最終更新日:2022年6月4日
「虐待」や「差別」が増加…新型コロナ発生から3年、高まる「メンタルケア」の重要性

こちらの記事の監修医師
ダナ・ファーバー癌研究所
郭 悠

アメリカ、ダナ・ファーバー癌研究所の郭悠氏は、自身の体調はもちろんのこと、子供たちのメンタルケアにも気を配ることが大事だといいます。新型コロナウイルスの長期化により生じるさまざまな弊害について、どのように対処すべきか、みていきましょう。
子供達がワクチンを接種する必要性
まず5月15日時点でアメリカの1週間の新規感染者数は30.7%、入院患者数も17.5%上昇しており、オミクロン株感染の流行は完全には沈静化していない状況です。
こうした状況下、アメリカでは2022年6月より、生後6ヵ月から5歳までの小児もワクチン接種が可能となります。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の5~11歳の児童を対象とした調査によると、オミクロン株感染はデルタ株感染よりも入院率が2.3倍高かったことが分かっています。一方で、ワクチン接種児は未接種児よりも2.1倍入院率が低いことも報告されています。
ワクチン接種により軽減できる可能性のある合併症
半年経っても続く…新型コロナウイルスの後遺症
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の行った調査では、新型コロナウイルス治療後の30%の人がPost Acute Sequelae of COVID-19 (PASC)またはLong COVIDといわれる罹患後症状に悩まされていることが分かっています。
Long COVIDでは以下のような症状が多くみられます。
- 入院治療患者:倦怠感(31%)、息切れ(15%)
- 外来治療患者:嗅覚喪失(16%)
特に入院治療が必要だった場合や糖尿病、肥満の人などの関連がみられた一方で、新型コロナウイルスの重症・死亡リスク因子である人種、年齢、所得による差はみられなかったことが特徴的です。この調査では感染または入院後60日または90日後に行っていますが、他の調査でも3~6ヵ月後でも1/3~1/2にLong COVIDがみられるとしています。
日本でも成人で報告されているLong COVIDですが、イギリスのUniversity College Londonが11歳から17歳の生徒を調査したところ、11~14%が感染から15週以上経過したあとでも息切れ、倦怠感、頭痛などに悩まされていることが分かりました。また、Israeli Health Ministryの報告では1.8~4.6%の小児が6ヵ月後にもLong COVID症状を訴えており、オミクロン株の小児への拡大感染の影響が考えられます。
川崎病のような炎症症候群…MIS-C/MIS-A
NYU Langone Healthの Dr. Jennifer Lighter によると、小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(Multisystem inflammatory syndrome in children: MIS-C)は5~11歳の小児によくみられ、中等症の新型コロナウイルス罹患後3~4週間で発症する傾向にあるようです。症状は川崎病に似ており、まず発熱が数日続いたあと、以下のような症状を呈します。
- 下痢
- 発疹
- 口唇腫脹
- 手足の腫脹
また、Washington DCにあるChildren’s National Hospital感染症部門部長 Dr. Roberta DeBiasiによると、オミクロン関連のMIS-Cは30症例みられており、第1波の際の100症例、デルタ株流行期の60症例と比べ1/3から1/2と頻度は低くなっているようです。年長児ほどMIS-Cに罹患しにくい傾向にあるようで、多くの研究が示しているようにワクチン接種歴と関連し、ワクチンによる発症予防効果があると考えられるとのことです。
稀に大人にも同様の症状がでることがあり、MIS-Cの診断基準をもとにMIS in Adult (MIS-A)と診断されます。MIS-Aは心臓、消化管、皮膚、脳に炎症を起こし、以下のような症状を呈し、重症化するため緊急の治療が必要になります。
- 腹痛
- 眼の点状出血
- 下痢
- めまい
- 発疹
- 嘔吐
多くの子供が「持続的な悲壮感や希望喪失」を抱く現実
Liverpool大学の行った調査では17の学校に通う1,000人以上の13~14歳の生徒のうち、65%が友達や家族が新型コロナウイルスに罹ることに対する不安、56%が友達や家族のメンタルヘルスに対する不安、37%は学校に通えない寂しさ、36%は友達関係への影響へ不安を感じていることが分かっています。
CDCの調査では、新型コロナパンデミックにより持続的な悲壮感や希望喪失を抱く生徒の割合は36.7%から44.2%に上昇しました。特にパンデミック前の段階で女子生徒では46.6%、セクシュアルマイノリティの生徒では66.3%と高い傾向にあったので注意が必要です。さらにパンデミック中に生徒の19.9%が真剣に自殺を考えたことがあり、9%は実際に自殺を試みているという結果は、割合の上昇以上に生徒たちの抱える不安の重大さを物語っています。
大人からの「虐待」や、「差別」が増加
なかには家庭での不安を感じている生徒もおり、29%の生徒の親や同居の大人が失職しており、55%がこうした大人から精神的虐待を受け、11%が身体的虐待を受けた経験を持っています(前述のCDC調査)。
また、新型コロナパンデミックによりRacismを感じたと答える生徒が36%から64%(アジア系)、55%(アフリカ系)、54%(他民族)に増えています。CDCはRacismを受け入れるような生徒は集中力、記憶力、決断力などのメンタルヘルスに問題があったり、パンデミックで他者との交流の欠如がみられたと報告しています。
反対に学校で他の生徒や大人との交流があった場合、悲壮感や希望喪失(35% vs 53%)、自殺願望(14% vs 26%)、自殺企図(6% vs 12%)が2/3から1/2に低下したことが分かっています。
以下のようなうつ症状に早めに気づき、周囲との関わりを保つことが大切です。
- 常に抱く悲壮感、不安
- 趣味などをしなくなる
- イライラしやすく、落ち着きがなくなる
- 寝つきが悪くなったり、途中で起きてしまう
- 早く起きてしまったり、朝起きられなくなる
- 食べ過ぎたり、食欲がなくなったりする
- 体の痛みや頭痛、腹部症状を訴える
- 集中力、記憶力、決断力が低下する
- 疲れやすくなる
- 罪悪感、無価値、無力感に襲われる
- 自殺や自傷を考える
以上、Long COVID、MIS、メンタルヘルスについてご紹介しましたが、大人と子供で症状や原因に共通なものも違っているものもあります。
これらの症状を知っておくことで、もしものときの備えになります。特に多感な時期を迎えている子供たちのメンタルヘルスは、この新型コロナパンデミックにより学校に行かれなくなるなど少なからず影響を受けています。我々大人は自分たちの健康に注意しつつ、子供たちの変化にも気を配ることが大事ではないでしょうか。
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こちらの記事の監修医師
ダナ・ファーバー癌研究所
郭 悠
近畿大学医学部卒業、熊本大学大学院 エイズ制圧のためのトランスレーショナル研究者育成コース卒業。初期研修終了後、HIV・膠原病診療に携わり、HIVの抗体研究で医学博士を取得。その後、ワクチン開発を目指したHIV・新型コロナウィルスの中和抗体研究をしながら、現在はアメリカ国立癌研究所指定癌センターのひとつである、ダナ・ファーバー癌研究所に勤務。また、一般内科医として診療にあたり臨床での現状やニーズを意識しながら、臨床応用を目標とした免疫学、ウィルス学研究を心掛けている。
「難しいことを難しく言うのは簡単だが、難しいことを簡単に言うのは難しい。」がモットー。
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