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最終更新日:2022年1月30日

不眠からうつ状態に…社員クレーマーの対応を間違えると【精神科医が解説】

こちらの記事の監修医師
 
遠山 高史(とおやま・たかし)

 
(※画像はイメージです/PIXTA)

再就職でクレーム対策室で働くセンター長が体調を崩しました。顧客からのクレームではなく、夜勤で働く職員の管理に手を焼き、うつ状態になってしまいました。センター長はどうすべきだったのでしょうか。精神科医が解説します。

目次

  1. 喜んでいた転職の3年後の夜には…
  2. 夜勤職員のメールに律儀に返事をした結果
  3. いらない情報を削除して必要な情報を集める
  4. 人に好かれようと思わないことの大切さ

喜んでいた転職の3年後の夜には…

流通関係の会社に30年ほど勤め、いくつかの関連の会社が合同で作った企業に再就職したB氏。給与の条件がよく当初は喜んでいた。

しかし、3年ほど勤めた、ある日曜の夜、寝てからほんの2時間で覚醒して、朝までまんじりともできず、布団から出ることができなくなった。わが人生はなんであったか、そろそろ、終わらせてもよいのでは、などと、の思いが、頭をよぎった。何とか起きたがすさまじい吐き気と脱力感で、また臥せってしまった。頭の中を一人の社員のことがぐるぐるめぐっていた。

B氏は温厚でまじめな働き者で、順調に出世し、支店長にまでなり、再就職の地位もセンター長である。顧客からの相談を受けることが主たる業務の会社である。とはいいつつ、要するにクレーム対策室であった。そこは、24時間対応する組織であり、夜間めったにクレーム電話はなかったが、それでも人が配置されていた。

夜勤職員のメールに律儀に返事をした結果

そしてめったにないクレームでも入ると、夜中でもB氏のところに電話が入る。夜勤はそもそも誰もがやりたくない。この数年、志願した夜勤専門の職員が2人いた。その1人のM氏は定年近い職員で、問題の対応力はなく夜中でもB氏に電話してきた。それは安眠を妨げたが、もう1人K氏はさらに厄介であった。夜間、クレームなどめったにないから、時間が相当にあり、ほとんどどうでもいい問題について細々長々とメールしてきた。

まじめなB氏はそれにいちいち返事をしていたが、勤務時間だけでなく、勤務外でもメールをしてきた。あまりに度を越えた執拗さでやってくるため、次第にK氏のメールに恐怖を感じるようになり。メールが来るたびに、胸がふさぐような気分になった。K氏こそ内部のクレーマーであった。

そして、ある日、K氏は、予想もしていなかった時間外手当を要求してきたのである。朝、仕事の終了時間を超えてメールした時間について時間外勤務として支払うように言ってきたのである。B氏は仰天した。そもそも、深夜チェックする人間もいないから、業務以外の副業めいたことをネットでやっていた人物でもある。時間内で十分できるだろう。

しかし、まとめて3年分支払われていないといってきたのである。B氏の上司である本部長に対応を相談したが、逆に、時間外のメールに返事などするからだと、対応のまずさを指摘された。そもそもB氏は徹夜で仕事をしても、まともに残業代をももらえなかった世代である。言い知れぬ怒りが沸き上がり、支払う義務はないと突っぱねたが、夜のメール攻勢はさらに激しくなり、労働基準局にも提訴され、ことは長期化することになった。

いらない情報を削除して必要な情報を集める

B氏はうつ状態になった。面倒な人物に取りつかれ、知らずに、相手のペースに巻き込まれるとB氏ようになることがある。こういったことは、昨今のネット社会でむしろ起きやすい。これは、五感を駆使し、リアルに話して得られる情報よりも、ネットでは同程度の必要な情報を得るためははるかに多く情報をあつめたうえで、削除を行わねばならない。

これに相当のエネルギーが必要なのだが、電機エネルギーの助けで、感じなくなっているのであろう。実は、エネルギーをより必要とするのは、集めることでなく削除することであるのだ。電子媒体から届く情報は電気エネルギーによっていくらでもやってくるが、削除をするにしても一括にとは行かない。結局生身の脳を使って行うことになり、脳のエネルギーを枯渇させ、その状態をうつ状態というが、うつ状態となると、更に、無駄な情報の削除ができず侵入を許してしまう。

脳の基本機能は情報を集めることではなく、削除することにある。情報は発信するより削除にエネルギーを要する。

大理石の塊から女神を作るためには削らねばならない。これと同じで、脳は圧倒的な外部情報のほとんどを削除し、残った情報を組み立て、思考を形作るのである。

人間の五感は、いらない情報を削除して、必要な情報を拾う装置である。何時間もかけて、ネットで情報を集めても、直に会って話せば3分で済む。視覚情報に特化したネット社会は実はひたすら情報を増やし、結果的に脳を疲れさせてゆきやすい。

さてB氏は、K氏からくる執拗な情報の処理にいたずらにエネルギーを費やして、脳が疲労させられていたと考えられないだろうか。K氏の中身の薄い情報も電気エネルギーの助けを得て執拗に伝えられることで、何か重要なことのように意味を帯びてくる。しかも、寝ている時間に届き睡眠を妨害する。

人に好かれようと思わないことの大切さ

今日、クレーマーに限らず、出勤したら何百通ものメールが入っているなどといったことは珍しくない。執拗に厄介な情報がやってくる。

実はB氏が赴任したころ、社内の様々な出来事を、K氏は細かくB氏にメールしてきて、それを重宝していた。その経緯もあって、いつの間にか、むげにK氏のメールを無視できなくなっていた。それに乗じて、Kは執拗にメールしてきた様子である。発信するK氏の脳はさしたるエネルギーを使わないが、それを削除する側のB氏の脳はより多くのエネルギーを必要とする。クレーマー対策が大変なのはこの辺の事情もある。

脳のエネルギーを枯渇させない方法は余計な削除でエネルギーを無駄遣いしないことである。しかし、B氏には弱点が一つあったと考えられる。「人に好かれたい」という願望が強かったのである。好かれたいがゆえに人に親切にするという心理は特に日本人に多く、またまじめな人ほど多い(フロイトがそう言っている)。

こういう人に限って、ノーということが苦手である。ノーと言ったら、嫌われるじゃないかと恐れるのである。そして、たいていのことを引き受けて、くたびれ果ててしまう。対人関係でこじれたら、相手に好かれようと思ってはならない。変な情報は何であれ無視するのはネット社会の鉄則となっている。それが省エネなのだ。ノーというのは、エネルギー使用の少ない情報の削除の方法である。

ただ、ノーとばかり言い続けると、孤立化する可能性がある。これについては、別の機会に解説したい。

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こちらの記事の監修医師

 

遠山 高史(とおやま・たかし)

精神臨床医
精神臨床医歴45年。新潟県出身。自治体病院長を経て、東京近郊で心療内科を開業。第12回千葉文学賞受賞、時々農民をやっている。

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