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最終更新日:2022年8月17日

【患者急増中】「梅毒」の感染経路とは?どんな症状が出る?(※写真あり)

こちらの記事の監修医師
新宿サテライトクリニック
北岡 一樹

(写真=PIXTA)

性感染症の「梅毒」が爆発的に増加しています。梅毒とは何か。どのように感染し、どのような症状が現れるのか。自分やパートナー、周囲の人々を守るために知っておきたい知識を見ていきましょう。

なぜ梅毒が急増しているのか?

■性器挿入行為がなくても感染。コンドームをしていても油断大敵

梅毒は、スピロヘータという細菌(Treponema pallidum)によって引き起こされる感染症です。写真1のような形をしています。

[写真1]らせん状の細菌がスピロヘータ。
(写真=PIXTA)

 

梅毒の感染が急増していますが、明確な原因はまだ分かっていません。病気が増えたり減ったりしたとき、疫学研究という研究手法を用いて、その原因を探ることが行われますが、複数の原因が混在していることが多く、なかなか難しいです。

 

実は梅毒の感染が増加しているのは日本だけではありません。アメリカでも同様の傾向があります。CDC(米国疾病対策予防センター)の疫学研究によると、原因は、薬物使用の増加であると推察されています(1)。しかし、日本で同様の原因であるかは不明です。一方、梅毒は生来、非常に感染性の強い性感染症です。梅毒の皮膚病変にはT. pallidumが大量に存在し、わずか数個のT. pallidumが直接接触するだけで感染が成立します。したがって、性交渉における性器挿入行為がなくても感染し、コンドームをしていても病変を完全に覆えていなければ感染します。さらに梅毒病変においては、痛みがないことがほとんどで症状に気づかれないことが多いです。

 

これらのことから、一度流行り始めると、加速度的に流行すると考えられます。急増の原因としては、他にも様々な要因が考えられますが、この生来の感染しやすさも影響していると思われます。「気づかないまま、性交渉のわずかな接触でどんどん感染していく」という梅毒の性質に注意しておく必要があります。

梅毒の感染経路は?

■基本は性交渉時の接触だが、胎児への感染も

梅毒皮膚病変と直接接触することで梅毒に感染します。性交渉で触れる場所に皮膚病変があり、それが性交渉で伝播し、また性交渉で触れた場所に病変ができるということを繰り返していくため、性交渉によって感染していきます。病変と触れるだけで感染するため、感染に性器挿入は必須ではなく、コンドームをしていても病変が少しでも露出していれば感染します。また、T. pallidumは胎盤を通過するため、胎児への感染も起こります。

■性交渉以外で感染する可能性は低い

理論的には、梅毒皮膚病変に直接接触してしまえば、感染する可能性がありますが、基本的に、皮膚病変は性交渉を介して、性交渉で触れる場所にできていきます。性交渉以外で感染する可能性を過度に恐れる必要はありません。

梅毒の症状(※写真あり)

梅毒は進行具合によって症状が分かれ、一次梅毒・二次梅毒・三次梅毒があります。

■一次梅毒:性器、肛門、唇などの感染部位に「痛くないしこり」ができる

一次梅毒の症状は、下疳(げかん)と呼ばれる皮膚病変です。性交渉相手の梅毒皮膚病変と接触した場所が粘膜であればどこでも、粘膜でなければ傷があるとそこから、T. pallidumが侵入します。約21日(3-90日)の潜伏期間ののち(2)、下疳を生じます。したがって、下疳のできる場所は性交渉で接触する場所として性器が中心にはなりますが、口唇や乳房、肛門もあり得ます。下疳は、無痛性の丘疹(きゅうしん:数mmの皮膚の隆起)として現れ、すぐに潰れて潰瘍(数mmの皮膚の欠損)となります(写真2)。また、この下疳にT. pallidumが大量に含まれており、梅毒感染を引き起こす皮膚病変は下疳が中心となります。

[写真2]下口唇の硬性下疳
出典:佐藤武幸:思春期の性感染症医療の抱える問題点.日性感染症会誌,2009;20:80繰82.

 

~梅毒の下疳とサル痘の発疹は似ている?~

最近、話題の感染症としてサル痘があり、梅毒の下疳と症状が似ているところがあります。サル痘の発疹は、日単位で紅い斑点、丘疹、水疱(数mmの水ぶくれ)、痂疲(かひ:いわゆる「かさぶた」のこと)というように変化し(写真3)、かゆみ・痛みを伴うことが多いです。サル痘の水疱が潰れて潰瘍となることがあり、その際、下疳と似た形となりますが、サル痘は日単位で病変部位の形が変化していくこと、かゆみ・痛みがあること、梅毒の下疳は病変部の変化がないこと、かゆみ・痛みは基本的にないということで見分けることができます。

[写真3]サル痘による皮疹
出典:UK Health Security Agency(UKHSA), 14 May 2022

 

一次梅毒においては、下疳部位近くのリンパ節腫脹を伴うことが多く、片方だけのこともあれば、左右両方にあることもあります。下疳・リンパ節腫脹ともに、治療しなくても3~6週間以内に自然に治癒します。

■二次梅毒:全身(特に手足)に赤茶色のできものや発疹ができる

下疳の発生後数週間から数ヵ月以内に、二次梅毒となります。二次梅毒では、体幹、四肢、手掌、足底などに、バラ疹と呼ばれる対称性の紅斑または丘疹を来します(写真4)。これらも治療を受けなくても自然に消失します。また、バラ疹にはT. pallidumはほとんど含まれておらず、感染力は低いです。

[写真4]梅毒性バラ疹
出典:『梅毒の増加に直面して:解説と提言』(http://jssti.umin.jp/prevention/syphilis/03.pdf)
発行:日本性感染症学会・日本感染症学会・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本臨床微生物学会
[写真5]梅毒性乾癬:中心がかさかさと乾いた直径数ミリの暗赤色の発疹
出典:『梅毒の増加に直面して:解説と提言』(http://jssti.umin.jp/prevention/syphilis/03.pdf)
発行:日本性感染症学会・日本感染症学会・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本臨床微生物学会

■三次梅毒:心臓につながる血管に感染。死に至ることも…

三次梅毒においては、全身に肉芽種と呼ばれる、丸く盛り上がった発疹ができます。加えて、大動脈血管炎、大動脈弁閉鎖不全から左心不全となります。

 

さらに、どの時点であっても、中枢神経系が侵され、髄膜炎、脳卒中、全身麻痺、運動失調などを来す神経梅毒という状態になることもあります。

梅毒は病院に行かなくても治る?

治療しなければ、治ることはありません。ペニシリンという抗生物質が登場するまでは治癒方法がなく、感染した場合、一次梅毒、二次梅毒、三次梅毒と経過するか、途中で神経梅毒を発症し、死に至る病気でした。

■「症状が消えた=治った」ではない!?

一次梅毒や二次梅毒は治療しなくても自然に症状が消失します。それで勝手に治ったと勘違いしてしまうことがあります。また、治療を開始しても、治癒の判断基準は、症状消失ではなく、RPRと呼ばれる検査の数値です。基本的に、梅毒の症状の消失と治癒とは関係がないと思っておいてもらったほうが良いと思います。

■梅毒を放置するとどうなる?

症状は自然に消えたりしますが、治療しなければ治癒することはないため、放置すれば最終的には死に至ります。

 

また、梅毒は皮膚病変の直接接触で感染しますが、T. pallidumが大量に含まれ、他者への感染リスクが高い皮膚病変は、一次梅毒の下疳です。その時期を過ぎ、下疳が消失すれば、感染リスクは低くなるため、放置することで他者への感染リスクが高まっていくということはありません。

 

一方、妊娠している女性における、胎児への感染は、T. pallidumが血中に存在すれば起こりえます。梅毒に感染していれば、症状がなくても、T. pallidumは血中に存在するため、治療されず放置していると、胎児に感染してしまいます。梅毒が胎児に感染すると、胎児機能不全を引き起こし、発育不全・早産・死産の原因となります。また、出産できても、子供が先天性梅毒(産まれてから梅毒を発症する)になります。

無症状でも性感染症の検査を受けることが大切

■患者本人が感染に気がついていないケースも…

一次梅毒における下疳は、ほとんど無痛であり、自然に消失します。二次梅毒におけるバラ疹も無痛で、梅毒に特徴的とは言えない他の皮膚疾患でもありうるような紅斑・丘疹であり、自然に消失します。無痛であることが影響し、特に一次梅毒においては病変も局所に限定されるので、自分の性器を定期的に観察したりしていない限り、梅毒感染を見過ごしてしまいます。

 

梅毒においては、感染に気づきにくいということが非常に厄介です。通常の病気においては、症状が出現して、本人が気づき、病院を受診し、診断され、治療されるというサイクルを取ります。しかし、梅毒においては、症状が出現しても本人が症状に気づきにくいため、病院受診に至らず、知らないうちに病気が進行し、感染を広めてしまいます。

性感染症はそもそも「無症状者」が珍しくない

また、この感染に気づきにくいということは、性感染症では一般的です。有病率が高く、不妊などへの影響もあるクラミジアや淋菌は、半数以上が感染していても無症状です。HIVやHBVにおいても、感染初期はほとんど無症状であり、無症状であるうちに見つけることができれば、薬を服用することでそれぞれ致死的なエイズ、B型肝炎への発展を阻止することができます。

 

つまり、性感染症に関しては、一般的な病気と異なり、何らかの症状に気づいてから病院に受診するのではなく、無症状であっても、不特定パートナーとの性交渉がある方は、定期的に病院に受診し、検査する必要があります。

 

感染症領域で様々な制度において進んでいるのがアメリカで、感染症を国として監視・管理するCDC(米国疾病対策予防センター)という機関があります。加えて、USPSTF(米国予防医療作業部会)という機関があり、性感染症の検査含め、検査・予防についての啓蒙活動を国として大々的に行っています。それに比べて、日本ではそういった組織もなく、性感染症の検査を受けることが一般的ではありません。性感染症においては無症状な疾患が多いことから、病気を進行させず、感染を広げないために、もっと気軽に検査を受けていただくことが望まれます。

 

以上、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)の1つであるUpToDate(https://www.uptodate.com)をエビデンスとして記載しております。

 

【参考文献】

1)Kidd SE, Grey JA, Torrone EA, Weinstock HS. Increased Methamphetamine, Injection Drug, and Heroin Use Among Women and Heterosexual Men with Primary and Secondary Syphilis – United States, 2013-2017. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2019; 68:144

 

2)Sparling PF. Natural history of syphilis. In: Sexually Transmitted Diseases, Holmes KK, M ardh PA, Sparling PF, et al (Eds), McGraw-Hill, New York 1990. p.213.

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こちらの記事の監修医師

新宿サテライトクリニック

北岡 一樹

医療法人社団予防会新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学ファージセラピー研究所 招聘研究員

2013年三重大学医学部卒業。卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行ったのち、細菌学研究を志望し、名古屋大学大学院医学系研究科細菌学博士課程へ入学。様々な薬剤耐性菌の分子疫学研究に携わり、博士(医学)取得。培った細菌学研究のさらなる発展を求めて早稲田大学理工学術院で2018年から招聘研究員として研究を開始。

同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、2021年から、院長を務めている。社会実装を視野に入れ、臨床医学と基礎医学を繋ぐ、研究医かつ臨床医であることを目指し、現在は新規感染症治療法(ファージセラピー)実現の研究に注力している。

褥瘡感染、細菌性膣症、淋菌感染症、ESBL耐性菌感染症、さらにヒトだけでなく犬や猫の皮膚感染症への新規感染症治療法の実現を目指している。2022年5月に、犬猫の感染症研究費を集めるクラウドファンディングも実施し、成功を収めた。また医療情報の発信も予防会のコラムに加えて、クラウドファンディングをきっかけとして各種SNSで行っている。

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