最終更新日:2022年2月23日
「若年性認知症」か「ただの物忘れ」か…当てはまったら要注意な11のサイン【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
医療法人社団TLC医療会 ブレインケアクリニック
今野 裕之

最近、「物忘れ」を訴えて来院される40〜60歳くらいの働き盛りの人が増えていると、ブレインケアクリニックの今野裕之院長はいいます。また、来院者は組織のなかで重要な仕事を任されている人が大半だそうです。その症状は、「ただの物忘れ」なのか「若年性認知症」なのか……高齢者だけではない「認知症」のサインと治療法、改善方法について詳しくみていきましょう。
若年性認知症とは「認知症の総称」
認知症とは、様々な原因によって認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。
認知症といえば高齢者が発症するイメージが強いですが、最近では40〜60歳くらいの「働き盛り」の人にも認知症と疑われる症状が増えているのです。
たとえば先日来院したのは50代の男性で、会社の役員をしている方でした。徐々に仕事でミスが目立つようになり、大事な予定をすっぽかしてしまうといったことが増えてきたため、「認知症なのではないか」と心配になったのだそうです。しかし、症状だけで若年性認知症と診断することはできません。
「若年性認知症」とは65歳未満で発症した認知症の総称であり、一般的な認知症と異なる病気ではありません。
若年性認知症の原因は、高齢発症の認知症と同様にアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭葉変性症、外傷による認知症、レビー小体型認知症などがあります。
認知症の症状は個人差が大きいのですが、一般的には以下のような症状がみられます。
■アルツハイマー病
記憶障害、見当識障害(時間と場所の感覚があいまいになる)など
■脳血管性認知症
段階的に症状が進行、脳血管が障害された場所に一致する機能障害(麻痺やしびれなど)、情緒の不安定さなど
■前頭側頭葉変性症
気持ちや欲求を抑えることが難しくなる、同じことを繰り返す
■レビー小体型認知症
幻視(実際に存在しないものがみえる)、時間帯で症状が変動、手足のふるえ、筋肉のこわばりなど
認知症の診断は症状の訴えだけではなく、これまでの症状経過、生活習慣、既往歴などの情報や認知機能検査、血液検査、画像検査などによって行われます。治療を行うことで症状の改善が可能な認知症もあるので、正確な診断が欠かせません。
治療可能な認知症としては、ビタミンB12欠乏症、甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などがあります。
認知症と間違われやすい「うつ病」
また、認知症とよく間違われる疾患の1つにうつ病があります。
うつ病の場合は思考のスピードが遅くなり、集中力や理解力・判断力が低下するので一見すると認知症のような症状が現れますが、よく話を聞くと、気持ちの落ち込みや不安、不眠、意欲の低下、興味関心の低下などのうつ症状がみられます。
うつ病は適切な治療によって改善することができる病気です。
若年性認知症は「男性のほうがかかりやすい」?
若年性認知症は統計的に「男性のほうがかかりやすい」といわれています。もっとも、どのような特徴を持つ人が発症しやすいかについてはまだはっきりしたことはわかっていません。
ただし、若年性であったとしても一般的な認知症と同じように、運動不足や糖尿病や高血圧、肥満といった生活習慣病、アルコールや喫煙などの嗜好品は発症や症状の進行に悪影響をおよぼす可能性が高いと考えられます。
若年性認知症のチェックリスト
- 大事なものをよくなくす
- 約束をすっぽかしてしまうことが増えた
- 何度も同じことをいっていると指摘される
- 数分前の出来事が思い出せない
- 今日が何月何日かでてこない
- 言おうとしている言葉がすぐ思いつかない
- 計算が苦手になった
- 性格が変わったといわれる
- 料理や片付けが苦手になった
- 身なりにあまり気をつかわなくなった
- よく知っている場所のはずなのに道に迷ってしまうことがある
このような症状が現れている場合は、脳の機能に関してなんらかの問題が起こっている可能性があります。ただし、当てはまったからといって「確実に認知症である」とは限らないため、本チェックリストで複数の広目に当てはまった場合、一度お近くの医療機関を受診してみることをおすすめします。
根本的な治療法はまだないが…「改善できること」はある
前述の治療可能な認知症を除けば、認知症に対して確立された根本的な治療法はまだありません。抗認知症薬の効能はあくまで症状の進行を遅らせるというものです。
しかし、認知症になったとしても、普段の生活習慣の改善などによって認知機能を改善する、あるいは認知症の症状の進行を遅らせることは不可能ではありません。
たとえば当院に来院される患者さんには、ストレス、生活リズムの乱れ、睡眠不足、アルコール、偏った食事などの問題を抱えている人が多くいますが、これらは認知機能の低下につながります。
ストレスや悩みがあると、物事に集中できなくなりますから、人の話を聞き逃したり、理解が追いつかなくなったりして、物忘れやミスを起こしやすくなります。
生活リズムが乱れ、睡眠がうまくとれなくなると昼間も頭がぼんやりし、注意力などが低下します。食事のバランスが乱れ、必要な栄養素が不足すれば脳全体の働きが低下します。
認知症の有無に関わらず、このような問題をできる限り改善すれば、症状の改善や進行を遅らせることにつながります。
特に睡眠不足はほとんどの人にみられる問題で、背景として睡眠時無呼吸症候群が存在する場合もあります。これは治療を受けることによって劇的に改善するので、睡眠に関して問題があるようであれば睡眠外来や呼吸器内科などを受診し、検査を受けることをお勧めします。
また、アルコールは脳の働きを抑制してしまうため、物忘れが気になってきたらやめましょう。
ストレスや疲労を減らし、規則的な生活リズムを心がけ、十分な睡眠時間を確保し、バランスのよい食事を摂る、定期的に運動をする、趣味や学習などで頭を使う活動を続けるといったことが、脳の機能を維持し、認知症の症状を食い止めるために大変重要です。
最近は認知機能改善効果を期待させるサプリメントや機能性食品がたくさん販売されています。なかには一定の条件・期間内で認知機能が改善したことを研究で報告している成分もあります。
しかし、「一定の期間内で認知機能を改善できたこと」イコール「認知症を治せること」ではありません。
残念ながら現時点では「これを飲むだけで認知症を治せる」という成分は見つかっていませんので、サプリメントや機能性食品を使うだけで安心してはいけません。
心当たりがあれば一度病院で診察を
前述の通り、若年性認知症の原因にはさまざまなものがあり、なかには治療可能な認知症もあることから、まずはできるだけ早く正確な診断をつけることが重要です。根本的な治療ができなくても、症状の進行を遅らせることは可能です。
ちなみに冒頭で紹介した50代の男性は幸いなことに若年性認知症ではなく、仕事への取り組み方や生活習慣の改善などを行った結果、すっかりよくなりました。
物をよくなくすようになったり、ケアレスミスが増えたりするなどのエピソードが増えてきたら、遠慮せず精神科・神経内科・脳神経外科を標榜する医療機関、あるいは「もの忘れ外来」を受診して相談することをおすすめします。
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こちらの記事の監修医師
医療法人社団TLC医療会 ブレインケアクリニック
今野 裕之
ブレインケアクリニック名誉院長
一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所代表理事・所長
順天堂大学大学院卒業。博士(医学)・精神保健指定医・精神科専門医・認知症診療医・抗加齢医学専門医・リコード法(米国発のアルツハイマー病の統合治療プログラム)認定医。より根本的な認知症治療を実践するため2016年にブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた治療を行う。認知症予防の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。2019年より現職。著書に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」、その他監修など多数。
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