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最終更新日:2022年8月10日

お酒を飲まない人でも肝硬変や肝臓がんになるリスク…近年注目の脂肪肝「NAFLD/NASH」とは?

こちらの記事の監修医師
相馬中央病院
齋藤 宏章

(写真=PIXTA)

健康診断などで脂肪肝ですね、と言われたことはないでしょうか? 「お酒も飲まないし、最近太ったのが原因だろうか」、と軽く見ている人は要注意です。実は単なる“脂肪肝”であっても、肝硬変や肝臓がんをきたしやすい“非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis=NASH)”の状態に進行することがあるのです。また、脂肪肝は新型コロナ感染症の重症化リスクの一つ、とも言われています。今回は身近な”脂肪肝”に関わる肝疾患を解説していきます。

大量飲酒や肝炎ウイルスがなくても深刻な肝臓病になる!?

肝臓の病気というと、飲酒量の多い人や、肝炎ウイルスによるもの、というイメージが強いかもしれません。確かに習慣的なアルコールの摂取や肝炎ウイルスの長期的な感染は、肝細胞の繊維化を進め、肝硬変や肝不全、肝臓がんの発生を引き起こします。しかし、同じような状態が、多量のアルコール摂取や他の要因がない方の脂肪肝から発生することが明らかになり、問題になっています。

アルコール摂取が少なく、肝炎ウイルスなど特定の原因がない人の脂肪肝の状態は“非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease=NAFLD)”と総称されます。単に脂肪が沈着している状態(非アルコール性脂肪肝)のままであれば問題ないことが多いのですが、NAFLDの方の一部は、慢性的に炎症を伴い、徐々に肝硬変に進行していく状態(非アルコール性脂肪肝炎=NASH)に移っていくと考えられています。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを合併している人、メタボリックシンドロームである人などがNAFLD/NASHに罹患するリスクが高く、これが肝臓の生活習慣病と言われるゆえんです。

NAFLDは最近注目されるようになった病態ですが、実際の患者数はさらに多く、また今後も増えていくだろうと推測されています。2018年にJournal of Hepatologyという国際誌に掲載された米国の疾病解析研究所や日本を含む複数の研究機関からの報告では、日本では、2016年には約2200万人がNAFLD、そのうち約370万人がNASHの状態であると推計されています。また、2021年に名古屋大学などの研究チームがHepatology International誌に報告した予測では、2030年には日本人の39.3%、2.5人に1人はNAFLDにかかるのではないかと推定されています。実際にここまでの広がりを見せるかは不透明ですが、非常に身近な病気であると言えます。

NAFLDを放置すれば、肝臓がんリスクは「C型肝炎ウイルス患者」に匹敵

NAFLDの人のうち、NASHへ発展し肝硬変・繊維化が進んだ場合には、肝臓がんのリスクはC型肝炎ウイルスに罹患している場合と同等と言われています。実際の仕組みは不明なものの、糖尿病で認められる、インスリンの働きが弱くなる作用(インスリン抵抗性)や、慢性的な炎症の状態が病気の進行に関連しているのではないかと推測されています。また、最近では遺伝子の関連も指摘され、PNPLA3という遺伝子がNAFLDやNASHの発症と病気の進行に関連していることが知られています。

NAFLDやNASHは新型コロナ感染症の重症化リスクの一つ

実はNAFLDやNASHは新型コロナ感染症の際の重症化リスクの一つであるということが複数の研究から示されています。高齢や、基礎疾患があることは新型コロナ感染症の重症化のリスクであることが知られていますが、脂肪肝、NAFLDの状態も重症化リスクの一つなのです。2021年に中国の山東大学の研究チームがJournal of Clinical Gastroenterologyに報告した複数の研究結果をまとめたメタアナリシスでは、脂肪肝やNAFLDの状態の人は新型コロナ重症化のリスクが1.8倍になることが示されています。これは、糖尿病や心血管系の疾患などの他の合併症を併せ持つことが多いことも影響していると思われます。

外出自粛によりNAFLDが悪化する可能性も…

また、新型コロナ感染症蔓延による自宅待機やロックダウン自体がNAFLDの状態を悪化させている可能性も指摘されています。2022年にイタリアのミラノ大学の研究チームから医学雑誌Nurtientsに報告された研究では、2020年3月から4月にかけたイタリア全土の新型コロナ感染症によるロックダウンによってNAFLD患者の48%が体重増加をきたしたと報告されています。栄養管理や運動などの生活習慣が変化したせいで体重増加が起こり、結果NAFLD自体の状態も悪化する例が見られたと報告されています。日本でも同様の状況が起きている可能性もあります。

新規治療薬も開発中…NAFLD/NASHの治療について

では、NAFLD/NASHの治療はどうすればよいのでしょうか。現在は食事療法、運動療法による生活習慣の改善とともに、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの合併症がある場合にはそれぞれの治療を行うことがNAFLD/NASHの治療にも有効とされています。

一方、実はこれまで、日本や海外を含め、現時点においてNAFLD/NASHに対する専用かつ有効な薬剤はありませんでした。病態の解明が進むにつれて、作用の異なる複数の新しい治療薬の開発が試みられ、近年その結果が続々と報告されています。

2021年10月にはベルギーのアントワープ大学病院を中心とした研究チームから、NASHによる肝臓の炎症の調節に関わるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体に働きかけるラニフィブラノールの臨床試験の結果が医学雑誌New England Journalに報告されました。無作為化二重盲検第2b相試験でしたが、1日1回24週間の投与で肝臓の繊維化を悪化させることなく、SAF-Aスコア(NASHの活動性のスコア)を2点以上改善した割合はラニフィブラノール投薬群が48-55%と偽薬(33%)よりも高い割合でした。ラニフィブラノールはNASHの治療薬の有力な候補として第3相試験の結果が待たれています。

甲状腺ホルモン受容体β活性化剤であるレスメチロムも有望視されている薬剤の一つです。2019年に米国の肝疾患を専門とするPinnacle Clinical Research研究所や開発を進めているマドリガル社らの研究チームから、医学雑誌Lancetに報告された第2相試験の結果では、36週間のレスメチロムの投与で、33%の患者に脂肪肝の減少が見られました。投与された患者の4人に1人はNASHの状態が解消するところまで効果が認められています。

さらに2022年の1月にはマドリガル社から二重盲検試験の第3相試験の結果が公表されました。この試験では、レスメチロムの52週間の投与で、43-48%の患者に脂肪肝の改善が認められました。より詳しく効果を検証する試験が2022年の後半に公開される予定であり、注目を集めています。

同じく、2022年1月には、肥満症や肥満症にかかわる糖脂質代謝異常を改善する作用があると知られている細胞間シグナル因子のFGF21を模倣したペゴザフェルミンという薬剤の臨床試験の結果が開発会社のbio89社から報告されました。ここでは、週に1回、20週間投与することで、63%の患者のNAFLD活動性スコアを2点以上改善させたことが示されました。第1b/2a相試験という、開発の早い段階であり、すぐには市場にあらわれない可能性がありますが、次の第2b相試験も進行中です。

また、2022年の6月にはPinnacle Clinical Research研究所とノバルティス社の研究チームからNature Medicine誌に、SGLT1/2受容体阻害薬であるリコグリフロジンのNASH患者に対する成績が発表されました。プラセボ(偽薬)と比較した第2a相試験でしたが、12週間の内服投与で32%の人に肝機能の改善を認めたことが示されました。他にも多くの薬剤が臨床試験の段階にあり、近い将来にこれらの薬剤が市場に登場することが期待されています。

脂肪肝を指摘された際には、大丈夫だろうと放置せず、採血の結果でも肝臓の機能にも異常がある場合には一度専門医に診てもらうほうがよいでしょう。定期的な検診の継続、他の生活習慣病の管理の見直しや、食習慣・運動習慣の見直しが重要です。

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こちらの記事の監修医師

相馬中央病院

齋藤 宏章

相馬中央病院 内科
日本内科学会 認定内科医
日本消化器病学会 消化器病専門医

福岡県福岡市出身。福岡県立修猷館高校、東京大学医学部医学科卒業。
2017年より宮城県仙台厚生病院消化器内科に勤務し、内視鏡をはじめとする消化器内科疾患全般の診療に従事、2022年6月より福島県相馬中央病院 内科に勤務。2019年より、福島県立医科大学医学部博士課程にも所属している。

AIをはじめとする、内視鏡診断・治療に関わる研究や、消化器系のがん検診の実態と課題の解明に関わる研究、製薬企業の医師に対する謝礼金の実態を分析する研究など、医学領域の研究に広く取り組む。