最終更新日:2021年12月30日
新型コロナでうつ病が増加!不安の正体は?【精神科医が解説】

こちらの記事の監修医師
桜並木心療医院
遠山 高史

新型コロナの感染拡大で、サラリーマンの働き方が大きく変わりました。朝夕の通勤は禁止され、自宅でリモートワークが始まり、1年間が経過しました。緊急事態宣言解除により、サラリーマンの多くが出勤することになりました。その時、いったい何が起こったのか、精神科医が解説します。
ある、IT企業に勤務するA君のはなし
この一年、在宅リモートで仕事してきた26歳のA君、緊急事態宣言の解除により、出勤することになった。いざ出勤しようとした朝、頭痛と吐き気がおこった。何とか駅まで行き、予想より混んでいる電車に乗ったとたん、動悸と冷や汗がでて、息苦しく、手足もしびれ、心臓が止まりそうな感覚にもとらわれた。
次の駅で降り、近くの総合病院を受診。いろいろ検査が行われたが、症状を説明するが身体的異常は認められないとされ、心療内科の受診を勧められた。検査での異常がないにもかかわらず、身体の不調があるときは、腸の動きや体温調節、睡眠の調節など、身体のほとんどの機能を調節するシステムである自律神経の不調が生じていると考えられる。そしてこの不調は気分や意欲を落ち込ませるうつ状態と連動していることが多いのである。
A君は帰宅してその夜はほとんど眠れず、朝になって再び、めまいや吐き気で、出社できなかった。以前は出社できたにもかかわらず、なぜ、これほどつらいのだろうか。しかも、いざ、自宅でパソコンに向かうと漠然と不安な気持ちが広がり、集中できず、簡単な業務でも処理するのにてまどり、この先も仕事ができるようには思えなくなった。うつ状態とは心的エネルギーの低下によって引き起こされる。A君の心的エネルギーはいつの間にか枯渇しかかっていたのである。
そもそも動物は不安と脅威を感じた時、逃げるという選択をとれるように設計されているが、人類は定住することで、様々な道具を作り、食料の安定供給を達成し、ほかの動物の支配に成功したが、逃げるという、手段を失った。
外敵から守る国家という枠組み、ローンでかさ上げされた快適な住まい。便利だが費用のかかる交通機関。そのために、組織に属さざるを得ず、どこに移動しようと求められる本人確認、こういったもろもろが、快適な生活を保障しながら、逃亡を妨げるように働く。私たちは当面の安心によって、逃げられない不安を麻痺させて暮らしてきた。
しかし、コロナは人間の作った飛行機にのり、安心安全のために設けられた様々バリアーを破り、定住により標的にしやすい人類に襲いかかった。人々はコロナからの脅威から逃げられないことを思い知った。しまっておいた逃げられないときに感じる恐怖が、心の底から立ちあがってきたのである。
多彩な症状、潜在している気分の落ち込み
自律神経のシステム異常が起こると、頭痛、吐き気、動悸、倦怠感、そして、便秘(逆に下痢といった腸の不調)、時に微熱など、どれとは定まらない多彩な身体の不調を生じるが、その背景には、心的エネルギーの枯渇による、気分の落ち込み、気力の低下が潜んでいる。
それでも会社に行かねばと無理をすると、より身体症状が強まってくる。不調は在宅の時に少しずつすすんでいたが、出社の負担で一気に顕在化したと思われる。出社すれば、顧客対応やクレーム対策、難しい上司からの圧力などいろいろ面倒でエネルギーのいる作業をしなくてはならない。必ず答えのある学校教育で成功を収めてきたA君にとって、おおむね手順の決まったPCでの仕事はさほどのエネルギーを必要としなかった。
しかし、対面の作業は、想定外の事案がほとんどで、答えを自分で作らねばならない。以前はむしろそれを得意としていたのに、その時、すさまじい負担を感じるようになっていたのは、心的エネルギーが枯渇しかかっていたことによるのである。
心的エネルギーの低下は睡眠の質の低下を招く
A君はかなり前から寝つきが悪くなっていた。何とか寝てはいたが、次の日のリモート業務が始まる8時半近くにようやく起きだし、そして夜の10時ごろまでパソコンに向かっていた。通勤していたころより、おなじ成果を得るために、より多くの手間が必要になっていたので、かえって業務時間が増えたのである。
しかし、仕事を終えた直後では、脳の興奮はとれず、そのあと3時間もたった午前一時頃ようやく眠りに入れる。しかし、ちょくちょく目が覚め、睡眠不足だけでなく質の低下が起こっていたのである。何よりも、A君、ほとんど家から出ず、運動らしきことを全くしていなかった。運動不足も睡眠の質の低下を招いていたのである。良質な睡眠こそが心的エネルギーの増加に最も寄与する。すなわちA君の心的エネルギーの低下は、睡眠の質の低下と関連がありそうである。
脳にたまった不要な情報の削除は、外部情報が遮断されている睡眠中でないとうまくゆかない。睡眠がうまく取れないと、削除がうまくゆかず、どうでもよい情報に惑わされやすくなる。脳のエネルギー効率も悪くなるから、脳が疲弊して、妙に神経質になり、身体のちょっとした不調にも不安を感じるようになる。重要なのは質の良い睡眠をとることなのだが、コロナは、逆に不安を掻き立て、巣ごもりにより、運動を制限させ、人から、質の良い睡眠を奪うのである。
運動すると不安を抑え、睡眠の質を上げる
動物を狭いところに押し込め、自由に動けない、という環境にしばらく置いておくと、眠らなくなり、些細なことに過敏におびえやすくなり死んでしまう。死後解剖すると、脳の一部が腫れ、一部が縮んでいることを見出すことができる。その調和の崩れが些細なことにより過敏にさせていると考えられているが、人間という動物も例外ではない。しかし、それを自覚することは案外難しく、身体の不調ばかりに気を取られ、かえって引きこもり、運動不足から、睡眠の質の低下を招くことになってゆく。
朝と夕方、太陽のもとでの運動をすることが夜の質の良い睡眠に効果がある。ただ、漫然と寝るのは、かえって、睡眠の質の低下を招く。一日のリズムを意識して、少なくとも6時間できれば7時間半きちんと寝て起きることが、脳の機能を上げ心的エネルギーを増価させ、ストレス対応力が高まる。朝 太陽に当り運動すると脳は覚醒し、やる気につながる。夕方(夜ではない)の運動は寝つきをよくし、目覚めをよくする。インドアで一日パソコンに向かっている人たちには特に実行をお勧めする。
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桜並木心療医院
遠山 高史
精神臨床医
精神臨床医歴45年。新潟県出身。自治体病院長を経て、東京近郊で心療内科を開業。第12回千葉文学賞受賞、時々農民をやっている。
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