの特徴ついて、詳しくみていきましょう。

「不整脈が起きているときに心電図をとる」が鉄則

不整脈とは、簡単にいえば、脈が乱れている状態のこと。通常、脈は1分間に60回から100回ほどの一定のペースで打っています。しかし不整脈の場合は、これが極端に少なくなったり、多くなったり、また脈の打ち方が一定でないなどの症状が現れます。

不整脈を確実に診断するには「心電図」

不整脈のなかには、息切れやめまい、胸痛、立ちくらみなどの自覚症状が現れることもありますが、なかにはまったくそうした症状がない場合があります。特に、不整脈が慢性化している場合には、自分が不整脈であること自体に気づいていないケースも少なくありません。

不整脈を診断する方法にはさまざまなものがありますが、もっとも有効なのは、「心電図をとること」です。心電図とは、心臓の電気的な興奮を記録したものです。心電図を見ることによって、不整脈の種類や心臓の筋肉の異常などがわかります。

不整脈の診断は「脈が乱れているとき」に心電図をとる

まず覚えておいていただきたいのが、確実に不整脈と診断するためには「脈が乱れている状態のときに心電図を記録しなければならない」ということです。不整脈の人のなかには、常に不整脈が続いている人もいますが、ある日突然、予期せずに不整脈が発症する人もいます。

脈が乱れている瞬間を捉え、そのときに心電図をとらなければ、本当にその人が不整脈かどうか、確実に診断することはできません。不整脈を捕らえるために、さまざまな心電図検査があります。

心電図は病院だけでなく、自分でもとれる

心電図は、病院で心電図をとる方法から、自宅で簡易的な機器を使ってとる方法までさまざまあります。

もちろん正確性の観点からいえば、病院で行う検査がもっとも優れているのは間違いありませんが、どの検査にもメリットとデメリットがあります。それぞれの検査方法について、詳しく解説していきましょう。

病院で行われる4つの主な心電図検査

病院で行う心電図検査は、主に以下の4つの方法があります。不整脈だけでなく、心筋梗塞、狭心症、心肥大などの検査にも用いられます。

もっとも一般的な心電図検査「12誘導心電図」

12誘導心電図は健康診断や人間ドックで検査した人も多いでしょう。

12誘導心電図とは、その名のとおり心臓に流れる電流を12方向から記録したもののことをいいます。もっとも一般的に行われる心電図検査で、両手首と両足首に4個のクリップ電極を、胸部に6個の吸盤電極をつけて、心臓の筋肉が興奮する時に生じる電気的活動を詳細に記録します。

この検査では、心臓の電気的な活動をさまざまな方向から記録します。もし、不整脈が発生した瞬間に心電図が記録できれば、その不整脈の種類はもちろんのこと、心臓のどの辺りに起源があるかを推定することもできます。また、不整脈のほかにも、心筋梗塞や心筋症、狭心症などを診断することもできます。

しかし、弱点としては、記録する時間が30秒から1分間、長くても3分くらいですから、その時間内に不整脈が起こらなければ、確定診断をつけることが難しいということが挙げられます。

24時間にわたって記録する「ホルター心電図」

12誘導心電図の弱点を補うべく使われるのが、ホルター心電図です。これは、携帯用の小型心電計を使って24時間、心電図を記録するもの。検査中の心電図はすべて記録されるため、一発の不整脈も見逃すことはなく、極めて詳細に不整脈の診断が可能です。

しかし、この心電図検査は誘導数が2方向と少ないため、12誘導心電図ならば可能な不整脈の発生起源などの判断はできません。また、24時間記録しても不整脈が現れない場合も多く、実際に「1ヵ月に1回や、1年に数回程度しか不整脈が現れない」という人も少なくありません。そういう場合は、ホルター心電図でも不整脈を捕らえることが難しくなります。

心臓電気生理学的検査(EPS)

もっと詳細に不整脈の状況を調べるときには、心臓電気生理学的検査(EPS)が用いられます。これは、数ミリ径の細い管(カテーテル)を、足の付け根や頸の静脈から、心臓に向かって数本挿入する検査方法。カテーテルの先端には小さな電極が付いていて、電気信号を心臓に与えることにより、不整脈を誘発して診断する方法です。心拍数が速くなる、頻脈性の不整脈の診断に特に有効です。

12誘導心電図やホルター心電図では、体表に電極をつけるため、心臓の内部で起きている電気の伝達経路の異常や不整脈のメカニズムまで、把握することはできません。しかしこの心臓電気生理学検査なら、不整脈中の心臓内部の電気的興奮経路を詳細に理解することができ、診断ができたら、そのまま治療も可能です。

欠点は入院をしなければならないということと、頻度は極めて少ないものの合併症などのリスクが伴うことが挙げられます。

最長3年間、心臓を24時間モニタリングする「植込み型心電計」

提供 日本メドトロニック株式会社

もっと詳細に不整脈の様子を記録したいという人に推奨するのが、「植込み型心電計」です。これは、極小の心電計を前胸部の皮膚の下に埋め込むもので、最長3年間、心臓を24時間モニタリングすることができます。

心電計の植込みは局所麻酔を使用し、約5分で終了します。身体的な負担も少なく、日帰り入院での処置が可能なのも、この植込み型心電計のメリットです。

特にこの植込み型心電計を推奨するのは、失神を起こしたことのある患者さんです。原因不明の失神を繰り返す場合には、失神が心臓の病気に由来するのか、あるいは、心臓以外に原因があるのかを判断するうえで、非常に有用です。また、遠隔モニタリングが可能で、心電図記録は自動で病院に送信され、迅速で的確な診断が可能になり、速やかに治療へ進むことができるのも、植込み型心電計のメリットです。

欠点は特にありませんが、あえていうなら植込みや除去のために手術が必要なことでしょう。

日常的に使いたい…自宅で簡単に行える心電図検査

近年では、病院で行う心電図検査だけでなく、自宅で手軽に心電図を記録することができるようになりました。それだけ一般の人たちの間で、不整脈をはじめ、心臓病に関する関心が高まっているという証拠でしょう。

初代、持ち運びできる心電計「オムロン携帯型心電計」

オムロンが発売している携帯型心電計は、動悸やめまいなど不整脈が疑われる症状をその場で記録し、心電図波形を表示する家庭向け心電計です。

この特徴は心電計で記録した心電図を、そのまま医師に見せ、治療に生かせるということ。携帯型心電計は、自覚症状があるときに心電図を記録することができるので、病院で行う12誘導心電図検査やホルター型心電検査では発作時の心電図が捕えきれなかった場合でも、不整脈の診断に役立ちます。

オムロンの携帯型心電計が登場したのは2005年のことで、当時は不整脈の治療や予防に役立つ画期的な製品として、大きな注目を集めました。

ただしこれにも弱点があります。それは、携帯するにはややサイズが大きいということ。スマートフォンくらいの大きさがあるので、「いつも持ち歩くにはもっとサイズが小さいほうがいい」という患者さんからの声も聞かれていました。

超小型で軽量…不整脈診断に画期的な変化をもたらした「Apple Watch」

オムロンの携帯型心電計の欠点を解消し、超小型で軽量の心電計を実現したのがApple Watchです。Apple Watchの心電図機能は、2018年9月に「Apple Watch Series 4」とともに発表され、同年12月に米国で提供が始まりました。日本ではひと足遅く、2021年1月に行われた「iOS 14.4」と「watchOS 7.3」のリリースによって利用できるようになりました。

日本で、この心電図機能が使えるようになることを心待ちにしていた人は少なくありません。なぜなら米国ではこの機能を使って、不整脈の一種である心房細動を発見できたというケースが相次いでいたからです。

時計という、常に持ち歩くデバイスに心電計の機能が備わったことで、わざわざ心電計を個別に持ち歩く必要がなくなりましたし、動悸やめまいが起きた時には、すぐに心電図を取れるようになりました。

Apple Watchは心臓に流れる電流を1方向から記録します。前述の12誘導心電図では12通りの方向で心電図を記録しますから、比較するとどうしても情報量が不足してしまいます。

また、計測する時はアプリを立ち上げ、指でデジタルクラウン(側面にあるホームボタン)に触れますが、そのとき、指が動いてしまったり、強く押してしまったりすると、心電図が正しく記録されず、ノイズが入ってしまうことがあります。

Apple Watchで正確に心電図を記録する、2つのコツ

Apple Watchできちんと心電図をとるためには、次のことに気をつけましょう。

(1)計測中は指や腕を動かさない

(2)Apple Watchを胸に当てて計測する

まず「(1)計測中は指や腕を動かさない」ですが、計測している間は、デジタルクラウンに触れている指や、時計をはめた腕を動かさないように意識しましょう。記録中に指や腕が動いてしまうと、心電図の基線と呼ばれる部分が上下に動いてしまいます。その結果、大事な部分がかき消されてしまい、正しく判定できません。

左の部分の波が上下に揺れているのは、計測中に指や腕が動いてしまったから

次に、「(2)Apple Watchを胸にあてて計測する」ですが、計測する時は指でデジタルクラウンに触れるのではなく、時計を腕から外し、時計の背面を左乳輪の下(女性なら左乳房の下)に当てて記録することをおすすめします。

通常はApple Watchを腕にはめたまま記録しますが、そうすると、人によっては心電図の波の高さが小さく映り、診断が難しい場合があります。その場合は、Apple Watchを胸に当てて記録すると、心電図の波の高さが大きくなって見やすくなり、正確に診断しやすくなります。

上の心電図が時計を腕にはめて記録したもので、下の心電図が胸に当てて記録したものです。下のほうが、心電図の波の高さが大きくなっているのが分かります。こちらのほうが、不整脈を正確に診断しやすくなります。

このように、心電図の計測方法にはさまざまなものがありますが、現在、特に注目を集めているのが、Apple Watchです。当院でも実施しておりますが、最近では、Apple Watchで記録した心電図をメールなどで送信し、オンラインで不整脈のリスクを診断するサービスを行っている医療機関もあります。

Apple Watchで記録した心電図は、正しく計測することができれば、十分、医療に活用できる正確さがあります。しかしその反面、Apple Watchによる心電図を見慣れていない医師や、不整脈に精通していない医師では正しい診断が難しいこともあります。Apple Watchで記録した心電図を実際の診療に活かしてほしい場合は、Apple Watchの心電図に詳しい循環器医や不整脈医を選ぶことも大切です。

不整脈は重篤な場合、命を奪うリスクになることもあります。このように便利なデバイスがたくさんありますし、病院で行う心電図検査にもさまざまなものがあります。ぜひ、自分の症状やライフスタイルに応じて、最適なものを選び、日々の健康管理に役立てましょう。

こちらの記事の監修医師

東京ハートリズムクリニック

桑原 大志 先生

医学博士。1984年愛媛大学医学部入学。1991年愛媛大学医学部第2内科入局、1992年愛媛県立中央病院勤務、愛媛大学医学部附属病院、愛媛県立新居浜病院、国立循環器病研究センター研修、2004年横須賀共済病院循環器センター勤務。2016年東京ハートリズムクリニック院長に就任。
不整脈治療を専門とし、カテーテルアブレーション治療では、世界トップクラスの実績を持つ。同クリニックでの2021年12月末現在の治療実績は2,000件以上。