最終更新日:2021年8月24日
多呼吸の症状を解説!多呼吸の主な原因や考えられる病気は?多呼吸の治療法や予防法・受診目安をご紹介

こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓

多呼吸とは呼吸の速度が通常の呼吸の2倍から3倍となり、呼吸の深さも増す症状です。
似ている症状に過呼吸や過換気症候群と呼ばれるものがありますが、これらとは異なります。
今回は多呼吸の症状や原因、過呼吸との違い、そして考えられる病気などについて詳しく確認してみましょう。
多呼吸の症状

多呼吸の状態になると、呼吸数が通常の2~3倍以上の速さになることが多いです。
成人の通常時の呼吸は1分間で16回~18回行われていますが、通常の2倍から3倍の速度で呼吸をしていると多呼吸と診断されます。
乳児や新生児の場合は成人と比べると呼吸数が多く、1分間で60回以上の呼吸状態となることが特徴です。
呼吸の速さだけでなく深さも増すため、症状が悪化すると呼吸困難や息苦しさを感じる危険性があります。
多呼吸と過呼吸は似て非なる症状である

多呼吸は過呼吸と症状が似ていると考える人も多いですが、実際は全く違う症状です。
多呼吸では呼吸の回数と深みが増えるのに対し、過呼吸は呼吸の深みが増すだけなので回数はあまり増えません。
例えるなら、常に深呼吸をしている状態をイメージするとわかりやすいでしょう。
過呼吸は激しい運動や肉体労働をしたあと、または精神的に不安定な状態になったときに発生しがちです。
後者はとくに過換気症候群とも呼ばれ、呼吸のしにくさとは別にめまいや動悸、発汗が生じるほか、手足のしびれを伴うこともあります。
過換気症候群は、重要な仕事や試験の前・職場や学校など環境の変化などにおいて精神的な負担が多いことが発症の原因になります。
ストレスや不安、緊張を過剰に感じることによって病的不安の状態となり、呼吸がコントロールできなくなるのです。
また精神的な原因以外にも、マラソンなどのスポーツをした後や睡眠不足などの疲労が溜まっているときに発症しやすいと考えられています。
運動後は身体の酸素が不足している状態になることから、他の負荷が加わると呼吸に障害をきたしやすいのです。
多呼吸から考えられる病気とその症状

多呼吸から考えられる病気とその症状について紹介します。
以下の項目から、多呼吸と関わりの深い病気についてしっかりと把握しましょう。
新生児一過性多呼吸
実は多呼吸と関係の深い病気には、新生児一過性多呼吸という病気があります。
この病気は新生児が生まれてくる時に多呼吸の状態に陥る病気です。
新生児一過性多呼吸は、37週より早く生まれた未熟児に多く見られるといわれています。
ただし37週~42週で誕生した新生児の場合でも、特定の条件に当てはまる場合には発症する可能性が高まります。
出生後すぐに新生児がうめくような音をだしている場合は、新生児一過性多呼吸の可能性が高いです。
ただしこの病気は一過性のもので、正しい処置を行えば2日~3日で症状が落ち着くことがほとんどですので安心してください。
新生児一過性多呼吸の主な症状

新生児一過性多呼吸の主な症状として、以下の症状があげられます
・新生児の呼吸が1分間に60回以上
・息を吐く時にうめくような音を発する
・皮膚の色が青っぽくなる
・肋骨や鎖骨の辺りがへこむ
新生児に上記の症状がある場合は、速やかに医師の治療を受けさせましょう。
新生児一過性多呼吸の原因

新生児に多呼吸症状が見られた場合に考えられる「新生児一過性多呼吸」ですが、原因についても考えてみましょう。
実はまだ明確な原因は解明されていない病気です。
しかしその発生の傾向や考えられる原因について触れていきたいと思います。
明確な原因は不明
新生児一過性多呼吸の原因は明確にされていません。
一般的には、出産直後の新生児の肺に肺胞液が詰まっていることで、上手く酸素を取り込めないことが原因と考えられています。
生まれる前の胎児の肺には肺胞液という液体が詰まっていますが、通常は出生後に呼吸を始めると肺胞液は体内に吸収されていくのが特徴です。
しかしごく稀に、何らかの要因で肺胞液の吸収が進まず肺の中に余計な水分が残ったままになってしまうことがあります。
こうなると新生児は水中で溺れているのと同じで、呼吸が上手くできない状態になります。
これが新生児一過性多呼吸の症状です。
肺胞液の吸収を妨げる明確な要因はわかっていません。
ただし新生児が37週以前に生まれた時や分娩時間が非常に短い場合、陣痛前に帝王切開で生まれた場合に発症する確率が高いといわれています。
また母親が妊娠中に糖尿病や喘息を患っていた場合も、発症の可能性が高い傾向です。
発症の確率としては100人に1人ほどの割合で起こる病気で、新生児に起こる呼吸器疾患の中では1番多いといわれています。
出産後に起こりやすい
新生児一過性多呼吸は、出生直後から6時間以内に発症するのが特徴です。
その中でもとくに新生児が呼吸を開始する出産1~2時間後に発生することが多いです。
多呼吸の症状や「うーうー」とうなるような呼吸、肋骨や鎖骨の辺りがへこみ体全体を使って呼吸する陥没呼吸の症状が見られることもあります。
重症化すると皮膚が青紫色に変色するチアノーゼが見られる場合もあり、症状はさまざまです。
新生児一過性多呼吸を疑う場合にはレントゲン検査や血液検査などの精密検査を行い、他の病気の可能性がないか確認してからの診断となります。
新生児一過性多呼吸の検査・診断

新生児一過性多呼吸は精密検査なしでは断定できません。
以下の項目を参考に、新生児一過性多呼吸の診断方法について把握しておきましょう。
他の病気でないことが大前提
新生児は未熟で弱い存在です。
医師は多呼吸の症状があるからといって、すぐに新生児一過性多呼吸と断定するわけではありません。
新生児は他の病気を患って生まれてくることもあるため、他の病気が隠れていないか検査する必要があります。
例えば何かしらの細菌に感染していた場合にも、多呼吸になることがあるのです。
新生児一過性多呼吸の場合は基本的に回復するものなので、症状が悪化し続けたり急激に悪化したりする場合には別の病気が疑われます。
様々な角度から慎重に検討して、他の病気の疑いがないと分かってから初めて、新生児一過性多呼吸と診断されるのが一般的です。
胸部X線写真による検査

新生児一過性多呼吸の精密検査では他の病気の可能性も考えて、胸部X線写真による検査をするのが一般的です。
必要に応じて血液検査や血液培養なども同時に行う場合もあります。
胸部X線写真による検査を行うことで、肺炎や呼吸窮迫症候群、気胸などの他の病気の可能性を一緒に検査し、診断することが可能です。
他の病気が隠れていないか確認すると同時に、この検査で肺の中に水分が残っていること、そして空気が取り込めているかどうかも確認します。
週数やお産または赤ちゃんの状況で診断
上記の診断以外にも方法があります。それが週数や新生児の様子を見ることです。
新生児の体の状態はもちろん、生まれたときの週数や出産時の状況からも、別の疾患が隠れていないか確認できます。
未熟児や、特定の危険因子をもった新生児であれば新生児一過性多呼吸の可能性が高まります。
しかし週数や新生児の状態だけの診断は、他の病気を見落とす危険があります。
近年は精密検査と赤ちゃんの状態を踏まえて診断する医師がほとんどです。
新生児一過性多呼吸の治療法

肺に溜まっている水は治療で取り除くことができません。
大半は2日~3日で吸収されて呼吸状態も回復するため、それを待つことになります。
そのため新生児一過性多呼吸の治療法としては、新生児の呼吸を楽にしてあげるための処置が一般的です。
代表的な方法が、保育器の中で酸素を注入することです。
酸素投与だけでは状態が改善しなかった場合は、人工呼吸器をつけて処置を行うこともあります。
症状が落ち着いた後は予後も良好で、後遺症が残ることはほとんどありません。
部屋全体の酸素濃度を上げる
新生児一過性多呼吸は、新生児の体内に酸素が十分に巡っていないことが原因で発症します。
治療中は酸素注入以外にも、部屋全体の酸素濃度を上げるなどの対応をすることで早期改善へとつながるでしょう。
nCPAPの活用
新生児一過性多呼吸の症状によっては、nCPAPを活用した治療も効果を発揮します。
nCPAPとは、自発呼吸を促したり補助したりすることができる医療機器の名前です。
この機器を使用したnCPAP療法は、別名経鼻的持続陽圧呼吸療法とも呼ばれ、新生児や呼吸困難症状のある患者の呼吸の補助を目的とします。
重症な場合は挿管が必要となることも
新生児一過性多呼吸の症状が重症な場合は、挿管での治療も必要です。
重症な場合は人口呼吸器を新生児にとりつけ、強制的に呼吸を促します。
これはあくまでも促すだけなので、新生児自身の呼吸が止まることはありません。
挿管する場合は新生児が動き回って管が抜けないよう、薬を使って眠らせることがほとんどです。
多呼吸の受診目安

一時的な多呼吸ではなく、息苦しさや呼吸困難を伴う多呼吸の場合は呼吸の回数を図ってみてください。
未就学児の場合、おおよそ30回未満が正常値です。小学生だと20回程度、それ以上の年齢になると安定して18回程度に落ち着きます。
呼吸の回数がこれ以上で、かつその状態が続くときは多呼吸の可能性があります。
とくに子どもの場合、多呼吸の裏に気管支炎が隠れている可能性も否定できません。
少しでも呼吸がおかしいと思ったら、早めに病院へ行くことをおすすめします。
まとめ

出生直後の子どもに起こりやすい新生児一過性多呼吸は、適切な処置で改善しますし、後遺症が残ることもほとんどないため安心してください。
ただしそれ以外の場面での多呼吸には注意が必要です。
ただの風邪だろうと安心して放置せず、継続的に呼吸の回数が多いと思ったらすぐに受診することをおすすめします。
多呼吸は老若男女だれにでも起こりうる症状です。
症状や原因を正しく理解することで、多呼吸が発生した時も適切な対処ができるようになります。
気になる症状がある場合や息苦しさが解消されない時には、病院で診察してもらい適切な処置を受けましょう。
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こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓
〇病院名 :すずきこどもクリニック
〇医師 :鈴木幹啓
〇アクセス:和歌山県新宮市下田2丁目3−2
〇診療科 :小児科
〇経歴:株式会社オンラインドクター.com代表取締役CEO
1975年三重県伊勢市生まれ
1995年自治医科大学入学(県からの奨学金制度)
2001年自治医科大学卒業
日本小児科学会認定小児科専門医
国家資格ケアマネジャー
三重県立総合医療センター、国立病院機構三重中央医療センター、国立病院機構三重病院、伊勢赤十字病院、紀南病院
平成22年5月、新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院
【製薬会社社外講師・CM出演等】
グラクソスミスクライン社、JCRファーマ社、杏林製薬、明治製菓ファーマ、鳥居薬品
【メディア出演・TV監修】
日本テレビ、読売テレビ、東京MX、テレビ朝日(医療監修)「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」
【著書】
日本一忙しい小児科医が教える病気にならない子育て術(双葉社)
開業医を救うオンライン診療(幻冬舎)
2020 年 10 月株式会社オンラインドクター.com を設立。
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