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最終更新日:2022年10月6日

腕のしびれは要注意…最悪「寝たきり」の可能性もある“危険な肩こり”【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
横浜町田関節脊椎病院
越宗 幸一郎

※画像はイメージです/PIXTA

首や肩のこり・痛みは、決して珍しい症状ではありません。しかし、原因が頸椎症(けいついしょう)の場合、放置すると「歩行困難」や「排尿障害」、最悪の場合「寝たきり」になるリスクもあると、横浜町田関節脊椎病院の越宗幸一郎院長はいいます。いったいどのような初期症状に気をつければいいのか、またどうすれば予防・改善できるのでしょうか。越宗院長が詳しく解説します。

トラブルを発症しやすい「脊椎」

人間の体のなかで、非常に広い部分を占める脊椎。首からお尻のあたりまで続く骨のことを脊椎といい、長さは約40cmにもおよびます。

人間が活動をするうえで重要な働きをする脊椎は、多くのトラブルを抱えやすい部位でもあります。今回は脊椎で起きるトラブルのなかでも、特に40〜50代の男性に発生しやすい「頸椎症」のトラブルに焦点を当ててみます。

脊椎は椎骨と呼ばれる骨が連結しており、首(頸椎)7個、胸(胸椎)12個、腰(腰椎)5個、それから仙骨(仙椎)、尾骨で構成されています。

[図表1]「椎骨」が連結して構成される脊椎

脊椎は、「体を支える柱」「体を動かす」「内臓を保護する」「神経を保護する」という、4つの重要な役割を担っています。そのため、脊椎にトラブルが起きると日常生活に支障が出ることも少なくありません。

特に脊椎は神経とも深く関わっているため、脊椎のトラブルが神経にダメージを与えてしまうと、手足のしびれや麻痺などの症状が現れ、歩行困難に陥る可能性もあるのです。

その肩こり、「頸椎症」かも

脊椎のなかでも特にトラブルを起こしやすいのは、首と腰です。なかでも首は肩こりや首のこりを引き起こし、多くの人を悩ませています。

[図表2]のように、日常生活でトラブルを抱えている場合は注意が必要です。

[図表2]「頚椎症」の初期症状例

これらは、頸椎症の代表的な初期症状です。頸椎症とは、首の骨や椎間板が長い年月をかけて少しずつ変形し、神経を圧迫する病気です。神経の圧迫により、首や肩周辺に痛みやしびれ、麻痺などが生じます。

日常的な肩の痛みや肩甲骨の痛みは「肩こりのせい」と片づけてしまいがちですが、実はその原因は首周辺にあることが多いのです。

そのため、肩のマッサージや湿布を張るだけでは根本的な痛みを取ることはできません。

頸椎症の症状がひどくなると、首や肩だけでなく、腕にまで痛みやしびれが出るケースも珍しくありません。さらに症状が悪化すると、指先が麻痺して細かな作業(ボタンをとめる、グーパーをするなど)や、普通に歩行することすら難しくなることもあります。

ここまでの症状が出ている場合は、すでに神経にまで影響がおよんでいる証拠。早急に治療が必要です。

「頚椎症」チェックテスト

試しに、次に示す2つのテストを行ってみてください。

これらはもともと交通事故のあと、むちうちなどの度合いを調べるのによく用いられるテストです。それをひとりでもできるよう、簡易版にアレンジしました。

1.首を左右に傾けます。片手で頭部を押すと、上腕、前腕、手などに痛みやしびれがありますか?
2.頭を後ろに傾けます。片手で頭部を押すと、上腕、前腕、手などに痛みやしびれがありますか?

もしこれらを行って、上腕の外側に痛みがある場合は「第5頚髄神経」に、首から上腕前腕に痛みがある場合は「第6頚髄神経」に障害が出ていると考えられます。

頸椎症を「発症しやすい人」「しにくい人」の差は?

では、頸椎のトラブルを「発症しやすい人」と「しにくい人」には、どのような違いがあるのでしょうか。

「頚椎症」の分類

頸椎症は、どの部分が圧迫されるかによって、2つの病気に分類されます。

1. 頸椎症性脊髄症

首の骨・椎間板・靭帯などが加齢変化に伴い変形やトゲの形成が起こることにより、頚椎の脊柱管のなかにある脊髄が圧迫されて症状が出る。手のしびれにより、細かい動作がしにくくなったり、足にもしびれが起こり、ふらつくため階段を降りるのが怖くなると感じることがある。

2.頸椎症性神経根症
神経症性脊髄症と同じく、首の骨・椎間板・靭帯などの変形やトゲの形成が起こることにより、症状が出る。脊髄から分かれて上肢へゆく神経根が圧迫され、首、肩、腕に痛みやしびれや筋力低下が生じる。

そのほかにも、頸椎症と似た症状の「頸椎椎間板ヘルニア」があります。これは、クッションの役割をしている椎間板が後方に飛び出すことによって起こる疾患のこと。30代~50代に多く、姿勢の悪さやスポーツなどが誘因になることがあります。

首の痛みの原因は「加齢」と「姿勢」

なぜ、頚椎のトラブルは起きるのでしょうか。それは、頸椎の仕組みにあります。

[図表3]頸椎の仕組み

腹部側にある「椎体」と背部側にある「椎弓」でできた椎骨が、7つ連なっている頚椎。椎体と椎弓との空間にある隙間を「脊柱管」といいます。

椎骨や脊柱管がまっすぐに整っていれば、脊柱管のなかに通っている神経が圧迫され、刺激を受けることはないのですが、加齢にともない頚椎や椎間板、靱帯は変形してきます。

たとえば、頚椎が変形すると骨のトゲが生じて神経を圧迫しますし、また、靭帯も肥厚して神経を圧迫することがあります。クッションの役割をする椎間板がすりへっても、やはり神経が圧迫されます。

こうした加齢による変化に加えて、普段の姿勢や生活習慣も頸椎症を発症する要因です。

パソコンやスマートフォンを使うとき、つい首を前に突き出すような姿勢を長く維持していませんか? これは、首に対して大きな負担になり、近年「スマホ首」ともいわれています。首や肩の痛みだけでなく、めまい、頭痛、手の痺れ、不眠、精神的不安など、症状は多岐にわたります。

放置すると「排尿困難」「感覚麻痺」「寝たきり」のリスク

これらの症状を放置すると、一体どのようなことが起きるのでしょうか。一般に、頚椎による障害は「運動麻痺」「知覚麻痺」「膀胱直腸障害」の3つに分類されます。

1.運動麻痺
「手足に力が入らない」「思うように手足の指が動かない」「ボタンかけや紐結びがやりにくくなる」といった症状から始まり、「箸やスプーンを持つことが難しい」「脚が突っ張って歩行困難になる」といった症状になり、いずれは寝たきりになることもある。

2.知覚麻痺
手足に「ピリピリした感じ」「感覚がにぶくなる」といった症状があらわれ、背骨から手足にかけて痛みやしびれがあらわれる。症状が進行すると手足の感覚が失われていくこともある。

3.膀胱直腸障害
膀胱や直腸の働きを司る脊髄が障害され、排尿困難、失禁などが起こる。また、便通も悪くなる。

薬物療法、リハビリ…「頚椎症」の治療法

首や肩のみならず、全身にまで影響を及ぼす恐れがある頸椎症。首周りの筋肉構造を見ながら治療法をみていきましょう。

[図表4]首周りの筋肉構造

まず、頸椎症の治療では保存治療として、薬物療法やリハビリが行われます。

特に首周りで大事なのは「僧帽筋」と「胸鎖乳突筋」。悪い姿勢などが原因でこの2つの筋肉が過度に緊張すると、頚椎に障害を引き起こします。そのため、ストレッチや簡単な筋トレ、マッサージなどで、これらの筋肉を刺激し、緊張を緩めることが大切です。

首を回したりする動作が辛いときは、首の前側面にあり、後頭骨から鎖骨をつなぐ胸鎖乳突筋に原因があると考えられます。また、肩をすくめ、前に傾ける動作で痛みが生じる場合には、首から背中にかけてついている大きな筋肉の僧帽筋に原因があることが多いと考えられます。

頸椎症のリハビリでは、これらの筋肉を丹念にほぐし、緊張をゆるめることで、肩や首周辺の痛みを改善していきます。同時に、ブロック注射や痛み止めの内服薬などを用いながら症状をコントロールします。

多くの人は、こうした保存的治療で症状を軽減し、痛みを緩和できるようになりますが、保存的治療を約2~3ヵ月継続しても痛みなどの症状がひかない場合、あるいは、日常生活を妨げるほど大きな支障が生じている場合には、手術を検討します。

手術は、神経の通り道を広げる「椎弓形成術」や「内視鏡下椎間孔拡大術」、椎間板を摘出し、人工スペーサーや腸骨(骨盤の骨)を移植して固定する「前方除圧固定術」などが考えられます。

日常生活から予防!すぐにできる「首のトレーニング」

こうした頚椎のトラブルを予防するために、日常生活で気をつけるべき点がいくつかあります。

まずは、「いい姿勢を取る」ことです。特に、パソコンやスマートフォンを使用する際は、「同じ姿勢を長時間続けず、適宜休憩をはさむ」「猫背にならない」「骨盤を立てて座る」などを意識することは、スマホ首の予防になります。

そして、大切なのが「首の筋トレ」です。首の筋トレを行うことで、体幹がぶれにくくなり、スポーツのパフォーマンス向上にもつながります。

首の筋肉はとてもデリケートなので、それほど負荷をかけなくても鍛えることができます。ぜひ、これを機に毎日の習慣にしてみてください。

<頚椎症を予防するための簡単な体操>
・座ったまま、または立って足を肩幅に開いた状態で、両肩をめいっぱい上げすくめる。そのまま5〜10秒維持してから、ストンと力を抜いて肩を落とす

・肩甲骨を引き寄せるように両肘を背中側後方に動かし、肩甲骨を閉じるようにして5〜10秒キープし、ゆっくり肘を前に戻す。逆に腕を前に伸ばし、肩甲骨を開き再度5~10秒間キープしてゆっくり元に戻す。

<首を強化するトレーニング>

1.背中と首をまっすぐにしたまま、まずは額に手を当て、頭を前から押さえる。力をかけたまま10秒間キープする。このとき、手と頭が互いに均等の力で押し合うようにする。

2.次に両手を組んで頭を後ろから押さえ、10秒間キープし、先程と同様手と頭を均等の力で推し合うようにする。左右も同様に行う。

[図表5]首を強化するトレーニング2-1

[図表6]首を強化するトレーニング2-2

特に、「首を強化するトレーニング」は「アイソメトリクストレーニング」といい、筋肉を伸縮させずに一定の姿勢をキープして、最大筋力を発揮するトレーニング方法です。

簡単にどこでも行うことができますし、本人の出力以上に負荷がかからないため、筋肉や筋などを痛めることが少ないです。首は非常に繊細な筋肉なので、こうしたトレーニングにより短時間で効率よく鍛えるのがおすすめです。

頸椎症はストレスや運動不足をはじめ、加齢により男女ともにあらわれる「ホルモンバランスの変化」が引き金となって症状が出ることもあります。

いずれにしても、症状の悪化を食い止めるためには、できるだけ早く、最適な処置を取ることが重要です。首や肩の痛み・違和感を見逃さず、気になることがあれば早めに整形外科を受診するようにしましょう。

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こちらの記事の監修医師

横浜町田関節脊椎病院

越宗 幸一郎

川崎医科大学卒業。
■専門領域
・整形外科一般
・脊椎脊髄外科
・最小侵襲脊椎安定術(MISt)

■専門医・指導医・所属学会
・日本整形外科学会認定整形外科専門医
・日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
・日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医
・日本整形外科学会
・日本低侵襲脊椎外科学会
・最小侵襲脊椎治療学会
・日本脊椎インストゥルメンテーション学会
・日本側弯症学会
・中四国MISt研究会

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