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最終更新日:2022年8月25日

ビタミンDサプリメントは骨折予防にならない!?アメリカからの衝撃報告

こちらの記事の監修医師
星槎グループ医療・教育未来創生研究所
大西 睦子

(写真=PIXTA)

アメリカでは、栄養補給のために様々なサプリメントが活用されています。ビタミンDサプリメントも、骨の健康維持に役立つとされ、積極的に摂取されているものの一つです。ところが最近、ビタミンDサプリメントの効果について驚きの知見が示されました。米国在住の大西睦子医師が解説します。

アメリカでは骨粗鬆症が大問題化

2022年7月28日、ハーバード大学医学部メリル・レボフ教授らは、医学誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』に、「骨折は、特に高齢者において、公衆衛生上の大きな問題。米国では、骨粗鬆(こつそしょう)症、低骨量、またはその両方を持つ人が5,360万人いると推定されています。年間200万件の骨粗鬆症性骨折が発生しており、2040年には年間300万件を超え、その関連費用は年間950億ドル以上になると予測されています」と訴えています(※1)

ちなみに骨粗鬆症や骨折は、米国だけの問題ではありません。骨粗鬆症学会によると、日本では超高齢化を背景に骨粗鬆症患者が1,300万人を超え、今なお増加の一途をたどっています(※2)。さらに2019年の国民生活基礎調査では「要介護度別にみた介護が必要となった主な原因」として「骨折・転倒」が挙がっており、要支援者では14.2%、要介護者では12.0%となっています(※3)

 

※1 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2202106#:~:text=Vitamin%20D3%20supplementation%20did,low%20bone%20mass%2C%20or%20osteoporosis.

※2 http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf

※3 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/14.pdf

骨折予防のため、ビタミンDが積極的に摂取されてきたが…

さて、食物から摂取したり、日光を浴びて体内で作り出したりしたビタミンDは、骨の健康に不可欠な脂溶性ビタミンです。米国ではビタミンDサプリメントが骨の健康に役立つと考えられ、一般の人々にも幅広く推奨されています。

レボフ教授らの論文によると、2011年、米国医学研究所(IOM)は、人口の97.5%の骨の健康ニーズを満たすために、1日あたり600〜800 IU(国際単位)のビタミンDの推奨食事許容量を定めました。他の学会などでは、50歳以上の成人が1日当たり少なくとも800〜2,000 IUのビタミンDを摂取することを推奨しています。こうして1999年から2012年の間に、米成人のビタミンDサプリメントの使用率は5.1%〜19%に増加しました。また、CDC(米疾病対策センター)によると、60歳以上の米国人の約37%がビタミンDのサプリメントを摂取しています(※4)

ところが、これらのビタミンDサプリメントが骨折を予防するかどうかについてのデータは一貫しておらず、長い間不明でした。

そんな中、レボフ教授らはNEJMの報告で、「健康な高齢者が、大量にビタミンDのサプリメントを摂取する必要があるという考えを否定」したのです。この論文は大きな反響を呼び、ハーバード大学のニュースは、「この知見は、医学研究者を驚かせている」と言います(※5)

東京慈恵医科大学柏病院のサイトによると、「日本人の8割でビタミンDが不足していて、4割が欠乏している」とのこと(※6)。ビタミンDの必要性の意識は日米で差がありますが、高齢化社会の日本でもビタミンDのサプリメントの摂取が気になる方も多いでしょう。そこで、今回はこの報告の解説をいたします。

 

※4 https://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/db399-H.pdf

※5 https://news.harvard.edu/gazette/story/2022/08/you-likely-dont-need-vitamin-d-pills-for-strong-bones/

※6 http://www.jikei.ac.jp/hospital/kashiwa/sinryo/40_02w7.html

健康な人がビタミンDを大量摂取しても、骨折予防の効果は薄い

レボフ教授は、ハーバード大学医学部教育病院のブリガム・アンド・ウィメンズ病院の骨格健康・骨粗鬆症センター長も務めており、この骨折研究の責任者です。なお、この研究は、同病院で行われている大規模なビタミンDとオメガ3試験(Vitamin D and Omega-3 Trial:略してVITAL)の一部で、VITALは、一般的に健康な男女において、ビタミンDががんや心血管疾患のリスクに対してどのような効果があるのかを研究しています。VITALを先導するのは、この報告の筆頭著者で、同病院予防医学部門長でハーバード大学公衆衛生大学院疫学科ジョアン・マンソン教授らのチームです。

今回の報告で教授らチームは、50歳以上の女性と55歳以上の男性を対象として全米2万5,871人の成人(50.6%は女性)に追跡調査を行い、2,000 IUのビタミンDサプリメントの投与が、プラセボの投与と比較し骨折のリスクを低下させるかどうかを検証しました。これは米国で行われたビタミンDサプリメントに関する最大・最長の無作為比較試験です。

骨折の発生は、参加者が毎年アンケートで報告し、医療記録調査によって判定されました。なお参加者は、ビタミンD欠乏症、低骨量、骨粗鬆症を理由に募集されたものではなく、一般的に健康な中年および高齢者の集団に焦点を当てました。

中央値5.3年の追跡期間中に、1,551人が骨折を発症したことが確認されました。統計解析の結果、5年以上にわたってカルシウムなしで1日2,000 IUのビタミンD3サプリメントを摂取しても、毎日プラセボを摂取した場合と比較して、総骨折、非椎体骨折、股関節骨折は減りませんでした。さらに、主要な骨粗鬆症性骨折、手首骨折、骨盤骨折に対するビタミンD3サプリメントの効果は見られませんでした。また、ベースラインの年齢、性別、人種または民族、肥満度、ビタミンD血中濃度、カルシウムやビタミンDのサプリメントの個人的な使用によって、効果は変化しませんでした。

では、ビタミンD摂取は無意味なのか?

ただしマンソン教授は、ハーバード大学のニュースにて、「たとえば骨の健康問題や吸収不良がある場合に、臨床医がビタミンDの追加摂取をすすめているのであれば、誰もがビタミンD錠剤を捨てるべきだということではありません」「ただ、非常に広く行われているビタミンD血中濃度のスクリーニングはほとんどの国民にとって有益ではなく、医療費を増大させているので、大幅に削減されるべきです」「臨床医に示されている研究所推奨範囲のビタミンD血中レベルは高すぎる可能性が強く、エビデンスに基づくものではありません」と指摘します。

また、レボフ教授とマンソン教授は、「この研究はビタミンDサプリメントの必要性に疑問を投げかけましたが、ビタミンDが体に果たす重要な役割についての医学界の理解を変えるものではありません」「むしろ、この結果は、骨の健康のために必要なビタミンDは少量から中程度であり、牛乳や朝食用シリアルなどのビタミンDの強化によって、くる病などの骨疾患と闘う数十年にわたる国家的努力が望ましい効果をもたらしたことを示しています」と述べます。さらにレボフ教授は、この研究結果が、骨粗鬆症や重度のビタミンD欠乏症の予備軍ではない健康成人にのみ適用されることを強調しています(※7)

CNNの取材に対してレボフ教授は、「この研究結果は、重度のビタミンD欠乏症の人には当てはまらないでしょう」「また、最適な骨密度より骨量が少ない人や、骨がもろくなり、転倒や軽いストレスでも骨折してしまう骨減少性疾患である骨粗鬆症のある人にも当てはまりません」と言います。さらに、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部内分泌学、糖尿病、代謝学部門のアン・レントミス・カッポラ教授は、「この研究結果は、老人ホームの高齢者には当てはまりません」「なぜなら、彼らの生活環境には、独特の要因があるからです。ビタミンD活性化の主な要因は日光ですが、彼らは日光を皮膚に浴びるために外出しないかもしれません。また、良い栄養を摂っていないかもしれませんし、他の病状や胃腸の問題を抱えているかもしれません。ですから、患者のケアについて医師に相談する必要があります」と語ります(※8)

また、前述のハーバード大学のニュースによると、この結果にもかかわらず、VITALの一部として行われた以前の試験では、ビタミンDのサプリメントによって、転移性または致死性のがんを減らすなど、いくつかの効果があることが示唆されています。別の研究では、ビタミンDのサプリメントは自己免疫疾患の発症の可能性を22%減少させることが示されました。

実際、マンソン教授は、ビタミンDサプリメントの潜在的効果についての調査を続けており、高用量ビタミンD(最初は10,000単位、その後4週間毎日3,200単位)が新型コロナウイルス感染症の症状の重症度を下げ、新型コロナの後遺症「Long COVID」の発症予防に役立つかどうかについての試験を完了しようとしています。

マンソン教授は、「他の結果については、組織や臓器系によって必要量が異なるかもしれないので、骨の健康に必要な量よりも多量のビタミンDが有益であることは、生物学的にもっともなことです」と言い、その可能性についてより深く掘り下げているとのことです。

 

※7 https://news.harvard.edu/gazette/story/2022/08/you-likely-dont-need-vitamin-d-pills-for-strong-bones/

※8 https://www.cnn.com/2022/07/27/health/vitamin-d-fractures-study-wellness/index.html

ビタミンD過剰摂取によるリスク

一方、2017年の米医師会雑誌の報告によると、アメリカ人の約3%が成人の耐容上限量である1日4,000 IUを超えて摂取していたため、過剰摂取の危険性があることがわかりました。約18%が1日1,000 IU以上摂取していました(※9)

2022年7月の英国医師会雑誌には、ビタミンDの過剰摂取により、繰り返す嘔吐、吐き気、腹痛、脚のけいれん、耳鳴り、口渇、のどの渇きの増加、下痢、体重減少(28 lbs〔12.7kg〕)を訴え、一般開業医から病院に紹介された中年男性の報告があります。患者は3ヵ月近く前からこれらの症状を訴えており、民間の栄養士の助言によりビタミン療法を始めてから約1ヵ月後に始まったそうです(※10)

「過ぎたるは及ばざるがごとし」、体のためと思って摂取しているサプリメントは、実際多くの人にとって不必要なようです。また骨粗鬆症のリスクや基礎疾患の有無など、個人によって状況が違いますので、サプリメントの必要性については専門家に相談することをおすすめします。

 

※9 https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2632494

※10 https://casereports.bmj.com/content/15/7/e250553

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こちらの記事の監修医師

星槎グループ医療・教育未来創生研究所

大西 睦子

内科医師
医学博士
星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)