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最終更新日:2022年4月26日

人に相談しづらい「肛門の痛み」…実はガンの可能性も【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
森山記念病院
中島 康雄 先生

(※画像はイメージです=PIXTA)

人にはいいづらいものの、痛むとなかなか我慢できない肛門周辺の痛み。大腸・肛門外科の中島康雄医師によると、肛門周辺に発生する痛みには、「原因がはっきりしているものと原因がわからないものに分けられる」といいます。本記事では、そんな「肛門の痛み」の原因と治療法について詳しく解説します。

原因不明の「無症候性肛門痛」…治療困難なものも

肛門周辺に発生する痛みには、原因のわからない「無症候性肛門痛」と原因の明らかな「症候性肛門痛」があります。

そのなかでも無症候性肛門痛は「一過性直腸肛門痛」と「慢性直腸肛門痛」に分類されます。

一過性直腸肛門痛

一過性直腸肛門痛は、痛みが急に出現し、数秒~数分、最長でも30分以内に消失します。「消散性直腸肛門痛」ともよばれており、夜間から早朝にかけて、突然直腸肛門部に激痛が走り、30分程度七転八倒の苦しみのあと、朝になるとなにごともなかったように治ってしまう、「無性に便が出したい感じがする」というのが特徴として挙げられます。

慢性直腸肛門痛

一方、慢性直腸肛門痛は30分以上続く直腸肛門痛のことで、直腸診で恥骨直腸筋を後方に牽引すると痛みが増強するものが「肛門挙筋症候群」、増強しないものが「非特異的機能性直腸肛門痛」に分類されます。

原因は解明されていませんが、心理的要因や恥骨直腸筋の攣縮(れんしゅく)の関与などが考えられています。治療は困難ですが、鎮痛剤、安定剤、神経ブロックなどで改善する方もいます。

先述した消散性直腸肛門痛などはトリガーポイントへの局注(局所注射)でよくなった文献もありますので、あきらめず治療するのがよいでしょう。ただし、筆者は年間のべ数千人の診察をしていますが、無症候性肛門痛と思われる方は少数です。

肛門痛の9割を占める「痔核、痔瘻、裂肛」

ほとんどの方は、原因の明らかな症候性肛門痛です。

具体的には、

・痔核(いぼ痔):血栓性外痔核、嵌頓(かんとん)痔核、随伴(ずいはん)裂肛の合併
・痔瘻(ぢろう):肛門周囲膿瘍
・裂肛
・高度の便秘
・直腸癌や肛門癌など悪性腫瘍
・肛門部ヘルペス
・肛門子宮内膜症
・門異物
・直腸・泌尿生殖器、仙骨・筋肉・靭帯などの骨盤内臓器の病気
・腰椎・脊椎の病気

などがあります。

肛門科に受診される肛門痛の9割は、肛門の3大疾患である「痔核、痔瘻、裂肛」によるものです。

痔核

一般的に「痔」といわれている疾患は「内痔核」です。

内痔核は排便時、またひどい場合は歩行時やしゃがんだときなどにいぼが脱出してしまうもので、基本的には痛みはありません。

しかし、脱出したいぼが戻らなくなると、肛門括約筋が縮まり、締めつけられ、急激な循環障害による血栓、潰瘍、壊死およびリンパ浮腫などが出現します。これは整復困難で激しい痛みを伴う「嵌頓痔核(かんとんじかく)」という状態です。

また、脱肛がひどくなると、いぼの脇が切れて治らなくなる「随伴裂肛(ずいはんれっこう)」を伴うようになり、これも排便時、排便後に激痛を伴います。

また、「血栓性外痔核」による肛門痛も多くみられます。外痔核とは、肛門と直腸を仕切る歯状線(しじょうせん)よりも肛門側に生じた痔のことです。外痔にある静脈叢(じょうみゃくそう)のなかの血流が滞ると血栓が生じ、歯状線よりも下方の上皮には痛覚があるため、痛みを伴います。徐々に痛み始めるのではなく突然前触れなく強い痛みに襲われ、硬いいぼ状のものに触れることができたら、血栓性外痔核かもしれません。

原因としては、排便時の強いいきみや過度の飲酒、長時間の座位などが発症につながると考えられています。

男性に多い「痔瘻(じろう)」:肛門周囲膿瘍

痔瘻は、後天的にできた肛門管内と交通のある瘻管(ろうかん)と定義されています。つまり、肛門から周囲組織に管状のものができる状態で、男性に多いのが特徴です。

痔瘻自体に痛みはありませんが、痔瘻ができるとまず肛門陰窩(こうもんいんか)にある肛門腺に感染を起こし膿が溜まります。これを「肛門周囲膿瘍」と呼びますが、この状態になると肛門痛が生じます。

肛門周囲膿瘍は深さによって痛みの出方がさまざまですが、徐々に痛みが出始め3~5日すると痛みが激しくなり、肛門周囲にしこりを感じるようになるのが特徴です。切開し、膿を出すことで速やかに痛みをなくすことができます。

激しい痛みのある「裂肛(切れ痔)」

裂肛は肛門上皮にできた裂創や潰瘍のことで、俗に「切れ痔」とよばれています。

痛みは排便との関係が強く、硬い便や繰り返す下痢などで肛門に負担がかかったときに激しい痛みが出ます。症状がひどくなると排便後も痛みが続くようになり、ひどくなると1日中痛みます。繰り返すと肛門狭窄を伴うようになりさらに痛みます。出血は少量のことが多いです。

放置すると痛みが残る場合も…その他の「肛門の痛み」

その他、肛門痛として筆者の外来に来院されることが多いのは「便秘」と「悪性腫瘍」です。

便秘もひどくなると激しい肛門痛を伴うようになり、救急車で来院されることも少なくありません。この場合、CTでみてみると直腸内~S状結腸内に多量の便がつまっています。

この状態になると、自宅で行う浣腸程度では便が出ず、摘便や高圧浣腸で便を摘出することになります。便を出すと、急激に痛みが消失します。

大腸癌の場合、出血、腹部不快感、便秘などで来院されますが、肛門に近い癌ほど肛門部不快感が酷くなり肛門痛が出現します。肛門癌の場合はさらに非常に症状が酷くなり痔が悪化してきたと訴えられる方が多いです。

癌の脱出とともに激しい肛門痛が出現し、頑固な掻痒感(そうようかん)を訴える方もいます。肛門癌を治療する場合は直腸切断術になり肛門を切除してしまう関係で人工肛門になってしまうのですが、癌の組織型が多彩なのが特徴です。

なかでも扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)は程度が軽い場合放射線化学療法がよく効き、肛門を残すことができる場合があります。放置せず早く受診することを強くおすすめします。

肛門ヘルペス、肛門子宮内膜症、肛門異物による肛門痛もときどき見かけます。

肛門ヘルペスは肛門回りに水泡を伴う発疹ができ激しい肛門痛で来院されます。ヘルペスはいい治療薬があり、適切な時期に投与すると比較的早くよくなります。放置し症状が悪化した場合、ヘルペス後疼痛という頑固な痛みが残ることがあります。肛門子宮内膜症、肛門異物も治療しないと症状がとれません。

また、肛門痛を訴えて来院された方が骨盤内臓器や腰椎、脊椎の病気だったケースもあります。特に筆者が印象に残っているのは、激しい肛門直腸痛で来院されCTを撮ったら仙骨の腫瘍だった、という方です。この数年で2人経験しています。

肛門痛は良性疾患のことが多いですが、悪性腫瘍が見つかるケースも少なくありません。肛門痛を感じたら放置せず、早く受診することをおすすめします。

こちらの記事の監修医師

森山記念病院

中島 康雄 先生

役職
大腸肛門外科部長

学歴
滋賀医科大学卒、東京医科歯科大学大学院卒

経歴
東葛辻仲病院 副院長、アルト新橋胃腸肛門クリニック 院長を歴任
2016年6月より森山記念病院 大腸肛門外科部長に就任
肛門疾患診察、治療、手術を多数経験し、大腸内視鏡検査も2万件以上の実績がある。また、痔瘻の超音波診断を数多く手掛けている。

資格
日本大腸肛門病学会専門医、指導医(Ⅱb:肛門科領域専門)/日本消化器内視鏡学会専門医、指導医/日本外科学会専門医、指導医/日本消化器病学会専門医、指導医/日本消化管学会胃腸科専門医、指導医/日本消化器外科学会認定医/日本臨床肛門病学会技術指導医