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最終更新日:2022年4月15日

「歯を鍛えることはできる?」健康な歯を長持ちさせる必須知識

こちらの記事の監修医師
東京医科歯科大学病院 歯科総合診療科
礪波 健一

(画像=stock adobe.com)

人生100年時代。少しでも長く健康に暮らしたいと考える方は、決して少なくないでしょう。筋肉や骨を鍛えれば要介護予防につなげることができますが、「歯」はどうでしょうか。「歯を長く使う」ためにどうすべきか、歯科医が解説していきます。

骨や筋肉は適度に負荷をかけると増強されるが…歯は?

最近、インターネット上の健康関連の記事で「ロコモ」というキーワードをよく目にします。

「ロコモ」とはロコモティブシンドロームの略で、筋肉、骨、神経といった身体機能が、加齢にともない衰えた状態のことです。健康状態と要介護状態の中間的な段階で、この段階で適切に運動や食事などの生活習慣を管理すれば、要介護予防になると注目されています。

加えて、身体の機能は使われているところが維持・増強されますので、「ロコモ」になる前から適度な運動の習慣を持つことも推奨されます。ですので、働き盛りの年齢からワークアウトなどの習慣がある人は、要介護予防という点からも有利といえます。

ところで、骨や筋肉は適度に負荷をかけることで増強されますが、同じ理屈は「歯」にもあてはまるのでしょうか。言い換えれば、歯は鍛えることができるのでしょうか。

答えは残念ながら「NO」です。

歯は鍛えられないワケ

その理由は、歯(の硬い部分)には血管が通っていないことにあります。

血管は身体のすみずみまで必要な物資を送り込む広大な物流網です。この物流網から必要物資をやりとりして、常に各パーツを新しくすることで身体は生命を維持しています。

この入れ替わり周期は、例えば胃の粘膜は約3日、皮膚は約4週間、筋肉は約2ヵ月、骨は約3ヵ月ぐらいです。若い人なら3年程度、高齢者でも5年から10年周期で身体のほとんどが入れ替わると言われています。

この入れ替わり、身体の物資のやりとりは新陳代謝と呼ばれ、血管物流網に支えられています。骨が新陳代謝できるのは、硬い組織の中に血管が網目状に張り巡らされているからなのです。

だから、ぶつけたりしてもちょっとしたひびぐらいなら、気が付かないうちに治ってしまいますし、例え骨が折れたとしても、ちゃんと固定して安静にしておけば、数ヵ月でもとどおり繋がります。

それでは、骨と同じ硬い組織である歯はどうでしょうか。

歯も内部にある神経(歯髄)の小部屋までは血管は通っていますが、その歯髄が物流網の終点です。歯の硬い組織の中には血管が通っておらず、そのため歯そのものは新陳代謝していません。

これが何を意味するかというと、あなたのお口の中にある6歳臼歯(第一大臼歯。前から数えて6番目の歯。6歳で生えてくることが多いのでそう呼ばれています)は、小学校の入学式当時のものをそのまま使っているということです。

もし、あなたが36歳だったら、骨や筋肉、皮膚、内臓すべて数ヵ月毎にリニューアルされているのに、歯だけは築30年ということになります。

さらに由々しき問題があります。歯はワークアウト的な力等の刺激を与えても、代謝がある骨と異なり増強されない点です。

つまり、鍛えることができない。それどころか、力のかけかたによっては、使えば使うほど歯の寿命が短くなっているかもしれないのです。

「歯の寿命は使えば使うほど縮む」ワケ

これは疲労破壊という考え方で説明されます。

例えば、交通事故などで歯が折れてしまったとします。なぜ、折れてしまったかというと歯の強度よりも大きな力がかかってしまったからですよね。では、壊れるほんのちょっと手前の力が歯に加わったとき、歯は無傷でいられるでしょうか。

目で見てはっきりわかるような壊れ方をしないしても、中にダメージが残っていそうですね。たとえば見えないひびが入っていたり。ひびの大きさによっては、次に力がかかったときに、もっと弱い力でも歯が折れてしまうこともあるかもしれません。

このように、1度に破壊がおこらない弱い力を繰り返し、繰り返しかけることで、物が壊れることを疲労破壊と言います。

疲労破壊が生じるメカニズムとしては、物を破壊しない比較的弱い力でも内部にできた傷に繰り返し力が作用することで少しずつひびが拡大していく、力を支えきれなくなるまでひびが大きくなったときに一気に破壊がすすむ、ということが言われています。

飛行機の墜落事故の調査の結果、原因が尾翼の金属疲労による破壊であった、というニュースが過去にありましたが、金属だけではなく歯でも疲労破壊が生じることが研究で確認されています。

さきほど申し上げたように、骨は新陳代謝しているので3ヵ月もすれば内部にできたひびは一掃されます。

しかし、歯は新陳代謝していません。

小学校のときになにかのはずみでできた歯の内部のひびは何十年たっても歯の中に残ったままです。そして、ある程度以上の力がかかるたびに、少しずつ大きくなっている。そう考えると、歯は使えば使うほど弱くなっていると言えるかもしれません。

歯を「長く使う」には…

それでは、歯をなるべく長く使うにはどうしたらよいのでしょうか。

歯に材料力学をあてはめて考えてみましょう。金属のばねを想像してみてください。

ばねは力を加えると伸びて、力を抜くと元の形に戻ります。でも、思いっきり伸ばしてしまうと、その後力を抜いても元の形には戻りません。変形が残ってしまいます。ですので、ばねを長持ちさせて安定して使うには、変形が残らない、ほどほどの力で使う必要があります。

歯は金属よりも瀬戸物に近く、脆い性質を持っています。どういうことかというと硬くて変形しにくいけれども限界以上の大きな力を加えたとき変形が永久に残るよりは壊れてしまう、割れてしまうということです。

その一方で、限界以内の力の変形であれば壊れず元に戻る性質も備えていますので、ばねと同じくほどほどの力で使っていれば破壊が進まず長持ちする可能性があります。

こう考えると、歯をなるべく長持ちさせるには、手加減して使い必要以上に大きな力を加えない、衝撃は避けることが肝要といえます。

わが国が人生100年時代に向かう一方で、我々の口の中にある歯は新陳代謝の後方支援もなく1日1000回の咀嚼に耐えています。

「腹も身の内」という言葉がありますが、「歯」も身の内、末永くご自身の歯で食事や会話を楽しむために、こうした歯の性質をご承知いただき慈しんで使っていただくことがお役に立つと思います。

https://www.tmd.ac.jp/dent_hospital/medical/shikasougou.html

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こちらの記事の監修医師

東京医科歯科大学病院 歯科総合診療科

礪波 健一

ジャパンオーラルヘルス学会歯科ドック認定医・予防歯科認定医/公認心理師。東京医科歯科大学歯学科卒業し同大学院に進学。大学院修了後、同大学病院歯科総合診療科に勤務し現在に至る。全国から歯科難症例が集中する本院は、複雑な症状を訴える患者さんが多く、医学的観点のみならず心理社会学的な分析スキルを用いた診察が必要となる環境に身を置く。初診の現場では多様な患者さんのニーズにこたえる全人的歯科医療を展開しており、これまでに得られた20年間の知見を社会還元すべく教育、研究にも携わっている。

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