最終更新日:2022年2月26日
咳が長引き止まらない…医師にも気付かれにくい「鼻の病気」の可能性

こちらの記事の監修医師
仁友クリニック
杉原徳彦(すぎはら・なるひこ)

何週間にも渡って止まらない咳に苦しんでいるなら、ただの風邪ではない可能性が。ではなぜ咳が出るのか?というと、非常に多岐に渡る原因が考えられます。ここでは、「鼻」を原因とした咳をメインに、咳のメカニズムや治療について専門医が解説していきます。
目次
逆流性食道炎の可能性も…長引く咳の原因となる疾患
咳は続く期間によって「急性咳嗽」「遷延性咳嗽」「慢性咳嗽」と分類されています。
急性咳嗽は長くても数週間で治まる咳で、一般的には風邪など、ウイルス感染や細菌感染による急性炎症からの感染後咳嗽が多いとされています。3週間以上続く咳は遷延性咳嗽。8週間以上続く咳は慢性咳嗽とされ、多くは気管支や肺の病気が中心となります。胸部レントゲンやCTに問題が無いかを確認する必要があり、肺癌や肺結核、間質性肺炎などの病気が画像上確認される場合はその治療が必要です。
今回、問題とするのは画像上全く異常が認められない咳です。多い病気としては咳喘息や気管支喘息、アトピー咳嗽、慢性気管支炎、逆流性食道炎などが挙げられます。
「どの疾患が原因か」鑑別する方法は…
これらの鑑別には、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素濃度測定、広域周波オシレーション法による気道抵抗測定、アレルギー素因の有無の確認、喀痰検査などを行います。逆流性食道炎を疑う場合は内視鏡検査を必要とすることもあります。
ただ、上記のような様々な評価をせずに、喘息治療で用いられる吸入ステロイドと気管支拡張薬(長時間作用型β2刺激剤)の合剤が処方されるケースが非常に多いのが実態です。
仮に肺結核や気管支結核、非定型抗酸菌症であった場合、悪化すると大変危険なため、本来なら最低限でも画像評価は行わなければなりません。
検査が難しいということで、診断的治療で経過をみることもあります。ガイドラインでもフローチャートが作成されていますが、1ヵ月以上続く咳の場合はしっかり検査をして調べるべきです。
咳喘息、気管支喘息であった場合、吸入薬を使用すると劇的に症状が改善するため、2週間使用しても症状が変わらない場合は咳喘息や気管支喘息では無いと判断すべきです。
アトピー咳嗽の場合は抗ヒスタミン薬、逆流性食道炎の場合はプロトンポンプ阻害剤を使用し、速やかに改善しない場合は他の疾患を疑う必要があります。
「鼻」に原因のある、咳のメカニズム
さて、これらの治療をもってしても改善しない咳として、非常に多いのが「鼻」からの咳です。
鼻を原因として咳が出るメカニズムには二通りあります。一つは鼻が喉に流れ(後鼻漏)喉に絡むため、それを出そうとして咳が出る仕組み。こちらは痰の絡みを取るように意図的に出すことが多いです。
もう一つはくしゃみの発生と同じ仕組みです。炎症により敏感になっている鼻粘膜が刺激を感じ、迷走神経刺激によって咳が出ます。こちらは突発的で、自分ではコントロールできません。
これが医師から正しく評価されなければ、やがて気管支にも影響が広がり、咳喘息や気管支喘息にまで発展してしまいます。
「鼻炎治療」が重要視されている?
気管支喘息と鼻の病気の関連性については近年注目が集まっており、気管支喘息治療をするにあたりアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療も行うことが重要視されています。
アレルギー性鼻炎は、アレルギー検査の結果でハウスダストやダニに反応を持つ場合は通年性アレルギー性鼻炎と判断し、鼻炎治療を継続する必要があります。
またスギなどによる花粉症は季節性アレルギー性鼻炎と言われ、その時期にしっかりとコントロールする必要があります。
コントロールのしにくい気管支喘息において鼻炎治療を加えるだけで格段にコントロールしやすくなる場合もあります。
専門医が問題視…見逃されやすい「慢性副鼻腔炎」
私が一番問題視しているのは慢性副鼻腔炎です。慢性副鼻腔炎は症状が乏しいことが多いです。自覚症状としては咳や痰が絡むという訴えが多く、誰も鼻の症状を訴えないため、そこで見逃されてしまうケースが非常に多いのです。
また咳や痰で来院される慢性副鼻腔炎は軽症であることが多く、耳鼻咽喉科でも問題視されないレベルのため放置状態とされることが少なくありません。
教科書にも、古くから長引く咳の原因として「鼻炎」や「副鼻腔炎」は記載されているにも関わらず、実際の医療現場では鼻症状が無いと医者側も意識しないことが多いです。
軽症だと鼻咽喉ファイバースコープでも殆ど所見が無く、これを見つけるために有用な検査は副鼻腔のCTまたはMRIになります。
極めて軽症の場合は篩骨洞という副鼻腔に僅かな所見を認める程度ですので、意識をして読影をしないと見落とすことも多く、「他院でCTを撮ったが問題なかったと言われた」という患者さんにも何度もお会いしています。
慢性副鼻腔炎」が長引く咳に繋がるワケ
では何故、鼻症状を訴えない「慢性副鼻腔炎」が長引く咳に繋がるのでしょうか。
まず副鼻腔炎による炎症性の鼻水は粘稠度が高くなるのが特徴で、その鼻水が喉に流れ、痰が絡んでいるという自覚になります。そのため、痰(鼻水)を排除しようと咳払いをするようになるのです。
また炎症性の鼻水が下に流れることによって鼻、咽頭、喉頭粘膜も全体的に炎症をきたし腫れ上がります。腫れることで、刺激に対して敏感になってしまいます。
喋ることで声が響く、冷気を吸い込む、微細粒子(臭い粒子、大気汚染物質など)が付着する、といったことが刺激となって、前述の如く「迷走神経反射」によって咳が起きます。
さらに進行すると、気管支内にも炎症性の鼻水が流れ落ちて気管支でも炎症をきたしてしまい、慢性気管支炎や気管支喘息に発展してしまいます。
副鼻腔炎は幼少期から続いていることもあり、治療の開始が遅ければ遅いほど完治までに時間が掛かります。
現在、耳鼻咽喉科学会でも慢性副鼻腔炎のガイドラインが作成中です。今まで急性副鼻腔炎のガイドラインはありましたが、慢性に関してはなかったのです。
しかし「隠れ副鼻腔炎というものは5人に1人」という報告もあり、関心が高まっています。そのためガイドラインの作成も急がれているのです。
如何に早く「鼻の問題」をみつけ治療するかが非常に重要です。
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こちらの記事の監修医師
仁友クリニック
杉原徳彦(すぎはら・なるひこ)
【学歴】
1994年 杏林大学医学部卒業
2001年 杏林大学医学部大学院卒業
【職歴】
1994~1997年 杏林大学医学部内科学Ⅰ研修医
1997年 杏林大学病院呼吸器内科専攻医
2000~2001年 東京都立府中病院(現多摩総合医療センター病院)呼吸器内科
2001~2005年 杏林大学病院呼吸器内科 助手
2005年~ 仁友クリニック
2006年~ 仁友クリニック院長
【専門医等】
日本内科学会認定医
日本アレルギー学会専門医
日本感染症学会ICD
日本体育協会認定スポーツドクター
【その他】
全日本スキー連盟アンチドーピング委員
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