手に力が入らないときに考えられる病気と受診の目安

疲れやストレスが溜まると手に力が入らなくなることがありますが、なかには命に関わるような脳の病気が原因のケースもあるため放置するのは危険です。

そこで本記事では、手に力が入らないときに考えられる病気と病院を受診すべき症状について解説します。早めに受診して病気を早期発見・早期治療できれば、後遺症や合併症を予防できます。

手に力が入らない・震える時に考えられる病気             

手に力が入らないときに考えられる病気を紹介します。

一過性脳虚血発作

一過性脳虚血発作とは、脳の動脈が一時的に詰まって脳梗塞のような症状が出たものの、数分〜24時間以内に症状が消える現象のことをいいます。一過性脳虚血発作が起こると48時間以内に脳梗塞を発症しやすいため、症状がなくなったからといって放置するのは大変危険です。症状が出たときはすぐに救急車を呼び、専門医がいる医療機関で適切な治療を受けましょう。

症状

• 半身の脱力・しびれ
• 言葉が出ない
• 呂律が回らない
• 手足に力が入らない
• 物が飲み込みにくい
• 物が二重に見える

脳卒中

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳が障害を受ける病気です。脳卒中には以下の3種類があります。

• 脳梗塞：血栓によって脳血管が詰まって脳が壊死する
• 脳出血：脳にある細い動脈がもろくなり、破れて出血する
• くも膜下出血：くも膜（脳表面の膜と脳の空間に存在する血管）が切れて出血する

脳卒中は一刻も早い治療が必要なため、症状が出た場合は躊躇せずに救急車を呼んでください。

症状

• 手足に力が入らない
• 手足の麻痺・しびれ
• 頭痛
• めまい
• 言語障害

多発性筋炎

多発性筋炎とは、体内で筋肉に対する抗体が作られて自分の筋肉を破壊してしまう自己免疫疾患です。「力が入りにくい」「筋肉を動かしたときに痛い」といった症状が二の腕や太もも、首などに起こります。原因ははっきりと解明されていませんが、細菌やウイルスによる感染や免疫異常、遺伝などと関係していると考えられています。

症状

• 力が入らない
• 疲れやすい
• 筋肉を動かしたときに痛い

頚椎症（けいついしょう）   

頚椎症（けいついしょう）とは、脊髄神経の通り道が狭くなることで神経が圧迫され、手足のしびれや握力の低下などさまざまな症状が現れる病気です。椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板（ついかんばん）は加齢によって変形してひびが入り、徐々に潰れてきます。つぶれた椎間板や変性した骨や靭帯が神経の通り道にとびだして神経を圧迫します。さらに長時間のパソコンやスマートフォンの使用による悪い姿勢が頸椎の変形に影響するといわれています。

症状

• 手や腕のしびれ、痛み
• 指先が動きにくい
• 握力の低下
• 歩行障害
• 尿が出にくい・尿漏れ
• 両足のしびれ・足の裏の違和感
• 便秘

頚椎椎間板ヘルニア  

頚椎椎間板ヘルニアとは、加齢などによって椎間板が破れて後方に飛び出すことで神経根の圧迫や脊髄の圧迫が起こる病気です。パソコンなどの多用で首がクレーンのように前に出る「クレーンネック」も原因のひとつといわれています。

症状

• 肩こり
• 細かい手作業ができない
• 箸が使いにくい
• ボタンがかけづらい
• 足のもつれ・歩行障害
• 首・肩・背中・腕の痛みやしびれ

手根管症候群

手根管症候群とは、手首から手の中にある正中神経の圧迫によってしびれや痛みが生じる病気です。妊娠中や出産期、更年期の女性に多くみられるほか、手の使い過ぎや骨折などが原因で発症することもあります。

症状

• 手のしびれ・痛み
• 親指の付け根の筋肉が痩せる
• 細かい作業がしにくい
• 前腕・肘・肩の痛みや重だるさ

一時的に手に力が入らない時の原因と対処法

一時的に手に力が入らない時は、セルフケアによって症状が緩和することがあります。ここでは原因別の対処法を紹介します。

疲労の蓄積   

仕事や家事、育児などで手を駆使して疲れが溜まると、筋肉が凝って手に力が入りにくくなることがあります。そのまま作業を続けると症状が悪化するため、できるだけ手を使う時間を減らして休養することが重要です。十分な睡眠や規則正しい生活で全身の疲れをとりましょう。

過度な食事制限

ダイエットによって過度に摂取カロリーを減らすと栄養不足に陥り、体のエネルギー源が不足して手に力が入らなくなることがあります。極端な食事制限を伴うダイエットは筋肉量が減少して基礎代謝も落ちてしまうため、かえって「太りやすく痩せにくい体」になります。

極端な食事制限は避け、1日3食栄養バランスのよい食事を心がけましょう。

ストレスによる自律神経の乱れ

ストレスや不規則な生活によって自律神経のバランスが乱れると、手のだるさだけでなく、しびれや痛み、肩こり、頭痛などさまざまな不調が現れます。自律神経を整えるにはできるだけストレスをうまく発散させ、十分な睡眠とバランスのとれた食事、適度な運動によって生活リズムを整えることが重要です。規則正しい生活を続ければ身体機能が正常に保たれ、精神も安定しやすくなります。

すぐに病院を受診すべき症状

手に力が入らないだけでなく、以下のような症状も出ている場合は危険な状態なため、すぐに整形外科や脳神経内科、脳神経外科病院を受診しましょう。

• 呼吸困難
• 手が動かない・強いしびれがある・手の感覚がない
• 激しい頭痛・グルグル回るようなめまいがある
• 視野が半分欠ける・ものが二重に見える
• 会話が困難になる・ろれつが回らない

とくに体の片側にしびれや運動麻痺が現れた場合は脳疾患の疑いがあるため、早急に救急車を呼んでください。

症状が改善しない場合は早めに病院の受診を

生活習慣を改善しても症状がよくならない場合は重大な病気が隠れていることもあるため、早めに病院を受診しましょう。

• 脳梗塞など脳の病気が疑われるとき：脳神経外科・脳神経内科
• 脊髄や周囲の神経の病気が疑われるとき：整形外科
• 原因が分からないとき：かかりつけの内科

一過性脳虚血発作や脳卒中などの症状が出た場合は、休日・夜間を問わず救急外来を受診するか救急車を呼んでください。早急に受診・治療することで重症化を防げるだけでなく、後遺症や合併症の予防にもつながります。