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最終更新日:2022年4月24日

医師が教える「おなかの脂肪が減らない」原因…「睡眠不足」と「内臓脂肪の蓄積」

こちらの記事の監修医師
星槎グループ医療・教育未来創生研究所
大西 睦子 先生

(写真=PIXTA)

運動しても、食事に気をつけても、おなかの脂肪が減らない…という悩みはありませんか? おなかの脂肪は「内臓脂肪」といわれる胃や腸などの臓器のまわりにつく脂肪で、蓄積するとポッコリと張り出してきます。内臓脂肪は、心臓病や代謝性疾患などの生活習慣病と関係が強いとされています。

このたび、米メイヨー・クリニックの研究者らは、「食物に自由にアクセスできる環境において、睡眠不足は食べるカロリーを増やし、結果として脂肪、特に不健康な内臓脂肪を蓄積する」ことを明らかにし、2022年4月の米心臓学会(ACC)が発行する学術誌「Journal of the American College of Cardiology」誌に報告しました。私自身、興味津々のこの報告、さっそく皆さんにシェアさせていただきます。

※1 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35361348/

日本は「睡眠不足」大国

米疾病対策予防センター(CDC)の調査によると、米成人の3人に1人が毎日十分な質の良い睡眠をとれていないそうです。原因は、ストレス、仕事のしすぎ、シフト勤務(遅番・早番、頻繁な交代勤務など)、睡眠習慣が悪い(テレビ、ビデオゲーム、スマートフォンなど)あるいは夜遅くに食べすぎることなど、実に多くの要因が絡んでいます。

睡眠不足の問題は米国人だけではありません。2013年の全米睡眠財団による、米国、カナダ、メキシコ、英国、ドイツ、日本の6ヵ国における、25〜55歳を対象とした調査によると、日本人が最も睡眠時間が少なく、平均6時間22分でした。日本は睡眠不足大国なのです。

※2 https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/insomnia/symptoms-causes/syc-20355167

※3 https://www.sleepfoundation.org/professionals/sleep-americar-polls/2013-international-bedroom-poll

 

そんな中、これまでの研究で、睡眠不足の肥満のリスクがますます明らかになってきていました。

たとえば、米国立精神衛生研究所の500人の若者を対象にした13年間の追跡調査によると、睡眠時間が6時間以下の若年成人は、肥満度を表すボディマス指数(BMI)が、7.5倍も高まりました。1024人の成人を対象にした、スタンフォード大学の疫学研究では、睡眠時間とBMIにU字型の関係を認め、7.7時間の睡眠の対象者が、BMIが最も低く、睡眠時間が短い人、長い人は徐々にBMIが高くなりました。

ただし、睡眠不足が、体のどの部分の脂肪に影響するかという研究はありませんでした。そこで、メイヨー・クリニックの研究者らは、食物に自由にアクセスできる環境において、睡眠不足が、エネルギー摂取量、エネルギー消費量、そして体のどの部分に影響するのか調べました。

※4 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK19961/

※5 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15283000/

※6 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15602591

睡眠不足は「不健康なおなかの脂肪」を増やす

研究の参加者は、肥満でない健康な12人(男性9人、年齢範囲19~39歳)です。募集は、メイヨークリニックのウェブサイトとClinicalTrials.gov(臨床試験の登録機関である。米国国立衛生研究所の国立医学図書館〔NLM〕が運営)に掲載された口コミと広告によるものでした。応募者は、事前スクリーニングの電話インタビューの後、最初の基準を満たすと、適格性を確認するために一晩スクリーニングを受けました。

その後、参加者は21日間にわたり2回入院しました。1回目の入院後、3ヵ月のウォッシュアウト期間(1回目の入院の影響をなくすための期間)があります。

1回目のセッション(入院)は、「通常の睡眠(コントロール)のグループ」、または「制限された睡眠(睡眠制限)のグループ」に無作為に割り当てられました。そして2回目のセッション(入院)は、その反対に割り当てられました。いずれのセッションでも、最初の4日間は、順応期間として9時間の睡眠をとります。その後、睡眠制限グループは14日間の4時間睡眠、コントロールグループは14日間の9時間睡眠に切り替わります。最後の3日間は、両グループとも9時間の睡眠をとって回復させました。また、どちらのグループも、研究期間中、食事を自由に選択できます。研究者らは、摂取エネルギー、消費エネルギー、体重、身体組成、内臓脂肪や腹部の脂肪を含む脂肪の分布を記録しました。

すると、睡眠制限中は、コントロールに比べて、1日あたり平均300キロカロリー多く食べていました。タンパク質と脂肪の摂取量は、睡眠制限中に、それぞれ13%と17%増加し、1日に約11gと13.5g多く摂取しました。最も増加したのは睡眠不足の初期の段階でしたが、回復期に向かって低くなりました。炭水化物の消費量は両条件で差はありませんでした。

そしてCTスキャンによる脂肪測定にて、腹部総脂肪面積が、コントロールの睡眠は変化ありませんでしたが、睡眠制限中は9%(相対的に15.2cm2)増えました。また、内臓脂肪面積は、睡眠制限は11%(7.8cm2)増えましたが、コントロール睡眠では変化が見られませんでした

「寝だめ」しても「蓄積された内臓脂肪」は解消できない

主任研究者のヴァイアンド・サマーズ博士は、メイヨー・クリニックのニュースに、次のように述べています。

「今回の研究結果は、若く健康で比較的痩せた参加者であっても、睡眠時間が短いと、摂取カロリーが増えて、ごくわずかに体重が増える、そして著しくおなかの脂肪蓄積が増えることを示しています」

「通常、脂肪は皮下または皮膚の下に優先的に蓄積されます。ところが、睡眠が不十分ですと、脂肪はより危険な内臓に蓄積するようです。重要なのは、回復期の睡眠中に、カロリー摂取量と体重の減少が見られたものの、内臓脂肪は増加し続けたことです。このことは、不十分な睡眠が、これまで認識されていなかった内臓脂肪蓄積の引き金であり、少なくとも短期的には、キャッチアップ睡眠(平日に蓄積された睡眠負債を補うための週末の睡眠)では蓄積した内臓脂肪を元に戻すことはできないことを示唆しています。長期的には、睡眠不足が肥満、心血管疾患、代謝性疾患の蔓延の一因であることが示唆されました」

また、この報告の主導研究者ナイマ・コバッシン博士は、同ニュースに、「内臓脂肪の蓄積はCTスキャンによってのみ検出され、そうでなければ見逃されていたでしょう。特に、体重の増加は1ポンド(0.45kg)程度と極めてわずかであったからです」「体重の増加だけでは、不十分な睡眠がもたらす健康への影響という点で、誤った安心感を与えることになります。また、不十分な睡眠が繰り返されると、内臓脂肪が数年にわたり累積的に増加するという影響も懸念されます」と言っています。

※7 https://newsnetwork.mayoclinic.org/discussion/lack-of-sleep-increases-unhealthy-abdominal-fat/

 

この研究では、「食物に自由にアクセスできる環境において、睡眠不足は食べるカロリーを増やし、結果として脂肪、特に不健康な内臓脂肪を蓄積すること」が示されました。これまでの研究から、食欲を調節する内分泌因子は睡眠不足によって変化することが示されています。たとえば、グレリンや内因性カンナビノイドなどの食欲誘導ホルモンが増加し、レプチンが減少するなど。ただし、今回の研究では、これらのホルモンに変化は見られませんでした。今後、「なぜ、睡眠を減らすと内臓に脂肪が貯まるのか?」というメカニズムの解明など、さらなる研究が期待されますね。

現状、日本人は「世界屈指の痩せ傾向かつ長寿」だが…

でも、「米国の研究が、そのままアジアでも通用するのか」「睡眠不足の日本人は、世界でも屈指の痩せ傾向で、長寿なのはなぜか?」「なぜ、日本人は睡眠不足でも平気なのか?」と疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。これについては、ブリティッシュ・コロンビア大学の研究者らが2021年の科学誌「PLOS ONE」に、非常に興味深い論文を報告しています。

※8  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33901233/

 

研究者らは、自己申告とアクチグラフィー(腕時計型センサーで、生活リズム、睡眠・覚醒時間が記録できる)のデータを用いて、ヨーロッパ系カナダ人、アジア系カナダ人、日本人の大学生の睡眠について調査しました。

結果、睡眠時間などさまざまなデータと睡眠に関する信念の観点から、文化的差異が明らかになりました。日本人は、ヨーロッパ系カナダ人よりも有意に睡眠時間が短いにもかかわらず、より疲れにくく、より健康的であると報告しました。さらに、ヨーロッパ系カナダ人と比べて、日本人は、睡眠と健康の関係の認識が低く、理想的な睡眠時間は短かった。またこれまでの研究で、日本や他の東アジア諸国の人々は、多くの西洋文化圏の人々よりも睡眠時間が大幅に短いことが示されています。ただし、アジア系カナダ人の睡眠行動と意識は、ヨーロッパ系カナダ人とほぼ同じであり、人々は地域の文化的な睡眠規範に順応していることが示唆されました。

文化的な睡眠規範について研究者らは、「多くの西洋文化圏での社会規範は、十分な睡眠が健康増進に重要である。これに対して、日本文化では、成功した人生を送るためには睡眠を犠牲にするべきだという考え方が一般的です」「睡眠は犠牲になってもよいという日本人の規範的な考え方だが、公共の場での仮眠に対して寛容。欧米では仮眠はプライベートなものですが、日本では公共の場で居眠りをすることは許容され、しばしば期待される行動です。たとえば、日本のジャーナリストはかつて、40人の国会議員が会期中に眠っていたことを記録しており、驚くべきことに、それについて尋ねると、何人かはそれを当然のことと考えているようでした」と指摘します。

また、研究者らは、「睡眠時間が推奨されている7~8時間を下回ると、深刻な認知障害や健康への害があることがたくさん示されています。このことから、平均睡眠時間が短い文化圏の人々は、欧米人よりも睡眠制限に伴うさまざまな不調に悩まされるだろうと予想されます。ところが、米国人と比較すると、日本人は肥満、2型糖尿病、虚血性心疾患による死亡が少なく、さらに、地球上の主要先進国で平均寿命が最長です」「日本人の健康状態が比較的良好なのは、食事習慣などの他の文化的保護因子によって説明できる可能性があり、日本人の睡眠不足の悪影響が隠されている可能性がある」と指摘します。

以上、最近の睡眠についての報告のご紹介です。寝不足な生活を送りがちな方、ぜひ生活のリズムを考え直してください。

こちらの記事の監修医師

星槎グループ医療・教育未来創生研究所

大西 睦子 先生

内科医師
医学博士
星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)