最終更新日:2022年6月26日
現代人を悩ます「腰椎椎間板ヘルニア」…術後3日で退院できる驚愕の最新治療【専門医が解説】
こちらの記事の監修医師
森山記念病院
田中 聡
長時間のデスクワークや立ち仕事などで発症する腰の痛み。「ヘルニアかもしれない」と思いながら、なんとなく様子をみている人も多いのではないでしょうか。今回は、森山記念病院脊椎脊髄外科の田中聡先生が「腰椎椎間板ヘルニア」の原因と最新の治療法について解説します。
「腰椎椎間板ヘルニア」が起こる原因
人の脊椎は、椎骨(ついこつ)という骨が縦に並んだ構造になっており、部位によって頚椎・胸椎・腰椎とわかれます。椎骨と椎骨のあいだには椎間板があり、クッションの役割を果たしています。
椎間板は、真ん中にある髄核とその周りを取り囲む線維輪で構成されています。加齢の影響や過度の運動などで椎間板に大きな負担がかかると、線維輪に亀裂が入ります。その亀裂からなかの髄核がはみ出してしまった状態が「椎間板ヘルニア」です。
脊柱管には多くの神経があり、はみ出した椎間板ヘルニアが神経に当たって炎症を引き起こしたり、神経を圧迫して引き伸ばしたりすることによって、痛みやしびれなどの症状が現れます。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
□腰が痛くて座ってから立ち上がるのが辛い
□前屈みになると痛みやしびれの症状が出る
□足やお尻がしびれていて感覚が鈍くなっている
□短い時間でも立っているのが辛い
□しばらく座っているのが辛い
□筋力低下がある
上記の項目が当てはまる場合は腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。
腰椎椎間板ヘルニアの具体的な治療・手術方法
治療の基本は、「保存療法」です。まずは薬物療法や理学療法をおこない、症状の改善を試みます。
保存療法では効果が現れず症状が長期間続く場合や、痛みやしびれのために日常生活が過度に制限される場合、排尿障害や麻痺症状(筋力の著しい低下)出現の場合などには、手術がおこなわれます。
代表的な手術法としては、ヘルニアがある箇所の背中側の皮膚を5cm程度切開し、骨の一部を削って神経を圧迫している椎間板を取り除く「LOVE法」があります。
身体への負担が少ない「低侵襲手術」
最近では腰椎椎間板ヘルニアの「低侵襲手術」が進歩しています。
低侵襲手術としては、「MED(内視鏡下腰椎椎間板摘出術)」と「FESS/PED(全内視鏡下脊椎手術)」があり、身体への負担が最も少ないのはFESSです。
低侵襲手術は、傷が小さく出血量も少ないです。 患者さんへの負担が抑えられるため、術後の痛みが少ないという特徴があります。 また筋肉を切開することがないため筋肉にダメージを受けることがなく、術後、早期に動くことが可能です。
最先端の「全内視鏡下脊椎手術(FESS/PED)」
従来の内視鏡下手術では、傷の大きさが18~20mm、入院期間が約7日間だったのに対し、「FESS(全内視鏡下脊椎手術。Full-Endoscopic Spinal Surgery)」では最も低侵襲(傷の大きさ、出血量、手術時間、筋肉に対するダメージ、骨を削る範囲など、手術等の治療を行ううえで身体へのダメージとなる要因が少ない)で傷は約8mm、2~3日で退院可能です。
FESSのメリット
・傷が小さく、筋肉も切らないために術後の痛みが少ない
・手術翌朝には歩行可能となるため、短期 (2~3日)の入院で治療できる
・早期退院・早期社会復帰が可能である
・感染が少ない
この手術は、従来の脊椎内視鏡手術(MED法)や通常の脊椎手術と比較して傷も小さく、痛みが少ないため、体への負担も最小です。このため入院期間が短く、早期退院・早期社会復帰が可能です。
右殿部痛、下肢痛みとしびれがあり他院で内服治療をおこなっていた60代男性Aさんは、内服治療で痛みが治らないため当科を受診し腰椎MRIで右L4/5腰椎椎間板ヘルニアの診断となりましたが、FESSをおこない術後痛みがとれ、3日目で退院となっております。
内服やリハビリ治療でも症状が改善しない椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄をお持ちでお困りの方、より専門的な内視鏡下脊椎手術をご検討・ご希望される方は、一度、お近くの専門機関にご相談されることをおすすめします。
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こちらの記事の監修医師
森山記念病院
田中 聡
■役職
脳神経外科医員
■学歴
大阪医科大学 卒
■経歴
湘南鎌倉総合病院 初期研修
NTT東日本関東病院 脳神経外科
湘南鎌倉総合病院 脳神経外科
稲波脊椎関節病院
■資格
日本脳神経外科学会専門医/脊椎脊髄外科専門医/日本脊髄外科学会 認定医/BKP certificate of recognition(Medtronic)
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