最終更新日:2022年11月5日
月曜日が来ないことを願う…44歳男性・年収1,000万円超でも「うつ病」と診断された理由

こちらの記事の監修医師
ゆうメンタルクリニック
安田 雄一郎 病院長

高収入であれば人は幸せなのでしょうか? 本記事では、有名一流企業に勤め年収1,000万円超の44歳男性が精神科で治療を受けることになった理由とその具体的な治療方法をみていきます。
お金持ちは本当に幸せなのか?
「お金さえあれば、もっと幸せなのに」
「人生で成功すれば、もっと気持ちよく生きられるはずだ……!」
多くの人がそんな気持ちを抱いていると思う。自分も学生のころから、ずっとそう思っていた。
でも実際、どうなのだろうか。お金を持つことは、果たして幸せなのだろうか? 莫大な富があれば、人間は幸せだといい切れるのだろうか? 自分自身、メンタルクリニックで精神科医として働いている。そんななかで多くの患者さんを診察しているうちに、どことなく答えがみえてきた部分がある。
有名一流企業勤務、年収1,000万円超の44歳男性
ここで話す患者さんには、特定のモデルがいるわけではない。ただ、多くの患者さんのエピソードを、プライバシーに配慮しつつ、変更・合体してできた、架空の人物の話だと思ってほしい。
その患者は、田中健志さん。44歳。誰もが聞いたことのある一流企業に勤め、出世を重ねて、現在は年収は1,000万円を超えていた。日本人のうち上位5%に当たる年収だ。誰もがうらやむ立場だと思う。
しかし彼は、メンタルクリニックを訪れていた。主訴は「会社にいけなくなってしまった」こと。特に入社したときは、月曜日が楽しみ……とまでは行かないが、新しく始まる一週間にワクワクしていた部分もあったそうだ。
しかしいまは、ただただ苦痛。日曜日はひたすら家にこもり、月曜日が来ないように願っているそうだ。また2ヵ月前から睡眠も取れず、食事量もどんどん減ってきていた。特に以前から映画を見るのは趣味だったそうだが、最近は映画をみても一切楽しいと思えなかった。なにより、映画配信サイトを開くことすら苦痛になってきた。
さすがにおかしいと思って、当院の門を叩いたのだ。
うつ病の具体的な治療方法
診察し、話を聞き、うつ病の尺度であるCESDなどのテストも施行。中等度のうつ状態であると判断された。治療として抗うつ剤の処方を提案。抗うつ剤はすぐに効くものではないが、だいたい2ヵ月前後を目安にゆっくりと効果を持ってくる。焦りは禁物だ。
また休職を勧めながら、同時に無理のない範囲で運動などを勧めた。その後少しずつ改善をみせ、表情にも明るさが戻ってきた。閉じかけた花が再び咲いたような雰囲気だった。
ではいったいどうして彼は、うつ病になってしまったのだろうか?
収入が倍になれば幸せも倍?
もちろんうつ病になるのには、様々な要素がある。ただ今回は「年収1,000万円」という要素にだけ話をしぼってみたい。年収1,000万円もあれば、果たして人は幸せなのか。うつにはならないのか。
答えはNOだ。
ここで「価値関数」という話を知っているだろうか。人間の感じる、主観的な嬉しさは、得られるものの客観的な値段に正比例しない。価値があがるにつれて、どんどんその感じ方は鈍くなっていくのだ。
たとえば1万円をもらうと嬉しいだろう。当然だ。では2万円をもらった場合は? いやもちろん嬉しいだろう。それはわかる。しかし果たして2倍嬉しいか? おそらくそんなことはないだろう。せいぜい1.2倍とか、いっても1.5倍とかだろう。感じ方はどんどん鈍くいくものだ。
もっと大きな額で考えてみてもいい。1億円をもらう。もちろん嬉しいだろう。当然だ。自分もほしい。では2億円だったら? やはり1億円の2倍嬉しい、ということもない。1億円と、ほぼ大差ないのではないだろうか。重ねて人間の感じる嬉しさは、どんどん鈍くなってしまうのだ。
そのため、たとえ年収が1,000万円であったとしても、年収500万円の倍嬉しいわけではない。年収200万円の5倍嬉しいわけでもない。結局、高くなるほど感じ方は鈍くなってきてしまい、比例的な喜びがあるわけでもなくなる。
くわえて累進課税。さらに多くの税金が取られてしまう。結局のところ、得られる喜びは、年収1,000万円だろうが、年収200万円だろうが「いうほど大差がない」のだ。
しかも年収が少しでも高くなると、人はそれにあわせて生活レベルを上げてしまう。住む家、食べるもの、着る衣服……。すると一度でもレベルを上げると、簡単には下げられない。そして少しでも下げてしまうと、その落差から、強い不幸を感じてしまう。これらもうつになる要因のひとつになりえるのだ。
まとめ
年収が高いからといって幸せとは限らない。
もちろん生きていれば、お金は重要だ。それは同意する。しかしそれだけで幸せになれるわけでもなければ、それだけでうつにならない、というわけでもない。それはまず知っておこう。
それこそが健康的に生きる第一歩だ。
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こちらの記事の監修医師
ゆうメンタルクリニック
安田 雄一郎 病院長
精神科医。
東京大学理科Ⅲ類に入学し、同大学医学部卒業。
「つらいときに、すぐ」受診できる心療内科「ゆうメンタルクリニック」と皮膚科・美容皮膚科の「ゆうスキンクリニック」を設立。
現在 都内・大阪にグループ12院を展開する。
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