最終更新日:2021年10月29日
【医師が警告】「疲労」「倦怠感」が取れない時に疑うべき病気

こちらの記事の監修医師
田川市立病院 医師
井林 雄太

コロナ禍で外に出られないこともあり、うつ病が悪化したり、睡眠不足から体調を崩したりする方も増えています。しっかり休養を取り、生活習慣を見直しても改善しない場合は、病気について考える必要があります。田川市立病院の井林雄太先生が「疲労」、「倦怠感」から類推することができる病気を紹介します。
そもそも疲労・倦怠感とは?
倦怠感とは要するに疲労に似た「疲労感」に近いものです。身体や精神的に「だるい」「疲れた」「疲れやすい」と感じられる状態ともいえます。日本語では疲労感というより倦怠感ということが多いですね。英語では疲労は fatigue 、倦怠感は s ense of fatigue もしくは feeling of a fatigue となっています。
疲労はご存じの通り、肉体的または精神的に長時間活動したあとに、誰しもおきえる症状です。肉体的疲労とは、運動後に筋肉が最適な肉体的パフォーマンスを維持できない一過性のもの、精神的疲労とは、長時間の認知活動によって生じる最大認知パフォーマンスの一過性の低下のことです。精神的疲労は、傾眠、無気力、または注意力低下として現れることもあります。
回復の程度や速さは年齢によって異なりますが、休息によって完全に解消される場合は正常な現象です。しかし、長期にわたり、重度かつ進行性であり、誘発せずに起こる場合は、病気の症状である可能性があります。
急性疲労と慢性疲労?
通常、疲労は肉体的、もしくは精神的な疲労含めて、日常的な労働や運動、人間関係を含めた精神的なストレス、過剰なレクリエーションや睡眠不足の結果として出やすいのはイメージがつきやすいと思います。
疲労を短期間でおきる急性と長期間続く慢性に分けてみると、病院で一度精査も含め考えるべきは慢性疲労です。
急性疲労の原因には、一時的なストレスによる精神面の悪化、脱水、何らかの中毒、低血糖、またはミネラルやビタミンの欠乏などの原因があるとされています。一般的に風邪症状に伴う疲労などは急性疲労に入りますが、定義がはっきりあるわけではありません。長くとも数週間から1カ月以内に収まります。
慢性疲労は、自己申告の疲労が少なくとも6カ月以上連続して続くものと定義されていることが多いです。慢性疲労には、病気によって持続性のものと再発性のものがあり、多くの病気の随伴症状としてみられます。
慢性疲労が続く場合に疑うべき病気
慢性疲労を特徴とする疾患の主なカテゴリーを列挙するとかなりのものがあります。充分な休養を取っても疲労が長く続いておかしいと思ったとき、病院に受診する前にどのような疾患があるのでしょうか。
■自己免疫疾患として SLE症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、シェーグレン症候群、脊椎関節炎、線維筋痛症など、総合病院での総合診療科や膠原病科でみるような疾患。
■血液疾患として 貧血や鉄の過剰によって生じるヘモクロマトーシスなどの疾患。
■癌として、各臓器の癌や白血病またはリンパ腫など。
癌に伴う倦怠感というのは臨床医にとってもトピックの1つであり、非常に多くの方に現れます。癌そのものだけでなく、癌治療(特に化学療法および放射線療法)の副作用によるものも多いです。
■消化器系疾患として、栄養不足による摂食障害、 吸収障害として過敏性腸症候群、グルテン吸収不良などの先天的な代謝異常(セリアック病)などの疾患。
■精神疾患としてうつ病および抑うつ気分を特徴とするその他の精神障害。
■アルコールや薬物使用に伴う物質使用障害(substance use disorder:SUD)によるもの。
■睡眠不足または睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)
■内分泌・代謝疾患として、糖尿病、甲状腺機能低下症、副腎不全(副腎疲労は相対的副腎不全としてこちらに分類されると思います)
■生命維持に不可欠な臓器疾患として、心不全、 腎臓疾患(急性腎不全、慢性腎不全、尿毒症など)、肝不全または肝臓疾患(ウイルス性肝炎など)
■感染症として、HIV、伝染性単核球症や結核などの疾患。
■上記のような疾患群を除外した上で診断される慢性疲労症候群(慢性疲労症候群の基準を満たさない原因不明の慢性疲労は特発性慢性疲労といわれる)
いわゆる疲労一つとっても、これだけの疾患が想起されますが、実際の診療では一般的な血液検査や診察、問診で多くのことがわかるため、疲労が続く場合はカウンセリング(問診)だけでも受けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
疲労や倦怠感というのは、痛みもそうですが他人にはわかりません。「ただのストレスや睡眠不足でしょ、きっと」などと放置したり、我慢している人も多いかもしれません。
過剰に検査をする必要はないですが、慢性的な疲労状態に陥ると免疫力の低下や心身の不調から、隠れている病気が悪化するケースもあるため、充分な休養をとっても疲れが改善しない場合は一度病院を受診してみましょう。
原因がある程度はっきりすれば対処方法もあるため、疲労の連鎖を早いうちに断ち切ることができます。
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こちらの記事の監修医師
田川市立病院 医師
井林 雄太
内科認定医 糖尿病内科専門医 内分泌内科専門医。
国立大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。
最新の医療情報にも視野を広げ、デジタルヘルスケア領域や最新の治療アプリなどに関して、執筆・監修も行っている。日経メディカル、m3連載中。ミトコンドリアの研究など基礎研究分野では論文執筆、国内国際学会発表歴あり、厚生労働省委託事業{EBM普及推進事業Minds(マインズ)}の希少疾患ガイドライン作成チームリーダーなど。
2012年大分大学医学部医学科卒業後、地元福岡の国立病院機構九州医療センターにて内科研修を積む。2017年九州大学大学病院別府病院免疫・代謝学講座助教。現在は田川市立病院勤務。日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医、日本内科認定医。日本内科学会、日本内分泌学会、日本糖尿病内科学会などの各会員。
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