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最終更新日:2022年2月20日

無自覚の恐怖…「アルコール依存症」と「お酒好き」のボーダーライン【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
東京アルコール医療総合センター
垣渕 洋一

垣渕先生
(画像はイメージです/PIXTA)

長引くコロナ禍は、メンタルヘルスに多大な悪影響を与えています。それが要因で酒量が増え、入院するほど健康を害する「アルコール依存症」になる人が増えていると、東京アルコール医療総合センター長の垣渕洋一氏はいいます。本記事では、そんなアルコール依存症になる原因と予防法について解説します。

目次

  1. 入院率は1.2倍に…コロナ禍の飲酒問題への影響
  2. 少しずつ積み重なって…「アルコール依存症」になるまで
    1. アルコールはれっきとした「薬物」
  3. 酒害が気になるならまず「アルコール摂取量を記録」
  4. 「ハイリスク」飲酒から「ローリスク」飲酒へ
    1. いまの私は依存症?スクリーニングテスト

入院率は1.2倍に…コロナ禍の飲酒問題への影響

アルコールと健康の関係について、皆さんは、どのように考えていますか?

「飲み会は楽しいから、これからも飲むよ」、「結構、飲むけれど、検診で異常ないから大丈夫」という人もいれば、「肝臓の数値が上がってしまい、控えるように医者からいわれた」、「コロナ禍になってリモートワークを2年も続けていたら、昼間から飲むようになってまずい」といった人もいるかもしれません。

コロナ禍は、メンタルヘルスに多大な悪影響を与えてきました。日本におけるコロナ禍に起因したメンタルヘルス問題の実態調査(※1)によると、不安、抑うつ気分、意欲低下、対人関係の問題、心身症、不眠症など、メンタルヘルスに大きな悪影響を与えていることが示唆されました。そのため飲酒量が増えてもおかしくありません。

コロナ禍の飲酒問題への影響について、京都大学大学院医療経済学分野教授の今中雄一氏らの研究グループが行った研究(※2)があります。

2020年4~6月における飲酒に起因する肝疾患や膵炎による入院率が流行前の期間と比べた変化を調査したものです。入院率は約1.2倍になり、特に女性で顕著で、2020年6月には前年同月の倍でした。

一方、国税庁の調査(※3)によると、2020年の酒類の消費動向は、コロナ禍に突入した3月、家庭での消費が増えましたが、それ以上に飲食店での消費が減り、合計すると、前年同月比はマイナスとなりました。以後も、10月以外、12月までのあいだすべてマイナスとなっています。

垣渕先生1
([図表1]コロナ禍における酒類消費動向※3から)

コロナ禍になり、社交的な飲酒機会が激減したことから全体としてアルコール消費量は減少しました。一方、コロナ禍に伴うストレス解消のため酒量が増加し、大量飲酒により入院するほどに健康を壊した人も増えたということです。大量飲酒による問題は、健康に限らず、生活全般におよびます[図表2]。

垣渕先生2
([図表2]飲酒問題)

少しずつ積み重なって…「アルコール依存症」になるまで

アルコール依存症は、このような飲酒問題が、長い時間をかけて、少しずつ積み重なっていく進行性の病気です。

垣渕先生3
([図表3]飲酒問題の悪化と自覚・否認、「依存症」の境界線)

飲酒は、機会飲酒といって学生のコンパや職場の飲み会などのイベントで飲むことから始まります。お酒との相性がいいと、イベントがなくても飲む、習慣飲酒となります。晩酌がその代表例です。量が多くなく、時間も長くなければ、生活に支障はありません。しかし、「飲まないとつまんないな」と思うようになったら、常用量依存といって、少し危険な状態です。

さらに、飲酒問題が積み重なると、「ちょっと飲み過ぎ。まずいな」と危険を自覚するようになります。この段階で酒害軽減に取り組めば効果が出やすいのです。

しかし、さらに大量飲酒を続けると、飲酒問題の自覚が薄れます。家族は「控えて欲しい」と言っても、「仕事をやっているから問題ない」と否認し、耳を貸さなくなります。ここまで来ると立派な依存症です。

重症の依存症となると、家族から「私とお酒のどっちが大事なの!」と詰め寄られ、「今後、顧客から酒臭いとクレームが来たらクビだ!」と上司にいわれても大量飲酒を続けます。「行動のすべては飲酒のため!」になってしまいます。

「断酒するぐらいなら死んだ方がましだ」という言葉を数えきれないぐらい多くの人から聞きました。元々、楽しい時間を過ごすとか、食事を美味しくするといった目的のための手段の1つであったのが、いつの間にか飲酒すること自体が目的になり、人生で最優先になってしまうのです。

このようになってしまうのは、アルコールが持つ特徴を知らずに付き合ってしまうからです。

アルコールはれっきとした「薬物」

意外に知られていないことですが、アルコールは合法ですが、れっきとした薬物です。脳に作用して、寝つきをよくし、不安やウツや苦痛を軽くし、やる気が起きて、幸せな気分になります。とても有用です。

しかし、いつでも、どこでも、1コインで、効果絶大なので、依存性が生じます。人間は放っておけば安きに流れますから……。

一方、脳は非常に繊細な臓器なので、血液中の不要な成分の影響を受けないような仕組みが備わっています。飲酒を続けると、アルコールの薬効が徐々に弱くなり、以前のように酔う(脳が報酬を得る)のに必要な量が増えます。これを耐性といいます。

依存性と耐性が揃うと、酒量が増えます。飲酒問題が積み重なっても、飲酒のコントロールを失った状態が「依存症」です。

酒害が気になるならまず「アルコール摂取量を記録」

医師から薬が処方されるとき、効果が出て副作用は出ないよう、飲み過ぎに注意します。また、健康になるために薬だけでなく、運動、栄養、睡眠に気を遣うことが必要です。アルコールも同じで、ストレス対策や楽しみをさまざまな方法で行うことが、長く付き合うコツです。

酒害が気になる人は、まず、自分がどれぐらいアルコールを摂取しているのか計算して、記録をつけましょう。お酒の種類によって度数が違うので、純粋なアルコールとして、どれぐらい摂取しているかを計算します。

純アルコール換算量(g)=飲んだ量(ml)×度数×0.8(アルコールの比重)

  • ビール500mlなら、500ml×0.05(アルコール度数5%として)×0.8=20g
アルコール
(画像=[図表4]アルコール度数5%のビールを500ml飲むと、実質20gのアルコールを摂取)

「ハイリスク」飲酒から「ローリスク」飲酒へ

リスクゼロの飲酒量はありません。少量であっても飲酒量に比例して飲酒問題のリスクは高まります。

1日に男性60g(日本酒3合)以上、女性30g以上をハイリスク飲酒と呼びます。

ではローリスク飲酒はどの程度でしょうか? 純アルコール換算で男性20g(日本酒1合)、女性10g以下です。そして、週2日は休肝日をもうけることが推奨されます。

こんな量では物足りない場合、現在、特段の飲酒問題がなければ、男性40g、女性20gが、楽しさと健康維持を両立するギリギリの量です。

現在、なにかしら飲酒問題があって、計算して飲酒量が多ければ、減らすことをお勧めします。方法については、拙著※4をご覧ください。

いまの私は依存症?スクリーニングテスト

最後に、依存症かどうかを鑑別する簡単なスクリーニングテストを紹介します。以下の4つの問いに<はい>または<いいえ>で回答してみましょう。

  1. 飲酒量を減らさなければと感じたことがありますか?(Cut down)
  2. 人から飲酒を非難されて気に障ったことがありますか?(Annoyed by criticism)
  3. 自分の飲酒に後ろめたさを感じたことがありますか?(Guilty feeling)
  4. 神経を落ち着かせたり、二日酔いを治すために迎え酒をしたことがありますか?(Eye-opener)

英語の頭文字をとってCAGEと呼ばれており、世界中で使われています。

<はい>が2つ以上あれば、アルコール依存症の可能性があるので、早めに相談、受診しましょう。皆様の健康を祈念しております。


【注釈】

※1 Tomohiro Nakao et al: Mental Health Difficulties and Countermeasures during the Coronavirus Disease Pandemic in Japan: A Nationwide Questionnaire Survey of Mental Health and Psychiatric Institutions.
Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18(14)
https://www.mdpi.com/1660-4601/18/14/7318

※2 令和2年度 依存症対策全国拠点機関設置運営事業における依存症に関する調査研究事業 「新型コロナウィルス感染症拡大が断酒会員に及ぼす影響に関する緊急調査」報告書
https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document36.pdf
Hisashi Itoshima et al: The impact of the COVID-19 epidemic on hospital admissions for alcohol-related liver disease and pancreatitis in Japan
Scientific Reports volume 11, Article number: 14054 (2021)
https://www.nature.com/articles/s41598-021-92612-2

※3 国税庁酒レポート 令和3年3月
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2021/pdf/001.pdf

※4 垣渕洋一:「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本.青春出版社.2020年12月
www.amazon.co.jp/dp/4413231813

【参考サイト】

・依存症対策全国センター
https://www.ncasa-japan.jp/you-do/treatment/treatment-map/

・ASK
https://www.ask.or.jp/article/6489

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こちらの記事の監修医師

東京アルコール医療総合センター

垣渕 洋一

【学歴・職歴】
1990年 筑波大学医学専門学群卒業
1994年 筑波大学大学院修了(精神保健専攻) 医学博士号取得
2003年  医療法人翠会成増厚生病院附属の東京アルコール医療総合センター精神科医師
2005年  同センター長に昇任。
2017年より 成増厚生病院副院長に昇任。アルコールセンター長を兼任。

【資格】
医学博士、日本精神神経学会認定専門医・指導医、厚労省認定精神保健指定医

【所属学会】
日本精神神経学会、日本アルコール関連問題学会、日本アルコール・アディクション学会、日本児童青年期精神医学会

【役職】
アルコール関連問題基本法推進ネット幹事、関東甲信越アルコール関連問題学会理事、東京都依存症関連機関連携会議委員

【著書】
・職場のメンタルヘルス相談(分担執筆)商事法務研究会、1992年
・メンタルケースハンドブック(分担執筆)中央法規出版、1994年
・介護福祉士試験>(分担執筆)一ツ橋書店、2003年
・セルフケア・シリーズ:アルコールこうしてつきあう(監修)保健同人社、2008年
・実践 精神科看護テキスト 薬物・アルコール依存症看護(分担執筆)精神看護出版、2008年
・ぼくらのアルコール診療(分担執筆)南山堂、2015年
・「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本(単著)青春出版社、2020年

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