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最終更新日:2022年3月2日

ワクチンで防ぐ!子宮頸がんは予防できる「唯一のがん」

こちらの記事の監修医師
クリニックフラウ栄
宮島 慎介

(画像=Teal and white ribbon for Cervical Cancer awareness campaign concept symbolic bow color on woman helping hand support on old aged wood/stock adobe.com)

目次

1.子宮頸がんとHPVワクチン
2.子宮頸がんの原因は?HPVと性交渉との関連について
3.子宮頸がんワクチンの効果
4.子宮頸がんワクチンの副作用リスク
5.ワクチン接種の積極的勧奨の中止を経た、その後
6.もし万が一、強い副反応が出たら?
7.子宮頸がんワクチンの種類
8.子宮頸がんワクチンはいつ受ける?
9.子宮頸がんワクチンは本当に受けるべき?

1.子宮頸がんとHPVワクチン

女性の膣の奥には「子宮」という、出産を担う重要な臓器があります。その子宮の出入口、子宮頸部にできるがんを子宮頸がんと言います。

他のがんと性格が異なり、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウィルス感染が原因であると判明しています。そのためヒトパピローマウイルスの感染を予防することによって、子宮頸がんを予防することができると明らかになっています。

諸外国では、2000年ごろから子宮頸がんワクチンの接種を国主導で促進しており、接種が普及した一部の国においては、子宮頸がんが減少傾向に転じ始めています。

我が国でも2013年4月、厚労省がワクチンを積極的接種勧奨したことで定期接種が始まりました。しかしながら直後、ワクチン接種者のごく一部の方に健康被害の疑いがあるとメディアが発信したことから、2013年6月には厚労省がワクチン積極的接種勧奨の中止を発表し、その後70%あった接種率が1%未満まで低下しました。

こうした経過からワクチン普及がストップしたことで、諸外国と比べ、子宮頸がん発症率が明らかに増加傾向に転じています。

2.子宮頸がんの原因は?HPVと性交渉との関連について

さて、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)というウィルス。

このウイルスは、性交(セックス)によって感染します。一生の中で、50%~80%の女性がHPVに一度は感染するとされていますが、その多くは一時的な感染であり、数年以内に自然に排除されます。

しかしながら、一部の方にはHPVが子宮頸部に持続感染したままとなり、数年~数十年の期間を経て子宮頸がんになっていきます。

HPVには100を超える種類があります。注意を要するHPVは16型と18型です。

たとえHPVに感染していても、子宮頸がんになりやすいHPV感染でなければがんになるリスクは高くはありません。現時点でも、細胞に異常がない女性のうち、10~20%程度の方がHPVに感染していると報告されています。

3.子宮頸がんワクチンの効果

HPVワクチンを導入したオーストラリア、イギリス、米国、北欧などで、HPV感染の低下や、子宮頸がん、ないしは前がん病変の発生が有意に低下してきていることが報告されています。

国を挙げてHPV2価/4価ワクチンの集団接種を開始した海外諸国では,ワクチン接種開始後3~4年の時点で、ワクチン接種世代の子宮頸部の前がん病変の罹患数が約50%減少しています。2価/4価ワクチンで予防できる、HPV16/18感染に起因する子宮頸部前がん病変は全体の約40%を占めるため、全体の子宮頸部前がん病変が50%減少したということは、HPV16/18起因の前がん病変に関しては根絶していると言っていいでしょう。

また国内においての統計学的研究でも、ワクチン接種後の子宮頸がん検診において前がん病変が見つかる割合が有意に減少していることが示されています。日本のデータでは、HPVの感染予防において有効率は「93%」です。

グラフィカル ユーザー インターフェイス が含まれている画像

自動的に生成された説明
出典:日本産婦人科学会HPより

ワクチンの持続期間が気になる方も多いと思われますが、半年に3回のワクチンを打つことで、終生の免疫となる可能性が高いと言われています。

さらにワクチン接種は、自然感染後の免疫力を大きく上回る値を示しています。つまり、インフルエンザや新型コロナウィルスなどのワクチンとは違い、毎年打つ必要がないのです。

グラフ, 棒グラフ

自動的に生成された説明
出典:日本産婦人科学会HPより

4.子宮頸がんワクチンの副作用リスク

HPVワクチンに限らず、一般的にワクチンを接種すると、接種した部位が腫れたり、痛むことがあります。これは、体の中でウィルス感染を防御する仕組みが働いているために起こる症状で、通常は数日程度で治ります。

その他、注射部位のかゆみ、内出血、熱っぽさ、しこり、知覚鈍麻、吐き気、だるさ、めまい、関節の痛みなどがあります。

ただ、HPVワクチンが他のワクチンと比べて特別発症頻度が高いということはなく、どのワクチンにも起こり得る症状ですし、発生頻度も大きく変わるものではありません。

HPVワクチンの主な副反応

ガーダシル及びシルガード9の添付文書より

また副反応が疑われる症状については、接種との因果関係を問わず収集しており、定期的に専門家が分析・評価しています。

その中には、稀に重い症状の報告もあり、具体的には以下のとおりとなっています。

出典:日本産婦人科学会HPより

5.ワクチン接種の積極的勧奨の中止を経た、その後

 日本で2009年にHPVワクチンが接種可能となった数年後、一部の女性に全身に起こる痛みや精神的症状が出現しました。

「ワクチンの副作用である」との訴えをメディアが大々的に取り上げ、「薬害ではないか?」という疑いが発生したため、2013年4月に定期接種が始まった直後の2013年6月、厚労省は積極的勧奨の中止を発表しました。

これにより定期接種が中止になったわけではないのですが、日本全国で瞬く間に一旦停止の状態となりました。

全世界で接種開始となっている状況で、日本は一旦立ち止まり、調査を始めました。

そしてその4年半後となった2017年11月、厚労省の専門部会で、慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されました。

上記の根拠として、下記二つのデータがあります。

2016年12月に厚労省研究班の全国疫学調査の結果が報告され、HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12〜18歳女子では10万人あたり20.4人)存在すること、すなわち、「多様な症状」がHPVワクチン接種後に特有の症状ではないことが示されたこと。

またほぼ同時期に行われた、名古屋市で行われたアンケート調査(通称:名古屋スタディ)では、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で「有意な差がなかった」と示されたことです。

テキスト

自動的に生成された説明

安全性の確認中から、日本産科婦人科学会や日本小児科学会など各種学会が厚労省に積極的勧奨の再開を訴え続け、2021年11月、厚労省の専門部会は、2022年4月よりHPVワクチンの積極的勧奨を再開すると決めました。

6.もし万が一、強い副反応が出たら?

ワクチン接種後に何らかの症状が現れた方のために、診療相談窓口が全国85医療機関(全ての都道府県)に設置されているので、安心して接種を受けられます。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-ansenshou28/medical_institution/dl/kyoyroku.pdf

厚労省HPより

なお、2017年7月の厚労省の研究班(牛田班)の報告では、HPVワクチン接種歴があり長期的な副反応の症状を呈する方に対する解析結果が示されています。

156例中115例(73.7%)は症状が消失または軽快し、32例(20.5%)は不変、9例(5.8%)は悪化したとされましたが、ワクチンを打っていない人と比べた明らかな副反応の増加は示されませんでした。

HPVワクチン接種の有無にかかわらず、慢性の痛みや運動機能の障害などの症状が長く続く患者さんの中には回復が難しい方がいるのも事実であり、早期から専門家による診療が必要と考えられます。

薬の影響は考えにくいものの、一部の方には強い副反応が出るのですが、慢性的な症状がでたとしても、早めの診療介入で多くの方は治癒が可能です。

7.子宮頸がんワクチンの種類

HPVは、子宮頸がんだけではなく、咽頭がん、肛門がん、外陰がん、腟がんなど他のがん発生の原因にもなります。さらに、性感染症の一つである尖圭コンジローマ(外陰、腟にデキモノが発生する病気)の原因にまでなります。

現在、日本国内で使用可能なHPVワクチンは、2価のサーバリックス、4価のガーダシル、9価のシルガードです。

カバーが可能なHPVの種類数は、下記のように異なります。

(子宮頸がんの原因型番:16、18、31、33、35、45、52、58)

(尖圭コンジローマの原因型番:6、11)

カバーしている型番が多ければ多いほど、予防効果は高いと推定されます。

日本人の子宮頸がん発症者の約65%はHPV16型、18型の二つの型ではありますが、9価のHPVワクチンを打てば日本人の子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%がカバーされます。

なお3種のワクチンにおいて、副作用に大きな差はありません。

注意していただきたいことは、ワクチンを打ったとしても100%子宮頸がんが予防できるわけではないということです。

シルガード9の接種とあわせて、20歳を過ぎたら、子宮頸がんの早期発見・早期治療のため、定期的に子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。

https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

打つ回数は、最初に1回打った後、2ヵ月後、そしてその4ヵ月後と、6ヵ月間に3回打ちます。

打つ場所は、ほとんどの場合、肩に筋肉注射となります。

8.子宮頸がんワクチンはいつ受ける?

 HPVは、性交(セックス)によって感染をします。そこから数年~数十年間に及ぶ感染の後に子宮頸がんを発症します。

最近のデータでは下記の表にもあるように、20年前よりも明らかに若い世代に発症していると言われています。

したがってより早い段階での接種が望ましく、セクシャルデビュー(初交)前に接種を完了すると最大の効果を得られます。

また添付文書の記載によると9歳以上と下限はあるものの、年齢の上限は書かれていません。全世界の情報をまとめ指針をだす米国疾病管理予防センター(CDC)によると、26歳までの全女性に対して接種が推奨されており、27歳から45歳までの女性に対しては、効果は出るもののすべての人に接種されるべきではなく、そのリスクアンドベネフィットを考慮して接種をしてもよいと判断されています。よって、45歳までの方には、投与はお勧めできます。

シルガード9の添付文書

https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/pi_silgard9_injnsr.pdf

ガーダシルの添付文書

https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/pi_gardasil_injnsr.pdf

CDC(米国疾病管理予防センター)のHPよりHPVワクチンの指針

https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/hpv/hcp/recommendations.html

折れ線グラフ

自動的に生成された説明
日本産科婦人科学会ホームページより抜粋

https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

9.子宮頸がんワクチンは本当に受けるべき

子宮頸がんは、がんの中で唯一、ワクチンによって発症を減らす、究極的には撲滅することが可能ながんです。

2019年、WHOは子宮頸がんの排除に向けた世界的戦略を提唱しました。子宮頸がんのない世界を作り上げるため、「HPVワクチン接種率90%、子宮頸がん検診率70%、子宮頸がん治療90%」を2030年までの介入目標としています。

https://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/WHO-slides_CxCaElimination.pdf

日本で一度積極的勧奨が中止となった後も、全世界的に効果・安全性が確認されてきました。

日本でも2022年4月から積極的な接種の勧奨が再開されますし、男性にもHPVワクチン接種開始が進められるようになり、より多くの方がHPVワクチンを接種できる環境は整ってきました。

婦人科医としては、あらゆる人にいち早く、HPVワクチンの接種をご検討いただきたいと思っています。

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こちらの記事の監修医師

クリニックフラウ栄

宮島 慎介

乳腺の病気と子宮の病気、どちらも女性からの需要が高く「両方に対応できる医師が必要なのではないか?」と思い、両方を診療できる医師を目指して今に至ります。

仕事、プライベートで忙しい女性の皆様のライフスタイルを支えるため、女性が気になる症状は何でも相談できる、頼れるパートナーでありたいと思います。お気軽にご相談ください。

略歴
2000年
国立山口大学 医学部 卒業
名古屋市立大学病院 産婦人科 勤務
2001年
一宮市立市民病院 産婦人科 勤務
2007年
藤田保健衛生大学病院 外科 勤務
2009年
水戸赤十字病院 外科 勤務
2014年
ロイヤルベルクリニック
乳腺外科・産婦人科 勤務
2016年1月
クリニックフラウ栄 開院

所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本乳癌学会 認定医
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マンモグラフィ認定読影医AS判定
日本乳腺甲状腺超音波医学会
乳房超音波読影医A判定
日本周産期・新生児医学会
新生児蘇生法専門Aコース修了認定医
日本乳癌検診学会 会員
日本外科学会 会員
日本癌治療学会 会員

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