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最終更新日:2022年9月18日

部下のメンタル不調を防ぐには?「パワハラになるコミュニケーション」の例② ~コミュニケーションギャップを生む背景

こちらの記事の監修医師
合同会社パラゴン
櫻澤 博文

(写真=PIXTA)

今、パワハラ対策は喫緊の課題

大企業には2020年から、中小企業にも2022年から「労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」が課せられています。そんな中、喫緊の課題となっているのが「上司によるパワハラへの対策」です。厚生労働省が「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で示したケア方法の一つ、「管理職による支援(ラインによるケア)」の実行力を各段に向上させるには、どうすればよいのでしょうか? トーマス・ゴードンが区分した「12の悪いコミュニケーション」を基に解説します。

今回見ていくのは、「3 助言、提案、解決策の呈示」「4 論理的に説得、解説のうえ同意を得る」そして「5 説教」。一見するとよさげな、というより誰もが実施していることなのに、なぜ「悪いコミュニケーション」に該当するのでしょうか? 以下で、事例を通して理解しえる内容にしました。

3 助言、提案、解決策の呈示(Giving advice, making suggestions, or providing solutions)

これを読んで、「あれ!? なんでいけないの!?」と思った方は多いでしょう。私もそうでした。意訳すると「一方的な解決策の提案」であり、前回紹介した「1 命令・指示」に近い概念です。

 

〈事例〉~電話帳を片手にかたっぱしから電話営業をかける、昭和時代のような会社にて。法定通りの休憩時間(60分間)を取得できなかった駆け出し営業職・山田君。

部下・山田:「荒居先輩! 弊社の営業電話、ガチャ切りされ続けていますよ(と悲痛な声で…おおっと山田君、演技力がついてきた)」

上司・荒居:「ヤーマダー! お前はヒットを打とうとしているから相手に警戒されるのだ。いきなり産業医を交替するようなブラック会社があるかいな。職場でワクチン接種できますよ、から斬りこまないか!」

 

【解説:なぜ悪いのか?】

その上司は、たまたまうまくいっていたにすぎない場合があります。電話営業では、声の抑揚、音質も影響します。何より今や電話帳をかたっぱしから営業かけるスタイルがいただけません。迷惑な会社だと社会的名誉(があれば)が毀損されかねません。

4 論理的に説得する、解説のうえ同意を得る(Persuading with logic, arguing, or lecturing)

〈事例〉~電話営業で『豊健康経営V2.0』という新サービスへの乗り換えを促す、駆け出し営業職・山田君。このままのペースでは残業せざるを得なくなります。自分自身はワークライフバランスを確保している上司の荒居さんに、とある疑問を投げかけると…

部下・山田:「先輩、いくら当社の『豊健康経営V2.0』(=産業医の代わりに保健師に産業医の業務をさせるスタイル)にすれば会計上は豊かになるからといって、保健師への報酬を支出する分、出費が増えるんじゃないですか?」

上司・荒居:「産業医に支払うようにするからだろう! 知っているだろ、うちの産業医は契約書を交わしたかも覚えていない老いぼれなんだから、支払わなくて済むのだよ。

『名ばかり』のままにしておけば、それまでの産業医に毎月払っていた報酬が3万円だとすると、保健師には時給3千円しか渡さないのだから、3時間働いてもらっても2万円以上のお釣りがくるだろうが。うち半分がこっちの取り分。その半分が、ヤーマダ! お前の給与になるのだからな! わかったか! とにかく、うちに、乗り換えさせろ!

 

【解説:なぜ悪いのか?】

この事例では、上司は「部下は合理的に考えることができないもの」と思い込みをしています。部下は、そもそもこういったビジネスモデルは、法的に問題ではないのか?と疑問を呈している中、そこを汲み取れていません。

最近の自動車会社事例を筆頭に、チャレンジを敷いた電機会社等、偽装、偽証、捏造、捏造と安全や品質面での欺罔(きもう)行為が相次いでいる背景には、ひょっとしたら、一見すると問題ないような「3 論理的に説得、解説のうえ同意を得る」とともに、この「4 助言、提案、解決策の呈示」も、本質安全という根っこレベルからの(遺伝子レベルからの)本質改善にはつながっていない実態があるものかもしれません。

5 説教;すべきことを伝える(Telling people what they should do; moralizing)

〈事例〉~上記に引き続き、昭和時代の営業を強いられている駆け出し営業職・山田君。上司に「報連相」しているものなのに、具体的な解決方法を教えてもらえず、相談しても無駄だと諦めモード。定時の18時を過ぎても黙々と電話をかけるも、身が入らないまま1時間近く経過してしまい…。

上司・荒居:「(イライラしたそぶりで)ヤーマダ! お前、残業申請していないのに、なんで残業しているのだ! それではブラック会社と変わらないだろうが!(と、前回解説した「2 脅迫」も実施する荒居氏)」

部下・山田:「先輩! 午前中、“その調子だと残業してもらうからな!”と言っていましたよね」

上司・荒居:「ヤーマダ! ビジネスの基本は何だ!? 『報連相』というだろうが。どうしてお前は、定時になる前に、今日の成績を報告しないのだ。お前ひとりができなかった分、誰か支援が必要になるだろうが」

部下・山田:「……。(この人、まるでわかっていない。これでは心が折れる…思いっきりブラックだ…)」

 

【解説:なぜ悪いのか?】

事例で提示したように、互いが完全にすれ違っています。つまりコミュニケーションギャップがあるために、そもそもコミュニケーションになっていないのです。

確かに「報連相」は社会人の基本ですが、その、その「報連相」さえもさせなくなるような抑圧、抑止、静止効果が、今回紹介した「3 助言、提案、解決策の呈示」「4 論理的に説得、解説のうえ同意を得る」そして「5 説教」に共通して発生しえることをご理解いただけたのではないでしょうか。

 

さあ、他人事とは思えない「駆け出し営業職・山田君ものがたり」。彼はどのようにピンチを切り抜けるのでしょうか。そして上司の荒居氏は、相次ぐ落とし穴にはまったような管理をしていて、次回以降も「人間関係を損なう不用意な発言」を8類型も繰り出します。

次回は「6 反対、批評、批判、非難」、「7 同意、承認、賞賛」、「8 侮辱、愚弄、レッテル貼り」を紹介します。6と8は悪い対応であるとわかりますが、7は何がいけないのでしょうか? 他山の石として、お楽しみに。

 

※参考文献:トーマス・ゴードン著、近藤千恵訳『ゴードン博士の人間関係をよくする本 自分を活かす 相手を活かす』(大和書房、2002年)

※注:事例はフィクションであり、実在する組織や団体、商品内容、人物とは似ているものがあったとしても非なるものです。

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こちらの記事の監修医師

合同会社パラゴン

櫻澤 博文

医師、労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会指導医、メンタル産業医学の創設者。

産業医科大学医学部卒業、京都大学大学院社会健康医学修士号や医学博士号を取得。

その後世界的ITコンサルタント会社にて、時給10万円もの経営コンサルタントから把握し得たハイパフォーマンスの実現方法を分析。

うち「早寝・早起き・朝ご飯」という滋養作用には、確かにストレス耐性を向上させる効果が把握し得たので、複数の英文学術誌が紹介。

「運動」による強壮効果については指導員資格取得やスキーレース大会出走と自身の肉体を通じて検証中。

2013年プロフェッショナル産業医のみを集めた職能集団 合同会社パラゴンを設立し、企業に対して「ストレスをプログレスに」「正しいことを正しく」「best among the best」を主是とした「健幸経営」という労務、人的資産(人財)管理を産業医として提供中。

広く市民にもアンチエイジング効果ある認知症支援方法を以下の書籍、メディアや講演などを通じて提供中。

【主要書籍】
『働きやすい職場づくりのヒント』(金剛出版、監修・共著)
『もう職場から“うつ”を出さない』(労働調査会)
『メンタル不調者のための復職・セルフケアガイドブック』(金剛出版)
『「メンタル」産業医入門』(日本医事新報社)

遺言作成時の立会や不動産譲渡時の認知機能評価サービスも展開し、相続の争族化防止という公益性ある支援にも邁進している。