最終更新日:2021年9月30日
時には命の危険も…子どもを「食物アレルギー」から守るために知っておきたいこと
こちらの記事の監修医師
東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター
堀向 健太
知っているようで意外と知らない「食物アレルギー」とは
『食物アレルギー』とはどんな病気でしょうか??物アレルギーとは、ガイドラインに書いてある文章を少しかみ砕いて書くと 『その人にとって困ってしまう症状が、?物により免疫細胞のはたらきを通じて起こる現象』 のことです。 「免疫細胞のはたらきを通じて」というのは、例えば牛乳を飲むといつも下痢をしてしまうような『乳糖不耐症』や、夏に生卵を食べて食あたりをした、というような、「アレルギーではない現象」を除くためです。食物アレルギーは以前と比べて増えている
東京で5年ごとに行われている、3歳のお子さんに対する統計『アレルギー疾患に関する3歳児全都調査』があります。 本調査によると、3歳までに食物アレルギー疾患と診断された子どもの割合は、平成11年の7.9%に比較して、令和元年度には14.9%と、2倍近く増えているという結果になっています。食物アレルギーは昔よりも増えているのです。 出典:アレルギー疾患に関する3歳児全都調査(概要版) https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/10/22/02.html そして、食物アレルギーと診断された子どものうち、12.2%は強いアレルギー症状(アナフィラキシーショック)を起こしたとされています。 これは海外でも問題になっており、例えば英国でも食物によるアナフィラキシーは増加しており、厳しいアナフィラキシーの要因として乳が増えているという研究結果があります。日本だけの問題ではないということですね。 出典:Food anaphylaxis in the United Kingdom: analysis of national data, 1998-2018 https://www.bmj.com/content/372/bmj.n733 アレルギーの原因になる食物は、卵(34.7%)、牛乳(22.0%)、小麦(10.6%)の3つが多いのですが、ピーナッツ(5.1%)、甲殻類(2.9%)、そば(1.8%)も無視できない数ですし、大人では魚や果物、大豆も少なくありません。 これほど多いのですから、アレルギーの対象物を間違えて食べた子どもや、はじめての食べ物で強い症状を起こし、救急外来を受診する子どもも一定数います。食物アレルギーを発症した時の対処法は?
食物アレルギーの症状は、多くは皮膚の症状など軽い症状です。その場合は、(処方されているなら)薬を内服し、医療機関を受診しましょう。 しかし、頻度はけっして高くはありませんが、生命の危機が起こりうる強い症状を起こすこともあります。そのような強いアレルギー症状を『アナフィラキシー』といいます。 『アナフィラキシー』の診断は、実は少し難しい定義があり、『アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に機器を与え得る過敏症状』とのことです。 難しいので、ちょっとだけ簡単にすると、 アレルゲン等が体に入ってくることで、2つ以上の臓器に、そして全身にアレルギー症状が起こる、命に危険がおよぶ可能性のある過敏な反応のことです。 2つ以上の臓器、というのがわかりにくいですね。 臓器、というのは体のそれぞれのパーツと考えるといいでしょう。そして、 1.皮膚(じんましん、赤くなるなど) 2.呼吸器(咳やぜいぜい、呼吸が苦しくなるなど) 3.循環器の症状(血圧が下がったり、意識障害を起こす) 4.消化器(何度も吐く、強い腹痛など) といった、症状のうち、2つの臓器にわたり、症状が急に広がるのがアナフィラキシーです。 実は、定義はさらにややこしく、3つあるのですが、ここでは難しく考えずに『特に強いアレルギー症状』として覚えておけばいいでしょう。 アナフィラキシーを起こしたときは、アドレナリンという緊急薬を太ももの外側に筋肉注射をします。 しかし、そんな薬がない場合も多いですよね。薬がない場合は、吐物がのどにつまらないように気をつけながら横に寝かせて、周囲の助けを求めつつ救急車を呼ぶのが無難でしょう。 なお、急に起き上がらせると、血圧が下がるなどリスクがあるため注意が必要です。普段の生活で食物アレルギーから身を守るために
食物アレルギーは、近年医学が急速に進歩している分野です。 よって、もし受診する場合は、可能であれば『日本アレルギー学会専門医』に相談するのが良いでしょう。 しかし、『アレルギー科』と掲げられていても、専門医とは限らないことに注意が必要です。 2014年に実施された全国調査では、アレルギー科を標榜している医師のうち、アレルギー専門医資格を有する医師は3割程度とされています。 もし専門医が近くに見つからなければ、『食物アレルギー研究会』のホームページから、食物経口負荷試験の実施施設を検索するのもいいかもしれません。 そして、適切な診断を受け、対策を尋ねるのが良いでしょう。 この記事が皆さんのお役にたち、医療機関への受診につながることを願っています。この症状を治したい。記事を読んで今すぐ医師の診断を受けたいあなたへ。
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こちらの記事の監修医師
東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター
堀向 健太
日本小児科学会専門医・指導医/日本アレルギー学会専門医・指導医 1998年鳥取大学医学部卒業。2012年から東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科。医学博士。ブログ「小児アレルギー科医の備忘録」ほか、数多くの医学サイトで執筆しながら、SNSでも出典の明らかな医学情報を発信している。
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