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最終更新日:2022年11月16日

地域医療と国際保健の共通点 ~福島での地域医療とアジアでの国際保健を通して学んだ「大切なこと」

こちらの記事の監修医師
ひらた中央病院
福島県立医科大学放射線健康管理学講座博士課程
小橋 友理江

(写真=PIXTA)

一般的な医師のキャリアパスとは異なる道を歩んできた小橋友理江医師が、自身の経験から学び得た「地域医療と国際保健の共通点」を解説します。

地域医療と国際保健には、様々な共通点がある

筆者は、地域医療に従事する医師であるが、一般的な医師のキャリアパスとは少し異なる道を今まで歩んできた。結果的にそのようになったのは、筆者が国際保健という分野に興味があり、途上国などで健康問題の改善に取り組みたいという希望を持っていたことに起因する。

医師に限らず、国際保健は様々な職種の方に人気がある分野であると思うが、個人としては、「臨床から離れず、地域の中で研究も行いながら、公衆衛生の視点を持ち、地域社会の中で健康問題の改善に取り組む」というような意識を持って進んできた。

言うが易く行うは難しという諺(ことわざ)の通り、まだまだ道半ばではあるが、少しずつ見えてきたのは、地域医療と国際保健には、様々な共通点があるということだ。福島での地域医療の経験と、アジアでの国際保健の経験を交えながら、どのように共通しているかについて考察をしたい。

アジアでの国際保健の経験

「現地のニーズ」と「国外からのサポート」のギャップ

まず、私が数年前に半年間、カンボジアにあるサンライズジャパンホスピタルで勤務していたときに、とても気になっていたことがあった。カンボジアで診療していると、生活習慣病が国全体の大きな問題となっていることに、すぐに気がつく。しかし国外の国際機関から現地への、生活習慣病に関連した教育やサポートは、十分でなかった。一方でそこまで患者数が目立たない、マラリアなどのプロジェクトや勉強会には、国外から大きな予算とサポートがついていた。

実はこのような現地のニーズとのギャップは、国際保健の分野で問題として認識されはじめていることを最近知った。オレゴン州立大学グルーバルヘルスセンターのChunhuei Chi氏は、プロジェクトの選択の段階から、誰が、どのように、なぜそのプロジェクトを選んだか、という評価軸を導入することが、このような問題の解決に近づく糸口となる可能性あると、論文の中で述べている(※1)

コミュニティがプロジェクトの選択の段階から関わっていない場合、国外の国際機関からいくらプロジェクトが成功であったと報告されたとしても、コミュニティの視点からはプロジェクトが本当に成功であったか疑問が残る、という考えだ。しかしながら、アジアの国々で外国資本のプロジェクトが始まるとき、コミュニティがプロジェクトの選択の段階から関わっていることは残念ながら稀だろう。

 

「コミュニティ全体における知識向上」の大切さ

【写真】バングラデシュのコミュニティでの教育活動の様子
黒板の前に立つ、右から2番目の女性が筆者

一方で、私がカンボジアで働いたり、バングラデシュやその他の国でプロジェクトに携わらせていただいたりして学んだ最も大事なことは、知識を伝える教育の大切さであった。F・アーンスト・シューマッハーが「スモール イズ ビューティフル」の中で述べているように、知識の伝達は物資の援助より、格段に効果的な支援を達成する可能性があるにも関わらず、その後何十年間も国際保健の分野で知識を伝える支援は十分には達成されてこなかった。医療者のみならず、コミュニティ全体の知識向上がカギであるかもしれないのに、その事実はあまり注目されてこなかったのかもしれない。

福島での地域医療の経験

事業の開始段階からコミュニティが主体だった、福島の抗体検査

カンボジアから帰国後、筆者は、今までも何回か取り上げさせていただいているが、誠励会グループのひらた中央病院で医師として勤務しながら、医療法人誠励会、相馬市、南相馬市、平田村からのべ2500人以上が参加してくださっている、継時的な抗体検査に関わらせていただいている。

2021年9月から2022年9月の間、3ヵ月おきに5回の抗体検査が行われ、その最初の検査結果をまとめた論文が、先日発表された(※2)。 2回のワクチン接種から6ヵ月以上経過すると、中和活性の値が約1/10まで減少してしまうことや、高齢者では抗体価の上昇が若者に比べて弱いことは、地域でワクチン接種について考える上で、重要な意味を持った。また、高齢者・男性・2回目接種からの経過日数の増加・喫煙・ステロイドの使用・免疫抑制剤の使用・複数の既往歴の存在は、2回目の新型コロナワクチン接種後の低い抗体価と関係していた。

この調査の起点を振り返ってみると、抗体検査は誠励会グループの医療機関の感染対策を目的として始まったものであり、明らかにプロジェクトの選択の段階から地域やコミュニティが主体であった。また、地域の声を代表することができる、経験豊富な医療者や行政の方がおられ、そのような方の仕事を間近で見ることは、本当に勉強になった。

コミュニティの中での仕事を得意とする、経験豊富な皆様に支えられたこのプロジェクトは、研究者の方からの注目度も高い。地域の医療者として働きながらも、私も色々な方と繋がりを持つことができた。自然と医療だけでなく、公衆衛生分野の専門的な幅広い経験を積むことができた。

今この福島の抗体検査に関わった1年間を振り返ってみて、どの部分に一番価値があったと感じるかを考えてみた。事業の始めの段階からコミュニティが主体であったことや、住民に結果を丁寧に返すことに多くの人が価値を見出し、取り組み、支援してくださったこと、住民の方がプロジェクトに期待をしてくださり積極的に参加してくださったこと、などだと思う。

「この調査に参加することで、まだ分かっていない重要なことが分かり、自分達の結果が地域、さらに多くの人の役に立つかもしれないから協力する」という声が住民や職員から上がったのは、本当に素晴らしいことであったと思う。

地域医療と国際保健の共通点

福島での地域医療とアジアでの国際保健を通して学んだ「大切なこと」

このような経験を通して、日本の地域であろうと、アジアの国であろうと共通して重要なのは、コミュニティの学びであり、達成すべきは地域住民の声を聞き、コミュニティ全体の教育を達成することなのかもしれない、と最近考えるに至った。

言い換えれば、コミュニティから離れてしまえば、フィールド研究や地域でのプロジェクトは、価値が半減すると言えるかもしれない。コミュニティの声に最大限の注意を払い、信頼を得るよう努力することが、どこにいたとしても一番になすべきことだと分かったのは、ここ数年の大きな学びであり、地域医療と国際保健の共通点であり、このような仕事の仕方でないと決して学び得なかったことであったと感じている。

 

【参考文献】

※1 Chi C, Tuepker A, Schoon R, Núñez Mondaca A. Critical evaluation of international health programs: Reframing global health and evaluation. Int J Health Plann Manage. 2018 Apr;33(2):511-523. doi: 10.1002/hpm.2483. Epub 2018 Jan 5. PMID: 29314258.

2 Kobashi Y, et.al. Humoral immunity after second dose of BNT162b2 vaccine in Japanese communities: an observational cross-sectional study, Fukushima Vaccination Community Survey. Sci Rep. 2022 Nov 7;12(1):18929. doi: 10.1038/s41598-022-21797-x.

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こちらの記事の監修医師

ひらた中央病院
福島県立医科大学放射線健康管理学講座博士課程

小橋 友理江

麻酔科医・内科医
2014年、和歌山県立医科大学 医学部卒業。麻酔科医・内科医。公衆衛生学修士。越谷市立病院で初期研修、東京都立多摩総合医療センターで後期研修(麻酔)。2018年帝京大学公衆衛生学大学院修士課程。2019年より福島県立医科大学博士課程(放射線健康管理学講座)。サンライズジャパンホスピタル(カンボジア)での勤務などを経て、2020年より、ひらた中央病院の非常勤医師として診療や発熱外来、ワクチン接種などに携わりながら、新型コロナの抗体検査に携わっている。

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