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腎症候性出血熱【イシャチョク】

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最終更新日:2022年2月24日

じんしょうこうせいしゅっけつねつ腎症候性出血熱

こちらの記事の監修医師
高座渋谷つばさクリニック
武井智昭 院長

概要

腎症候性出血熱は野ネズミが媒介するハンタウイルスによる出血性腎疾患です。ハンタウイルスは、極東ロシアから中国、韓国などのアジア地域から、ヨーロッパにいたる広大な地域に分布していることが知られており、全世界では十数万人程度の患者発生があると推計されています。ハンタウイルスを保有しているげっ歯類(野ネズミ)が媒介となり、ヒトへの感染が成立します。野ネズミの糞尿などにウイルスが含まれており、ウイルスに汚染された糞尿や土壌がエアロゾルとして吸入したり、噛まれて経皮感染するというのが、ヒトへの主な感染経路です。感染した野ネズミによって咬まれることでも感染します。感染後、腎症候性出血熱を発症した場合、軽症例では、微熱や上気道炎症状(風邪のような症状)、軽度の腎障害などが出現しますが、多くの場合回復に向かいます。一方、重症例ではインフルエンザ様の急激な発熱や低血圧、ショック症状などの他、腎不全までをも合併する予後不良の疾患です。

原因

腎症候性出血熱の原因はハンタウイルスです。ハンタウイルスに感染した動物(主に野ネズミなど)による咬傷、糞や尿等の排泄物に接触することで感染が成立します。また、糞尿が乾燥したり、糞尿が土壌中に混ざり、それらがエアゾル(細かな粉塵)として空気中に飛散し、エアロゾルを吸入することで経気道的に感染します。一方、ヒト−ヒト感染は見られていません。野ネズミだけではなく、新しいハンタウイルスに感染したトガリネズミ、モグラ、コウモリなどが報告されています。

症状

ハンタウイルスの潜伏期間はおおよそ10から30日であり、ウイルス感染成立後、潜伏期間を経て腎症候性出血熱を発症します。重篤度はまちまちで、軽症例の場合、微熱や咽頭痛など、一般的な風邪に近い症状が出現する他、蛋白尿や血尿など、軽度の腎障害が出現することもありますが、そのまま回復に向かうことが多いです。一方、重症例になると発熱や倦怠感、関節痛、全身皮膚の点状出血などが出現し、低血圧やショック症状なども合併します。また、重度の腎機能障害を合併することもあり、尿が出ずむくみが悪化するなど腎不全を呈することもあります。腎不全やショックによって、多臓器不全などが併発します。発症から死亡までの時間は4から28日ともいわれています。

検査・診断

腎症候性出血熱は、感染症法において、都道府県知事に届け出の義務がある四類感染症に分類されています。PCR法によるウイルス遺伝子を検出する方法のほか、ELISA法又は間接蛍光抗体法による抗体価測定検査が行われます。その他、定期的に腎機能を測定し、必要に応じて全身臓器の状態を検査します。

治療

腎症候性出血熱に対する有効な治療法はなく、重症度や症状に応じた対処療法が行われます。軽症の場合には自然治癒するケースが多く、安静と療養、必要に応じて解熱鎮痛剤投与が行われます。重症時には、全身症状やショックに対応するため、呼吸管理や十分な補液(輸液)の投与を行います。腎不全が出現した場合には人工透析などを導入します。抗ウイルス薬であるリバビリンの投与は予後の改善に有効との報告も存在します。日本獣医師会のガイダンスによると、「可能な限り早期に高度医療施設に搬送する」という旨が記載されており、重症例に対応可能な施設での療養が必須となります。

予防/治療後の注意

腎症候性出血熱に対する有効な治療薬は存在せず、ハンタウイルスに対する効果的なワクチンもありません。そのため、物理的にウイルスを環境中から遠ざけることが重要であり、「そもそもウイルスに汚染しているネズミの生息地には近寄らない」、「ネズミの排泄物に触れない」、「住環境にネズミが侵入することができないよう対策をする」など、ウイルスに接触しないように生活することが大切です。ハンタウイルスは一般的な消毒用アルコールでも不活化(失活)することが可能であるため、生活環境の消毒をこまめに行うことも重要な予防方法であると言えます。

こちらの記事の監修医師

高座渋谷つばさクリニック

武井智昭 院長

〇経歴
2002年    慶應義塾大学医学部卒業
2004年    立川共済病院勤務
2005年    平塚共済病院小児科医長として勤務(内科)
2010年    北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室兼任
2012年    横浜市内のクリニックの副院長として勤務 (スマイルこどもクリニック)
2015年    小谷クリニック 内科・小児科(訪問診療部)部長
2017年    「なごみクリニック」内科・小児科・アレルギー科 院長
2020年4月~ 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任

〇専門医・認定医
・小児科専門医・指導医
・日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)
・臨床研修指導医(日本小児科学会)
・抗菌化学療法認定医
・プライマリケア学会認定医
・認知症サポート医

治療に適した診療科目

感染症内科 救急科

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