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最終更新日:2022年6月2日

世界にはびこる「ワクチン疲れ」と「マスク疲れ」…新型コロナ終息のカギは

こちらの記事の監修医師
ダナ・ファーバー癌研究所
郭 悠 先生

(画像=※画像はイメージです/PIXTA)

5月23日、日本政府は新型コロナ対策の「基本的対処方針」を改訂。マスク着用の考え方が整理して示されました。ただし、世界でみるとまだまだ日本人のマスク着用率は圧倒的に高い状況です。本記事では、米国のダナ・ファーバー癌研究所に勤務する郭悠氏が、マスク疲れ、ワクチン疲れを踏まえ、今後コロナウィルスのさらなる感染拡大を予防するためにできることについて解説します。

「マスク着用」は米国でも推奨されている

ハーバード大学のThe Aviation Public Health Initiative (APHI)は空気の入れ替えと飛行機のHEPAフィルターで客室の99%のウィルスを含む粒子は除去されるとするものの、研究者たちはマスク着用と併用することで海外への感染伝播を防げることを認めており、マスク着用を推奨しています。

WHOの過去の研究では機内での感染は同じ列からだけでなく2列前の席からも起こることを示しており、近年ではスーパーコンピュータ「富岳」を使ったシミュレーションなどでも機内での伝播状況は詳細に予測できるようになっています。

しかし大事なことはこれまでにも専門家たちが繰り返し指摘しているように、飛行機による移動は機内だけでなく、空港内や移動などさまざまな場面での感染リスクを伴っており予測できないことが多いということです。一方の人だけがマスクを着用するone-way mask protectionでも十分感染予防効果があることが知られており、感染リスクの高い人ではN95マスクの着用などが推奨されています。

5月16日より、ヨーロッパでは機内でのマスク着用が必要無くなります。The European Union Aviation Safety Agency(EASA)とEuropean Centre for Disease Prevention and Control (ECDC)はヨーロッパ諸国での規制緩和を受けた判断としているものの、マスクはいま新型コロナウイルス感染拡大の重要なツールであると強調しています。

こうした欧米諸国の動きは後述する“Vaccine fatigue(ワクチン疲れ)”に対し「マスク疲れ」といえますが、この「マスク疲れ」が引き起こすものはなんでしょうか?

「マスク疲れ」が孕む危険

最近のHIVの研究によると世界中の国際線利用者の0.3%に新規HIV感染が判明したという報告があります。500席の飛行機で往復したとすると3人の陽性者に出会う計算になります。HIVは飛沫・空気感染はしませんが、これが新型コロナウイルスだったらどうでしょうか?

2012年のMERSパンデミックの際にはイギリス、フランス、チュニジア、韓国で感染輸入後に国内感染を起こしたsecondary outbreakを招き、特に韓国では死者36人を含む累計186人の人が感染しました。

MERSはSARS、新型コロナウイルスに比べ死亡率が高く感染が拡がりにくかった為、現在は中東での風土病としての報告に留まっていますが、SARSや新型コロナウイルスの場合はMERSに比べ死亡率が低い反面、感染拡大が抑えにくいと考えられます。

「一度感染したら再感染しない」はデマ

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の抗体検査データによると、2022年2月までに約60%の成人と約75%の小児が新型コロナウイルスの既感染を示していたと発表しました。2021年12月初旬では34%の抗体保有率だったことから1/4程度の人がオミクロン株に感染したことになります。

しかし、CDCの調査では5月8日までにアメリカ国内の新規感染者の4.3%に当たる232,866件の再感染がみられています。そのうち202,310件は2021年12月13日までに起きており、このころはNew York 州では20%の新規感染がオミクロン株によるものでした。これまでの86.9% の再感染がオミクロン株であることやワクチン効果が3-6ヵ月で減弱することからも、今後新たな変異株が出現した際には、既感染者も再感染するリスクがあります。

「ワクチン疲れ」による接種率低下

CDCの発表しているところによると、アメリカ人の77.6%に当たる2億5,800万人が少なくとも1回ワクチンを接種しており、66.2%が2回接種(fully vaccinated)しています。またCNNによると2回接種した人の45.8%はboosterワクチンを1回接種しており、これは全体の僅か30%に当たります。

この回数を追うごとに接種状況が低下する状況は“Vaccine fatigue(ワクチン疲れ)”と呼ばれています。3月にCDCはPfizer/BioNTechとModernaワクチンの50歳以上の人への4ヵ月間隔を空けた2回目のブースターワクチンへの使用を承認しましたが、専門家のあいだでは接種率の更なる低下が危惧されています。

世界の「ワクチン格差」がもたらすもの

WHOは6月までにすべての国でのワクチン接種率の目標を70%に設定しています。しかし、アフリカ諸国でのワクチン2回接種率は2022年4月末で14.3%に留まっており検査場、接種会場の設置が難しいことが指摘されています。RNAワクチンは冷凍保存が必要であり、解凍後に接種を速やかに行う必要がある為、管理・接種に関わるスタッフの教育も重要になります。

HIVの場合、未だワクチンも完治できる治療薬もなく世界中に3,700万人以上の患者がおり、特にアフリカの患者数が2/3以上を占めています。こうした各国間の医療資源の大きな格差は不完全な治療を招き、個人の生命に関わるだけでなく新たな変異株を出現させる温床にもなります。

従ってこのようなアフリカの医療問題は決して対岸の火事ではなく、今後新型コロナウイルスパンデミック終息のカギになるといえます。また、国内でこうした格差を生み出さない努力も必要となります。

今回は欧米諸国の「マスク疲れ」、「ワクチン疲れ」についてお話しましたが、世界にはワクチン供給が十分でない国も多い状況です。現在流行しているオミクロン株の系統はアメリカや日本ではBA2系統、特にBA.2.12.1ですが、南アフリカではより感染力が高いと予想されるBA4やBA5系統が流行しており、医療格差による影響も否定できません。

日本でもこれらの変異株の流行が危惧されていますが、現在のグローバル社会で「もの」や「人」の移動を無くすことはでません。

ウィルスにワクチン未接種の集団とワクチン接種済みの集団の行き来でさらに強力な変異を獲得させないため、感染拡大予防が重要となります。

そして日本はウイルスの輸入だけでなく輸出させないことにも気を配る必要があります。ワクチン接種やマスク使用がかなり容易な国で、さらに個人の取り組みが地球規模の効果をもたらすと考えると、マスクやワクチンへのハードルは高くないのではないでしょうか。

こちらの記事の監修医師

ダナ・ファーバー癌研究所

郭 悠 先生

近畿大学医学部卒業、熊本大学大学院 エイズ制圧のためのトランスレーショナル研究者育成コース卒業。初期研修終了後、HIV・膠原病診療に携わり、HIVの抗体研究で医学博士を取得。その後、ワクチン開発を目指したHIV・新型コロナウィルスの中和抗体研究をしながら、現在はアメリカ国立癌研究所指定癌センターのひとつである、ダナ・ファーバー癌研究所に勤務。また、一般内科医として診療にあたり臨床での現状やニーズを意識しながら、臨床応用を目標とした免疫学、ウィルス学研究を心掛けている。
「難しいことを難しく言うのは簡単だが、難しいことを簡単に言うのは難しい。」がモットー。