最終更新日:2021年12月29日
梅毒の感染者数が過去最多…その症状、診断、治療法を徹底解説

こちらの記事の監修医師
あかし内科クリニック
明石 祐作

新型コロナウイルスの流行が落ち着き開放的な雰囲気になったせいでしょうか、最近は性感染症(性病)の患者さんを多くみるようになりました。
性感染症で最も頻度が高いのは淋菌とクラミジアですが、梅毒も非常にありふれた病気です。2018-2019年にかけて大流行し、2021年は過去最高の感染者数だったと報告されています。
梅毒は500年前に日本へ輸入されたとされ、歴史のある感染症です。江戸時代の遊郭(鬼滅の刃の舞台となりました)では多くの遊女たちが苦しめられ、悲惨な症状が記録されています。
今では不治の病ではなく、抗菌薬の治療でほとんどが完治する病気です。ただ、放置すると全身に様々な悪影響を及ぼします。今回の記事では、梅毒についての症状・診断・治療を、最近承認された新治療薬を含め解説します。
感染してからの時期で梅毒の症状は変化します
梅毒の症状は感染した時期で異なります。感染してもすぐに症状は出ず、発症するのは10~90日後とされます(この期間を潜伏期といいます)。
一番最初の症状は、感染した部位(口や陰部など)が赤く腫れたり、えぐれたような状態になります。参考写真(米国CDC)リンパ節が腫れて足の付け根のリンパ節が腫れて、しこりとして感じることもあります。
2-3か月たつと、全身にかゆみや痛みのない淡くて赤いぶつぶつが全身に出てきます。この時期に発熱する人もいます。
こういった症状は特に治療をせずに落ち着いてしまうことが多いですが、梅毒の病原体が体から消えたわけではありません。長年にわたり体に潜伏し、数年以上かけて全身のあらゆる内臓で障害を起こします(脳:認知症、血管:動脈瘤・血管炎、胎児への感染など、)。梅毒の10%は脳に感染しますが、その場合は治療にやや難渋します。

梅毒はどうやって診断するの?
現時点で確実な診断は血液検査です。陰部に症状が出ることが多いため、最初は泌尿器科や婦人科を最初に受診することが多いようです。
その際に血液検査を行えば診断できますが、自然と症状が落ち着いてしまうため見過ごされることもあります。梅毒の流行が大きく報道されてからは、積極的に血液検査を行うようになったため、見過ごしは随分と減った印象です。
感染した直後は梅毒の血液検査が正常なこともあります。梅毒が疑わしい場合はしばらく期間を開けてから再検査します。
症状がない潜伏梅毒の方では、人間ドック・ブライダルチェック・妊婦健診などの血液検査で偶然見つかることがあります。
梅毒の検査にはRPRやTPHAの2項目がよく使われます。人間ドックではRPRがよく使われています。これらの数値が上昇していると梅毒の可能性が高くなりますが、血液検査の異常=梅毒の感染とは断言できません。結果の解釈にはやや専門的な知識が必要ですので、内科の医師に相談するようにしてください。
診断されたら必ずしてほしい行動
梅毒と診断されたら速やかな治療をおすすめします。が、治療と一緒に必ずしてていただきたい事があります。
- パートナーの検査をする
性交渉のパートナーも性感染症の治療が必要です。症状を自覚していない場合もあるため、検査を受けるようぜひ勧めてください。相手の体にも将来的に様々な悪影響が出る可能性があります。
さらに、パートナーが感染している状態だと、次の性交渉で自分自身も再び感染することがあります。自分とパートナーの間で感染が行ったり来たりするため、このような感染を「ピンポン感染(卓球のよう?)」と言います。梅毒は治療しても再び感染するので、パートナー全員が検査を受け治療するのが大切です。
- 性交渉をひかえる
他の人への感染を防ぐため性交渉をひかえる必要があります。どれくらいの期間を性交渉をやめるべきかは、医師によって意見が分かれます。カナダのガイドラインでは、治療が終わって7日間経過してから再開しても良いとしています。
オーラルセックスでも感染するため、医師が許可する期間が過ぎるまで全ての性交渉を避けてください。
- 他の性感染症が同時に感染していないか検査する
梅毒だけに感染しているとは限りません。クラミジア、淋菌、B型肝炎、HIVが一緒に感染していることがあります。症状の出方は人それぞれで、検査してはじめて感染が判明することもあります。
症状があまりない場合、これらの検査は健康保険の適応にならず、一般的に自費検査となります。一部の保健所では無料・匿名でこれらの検査を受け付けている場合があります。
- 女性は妊娠の有無を確認する
胎児に感染した場合は出産や赤ちゃんの生育に影響が出ることがあります。速やかな治療とともに、赤ちゃんに影響が出ないか産科で定期的にチェックする必要があります。
治療方法は飲み薬と注射薬の2種類
治療には抗生物質(抗菌薬)を使います。今までの治療薬は飲み薬だけでしたが、2021年になり注射の薬が承認されました。
飲み薬では[アモキシシリンという抗生物質とプロベネシドという痛風の薬を同時に使います
。痛風の薬を使うのは意外かもしれませんが、アモキシシリンの効果を高める作用があります。梅毒は抗生物質がやや効きづらいことがあり、このような治療薬の併用を行います。
今年承認された注射薬はステルイズといいます。海外で広く使われており、治療効果が高いとされます。
治療期間は感染してから1年以上経つと長くなります。
- 早期梅毒(感染して1年未満)
飲み薬 2週間、毎日内服
注射 1回のみ - 後期梅毒(感染して1年以上)
飲み薬 4週間、毎日内服
注射 3回 (週1回を3回)
※脳に感染した場合や、治療に反応しなかった場合は使う薬や治療期間が異なります。
注射薬の方が治療期間が短い、使う回数が少ない、治療効果が高い、と利点が多いと言えます。ただ、一つ難点なのは注射薬は太い針をお尻に刺す必要がある点です(添付文書:2021年12月16日現在)。18Gという、普段使う中では一番太い針を使うよう添付文書に書かれています。注射の際には少し勇気が入りますね・・・
治療後も再発・再感染することがあるため、1年間ほどは定期的な血液検査が必要になります。通院が必要な回数は病院によって異なるため、主治医の先生にご相談ください。
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こちらの記事の監修医師
あかし内科クリニック
明石 祐作
救急科専門医/認定内科医/家庭医療専門医・指導医/医学博士(筑波大学人間総合科学研究科)
平成21年宮崎大学卒業。関東労災病院(初期臨床研修医)・神戸市立医療センター中央市民病院(救急部後期研修医)・筑波総合診療グループ・筑波メディカルセンター病院感染症内科に勤務した。現在はあかし内科クリニック・筑波メディカルセンター病院感染症内科で診療を行い、加えて筑波大学感染症内科学研究員・筑波総合診療グループスタッフとして活動している。
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