最終更新日:2022年1月31日
恐ろしい…「足の切断」にもつながる糖尿病。<静かな予兆>と<予防のポイント>
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こちらの記事の監修医師
下北沢病院
富田 益臣
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糖尿病の患者さんに、潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)という病気(糖尿病足病変)にかかる人が増えています。「糖尿病足病変」はどう予防すればよいのでしょうか。糖尿病治療と足の専門医である、下北沢病院・富田益臣氏が解説していきます。
「のどが渇く」…知らぬ間に進んでいる「糖尿病の合併症」
糖尿病の怖さは、「気がつかないうちに、合併症が進んでいく」ところにあります。典型的な症状は「のどが渇く」「尿の量が多い」などであり、初期には重い症状がないことがほとんどです。
糖尿病の合併症には「失明の原因となる糖尿病網膜症」、「透析の原因となる糖尿病腎症」、そして「足の切断につながる糖尿病足病変」があります。
ここから解説していく「糖尿病足病変」は、靴のなかで進行する上に、神経障害により症状が出ていても気づきにくく、早期発見が困難であることが特徴です。
恐ろしい…なぜ糖尿病で「足の切断」に至るのか
血糖コントロール不良の状態が続くと、足の神経が損傷されてしびれや痛みを感じたり(神経障害)、動脈硬化により血の流れが悪くなったり(血流障害)します。血流障害があると、傷ができても血液が届かないためなかなか治癒しません。
そして神経障害、血流障害、変形を土台として、やけどや靴擦れなどをきっかけに糖尿病足病変が発症します。先述の通り、神経障害が進行すると痛みや温度を感じにくくなるために靴擦れやけどを起こしやすく、気づくのも遅れます。
糖尿病足病変は血糖値を下げれば治る病気ではありません。潰瘍では入院も長期間に及びますし、壊疽では切断が避けられない例も多くあります。
切断となり義足を作成したとしても、体力や年齢、糖尿病の他の合併症が壁となるため、歩行が獲得できる人は多くはありません。
よって、「足の変化」を潰瘍がない早期の段階で発見し、適切に処置する必要があります。
糖尿病足病変の1番の予防法は、糖尿病そのものを良好にコントロールし、神経障害や血流障害などを予防する“一次予防”です。それでも靴擦れや胼胝(タコ)、足や爪の白癬症(水虫)が出現したら、早期の段階で発見して処置する“二次予防”が必要となります。
今後、「足病変」はより身近な病に…注意したいポイント
今後わが国では、高齢者や糖尿病、透析の患者さんが増加することで、足のトラブルを抱える患者さんがさらに増加していくことに間違いありません。
糖尿病患者さんの足を診察して、足病変の危険性を評価することは内科医の仕事の一つですが、忙しい日常診療の中では靴に隠れた足の診察は見逃されがちです。是非、糖尿病患者さん自身から靴や靴下を脱いで、足を診察してもらってみてください。
また、日常生活での注意も重要です。屋外だけではなく屋内でも十分に気をつけましょう。
「糖尿病と診断されたばかりの人」「糖尿病の合併症がある人」「糖尿病の足に潰瘍(かいよう)がある人」それぞれが知り、調べ、行動すべきことについて解説していきます。自分の糖尿病の状態に合わせて参考にしてください。
①「糖尿病と診断されたばかりの人」
知っておきたい…「アメリカの糖尿病患者25%が足の潰瘍」という事実
「歩くこと」はあまりにも日常的な行為であり、「歩けなくなったら…」と考えることはあまりないかもしれません。
しかし糖尿病患者さんの中には、糖尿病による合併症が原因で「足を切断」し、「歩けなくなる」方がいます。
アメリカでは糖尿病患者の25%が生涯のうち1度は足の潰瘍になり、足の切断のうち85%は潰瘍が原因であるといわれています。糖尿病と診断されたら、足にも関心を向けてみてください。
足を毎日観察する、清潔に保つ、爪をきちんと切る、足にあった靴を履く。もちろん食事、運動療法で血糖値をしっかりコントロールすることも重要です。
一生自分の足で歩き続けるために、糖尿病と診断されたら足に関心を向け、大切な「足」を守りましょう。
病院での検査で「意識すべき値」
次に、その時点での糖尿病の状態を確認しましょう。
糖尿病のコントロール状態をあらわす指標として、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値を重視します。過去1~2ヵ月間の平均血糖値を反映し、かつばらつきが少ない値であるため、主要な判定はヘモグロビンA1c(HbA1c)値によって行なわれます。
空腹時血糖値は代謝状態を示す値としては比較的安定しており有用です。食後2時間、血糖値は食事の量や質ならびに治療法などにより変動しますが、心血管リスクとの関連が指摘されています。
現状の確認を終えたら、次は糖尿病の合併症が出現しているかどうかを確認します。
糖尿病と診断されたら、糖尿病網膜症の確認のため、1年に1回は眼科を受診しましょう。そして糖尿病腎症の確認のためには、尿検査や尿中アルブミンを測定する必要があります。神経障害の確認のためには、アキレス腱反射や5.07モノフィラメントの検査を行いましょう。
目標を設定し、きちんと通院を
そして定期的にきちんと通院しましょう。
日本糖尿病学会は、「血糖コントロール目標値」を次のように定めています。
・血糖正常化を目指す際の目標 HbA1c 6.0%未満
・合併症予防のための目標 HbA1c 7.0%未満
・治療強化が困難な際の目標 HbA1c 8.0%未満
ここでは、糖尿病の合併症である「末梢神経障害」の出現や進行を食い止めることが目的であるので、HbA1c・7.0%未満をめざします。
しかし実際には個人がそれぞれ、年齢と合併症に応じた適切な治療目標を設定することが肝要です。また血流障害が進行しないように血糖値、血圧、コレステロールの値を目標範囲に保つことも重要です。喫煙されている方は禁煙しましょう。
②「糖尿病の合併症のある人」
確認しておきたい「足の傷」
糖尿病の足病変の基盤となるのは神経障害や血流障害などの合併症ですが、「高血糖による免疫機能の低下」「糖尿病網膜症や白内障などによる視力障害」「透析などの腎不全」「足に合わない靴」なども原因となります。合併症がある方は、足に靴擦れや傷ができていないか確認することが重要です。
病院でおこなわれる「足の検査」
□糖尿病神経障害の検査
●アキレス腱反射
打鍵機を使って、アキレス腱反射が起こるか調べる検査です。神経障害が進行すると反射はなくなってしまいます。
●振動覚検査
音叉(おんさ)という器具を使って、震えが感じられるかを調べる検査です。
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●モノフィラメント検査
足の裏を、柔らかくて細いナイロンの糸で触り、足の裏の感覚がどの程度あるか調べる検査です。
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□血流の検査
●足の動脈拍動のチェック
足には足背動脈(そくはい)動脈と、後脛骨(こうけいこつ)動脈の2つの動脈があり、これらの動脈は手首と同じように指で脈を感じることができます。
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●足関節上腕血圧比(ABI)の測定
両腕と両足首の血圧を同時に測り、足への血流の流れを調べます。
●下肢動脈超音波検査
超音波検査で腹部〜足の動脈の流れを調べます。
主治医に質問し、把握しましょう
合併症がある方は、ご自身の合併症の状態を把握してください。主治医は、あなたにどんな合併症があるのか把握しています。神経障害や血流障害はあるのかどうか主治医に聞いてみましょう。
糖尿病の合併症は、最初は自覚のないことが多いですが、初期にきちんと治療することで発症予防や進展抑制につながります。その上で、きちんと血糖のコントロールを行いましょう。
③「足の潰瘍(かいよう)がある糖尿病の方」
恐ろしい…「潰瘍」が「壊疽」に至るまで
足の潰瘍とは、足の皮膚が欠損した状態を指します。潰瘍の周囲が赤く、膿(うみ)が出て化膿(かのう)している場合は感染を合併しています。
高血糖状態にあると、細菌と戦う力が弱まるため、傷は膿みやすく、感染しやすくなります。
また糖尿病の方の足の潰瘍はなかなか治りません。血液は傷を治すために必要な成分を届ける役割をもつのですが、糖尿病の患者さんは膝から下の血管が詰まりやすく、足への血の流れが悪くなりやすいのです。
足に傷ができても、その傷を治すために必要な血液が足りず治らないばかりか、傷の周りの健康な皮膚までもが死んでしまう「壊疽状態」になることがあります。
そして、広範囲の壊疽や重症の感染を合併した足の潰瘍には、切断が必要となります。
病院で「血流障害」を調べる方法
□血流障害の評価
●関節上腕血圧比の測定
●皮膚還流圧(skinperfusionpressure;SPP)検査
●下肢動脈超音波検査
超音波検査器で腹部〜足の動脈の狭窄を調べます。
●下肢血管造影検査
造影剤を血管に注入し、造影剤の流れを撮影することで、細かい血管まで見える検査です。
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●下肢CT血管造影検査
血液の流れを調べる検査です。
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□感染の状態の評価
●血液検査
炎症マーカーの上昇がないか確認します。
●足の単純レントゲン写真
骨髄炎の有無を評価します。
●足のMRI
骨髄炎の有無を確認します。
早急に「足病専門医のいる医療機関」を受診
傷を治すには、傷の安静が欠かせません。しかし、足にできた傷の場合、日常生活を送るのに立ったり歩いたりという動作は避けられないため、他の身体の部分に比べて安静にさせにくいことが知られています。難しいかとは思いますが、出来る限り安静に保てるようにしてください。そして早急に、足病専門医のいる医療機関を受診しましょう。
『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』
下北沢病院医師団(著)
出版社名:日経BP
発行年月:2020年12月
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下北沢病院は、日本で唯一の「足」の総合病院。米国の足病医学を参考にしているのが特徴です。そこで多くの人に勧めるのが「アキレス腱伸ばし」。これが、足の老化や病気を防ぐのです。本書は、下北沢病院の医師たちがまとめた長く歩き続けるために役立つ「足」のトリセツです。
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こちらの記事の監修医師
下北沢病院
富田 益臣
下北沢病院糖尿病センター所属。東京慈恵会医科大学卒。
糖尿病治療では国内有数の施設である東京都済生会中央病院 糖尿病•内分泌内科に勤務。
特に糖尿病・生活習慣病を起因とした足の治療に従事し、現在に至る。
●日本糖尿病学会専門医・指導医
●日本内科学会総合内科専門医
●日本医師会認定産業医
●義肢装具等適合判定医
●糖尿病療養指導医
●日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医
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