最終更新日:2021年8月24日
粉瘤の症状と種類を解説|粉瘤ができる主な原因は?気になる粉瘤の治療法やできた時の対処法もあわせて紹介
こちらの記事の監修医師
天下茶屋あみ皮フ科クリニック
山田貴博
粉瘤はアテロームとも呼ばれ、皮膚の下にできた袋状の構造物に皮脂や垢が溜まってできる良性の腫瘍です。
通常、皮脂や垢・角質などは皮膚から剥がれ落ちますが、何らかの理由で袋の中に入ってしまうと皮膚が半球状に盛り上がり粉瘤となります。
粉瘤は身体中どこにでもできる可能性がありますが、一般的に痛みが現れないことが多いので放置してしまう人も多いです。
しかし、適切な対処をしないと細菌感染や炎症を起こす可能性があるので注意しましょう。
粉瘤の原因・治療法・正しい対処法をご紹介します。
粉瘤の代表的な症状
粉瘤は皮膚が半球状に盛り上がり、柔らかいしこりのような状態で現れるのが一般的です。
皮膚腫瘍の仲間ですが、初期の段階では痛みを感じることは少なく、まれに自然消滅する場合もあります。
ただ基本的には自然に治ることは期待できず、内容物が増えるにしたがってしこりも徐々に大きくなることがほとんどです。
中央部分の開口部が黒くなってくると、粉瘤が破れた時に不快臭を伴う内容物が排出されることもあります。
痛みや痒みがないため放置されがちですが、細菌感染によって化膿したり炎症を起こしたりすると痛みが生じるため注意が必要です。
また、症状や見た目が似ている他の病気もあるので、気になる症状がある場合にはできるだけ早めに受診しましょう。
粉瘤の種類
粉瘤には主に4つのタイプがあります。
種類によって対処法も変わってきますので、どのタイプに当てはまるか見極めることが大切です。
表皮嚢腫
ほとんどの粉瘤はこの表皮嚢腫と呼ばれる種類のものです。
表皮嚢腫は毛穴の上方部分の皮膚がめくれ込んで袋状の構造物ができることで発症します。
袋の中に皮脂や垢などが溜まっていくと1~5cm程度まで大きくなるのが特徴です。
表皮嚢腫は通常1~数個で、全身どこにでも発症する可能性がありますが、顔面や頭、背中などは特に発症しやすい傾向にあります。
嚢腫が小さなうちは白色や肌色であまり目立たず、痛みや痒みがない場合も多いので粉瘤に気づかずに過ごしてしまう人も多いようです。
また、表皮嚢腫は毛穴のある部分だけに発生すると思われやすいですが、実は毛穴のない足裏や手の平にもできることがあります。
気になって潰したり頻繁に触っていたりすると細菌感染を起こしやすいので注意しましょう。
炎症性粉瘤
炎症性粉瘤は粉瘤が感染を起こし炎症を起こした状態を表します。
元々は表皮嚢腫であったものが炎症を起こして炎症性粉瘤になるケースが多いです。
炎症を起こすと赤みや熱感を帯び、急速に大きくなったり膿が溜まって激しい痛みを感じたりすることもあります。
感染を起こしているにもかかわらず未治療のままでいると、発熱や倦怠感などが現れる場合もあるので速やかに受診しましょう。
粉瘤は圧迫や摩擦などの刺激により袋状の構造物が破れ、内容物が皮膚の中に漏れ出すことで炎症が起きるケースが多いです。
しこりが気になって触りたくなりますが、不必要に刺激を与えないようにしましょう。
多発性毛包嚢腫
多発性毛包嚢腫は、直径1cm前後の嚢腫が1度に複数発生する病気です。
体幹や四肢にできやすく、特に腕や首・わき・胸・背中などに発症します。
1つ1つの粉瘤は比較的小さいですが、ときには30個以上現れることもあるので驚く人も少なくありません。
多発性毛包嚢腫は基本的に優性遺伝性であり、思春期以降の男性に発症することが多いといわれています。
内容物はマヨネーズのような脂分の多い液体ですが、においはあまり強くないのが特徴です。
根治するためには袋状の構造物ごと切除する手術が有効ですが、身体への負担や傷跡を考慮して内容物を取り出す処置のみを行うケースも増えています。
外毛根鞘性嚢腫
外毛根鞘性嚢腫は表皮嚢腫と類似する毛包由来の嚢種ですが、約90%が頭部に発症するという特徴があります。
突発的に発症するケースと遺伝性で染色体の劣性遺伝によって発症するケースがありますが、ほとんどの場合が良性です。
発症傾向としては男性よりも女性が、若年より中年の人に多くみられます。
内容物はケラチンやその分解産物で、触ると表皮嚢腫よりやや硬いしこりを感じるでしょう。
初期の段階では小さくて痛みも感じないため、様子を見ることが多いです。
拡大した場合や炎症・化膿を生じている場合には内容物を出して処置をします。
粉瘤の原因
粉瘤が発生する明確な原因は分かっていません。
現時点で判明している原因を2つご紹介します。
毛穴が詰まっている
毛穴の下にある毛を包む組織、毛包を由来とする粉瘤の場合、毛穴に皮脂や角質が詰まって炎症を起こすことが原因と考えられます。
毛穴が詰まると毛穴の出口付近の皮膚がめくれ返って袋状の構造物が形成され、そこから粉瘤を発症するのです。
粉瘤はこの袋状の構造物自体が角質を作る細胞から成っています。
外部からの皮脂や垢の侵入だけでなく袋の皮膚から剥がれ落ちた角質も合わさって拡大しやすいのが特徴です。
また、毛穴由来のものはしこりの中央部分に穴のような開口部が確認できます。
毛穴の詰まりが原因だと、スキンケアして対策する人もいるでしょう。
しかしスキンケアを入念にした皮膚でも発症する可能性があるため、体質や遺伝などの影響も考えられます。
傷口からウイルスが感染
傷口からウイルス感染するのも粉瘤の原因と考えられます。
創口から細菌感染を起こすと、炎症性粉瘤を発症することもあるでしょう。
見た目では創口が確認できない打撲のような外傷でも粉瘤は発症するため注意が必要です。
毛穴のない手の平や足の裏にできる粉瘤は、ヒトパピローマウイルスによるウイルス感染をきっかけに発症しているケースがあります。
このウイルスはイボの原因にもなるウイルスです。
足の裏にできた粉瘤は圧力によって内側に押しつけられるため、あまり膨らまずタコやウオノメと勘違いする人もいます。
粉瘤ができた時の対処法
痛みも腫れも小さい初期の粉瘤は、未受診のまま放置してしまう人も多いですが、正しく対処することで悪化を防ぐことができます。
以下項目では少し進行した粉瘤の対処法を確認していきましょう。
サイズが大きい場合
最初は1cm程度であった粉瘤も、時の経過とともに鶏卵大まで大きくなるケースがあります。
炎症が起きていないうちは色も肌の色と変わらず痛みや痒みもないので、自覚症状が人も多く注意が必要です。
特に直視することが難しい背中や腰にできた粉瘤は、気づいたときには野球ボールほどの大きさになっていることもあります。
サイズが大きくなるほど処置に時間がかかり身体への負担も増えるので、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。
また受診するまでの間は、内部の袋が破れないように強い刺激や圧力を避ける必要があります。
赤く腫れている場合
粉瘤が赤く腫れている場合は、すでに炎症を起こしていることが考えられます。
そのため、粉瘤の大きさにかかわらず速やかに皮膚科を受診しましょう。
炎症性粉瘤を発症すると強い痛みを伴うことがあり、日常生活にも影響が出てしまいます。
また痛みや炎症を我慢して放置してしまうと、発熱や倦怠感などの全身症状としても現れることもあるので注意が必要です。
病院を受診するまでの間は、できるだけ粉瘤に刺激を与えないようにしつつ、皮膚を清潔に保つよう心がけましょう。
粉瘤の治療法
粉瘤の治療は主に薬物療法か手術になります。
ここでは、それぞれの治療法について詳しくみていきましょう。
薬物療法
粉瘤は皮膚の腫瘍の1つなので内服薬や外用薬によって根治することは難しいです。
ただ、炎症や感染を起こしている場合には、対処療法として抗生物質の内服薬・抗生物質を含む塗り薬・炎症を鎮める作用もある鎮痛薬などを処方することがあります。
完治を目指すのであれば、これらの薬物療法によって炎症を抑えた後に手術で腫瘍を切除します。
日帰り手術
粉瘤の根治を目指すのであれば手術による腫瘍の切除が効果的です。
最近では局所麻酔による日帰り手術が一般的となっており、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
粉瘤の手術は主に切開法とくり抜き法の2種類から選ぶことが可能です。
切開法による手術は、皮膚を紡錘状に切開して粉瘤を取り出します。
傷口を縫合するというシンプルな術式ですが、傷跡が大きく残ってしまう可能性もあることを把握しておきましょう。
くり抜き法では最初に粉瘤に小さな穴を開け、そこから粉瘤の内容物を絞り出し、その後内容物がなくなってしぼんだ袋を抜き取ります。
この方法だと傷口は最初に開けた小さな穴だけなので、跡に残りにくく綺麗に仕上がるのが特徴です。
手術をしても嚢腫が皮内に残り再発することも稀にあるので、根治に時間がかかる人もいます。
粉瘤の予防法
粉瘤は年齢や性別に関わらず誰にでも発症する可能性があります。
現時点では粉瘤の根本的な原因が分かっていないため、随時医師の助言に従って治療することが大切です。
粉瘤は自然に治ることがほとんどないので、大きくなったり炎症を起こしたりしないうちに治療をするようにしましょう。
また化膿や感染を防ぐため、粉瘤ができた後は特に皮膚を清潔に保つようにしてください。
異常がある場合は近くの病院を受診しよう
粉瘤は発症箇所や見た目によってはニキビやイボ、タコなど他の病気と間違えやすいです。
痛みや赤みがなくても、今までなかった皮膚の膨らみを見つけたときは、念のため皮膚科を受診しましょう。
粉瘤の程度が小さい物であれば、受診したその場で粉瘤を取り除く処置をしてもらえることもあります。
まとめ
顔や腕など目につきやすい場所にできた粉瘤は見た目が気になります。また皮膚の腫瘍と聞いて心配になる人も多いでしょう。
しかし粉瘤のほとんどは良性の腫瘍なので、命に関わる可能性は低いです。
粉瘤らしきものを確認したら、炎症と大きさには注意しましょう。
大きくなってからや炎症が起きてからの根治には時間がかかる可能性が高いです。
最近は傷跡が残りにくく負担も少ない手術が可能ですので、粉瘤に気づいたときは早期に治療をすることをお勧めします。
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こちらの記事の監修医師
天下茶屋あみ皮フ科クリニック
山田貴博
〇病院名 :天下茶屋 あみ皮フ科クリニック
〇医師 :山田貴博
〇アクセス:大阪市西成区岸里1−1−4
〇診療科 :皮膚科
〇経歴:名古屋市立大学医学部卒
卒業後は大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座で基礎医学研究に従事。
NTT西日本大阪病院、阪南中央病院で研修後、阪南中央病院皮膚科に勤務。
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