最終更新日:2022年3月23日
症状はそっくりだが…「ただの気落ち」と「うつ病」との決定的な差【産業医が解説】

こちらの記事の監修医師
VISION PARTNER メンタルクリニック四谷
尾林 誉史

リモートワークの拡大によって多様な働き方が生まれる一方、コミュニケーションの分断によって「メンタル不調」に陥る人が増えています。しかし、それがただの気分によるものか、「うつ病」などの症状なのか、自分ではなかなか判断できません。そこで、VISION PARTNER メンタルクリニック四谷の尾林誉史院長が、「気分」と「病気」の違いについて、チェックリストを交えながら詳しく解説します。
リモートワークがもたらした「ゆとりなきコミュニケーション」
企業の産業医として、また市井の精神科医として勤めていると、多くの方々がメンタル不調に悩まされていることを日々痛感します。精神科医として、そのような方たちと接する機会が多いことは、その性質上、なにも特筆すべきことではないかもしれません。しかし、産業医としても同様の感想を持つことは、そこにはきっと意味があることなのだろうと、思わせられるのです。
いうまでもなく、コロナ禍におけるコミュニケーションの分断や、業務や職能の絶対的評価が、多くのビジネスパーソンの心を蝕んでいます。
リアルコミュニケーションの代替手段であるチャットツールやオンラインツールは、業務内容の伝達や業務進捗の把握には、それなりの機能を果たしているといえるでしょう。しかしそこには、いわゆる遊びや余白のようなものがなく、字義どおりの解釈が情報の大半になってしまう恐れがあります。
一方で、特に業務をアサインする側や進捗管理をする側にとっては、なぜ時間を自由に使えるのに、これだけ自己決定の余地があるのに、アウトプットや成果物がこの程度なのか、という管理上の不満が溜まりがちです。
しかし実際は、高度に時間管理が求められるがゆえに、脳のスイッチングコストは常に高止まりし、期待値と実態値には大きな乖離が生じてしまうのです。
ゆとりのないコミュニケーションや業務負荷の増大によって、メンタル不調の素地は否応無しに整ってしまいました。
もちろん、環境変化に適応できる方や、従前より、リモートワークをうまく活用していた方もいるため、その影響度は青天井ではないでしょう。
ハイブリッド型の働き方も大いに検討され始めているさなか、悪影響ばかりが議論されるのは、大変に極端なことかもしれません。
しかし、ただでさえ高度化した働き方に、追い打ちをかけるように登場したリモートワークの強要は、一定規模のビジネスパーソンに深刻な打撃を与えていることも事実です。
ボーダーラインは2週間?「うつ病」のチェックリスト
この新たな局面に、新たなメンタル不調が生まれ始めているのか?
その答えはNoです。症状の現れ方や訴え方には、人の数だけ違いがありますが、根底を流れる疾患概念やその治療法には、私は大きな変化はないものと考えています。
ここでは、比較的多くのビジネスパーソンに現れる、うつ病(抑うつ状態、うつ症状など、様々な呼称がありますが、ここでは端的にうつ病とします)の気付き方や捉え方について、改めて整理しておきたいと思います。
チェックポイントはいくつもありますが、特に以下の点に着目してみるとよいでしょう。
- なんとなく、鬱々としていないか
- 大好きなこと、趣味などにしっかりと打ち込めているか
- おっくうな感じ、面倒くさい気持ちに支配されていないか
- 睡眠欲や食欲、性欲などがしっかりとキープできているか
1.については、とても直接的な内容ですが、なんとなく気分が晴れない、どことなく不安な気持ちで過ごしている、そんな感覚があれば該当しているかもしれません。
2.については、アウトドアでもゲームやアニメでもなんでも構いません。ご自身が好きでやっていること、そこには何時間でも費やせてしまえることに、なんだか意欲が湧かないなと感じられる方は、要注意です。
3.は、具体的な行動面について、たとえば、食事をするとか、場合によってはシャワーを浴びるとか着替えをするとか、そんな日常的な動作に、このような感覚を伴う方は、注意が必要でしょう。
4.もとても直接的な内容ですが、とても大切なポイントです。これらすべてがキープできていない方は少ないかもしれませんが、どれかひとつでもキープできていない方は、意外と少なくないかもしれません。
これらの症状のいくつかが、2週間以上続いているようでしたら、心の水位はあまり高くないと思った方がよいでしょう。たとえば、「昨日嫌なことがあって、今日はなんとなく気分が悪いなあ」とか、「雨が降っているから、コンビニに行くのが面倒くさい」などと、一過性に現れるものは、正常な感覚ですので気にしなくても大丈夫です。
あくまでも、一定の期間、このような気分に支配されていることが重要です。
なお、類似の疾患に適応障害があり、確かにその症状は、うつ病の症状に似ています。しかし、適応障害は、“原因となるストレスが生じてから1ヵ月以内に発症するもの”と定義されており、明確なストレスが背景に多いことが知られています。
続く「憂うつ」…心理的ハードルの低い「誰か」に相談を
もしも憂うつな気分に一定の期間支配されていると感じる場合には、
1.家族や信頼できる友人知人、
2.職場の同僚や先輩(上司)、
3.職場の人事労務や産業医、
4.心療内科やメンタルクリニック
に相談することを検討してみてください。
1.から順に、相談するための心のハードルは上がるかもしれません。しかし、うつ病や適応障害などのメンタル不調は、真面目で、周囲への気遣いが絶えず、自分ひとりで抱え込みやすい人が、特にかかりやすいことが知られています。
より早い段階で、これらの人たちのサポートも得ながら、適切な環境へと調整を図ることや、場合によっては治療を開始することで、比較的速やかな効果が期待できます。
あなた自身の特性である、自分ひとりで解決策を見出そうとする姿勢は、とても賞賛に値しますが、周囲に頼ることの効用や意味を感じていただくことも、長い人生のなかでは大いに必要なことだと、私は考えます。
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こちらの記事の監修医師
VISION PARTNER メンタルクリニック四谷
尾林 誉史
精神科医・産業医
VISIONPARTNERメンタルクリニック四谷院長
1975年、東京生まれ。東京大学理学部化学科卒業後、株式会社リクルートに入社。リクルート時代、社内外や年次を問わず発生するメンタル問題に多数遭遇、解決に向けて付き添うなかで目にした産業医の現状に落胆するも、とあるクリニックの精神科医の働き方に感銘を受ける。
2006年、産業医を志し退職。退職後、弘前大学医学部に学士編入。東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。
現在、note、面白法人カヤック、ジモティーなど20社弱の企業にて産業医およびカウンセリング業務を務めるほか、メディアでも積極的に発信を行っている。
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