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最終更新日:2021年12月26日

元気な高齢者こそフレイル対策を!寝たきり、介護予防のポイント【在宅医療専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
向日葵クリニック
中村 明澄

 
(※写真はイメージです/PIXTA)

フレイルとは、「加齢により心身が老い衰えた状態」のことをいいます。しかしフレイルは、できるだけ早く気づき、対策を行うことで、健常に近い状態にまで戻る可能性があります。高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険があります。フレイル状態になるとどのようなことが起きるかについて在宅医療専門医が解説します。

目次

  1. こんな症状に心当たりはありませんか?
  2. 運動より社会生活を送るほうがリスクを軽減
  3. 早期にフレイル対策で健康寿命を延ばす

皆さんは、最近ペットボトルの蓋があけにくいなぁ、とか横断歩道を青の間にわたり切るのがちょっときつくなったな、など感じたことはありませんか。

私は、在宅医療専門医として千葉県八千代市にある向日葵クリニックで、訪問診療に携わっています。コロナ禍もあり、「電車に乗って、どこかで誰かと会う」という、今まではなんてことなかった日常が、すっかり変化し、私自身も身体活動量がだいぶ減っていることを実感している今日この頃です。

こんな症状に心当たりはありませんか?

①体重が減った(意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少)
②疲れやすくなった:何をするのも面倒だと週に3、4日以上感じる
③歩行速度の落ちている
④握力が弱くなっている
⑤身体活動量が減っている

3つ以上該当すると「フレイル」、1~2つ該当すると「プレフレイル」(フレイルの前段階)と判断されます。フレイルとは「加齢により心身が老い衰えた状態」のことをいいます。英語のFrailty(虚弱・老衰・脆弱)が語源で、健康で自立した生活が送れる状態と誰かのサポートなくしては生活が難しい介護状態の中間、つまり要介護状態の一歩手前のことをさします。

「歳だから、仕方がない」とあきらめがちに思われる方も多いかもしれません。しかしフレイルは、できるだけ早く気づき、対策を行うことで、健常に近い状態にまで戻る可能性があります。

その半面、ちょっとしたフレイルを放っておくと、深刻な状態になることもあります。数日で良くなるはずの風邪がこじれて肺炎になってしまったり、転びやすくなって骨折をしてしまったり、その結果、入院になる可能性もでてきます。入院すると、認知機能が落ち、そのまま寝たきりになってしまう可能性まででてきてます。

ですから、できる限り、元気にすごすためには、あれ? 最近ちょっと老化が進んだかな? と感じたときがチャンスです。すぐにフレイル対策をはじめましょう!

 
(【図1】フレイル・サイクル
出典: https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/genin.html (1)の文献より改変)

①加齢に伴う変化や慢性的な病気によって筋肉量・筋力の減少(サルコペニア)
②筋肉量や筋力が低下すると、基礎代謝量も低下
③基礎代謝が低下すると、1日のエネルギー消費量が減り、食欲が低下
④食欲が低下すると、食事の全体の摂取量が減少して、低栄養に。
⑤低栄養になるとますます筋肉量・筋力が減少

という悪循環で、フレイルが進行していきます。

フレイル対策には、まず、筋肉や骨をつくるためのエネルギーと栄養をしっかり摂ること、筋肉の合成や骨密度の維持のためにレジスタンス運動をすることが大切です。生活習慣病などの治療目的の食事制限は必要なことがありますが、何となくのダイエットにはフレイルを進行させるリスクがあります。

また、サルコペニアは、筋力低下や疲れやすくなることで、活力の低下を引き起こし、身体機能の低下につながります。認知機能やメンタル面の低下も加わると、さらに活動量が落ち、身体的にも社会的にも活動が落ち、日常生活に支障をきたすようになってしまいます。日常生活に介護が必要な状態となるとますますエネルギー消費量は低下し、食事量が減って低栄養となる悪循環を繰り返すことになります。

運動より社会生活を送るほうがリスクを軽減

元気な高齢者約5万人を対象とした大規模な調査で、普段の活動量を軸として8つの群に分け、フレイルのリスクの高さを比較したものがあります。結果として、身体活動(運動習慣)だけの群よりも文化活動と地域活動を定期的にやっている群のほうがリスクは約3分の1に減っていることがわかりました(2) 。

 
(【図2】フレイル予防には「人とのつながり」が重要
-様々な活動の複数実施とフレイルへのリスク―
(出典)https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/frailty-yobo-taisaku/R2-1.html)

これは運動習慣を持つことだけがフレイル予防になるのではなく、「地域に出て、常に人とのつながり、生きがい・やりがい・目標などを持ちながら継続的に日々取り組んでいる」というだけでも十分フレイル予防につながることを意味しています。運動以外の身体活動量の高さでも消費されるエネルギーも多いため、結果的にフレイル予防につながっていると考えられています。

2010年に発表されたアメリカ・ブリガムヤング大学のHolt-Lunstad教授らの研究による(3)と、社会的なつながりの有無は、喫煙や飲酒、高血圧等よりも、死亡率に影響するというデータがあります。社会的なつながりはとても大切ですね。

早期にフレイル対策で健康寿命を延ばす

日本でもフレイル高齢者が健常に回復する割合とその決定因子について研究結果が出され、フレイルと判定された高齢者の15.2%が5年後に健常に回復していたことが報告されています(4)。回復に寄与していたのは、農作業、知的活動、社会参加をしていることでした。「フレイル! 運動!」と考えると、トレーニングを黙々と行うイメージを持ちがちですが、身体活動だけでなく、認知・精神・心理的、ひいては社会活動への参加や社会的交流などの重要性も示唆されています。

「加齢は平等、老化は不平等」

以前に私が受けた講義の中で学んだ、なるほど! と深く感動した言葉です。誰しも平等に歳を重ねていきますが、老化は本当に人それぞれです。たかが老化、されど老化。やれることは、まだまだあります。ぜひ、早期からフレイル対策を行って、健康寿命を延ばしていきましょう。

参考文献
(1)Xue QL, Bandeen-Roche K, Varadhan R, et al. Initial manifestations of frailty criteria and the development of frailty phenotype in the Women’s Health and Aging Study II. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2008;63:984-90.
(2)吉澤裕世,田中友規,飯島勝矢:地域在住高齢者における身体・文化・地域活動の重複実施とフレイルとの関係. 日本公衆衛生雑誌 2019; 66(6): 306-316.
(3) Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB. Social relationships and mortality risk: A meta-analytic review. PLoS Medicine 2010; 7(7): e1000316.
(4)Abe T, Nofuji Y, Seino S, et al: Healthy lifestyle behaviors and transitions in frailty status among independent community-dwelling older adults: The Yabu cohort study. Maturitas 2020; 136: 54-59.

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こちらの記事の監修医師

向日葵クリニック

中村 明澄

在宅医療専門医 家庭医療専門医 緩和医療認定医
2000年東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」、緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。緩和ケア・終末期医療に力をいれ、年間100人以上の患者の方の看取りに携わっている。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。著書に『「在宅死」という選択 納得できる最期のために』(大和書房)がある。

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