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最終更新日:2022年7月22日

お隣の韓国でも発生…日本上陸も時間の問題?「サル痘」の恐怖

こちらの記事の監修医師
ダナ・ファーバー癌研究所
郭 悠

(画像=※画像はイメージです/PIXTA)

世界的に感染が広がる「サル痘」。6月22日にはお隣韓国でも初の感染例が報告されるなど、日本も対岸の火事では済まなくなってきました。自然宿主がいまだ特定されていないなど、まだ謎の多いこの症例。いったいどのような病気で、またどのような対処法が有効とされているのでしょうか。米ハーバードメディカルスクールの関連研究所「ダナ・ファーバー癌研究所」で研究員として勤務する、医学博士の郭悠氏が解説します。

「サル痘」とはそもそもどんな病気か

サル痘とはどんな病気でしょうか。「痘」は「トウ/もがさ」という読み方の漢字で、辞書を引くと「皮膚に豆粒ほどの水ぶくれのできる病気。その水ぶくれ」とあります。いわゆる「みずぼうそう」である水痘、一般に「天然痘」と呼ばれる痘そうなど、水疱(水ぶくれ)をつくる病気に使われています。

これらの病気について、みずぼうそうは水痘帯状疱疹ウイルス、天然痘は痘瘡(天然痘)ウイルスというDNAウイルスによって、それぞれ引き起こされます。そしてサル痘も天然痘ウイルスと同じポックスウイルス科オルソポックス属のサル痘ウイルスが病原ウイルスです。これらの病気は症状も同じで厚労省によると以下のような症状がみられます。

  • 発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0〜5日程度持続し、発熱1〜3日後に発疹が出現する。
  • 皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。
  • 多くの場合2〜4週間持続し自然軽快する。
  • 小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがある。
  • 皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。

しかし、致死率が30%近くあった天然痘に比べ、サル痘の致死率はこれまでの報告では0〜11%で、特に小児で高い傾向にありますが、近年の発症例では3〜6%程度に留まります。天然痘は1980年にWHOより世界根絶宣言が出されており、いまこのような症状が出た場合はサル痘の他に水痘(みずぼうそう)、麻疹、細菌感染、疥癬(かいせん)、梅毒、薬疹を考慮する必要があります。

サル痘では発疹が出る前に熱とともに首、脇の下、足の付け根のリンパ節腫脹がみられることが他の疾患との鑑別になる場合があります。

確定診断はPCR検査で

診断法としてウイルス抗原の分離・同定や、ウイルス粒子の証明、蛍光抗体法などの方法がありますが、ワクシニアウイルスや天然痘ウイルスなど他のオルソポックス属感染症との区別はできません。よって水疱や膿疱の内容液や蓋、あるいは組織を用いたPCR検査による遺伝子の検出やウイルスの分離が確定診断となります。日本では各保健所を経由して国立感染症研究所での検査が可能です。

近年発症例が増加している「サル痘」

サル痘という名前からサルが感染する病気に思われますが、1958年に実験用のサルのなかで天然痘様の症状をきたす2つのアウトブレイクを起こしたことに由来します。ヒトでは1970年にコンゴ共和国の9ヵ月の男児の症例が初の報告例で、その後は西~中央アフリカで風土病として定着し、これまで同地域でのアウトブレイクが散発していました。

実際にはリスやネズミ、ヤマネなどのげっ歯類が宿主(保有動物)と考えられており、2003年にはアメリカでペットとして輸入されたプレーリードッグを介して初めてのアフリカ国外での70例のアウトブレイクが起きています。近年では2018年9月にイスラエル、2019年12月~2022年5月にイギリス、2019年5月にシンガポール、2021年7月と11月にアメリカでそれぞれ発症例が報告されています。

そして、2022年1月から6月22日までに世界中で死亡例1例を含む3413例が報告され、5月からはこれまで発症例が報告されていなかった世界中の地域での報告例が増加し、アメリカでも7月15日現在までに490例が報告されています。こうしたことからサル痘は世界中から注目されており、韓国でも6月22日にドイツから帰国した韓国人の発症が初めてみられアジアでの警戒が強められています。

日本ではこれまでに報告はないものの、2003年のアメリカでのアウトブレイクの際にテキサス州からアフリカヤマネが日本へ輸入されましたが、これらは全頭が死亡もしくはサル痘ウイルス検査陰性が確認され、国内での発生には繋がりませんでした。

感染経路は動物からヒト、ヒトからヒト

感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触が感染原因といわれています。ペットとしてや野生動物、食用としてサル痘に感染した動物と接触する可能性があります。

また本来サル痘はヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者やリネン類を介した医療従事者の感染の報告があり飛沫感染や接触感染が考えられています。

WHOは最大で6〜9人の二次感染を起こす場合もあり、これはサル痘にも有効な天然痘ワクチン接種率が低下したことが関連しているとしています。他にも母親から胎盤を介した胎児感染や、授乳による感染が危惧されています。

動物実験によって有効性が示されている治療薬もある

熱や頭痛などの痛み、発疹の症状軽減や、二次感染や合併症予防、後遺症予防のための対症療法が中心となります。シドフォビルはサイトメガロウイルスの治療などに海外で使用されている抗ウイルス薬であり、動物実験でサル痘への有効性が確認されています。韓国では国内初報告を受けてシドフォビルの流通体制の整備に取り掛かったようです。

また、シドフォビルの誘導体であるBrincidofovirも動物実験での有効性が示されています。天然痘治療薬として開発されたTecovirimatは動物実験や臨床試験の結果より2022年にthe European Medicines Agency (EMA)の治療薬として承認されました。日本では未承認ですが、国立国際医療研究センターで特定臨床研究が始められました。

日本でのワクチン接種は行われていない

天然痘ワクチンはサル痘に対しても約85%の有効性を示すという報告もあります。第一世代の天然痘ワクチンは利用できなくなっており、代わりに弱毒化ワクシニアワクチンがサル痘予防での使用で2019年に承認を受けています。ただし、利用できる地域は限定的です。このワクシニアワクチンをもとにした天然痘ワクチンやサル痘ワクチンも開発されています。

1976年以降日本では天然痘ワクチン接種は行われておらず、政府は患者の濃厚接触者となった家族らやリスクの高い医療従事者に対して天然痘ワクチンを接種させることを想定した特定臨床研究を検討していますが、サル痘の致死率が低いことやワクチンの副作用に対して懸念の声もきかれます。

まとめ

今回は現在世界中で発症が増加しているサル痘の症状、治療についてお話ししました。SARSーCOVー2と同様に、サル痘も致死率が低くなった分、感染率が上がり、さらにヒトからヒトへ感染を起こすようにウイルスが進化したことがアウトブレイクの要因と考えられます。予防に関しての考え方も呼吸器感染症であるCOVIDー19に比べマスクの重要性は低いですが、接触リスクに関しては同様の対応が大事となります。

こちらの記事の監修医師

ダナ・ファーバー癌研究所

郭 悠

近畿大学医学部卒業、熊本大学大学院 エイズ制圧のためのトランスレーショナル研究者育成コース卒業。初期研修終了後、HIV・膠原病診療に携わり、HIVの抗体研究で医学博士を取得。その後、ワクチン開発を目指したHIV・新型コロナウィルスの中和抗体研究をしながら、現在はアメリカ国立癌研究所指定癌センターのひとつである、ダナ・ファーバー癌研究所に勤務。また、一般内科医として診療にあたり臨床での現状やニーズを意識しながら、臨床応用を目標とした免疫学、ウィルス学研究を心掛けている。
「難しいことを難しく言うのは簡単だが、難しいことを簡単に言うのは難しい。」がモットー。