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最終更新日:2022年2月27日

糖尿病・糖尿病予備軍に迫る「恐ろしい合併症」…回避のための「早期治療」

こちらの記事の監修医師
浅草寺病院
津戸 弘樹

(写真=PIXTA)

糖尿病の怖さは「合併症」にあります。目や神経、腎臓へ障害を及ぼすほか、心筋梗塞や脳卒中の高いリスクもあるのです。糖尿病、もしくは糖尿病予備軍と診断されたら、「早めの治療」が非常に重要です。3つの研究結果とともに、その重要性を見ていきましょう。浅草寺病院の津戸弘樹医師が解説します。

増加する糖尿病患者…怖さは「合併症」にあり

健康診断の際、血液検査で血糖値の上昇がみられると、「糖尿病」または「糖尿病予備軍」と言われてしまいます。2016年の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる者(糖尿病)」は1,000万人、「糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備軍)」も1,000万人と推定されており、合計で2,000万人が問題を抱えています。2007年の2,210万人からは一旦は減少となっていますが、長期的には増加傾向にあり、調査の始まった1997年と比較すると50%増となっています。

糖尿病の怖さは血糖値の上昇そのものよりも、後に引き起こされる合併症にあります。目や神経、腎臓などへの障害を招くのです。

また、動脈硬化を進めて心筋梗塞や脳卒中などの命に直結する病気を引き起こしたり、失明や足の切断に至ったりすることもあります。

「糖尿病予備軍」でも油断はできないワケ

糖尿病予備軍ならまだ安心、と思う方もいるかもしれませんが、そんなことは決してありません。血糖値が正常な人に比べ、糖尿病に至るリスクが6〜20倍も高くなります。

さらにもっと気をつけなければいけないのは、予備軍の中には「食後の血糖値が高いタイプの人」が混ざっていることです(健康診断では食前の血糖値しか調べないので健康診断ではわかりません)。

これに該当すれば心筋梗塞と脳梗塞になる確率が正常血糖値の人と比べて高くなり、死亡率は2.2倍になるとの報告(*1)があります。

恐ろしい合併症…防ぐポイントは運動・食事・薬・注射

では、どう治療をしていけば将来の健康につながるのでしょうか。言い換えると、どうすれば目、神経と腎臓に起こる障害を減らし、命にかかわる心筋梗塞や脳卒中になる確率を下げることができることができるのでしょうか。

対策について一文で言い表すなら、「血糖値が上昇してきたら早めに生活習慣(運動と食事)の改善と治療(程度に応じた内服薬やインスリン注射)を開始すべき」。

いつかやろうでは取り返しがつかないことになります。そこでここからは、早い対処が重要であることを証明する研究結果を紹介しましょう。

アメリカの研究にみる「減量と運動」の重要性

米国で行われた「糖尿病予防プログラム(The Diabetes Prevention Program)(*2)」の研究では、糖尿病予備軍の人が、減量と運動で糖尿病になるのを防ぐ、または少なくとも遅らせることができると判明しました。

2002年に発表されたこの研究は、3,234人の糖尿病予備軍の人に運動を週に150分(週に5日やるなら1日30分)させ、食事療法も併せて5%-7%の体重減少を達成させたところ、3年経った時点で、何も努力しなかった人に比べ糖尿病に至ってしまった率が58%も低かったとの結果が出ています。

イギリスの研究が示した「早期治療の効果は持続する」

次に紹介するのは、1970年代に英国で行なわれた「英国での糖尿病の経過研究(UKPDS)(*3)」です。この研究では、もう既に糖尿病と診断されてしまっているとしても、早期の治療(運動、食事、薬)で、深刻な目、神経や腎臓の合併症(糖尿病性網膜症、神経障害、腎症)や心筋梗塞・脳卒中の発症率を低く抑えられるという結果が出ています。3,367人の「新たに糖尿病と診断された人」達を2つのグループに分け、観察しました。

第1グループの人達には食事・減量の指導のみを、第2グループには食事・減量の指導に加え、経口薬かインスリン注射できっちりと厳格な治療を行いました。結果としては、もちろん熱心に治療をしたグループ方が効果が大きく、10年間に及ぶ研究期間中の血糖値は予想通り、第2グループの方が大幅に低値でした。そして合併症の発症率についても然りでした。

しかし、これは誰もが予測できたことです。実はこの研究の凄い点はここではなく、注目すべきは、この後更に10年間(11年目〜20年目)の観察を続け次のような衝撃的な結果を明らかにしたことです。

先ずは11年目の頭に第2グループの患者を厳しく縛り付けることを止め、通常の食生活と通院の生活に戻してみました。そうしたところ、すぐに第2グループの血糖値は上がりはじめ、あっという間(最初の1年以内)に第1グループと同じになってしまったのです。

そしてその時点から10年間は第1グループと第2グループの血糖値の差は無いままで経過しました。

ということは、普通に考えれば、両グループの合併症の発症率と死亡率も大体同じになってしまいそうなものです。

しかし予想に反し、何と観察終了の20年目において、合併症の発症率と死亡率の結果は依然第2グループの方が大幅に低かったのです。この結果は多くの研究者を悩ませました。

「11年目から20年目はグループ間の血糖値の差は無かったのに、なぜ合併症発症率は第2グループが低いままなのか?」と。

血糖値が高い期間に、血管に有害な堆積物ができてしまう?

理由はいまだに解明されていませんが、有力な説は、「血糖値の高い期間が長いと動脈硬化を起こす堆積物ができてしまい、合併症の原因になるのでは」というものです。

よって第1グループは最初の10年間で血管に堆積物が蓄積してしまっており、一方第2グループは最初の10年間で蓄積がなかったため、その後もグループ間の合併症の発症率に差ができてしまったのだと推測されています。

ただ理由はどうであれ、この研究からは、早期にきっちり治療をすれば、たとえ糖尿病が長く続くとしても合併症の発生や死亡率は低く抑えられるということが分かったわけです。

これは「Legacy Effect」と呼ばれている現象で、医師の間ではよく知られています。

糖尿病は「治す」ことも可能

もう一例お話ししてみましょう。これまで、糖尿病は一回なってしまえば治すことは難しいと一般的に思われてきました。しかし最近の研究で、糖尿病になっても早いうちであれば、本腰を入れた食事療法と運動療法で治すことができるという報告がありました。

カタールで2017−2018年に行われた「強化食事療法と運動療法による糖尿病の治療効果(DIADEM-I)(*4)(*5)」の研究です。

この研究では、糖尿病と診断されたばかり(3年以内)の70人に食事のカロリー制限と運動(150分以上/週の速歩きや自転車等の中強度運動)を実施させました。

すると、15ヵ月後には研究参加者は平均で約12kgの減量を達成し、43人(61%)の人のHbA1c(糖尿病の指標となる血液検査項目)は糖尿病の境界値である6.5%を切ったのです。

更には何と23人(33%)はもともと糖尿病であったのが、糖尿病予備群の診断値をも超えて改善し、正常血糖値となったのです。

繰り返しになりますが、糖尿病は恐い合併症をもたらす病気です。しかし上記のように最近の研究では、早期の治療で重症になることを防げること、正常血糖値に戻せることが明らかになっています。健康診断で血糖値の異常を指摘されたら、先延ばしにせず、“すぐ”に対策を講じることが重要です。

 

参考文献

(*1):Impaired Glucose Tolerance Is a Risk Factor for Cardiovascular Disease, but Not Impaired Fasting Glucose (Diabetes Care, Volume 22, Number 6, June 1999)

 (*2):Reduction in the Incidence of Type 2 Diabetes with Lifestyle Intervention or Metformin( N Engl J Med. 2002 February 7;346(6):393-403)

(*3):10-Year Follow-up of Intensive Glucose Control in Type 2 Diabetes (N Engl J Med. 2008 October 9;359;15:1577-1589)

(*4):Effects of intensive lifestyle intervention on bodyweight and glycaemia in early type 2 diabetes (DIADEM-I) (The Lancet Diabetes & Endocrinology Volume 8, Issue 6, P477-489, June 01, 2020)

(*5):Clinical and metabolic characteristics of the Diabetes Intervention Accentuating Diet and Enhancing Metabolism (DIADEM-I) randomised clinical trial cohort (Zaghloul H, et al. BMJ Open 2020;10:e041386. doi:10.1136)

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こちらの記事の監修医師

浅草寺病院

津戸 弘樹

総合内科医師 / 浅草寺病院

・慶應義塾大学経済学部卒業、イエール大学経営大学院修了(MBA取得)後、ニューヨークにて国際税務コンサルティング業に従事。
・帰国し、東海大学医学部に編入学。順天堂大学病院で総合内科研修の後、柳橋病院内科を経て浅草寺病院内科に入局。
・会社組織での職務経験があるため、仕事から受けるストレスや陥りやすい生活習慣病(糖尿病、高血圧等)には明るい。また浅草の土地柄外国人の受診者が多く英語での診療にも対応している。
・病院診療の傍ら、医療経済の研究と、また家業の谷保天満宮の神職としての仕事も続けている。

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