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最終更新日:2022年10月5日

頑張りすぎは逆効果!健康に良い「理想の運動量」を不整脈専門医が解説

こちらの記事の監修医師
東京ハートリズムクリニック
桑原 大志

桑原先生 運動 カンバン
※画像はイメージです/PIXTA

健康を維持するために、運動はとても大切なもの。とはいえ、「運動のしすぎ」は「しなさすぎ」と同じくらい身体にダメージを与えてしまうと、東京ハートリズムクリニックの桑原大志院長はいいます。では、健康維持に最適な運動量はどのくらいなのでしょうか。さまざまなデータを読み解きながら、桑原院長がおすすめする「本当に体にいい運動」をみていきましょう。

「運動は身体にいい」をエビデンスから読み解く

運動が身体にいいことは、すでに多くの研究から明らかになっています。以下で具体的にみていきましょう。

運動は身体を鍛えるだけでなく、がんや認知症のリスクも下げる

「運動は身体に良いか、悪いか」といわれたら、きっとほとんどの人が「良い」と答えるでしょう。実際、[図表1]のように神経や内分泌、筋骨格、腫瘍、心血管など、さまざまな分野で身体にたくさんの恩恵をもたらしてくれることが研究でわかっています。

改変:European Heart Journal(2015) 36,1445-1453

「運動が心臓病予防にいい」と明らかになった第二次世界大戦直後

次に、筆者の専門分野である「冠動脈疾患の予防」という観点から、さまざまな研究を紐解いてみます。

歴史上、最初に「運動は身体にとっていい影響をもたらすのではないか」という考えが示されたのは、1953年に発表された論文です。忙しく働くバス運転手と郵便配達員は、忙しくないバス運転手や座り仕事の多い人に比べて、「冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の発症が50%少ない」という研究結果が述べられたのです。

このあと、世界中の研究者たちが運動と健康について調査しました。2002年には、ある興味深い研究結果が発表されています。

週に1回のランニングで出た「差」

アメリカの格調高い医学雑誌「JAMA」に掲載された論文です。米国人男性44,452人に対し、1986年から1998年まで2年間隔で追跡調査を行いました。観察したところ、1,700例に冠動脈疾患が発症していました。

彼らの運動履歴を比較すると、週に1時間以上ランニングをした男性は、ランニングをしなかった男性と比較して、冠動脈疾患の発症リスクが42%減少し、週に30分以上ウェイトトレーニングを行う男性は、行わない男性と比較してリスクが23%減少していました。また週1時間以上のボート漕ぎは、18%のリスク低減と関連していました。

いずれにしても、運動する人はしない人に比べて冠動脈疾患の発症率が下がっていることがわかります。

では、どれくらいの運動量が健康のために最適なのでしょうか。上記の研究は「METs(メッツ)」という、身体活動の強度を示す単位で対象者たちの運動レベルを測定しました。

参考までに、厚生労働省が示す「生活活動のメッツ表」※によると、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツ、ゆっくりとしたジョギング、ウェイトトレーニングが6メッツ、ランニング(188m/分)が11メッツに相当します
※ http://e-kennet.mhlw.go.jp/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/mets.pdf

中等度(4~6メッツ)および高(6~12メッツ)の活動強度は、低い活動強度(<4メッツ)と比較して冠動脈疾患のリスク発生率が低い結果となっています。これだけでなく、1日30分以上の早歩きは18%以上リスク低減と関連していることも明らかになりました

※ JAMA. 2002 Oct 23-30;288(16):1994-2000

同様の結果は、2010年に医学雑誌「Circulation」でも報告されています。

1986年から 2008年にかけて、65歳から 92歳の男性退役軍人 5,314 名(平均年齢 71.45歳)を対象に、運動能力と全死因死亡率との関連を研究しました。8年ほど追跡調査したところ、2137人が死亡してしまったのです。

対象者たちの運動履歴を見ると、5メッツ以上の運動強度の場合、1メッツ上がるごとに死亡率が12~20%減少しています。運動量が高い人たちのほうが長生きできたのです。

Circulation. 2010;122:790-797.

運動は「精神疾患の予防」にも効果的

続いて、認知機能と運動の関係性についてみてみましょう。医学雑誌「Neurology」に2001年に掲載された論文です。認知機能が正常であった4,615人を5年間フォローアップしたところ、3,894人が認知機能障害なし、436人が認知機能障害あるが認知症なし、285人が認知症と診断されました。

彼らを身体活動レベルごとに、「高い(週3回以上、早歩き以上)」、「中等度(週3回以上、散歩レベル)」、「低い(それ以外)」に分類したところ、身体活動のレベルが高い群は低い群に比べて、認知障害の発症率はなんと0.58倍にまで下がりました。

また、アルツハイマー型認知症の発症率も0.50倍に、認知症の発症率も0.63倍になり、身体活動レベルを高く維持すると、認知機能障害の予防にもなることがわかったのです
※ Arch Neurol 2001;58:498 –504

すでに慢性疾患を持つ人についても研究が行われています。

医学雑誌「Internal Medicine」に2010年掲載された論文です。慢性疾患を持つ座りがちな成人を対象とした学術論文40本を調べ、ベースライン時(測定直前の段階)と、運動トレーニング後に測定された不安を定量評価するため、「3週間以上、運動を介入したグループ」と「まったく運動を行わないグループ」の2群に分けたところ、「3週間以上、運動を介入したグループ」は「まったく運動を行わないグループ」と比較して、不安症状が有意に減少したというのです。

これにより、「運動トレーニングは慢性疾患を有する座りがちな患者における不安症状を軽減する」という結論が導き出されました
※ Arch Intern Med. 2010 Feb 22;170(4):321-31

続いて「Journal of Anxiety Disorders」に掲載された論文では、パニック障害、全般性不安障害(毎日の生活のなかで漠然とした不安や心配を慢性的に持ち続ける病気)、または社会不安障害(人前で恥をかいたり、恥ずかしい思いをしたりすることを極度に恐れ、強い不安や苦しみを感じ、避けてしまう)外来患者74人に対して16ヵ月間、無作為に研究が行われました。

研究では、「認知行動療法と運動」を行う群と、「認知行動療法と教育セッション」を行う群に分けたところ、「認知行動療法と運動」を行う群のほうが、抑うつや不安、ストレスが軽減していることが明らかになりました。これにより、運動は精神障害を有した患者さんの治療にもなりうることがわかったのです
※ J Anxiety Disord. 2008 Aug;22(6):959-68.

一方、運動に否定的な論文も…運動のやりすぎも毒?

ここまでは、運動が健康に効果的であるという結果を示した、代表的な論文を紹介しました。しかし、「運動しすぎはよくない」と書かれた論文も存在するのです。

長時間の激しい運動は心房細動や徐脈性不整脈のリスクに

2009年、医学雑誌「Europace」に掲載された論文では、合計655人のアスリートと895人のまったく運動をしない人たちを比較したところ、アスリートにおける心房細動の症例は、まったく運動をしない人たちに比べて5倍多いことが明らかになっています。ちなみに対象者の平均年齢は51±9歳、93%が男性です
※ Europace. 2009 Sep;11(9):1156-9

また、医学雑誌「European Heart Journal」に2013年掲載された論文も、興味深い結論を導いています。

1989~98年にVasaloppet(90kmのクロスカントリースキー大会)を完走した、心血管疾患のない参加者全員を追跡調査したところ、52,755人の参加者のうち919人がフォローアップ期間中に不整脈を経験しました。

そして、期間中に最も多くのレースを完走した人は、そうでない人と比較して、あらゆるタイプの不整脈を発症する確率が1.3倍、心房細動も1.3倍、徐脈性不整脈は2.1倍高くなっていることがわかりました。

また、完走時間の速さや完走回数の多さも、不整脈のリスクの高さと関連していました。

適度な運動は身体にいいとされているものの、マラソンやクロスカントリーなど、長時間かけて行う競技の場合、心房細動や徐脈性不整脈の発症原因になることが明らかになっています
※ Eur Heart J. 2013 Dec;34(47):3624-31.

専門医が提言する「本当に身体にいい運動」

健康維持のために運動しているつもりが、かえって健康を害してしまっては本末転倒です。多くの論文からエビデンスに基づき、結論を導いてみます。

「週6回の早歩きまたは軽いジョギングを20分間」が最適

どれくらいが適度な運動といえるのかというと、ある論文がひとつの“上限”を示しています。2014年、「Heart」に掲載された論文です。

45~79歳(平均年齢60歳)の心房細動のない男性44,410人に対し、15歳、30歳、50歳、およびベースライン時(調査時)を通して、余暇の運動と歩行または自転車に費やした時間を調査しました。

12年の追跡期間中に、4,568例の心房細動が診断されました。そして、30歳のときに週5時間以上運動をしていた男性では、週1時間未満と比較して、心房細動の発症リスクが1.19倍であることがわかりました。

また、30歳のときに週5時間以上の運動をしていて、人生の後半に運動をやめた男性(ベースライン時に週1時間未満)ではさらに高く、1.49倍になりました。

この論文では、若年時の余暇運動は心房細動のリスク上昇と関連するということが明らかになっており、ひとつの目安として1週間に5時間以上の運動はしないほうがいいのではないか、という提言がうかがえます
※ Heart. 2014 Jul;100(13):1037-42.

それでは、不整脈予防という観点からすると、どの程度の運動が “最適”なのでしょうか。

厚生労働省やWHOなども、目指すべき運動のレベルについては一定の提言をしています。しかし実際、これらにエビデンスはあまりありません。そこで私は20本以上の論文を読み、ひとつの結論に達しました。それが、こちらです。

【理想的な運動】
1週間に2時間、6〜10代謝等価作業(METs)……1日に20分、週6回、1回あたり6〜10METs(=6〜10km/hの早歩き、もしくは軽いジョギング。少なくとも5メッツをめざす)

多くの論文を総合的に検討した結果、筆者は上に記載した運動量が心臓に負担をかけず、将来的に冠動脈疾患を引き起こすリスクも少なく、また、体にとってもいい効果をもたらす最適な運動量だと考えます。毎日20分であれば、それほど大きな負担ではないのではないでしょうか。また、早歩き、あるいは軽いジョギング程度であれば、運動が苦手な人でも取り組みやすいはずです。

健康を維持するために、過度にがんばりすぎる必要はありません。これくらいでちょうどいいのです。

アプリの力を借りたトレーニングもおすすめ

最後にもうひとつおすすめしたいのが、自分の運動履歴を記録することです。近ごろはさまざまなアプリがあり、ジョギング時の走行距離や速度、時間などを自動で記録してくれます。

体組成計で体重や体脂肪、筋肉量などを測定するのもおすすめです。筋力トレーニングを行えば筋肉量の変化がわかり、モチベーションにも繋がります。あらゆるデバイスを駆使し、記録を残しながら科学的かつエビデンスに基づいた運動をして健康につなげていくのが、現代的なスタイルではないでしょうか。

運動のしすぎも、しなさすぎも健康を害する原因になり得ます。もちろん、既往歴や体質、年齢などによってその人に最適な運動強度は異なりますが、決してハードな運動だけが身体にいいわけではありません。効率的に健康管理を行ってみてはいかがでしょうか。

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こちらの記事の監修医師

東京ハートリズムクリニック

桑原 大志

医学博士。1984年愛媛大学医学部入学。1991年愛媛大学医学部第2内科入局、1992年愛媛県立中央病院勤務、愛媛大学医学部附属病院、愛媛県立新居浜病院、国立循環器病研究センター研修、2004年横須賀共済病院循環器センター勤務。2016年東京ハートリズムクリニック院長に就任。

不整脈治療を専門とし、カテーテルアブレーション治療では、世界トップクラスの実績を持つ。同クリニックでの2021年12月末現在の治療実績は2,000件以上。

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