最終更新日:2022年1月24日
高血圧や肺疾患から発症することも…「心不全」の原因と治療法【専門医が解説】
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こちらの記事の監修医師
医療法人 あんべハートクリニック
安倍 次郎
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多くの人が一度は耳にしたことのある「心不全」。死につながる危険な病気だと思ってしまいがちですが、医療法人あんべハートクリニックの安倍次郎院長によると、答えは「半分Yesで半分No」だといいます。心不全に対する正しい知識と対処法、生命予後についてみていきましょう。
「心不全」とは危険な病気なのか
「心不全」という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、この病気は「危険」なのでしょうか? 答えは半分Yesで半分Noです。
心不全は糖尿病や高血圧のような単体の疾患名ではありません。心臓は人体のエンジンやポンプのような臓器で、長い人生のなかで最後は誰でもそのエンジンが老朽化してポンプが十分に機能しなくなり、生命を維持することが困難になります。悲しいことですが、それは誰にも避けられません。それが心不全という状態です。
そういう意味では心不全はとても死亡率の高い病気です。とはいえ、心不全のなかには他の疾患に付随して起こってくる場合もあります。こちらは原疾患を適切に治療できれば、比較的元気に暮らすことも可能です。
誰しも事故や突然死で亡くならない限り、加齢とともに非常に疲れやすくなり、動悸や息切れ、顔や手足のむくみ、次第に安静時にも呼吸が苦しく、寝られなくなるというような症状が起こり得るのです。
「高血圧」に由来する心不全
心臓はポンプで、血管は心臓から全身に血液を循環させるパイプです。高血圧が進むということは、出口を塞いでポンプを押しているようなものです。この状態が続くと心臓に負担がかかり、動悸や息切れ、胸部の圧迫感が生じて最後は心不全になることがあります。
当然塩分を控えて降圧剤を服用し、血圧をコントロールすることが重要です。肥満も高血圧を助長するので、食事制限や運動での減量も必要になります。
心臓疾患に由来する心不全
1.心臓弁膜症
心臓の弁が炎症で硬化し開きにくくなったり(狭窄症)、逆に閉じにくくなったり(閉鎖不全症)する病気です。
先天性や加齢性のものも多いですが、かつては小児期の扁桃腺炎(溶連菌感染)などをきっかけとした弁の慢性炎症によるものが主体でした。
階段や坂道、運動時の息切れなどが症状になりますが、進行すると胸痛や心不全症状を起こします。軽症では内服治療ですが、重症化すると人工弁置換術が必要になります。
昨今の若い医師は「ウィルス疾患の風邪には抗生剤は無効」と大学で教わるようですが、抗生剤治療のおかげで、30代〜40代で弁置換を余儀なくされていた若い女性患者が、今や数十分の1にまで激減したのは紛れもない事実です。
感染性疾患の多くは、他の細菌などの混合感染や継時感染が多いことを忘れてはいけません。その典型例が、インフルエンザテストでA・B両方が陽性になり、A型とB型両方のインフルエンザの同時感染が判明するケースです。
また弁膜症の患者さんに虫歯の化膿や扁桃炎による熱発等がある場合、放置すると血液に入った細菌(菌血症)が心臓の弁に付着し、細菌性心内膜炎や心不全となり、緊急手術が必要となる場合もあります。
もちろん、抗生剤の乱用は厳禁ですが、必要な場合に必要な量を投与することは絶対に不可欠です。
また昨今は高齢者の増加により、前述の加齢性の弁膜症性心不全が急増しています。動脈硬化にともなう弁の石灰化や加齢による心筋の退行性変化が主な原因です。
2.狭心症・心筋梗塞
狭心症は心臓の冠動脈が動脈硬化で狭くなり、死の不安を感じるほどの胸痛発作を起こす病気です。
冠動脈が完全に詰まるのが心筋梗塞ですが、この場合は分単位で検査・治療を進めないと急性心不全やショックとなり、命取りになる場合があります。
心臓カテーテルで狭窄部を拡張し、ステント留置PCIが必要になります。また心筋梗塞後は、救命できてもその程度により慢性心不全になることがあります。
3.心筋炎・心筋症
昨今コロナワクチン接種後の心筋炎でにわかに注目された病気ですが、実際には発症頻度はそれほど多くはない疾患です。
心筋症には拡張型と肥大型心筋症があります。エイズやインフルエンザ、C型肝炎ウィルスなどの感染によって生じることもあります。
動悸や息切れ、胸の痛みや違和感、心雑音などを認め、時には重症化して心不全を起こすこともあります。
治療は内服薬の保存的治療が主体になりますが、拡張型心筋症に対しては両心室ペースメーカー(CRT)やバチスタの心筋縫縮術を行うこともあります。
4.不整脈
徐脈性と頻脈性不整脈があります。頻脈性の不整脈では動悸と胸部圧迫感が、徐脈性の不整脈ではめまいや失神発作を起こすことがありますが、重症になるとどちらも心不全をともない、ペースメーカー植え込み術が必要になります。
肺疾患に伴う心不全
1.肺性心・肺高血圧症
肺と心臓は肺動静脈でつながっています。肺気腫や間質性肺炎等の肺の慢性疾患で肺高血圧症が進んでいくと、心臓は肺に十分な血液を送ることが困難となり心不全の状態になります。
また重度の心室中隔欠損症などでも起こり得ます。
2.肺塞栓・肺梗塞
いわゆるエコノミークラス症候群またはロングフライト症候群とも呼ばれる疾患で、長時間足を曲げた状態で座っていると、膝の静脈等に血液の塊(血栓)ができて、立ち上がった時などにその血栓が剥がれて肺動脈を塞ぎ(肺塞栓)、急性の心不全やショックになることがあります。
もちろん飛行機だけではなく、長時間の車の運転やデスクワーク、また災害時の避難所においても発症することがあります。これは非常に危険で、発生場所にもよりますが突然死の原因になりやすい疾患です。
十分な水分を取り、長時間膝や腰を曲げたままの状態にしないことなどが重要です。
心不全パンデミック(加齢性心不全)の危険性
現在75歳以上の高齢者人口は1870万人といわれています。冒頭述べたように、この方々の多くが今後15年以内に心不全になる時期が迫っています。
事故やガンや脳血管疾患で死ななくとも、最後はエンジンの老朽化による心不全でその生涯を終えることになるのです。
循環器学会では、この心不全の爆発的な発生予測を感染症になぞらえて「心不全パンデミック(心不全の大爆発)」と呼んでいます。
多少大袈裟ですが、超高齢化の結果、それだけ多くの加齢性心不全患者の発生が目前に予測されているのです。
いずれの疾患が原因であっても、まずは診察と聴診、心電図と胸部X線検査が基本です。
動悸や息切れ・呼吸苦があって、顔や手足のむくみに心当たりのある人は、ぜひ一度お近くの循環器科を受診してみてください。
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こちらの記事の監修医師
医療法人 あんべハートクリニック
安倍 次郎
医師/医学博士
・大分県宇佐市出身。
・1983防衛医科大学校卒業。
・1983防衛医大第二外科(心臓血管外科)勤務
・1987帝京大学第二外科(心臓血管外科)勤務
・1999府中医王病院循環器心臓血管外科勤務
・2000あんべハートクリニック(循環器、心臓外科)開院〜現在に至る
・1995〜上福岡高等看護学院循環器講師
・1995〜埼玉医科大学研修医受入指導医
・日本外科学会認定医
・日本胸部外科学会認定医(心臓血管外科)
・心臓機能障害認定医
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