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最終更新日:2021年8月31日

むし歯の「古傷」はなぜ痛むのか?

こちらの記事の監修医師
ななえ歯科クリニック
内野 博行

むし歯の「古傷」はなぜ痛むのか?
(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

前回は、むし歯の無い歯の痛みの原因についてのお話でした。今回は、過去に神経を取っている歯の痛みについてのお話です。神経を取った歯はもう二度と痛まないはずだと思う方も多いのですが、実は神経を取った歯ほど、後々トラブルを起こしやすいのです。今回は、忘れた頃にやってくる、歯の古傷の痛みの原因と対処法についてアドバイスいたします。

目次

  1. 気象病としての「歯痛」
  2. 「歯の古傷」とは?
  3. 「歯の古傷」が痛みだす理由
    1. 歯の古傷が痛んだ時の対処法

気象病としての「歯痛」

台風や低気圧が近づくと、頭痛や神経痛、古傷の痛みを引き起こすことは、近年「気象病」として広く認知されるようになってきました。

「木(こ)の芽どき」という言葉が昔からあり、木の芽ぶきの季節である3月、4月は、心身の不調を招きやすいから特に気を付けるよう、人々を戒めていたのです。「木の芽どき」は「三寒四温」ともいわれ、温かい日と寒い日が、また低気圧と高気圧が交互に現れ「気象病」を引き起こしやすい時期でもあります。

続く5月は晴天が続きますが日中の寒暖差が大きく、進学や就職、転居などの社会的ストレスなども重なり、いわゆる「五月病」にまで進んでしまう可能性もあります。

こうした時期は、実は歯の不調も招きやすく、前回お話ししたストレスによる「歯の捻挫」以外にも、過去に神経を取る治療をした、いわゆる「歯の古傷」が痛みだすスイッチが押されやすい季節でもあるのです。

「歯の古傷」とは?

「むし歯の多い世代」と「むし歯の少ない世代」は、昭和50年生まれを境におおよそ分かれています。昭和50年に何が変わったのかは、また別の機会にお話しいたしましょう。

さて、この記事の想定されている主な読者層は、40歳前後とお聞きしましたので、神経を取った歯を持つ読者の方はそう多くはないでしょう。いっぽう、その親の世代は前回お話しした「雨やどり」世代であり、神経が残っている歯のほうが圧倒的に少ない、「歯の古傷」をたくさん持つ世代でもあります。

もちろん「むし歯の少ない世代」とはいえ、歯の神経を取らざるを得ないほどのむし歯を作ってしまうこともあります。生えてから数年の若い永久歯の場合、2~3年もあれば神経に達するむし歯を作ってしまうことも珍しくありません。

若い男性に多くみられるのは、中学高校とスポーツに熱心に取り組んだ結果作ってしまうむし歯(私は「アスリートむし歯」と勝手に呼んでいますが)です。特徴的なのは、6歳臼歯にはむし歯の形跡がほとんど見られないにもかかわらず、その前後の12歳臼歯に神経に達するようなむし歯を作っていることです。

むし歯の原因については、また稿を改めて詳しくお伝えしますが、「アスリートむし歯」に心当たりのある方は、一度ご自分のお口の中を覗いてみてください。銀色の被せものがあれば、「歯の古傷」持ちの可能性があります。

「歯の古傷」が痛みだす理由

神経を取らざるを得ない程のむし歯とは、歯髄と呼ばれる部分まで細菌の感染が過去に起きたということを意味します。歯科医師は、歯髄の処置をした後、細菌が生息できるスペースが無くなるよう歯の根っこの先(根尖)の封鎖に努力します。

ただし、この処置は目視で確認しての処置ではなく、ブラインドの処置となるため、ごくまれに細菌の生息スペースが残ってしまうことがあります。それが原因となって慢性の病巣(根尖病巣)を作ることがありますが、普段はほとんど無症状で経過します。慢性の炎症だったものが、気圧の変化などのきっかけで急性化の引き金が引かれることがまれにあるのです。

根尖の病巣はせいぜい小豆大ぐらいの狭いスペースであり、かつ歯槽骨に囲まれた柔軟性に乏しい空間ですから、痛みとしては相当強いものなります。痛みを引き起こす刺激として、炎症に伴って放出される抗炎症物質が、痛覚神経をどれぐらいの強さで圧迫するかで痛みの強度は決まりますから、膨張の余力の少ない尿管が結石で詰まった尿路結石発作と同様に、冷静でいることができず、時には救急車を呼びたくなる程の痛みを起こすのが、硬い組織に囲まれた歯の痛みの特徴なのです。

歯の古傷が痛んだ時の対処法

こうした急性症状を呈した「歯の古傷」の応急処置として、多くの歯科医は冠を外し、根管を開放して減圧を図ろうとするのではないでしょうか?ただし、こうした処置はかなりの痛みを伴う処置となります。

「腫れ物に触る」という慣用句があるように、腫れた部位を触るのは慎重でなければなりません。私の臨床の場合は、治療途中の歯で根管の開放が容易な場合を除き、基本的には、急性期には痛みのある歯を触らないようにしています。抗生剤および消炎鎮痛剤の投薬と安静休養を保ち、急性期を「やり過ごす」ようにとアドバイスしています。

約一週間の急性期が過ぎれば、多くが以前と同じように噛める状態に戻ります。したがって、冠のやり替えおよび再根管治療を薦めることは、私のクリニックではほとんどありません。同じ歯が次に急性症状を起こすのは、「患者さん自身が今回のことを忘れた頃でしょう」とお話ししています。「忘れた頃」ですから、少なくとも数年先、場合によっては10年以上先にまた痛むことがあるかもしれませんということです。

先に起きる急性症状にも、大波小波がありますから、噛むと痛い程度の「小波」がその間に何度かあり、そのうちに急性症状としては「大波」である腫れや激痛を伴うものが訪れる可能性があるということです。これは、冠を外し再根管治療をしたとしても、再発の可能性をゼロにはできないことを考えれば「労多くして功少ない」治療になりかねません。

再発の可能性を確実にゼロにする治療法は、その歯を抜歯することですが、当然ながら抜歯を急ぐ必要はありません。患者さん自身が鬱陶しいと思うほどの頻度で急性症状を起すようになったら、その時に抜歯を考えられてもいいでしょうとお伝えしています。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはよく言ったもので、ほとんどの患者さんは痛みがあるときは抜歯を希望されていても、痛みが治まると現状維持を希望されます。患者さんにとって大事なのは、お口の中で起きている痛みや腫れの原因を知り、その後どのような経過をたどるかを知ることなのです。

最初にお話ししたように、多くの患者さんは新たにむし歯が出来たと思い込んで来院されますが、過去に神経の処置をした「歯の古傷」が痛むことがあるということをお伝えし、おおよそ一週間の転帰で急性症状は治まることをお伝えすれば患者さんは安心されます。

患者さんの痛みは、不安で増幅されますが、安心で和らげることができます。これはまた「功多くして労少ない」医療でもあります。「折合う健康・見守る医療」は私の医療者としてのモットーでもありますが、みなさんも患者さんとして「折合う健康」を考えてみられてはいかがでしょうか?

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こちらの記事の監修医師

ななえ歯科クリニック

内野 博行

歯科医師。臨床経験は40年と少々。1954年長崎県生まれ。 「見守る医療・折合う健康」をモットーに、日々臨床に取り組んでいます。
また診療の傍ら、こだわり系の育児情報誌健康情報誌の記事担当を25年ほど前から続けてきました。 北は北海道から南は沖縄まで、養護教諭向けの講演も多数。

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