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最終更新日:2022年6月22日

感染拡大が懸念…欧米で猛威を振るう「サル痘」の症状

こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木 幹啓 先生

サル痘は欧州などの20ヵ国で感染が確認され、感染拡大が懸念されています。世界保健機関(WHO)は2022年5月、サル痘の感染拡大に対して迅速な対応が重要と発表しました。現在、日本人のサル痘への感染報告はありませんが、厚生労働者は出入国者に対して情報提供や注意喚起を行っています。

新型コロナウイルスの水際対策が緩和されるなか、感染拡大が懸念されます。本記事では「サル痘」の症状や英国のサル痘患者の症例レポート、臨床現場での注意点などをお話しします。

サル痘とは

サル痘はサル痘ウイルス(monkeypox)に感染して発症するウイルス感染症です。サル痘ウイルスはポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に分類され、天然痘ウイルスに類似しています。サル同士で感染するウイルスですが、げっ歯類や哺乳動物にも感染することがわかっています。1970年には中央アフリカでヒトへの感染が初報告されました。

サル痘ウイルスに感染すると皮疹、発熱、リンパ節腫脹などの症状がみられ、合併症として肺炎、脳炎、角膜炎を引き起こす可能性があります。致死率は天然痘の30%に比べ低率で、コンゴ系の株では10%、西アフリカ系の株では3%未満とされますが、この数値は発展途上国での統計で、今後感染拡大が懸念される先進国での数値とは異なる可能性があります。死亡例は小児やHIV感染者など抵抗力の弱い人の割合が高くなっています。ヒトからヒトへ感染である院内感染、家庭内感染例は8%と報告されています。

サル痘ウイルスに対する有効性が確認された治療薬はなく、天然痘のバイオテロ対策として承認された抗ウイルス薬テコビリマット(tecovirimat)およびブリンシドフォビル(brincidofovir)による治療が行われています。この2剤は動物実験により有効性が確認されています。

テコビリマットはエンベロープタンパク質の機能を抑制し、オルソポックスウイルス属に対し効果のある薬剤です。ブリンシドフォビルはシドフォビル(cidofovir)のプロドラッグで、体内でシドフォビルに変化します。シドフォビルはウイルス作成の阻害作用をもつヌクレオシドアナログで、サイトメガロウイルス感染症の患者さんなどに投与される抗ウイルス薬です。

英国におけるサル痘患者の症例レポート

感染症の臨床像を研究する手段のひとつに記述疫学があります。記述疫学とは人間集団での疾病の疫学特性を観察・記述した研究で、疾病の発症リスクを調べるとき仮説を立てる際に有効です。最近発表された英国でのサル痘の症例レポート(※1)を以下に紹介します。

※1:Adler H, Gould S, Hine P, et al. Clinical features and management of human monkeypox: a retrospective observational study in the UK.(サル痘の臨床像と臨床管理:英国における後ろ向き観察研究) The Lancet Infectious Dis 2022 May 24;S1473-3099(22)00228-6.

症例レポートの概要

英国では2018年から2021年にかけてサル痘の患者7名が報告されました。4名はナイジェリアで感染し、3名は英国国内での感染(院内感染および家庭内感染)でした。感染者の性別は男性4名、女性3名で、年齢は乳児1名を除き全例が30~40歳代でした。本レポートでは患者にみられた症状や合併症、抗ウイルス薬による治療とその後の経過、サル痘ウイルスの体内動態について報告しています。

●2018年~2019年の4症例

ナイジェリア渡航中に感染した3名のうち、2名は英国に帰国した直後にサル痘と診断されました(患者①、②)。その後患者②と防護服(PPE)なしで接触した医療従事者1名が感染しました(患者③)。患者③は患者②との接触後に天然痘ワクチンを接種しましたが、接触6日後にサル痘を発症しました。2019年にはナイジェリア渡航中に1名が感染しました(患者④)。

患者①、②、③は抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの経口投与による治療が行われました。皮疹発生から約7日後に治療開始となり、200mgの治療薬を3回/日投与されました。全例で肝トランスアミナーゼが上昇(ALT 最大100-500U/L程度)し、肝機能障害が認められたため、治療途中で投薬中止となりました。

患者②には踵、大腿に膿瘍がみられたことから超音波ガイド下でのドレナージを行いました。膿の検査では細菌16SリボソームRNA遺伝子は陰性、サル痘ウイルスDNAは陽性、CT低値となりました。患者③は結膜炎を発症しましたが、結膜の拭い液によるPCR検査の結果は陰性でした。抗菌薬クロラムフェニコールの点眼により速やかに回復したため細菌性の合併症と診断されました。

患者①、④は鼠径部や仙骨に膿瘍がみられ、PCR検査では数週間陽性が続いたため長期入院を要しました。患者①には長期入院や合併症、アルコール離脱等が原因とみられる気分障害が起こりました。患者③は上気道の粘膜採取によるPCR検査で陽性が続き、入院39日で退院となりました。退院後は自己隔離を行い、入院45、48日目に行ったPCR検査で陰性となりました。患者④には軟性下疳や鼠径リンパ肉芽腫がみられたためアジスロマイシンによる治療が行われました。

患者④は退院後6週に行った性交渉後に鼠径リンパ節腫脹が悪化しました。皮膚病変部や上気道からの検体採取によるPCR検査は陽性でしたが、患者の体調は良好でした。皮膚病変部が痂皮化して上気道のPCR検査が陰性となるまで再入院となりました。患者④は男性ですが性交時のパートナーに関する記録はなく、精液のPCR検査も行われませんでした。

●2021年の3症例

2021年には家庭内感染により3名がサル痘を発症しました。ナイジェリアから英国に帰国した両親と10歳未満の子どもたち4名の家族のうち、3名が感染しました。英国帰国後のコロナ感染対策の自主隔離期間中、父親(患者⑤)に進行型の水疱性病変がみられました。当初は水痘と考えられましたが、隔離期間終了後に緊急外来を受診しHCIDセンターへと搬送され、入院時のPCR検査にてサル痘への感染が判明しました。末子にも発熱症状と水疱がみられたため、家族全員が入院となりました。無症状の子は親から隔離され入院していましたが入院21日後に血液および上気道のPCR検査で陰性となり、父親と無症状の子どもたちは退院となりました。

子(娘)(患者⑥)と母親は希望により入院継続となりました。娘にはテコビリマットによる治療が検討されましたが、小児への使用が未認可のため投与されませんでした。その後皮膚病変部は痂皮化しましたが、上咽頭拭い液のPCR検査では20日間陽性が続きました。

娘(患者⑥)の発症から14日後に母親(患者⑦)が頭痛、咽頭炎などの体調不調を訴えサル痘を発症しました。発症時、胸部には水疱がみられました。血液および上咽頭拭い液のPCR検査は陰性でしたが、4日後の再検査では陽性を示しました。テコビリマットによる治療開始から48時間後には血液および上気道のPCR検査は陰性となり、72時間後のPCR検査でも陰性でした。また、投与24時間後には新規皮膚病変は現れず血液検査も正常となり、副作用もみられませんでした。治療開始から7日目に退院となり、その後1週間自宅療養しました。

子ども4名のうち2名はナイジェリア滞在時に水疱がみられました。血清学的検査によるオルソポックスウイルスIgGは全員陰性でしたが、水疱性病変がみられた子ども2名の水痘帯状疱疹ウイルスIgGは陽性でした。

サル痘治療における臨床現場での注意点とは

皮膚病変検体のサル痘ウイルスのPCR検査および上咽頭拭い液採取によるPCR検査のいずれも全員が陽性となりました。血液PCR検査の陽性は6名、尿検体PCR検査の陽性は4名でした。

サル痘患者との接触後にワクチン接種した患者②を除き、全例で天然痘ワクチンは未接種でした。発熱症状は3名、全身倦怠感は1名に見られました。皮疹は全例で見られ、丘疹、水疱、膿痂疹(陥凹があるものを含む)、潰瘍、痂皮など多彩な皮膚病変が顔面、体幹、手掌、下腿などに認められました。リンパ節腫脹が5例で見られました。

本症例では3名にブリンシドフォビル200mg、1名にテコビリマット600mgが1日量として投与されました。前述のとおり両薬剤は臨床試験が行われておらず、用量は確立されていません。投与後は両薬剤でウイルス量の減少や症状の改善が認められましたが、ブリンシドフォビルを投与した全例では副作用として肝機能障害がみられましたが、テコビリマットでは副作用がみられませんでした。

英国ではサル痘は重大な影響を及ぼす感染症(HCID)に分類され、患者は指定の医療機関(HCIDセンター)にて治療を受けることになっています。治療当時のHCIDセンターの退院基準では血液、尿、皮膚病変部の検体採取を48~72時間ごとに行い、各部位の検体採取によるPCR検査で2回陰性となり、皮膚病変部が全て痂皮化することが条件でした。入院期間は10~39日間で、全例で回復し退院となりました。退院後は外来でのフォローアップを予定していましたが、全快となったため長期フォローは行われませんでした。

本症例レポートからは、サル痘発症時の症状、患者への対応や治療、隔離にあたっての注意点が読み取れます。ウイルス感染症による合併症とサル痘との相違点、患者の隔離解除の条件、治療薬の選択とその後の経過が詳しく記述され、臨床現場での対応の際に参考となるでしょう。

また、レポートではサル痘患者は約3週間 PCR検査が陽性となることがわかりました。サル痘ウイルスは体内に長期間存在すると考えられ、感染者に接する際には十分な感染対策が必要と考えられます。

こちらの記事の監修医師

すずきこどもクリニック

鈴木 幹啓 先生

株式会社オンラインドクター.com代表取締役CEO
1975年三重県伊勢市生まれ
1995年自治医科大学入学(県からの奨学金制度)
2001年自治医科大学卒業

日本小児科学会認定小児科専門医
国家資格ケアマネジャー

三重県立総合医療センター、国立病院機構三重中央医療センター、国立病院機構三重病院、伊勢赤十字病院、紀南病院
平成22年5月、新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院
【製薬会社社外講師・CM出演等】
グラクソスミスクライン社、JCRファーマ社、杏林製薬、明治製菓ファーマ、鳥居薬品

【メディア出演・TV監修】
日本テレビ、読売テレビ、東京MX、テレビ朝日(医療監修)「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」

【著書】
日本一忙しい小児科医が教える病気にならない子育て術(双葉社)
開業医を救うオンライン診療(幻冬舎)

2020 年 10 月株式会社オンラインドクター.com を設立