最終更新日:2022年4月14日
卵子凍結とは?いずれ出産したいと考える女性が知るべきメリット・デメリット

こちらの記事の監修医師
メディカルパーク横浜
菊地 盤

凍結保存技術の進歩によって、受精させた受精卵のみならず、これまでは困難とされてきた「卵子の凍結保存」まで可能になってきました。がんに罹り、卵巣機能を失ってしまう可能性のある未婚女性や、そうでなくとも「今は妊娠できないが、いつか…」という女性から選ばれています。卵子凍結の詳細について、専門医が解説していきます。
卵子凍結とは…
まずは妊娠のメカニズムと不妊治療についてご説明
「卵子凍結」という言葉、一度はお聞きになったことがあるかもしれません。文字通り、卵子を採取して将来のために凍結保存しておく方法です。
卵子凍結について解説をする前に、まずは妊娠のメカニズムを簡単におさらいしておきましょう。
自然妊娠の場合、卵巣から排卵された卵子が、腟内に射精された卵子と卵管で受精、その受精卵が子宮に着床することで妊娠が成立します。受精の場である卵管の機能が障害された場合に用いられる不妊治療が、卵子を卵巣から採取して、「体外」で精子と受精させる「体外受精」となります。
その際、採卵手術で卵子を体外に採取するわけですが、採取した卵子を将来の妊娠のために凍結保存しておく方法が今回のテーマである、「卵子凍結」なのです。
卵子凍結が選ばれるワケ
凍結保存技術の進歩によって、受精させた受精卵のみならず、これまでは困難とされてきた卵子の凍結保存までできるようになってきました。基本的にはがん治療に用いられる化学療法などの副作用によって、卵巣機能を失ってしまう可能性のある未婚女性のために用いられています。
凍結された卵子は年数が経っても劣化しないため、加齢による妊孕性(妊娠する力)低下の予防にも有効であり、近年はパートナーがいない、または、キャリアアップのために今すぐに妊娠の予定が立てられない、などの理由で卵子凍結を選択される方々も増えているようです。
どのような人に向いている?メリット・デメリット
卵子凍結を行うためには、上述のように採卵手術が必要となります。体外受精を含む不妊治療は2022年4月より保険適応となりましたが、この卵子凍結は自費診療です(がん治療で行う場合には、助成金制度があります)。
卵子を多く採取するためには、飲み薬や注射薬(自己注射を用いる場合が多いです)を使用し「卵巣刺激」を行う必要があります。
投薬中は定期的な通院が必要ですし、大手術ではないものの、採卵手術には出血や感染のリスクもあります。
また、卵子を多く採取しようとして卵巣刺激を強く行い過ぎると、卵巣が腫大、お腹や肺に水が溜まってしまう卵巣過剰刺激症候群と言う、ともすれば命に関わるような事態になってしまう可能性も0ではありません。
もちろん、それらのリスクを最小限にするためのノウハウはあります。体外受精を多く行っているクリニックであればリスク管理にも長けておりますので、安心して任せられるはずです。
さて、不妊治療の中で最も高度な治療である体外受精を用いても、35歳くらいから妊娠率は低下していきます。
主な原因のひとつは卵子の老化であり、卵子凍結はこの老化を予防することが可能です。よって、卵子凍結はなるべく若いうちに行うとよいでしょう(日本生殖医学会では36歳までを推奨、詳細は後述します)。
以上より、卵子凍結は若年の方に向いていることになるのですが、施設や採卵個数によって異なるものの、保険適応ではないため40-100万円ほどかかる場合もあります。保管期間も長期となれば費用がかさむため、その点はデメリットと言えるトかもしれません。
実際の方法と、採取できる個数と将来の妊娠の可能性
卵子凍結は、体外受精の採卵と基本は同様であり、通常は月経周期に合わせて卵巣刺激を行います。月経開始3日目に採血と超音波で卵巣をチェックしたのち、経口薬と自己注射を開始します。
以前は毎日クリニックに通院して注射される必要がありましたが、最近はご自身で使用できる注射剤のキットが開発され、ご自宅でも注射可能となっています。
それにより、通院回数を減らすことができるようになったものの、上述の卵巣過剰刺激症候群の予防のためにも、採卵手術前まで月経開始の初回来院を合わせ、2,3回の通院が必要にはなります。
さて、採血と超音波検査で卵胞(卵子の入った卵巣内にできる袋)の数と大きさが十分であることを確認できると、採卵手術の日程を決めることになります。
獲得できる卵子の個数はこの卵胞の数に因るのですが、個人差が大きく、さらに年齢によってだんだんと少なくなってしまいます。この個数は、AMH(アンチミュラー管ホルモン)の値で、ある程度予想することが可能ですが、あくまで採卵できる卵子個数の“予測”であり、妊娠の能力そのものを測るものではありません。しかし、気になる方は採血してみてもよいかもしれません。
採卵手術は、腟から挿入する超音波で卵巣を確認しながら針で卵胞を穿刺することで行います。やはり痛みを伴いますので、基本的には麻酔をして行うことがほとんどです。
回収した卵子は、培養士が顕微鏡下に確認した後、凍結保存されます。卵子の質に問題がなければ、9割以上は将来融解した際に生存すると言われていますが、年齢によって質は低下し、将来の受精率やその先の妊娠率も下がります。
36歳くらいまでなら、20個ほどの凍結で、将来8割ほどの出産が見込めるとされている反面、40歳を超えると同じ20個でも5割以下まで低下してしまうとされています。加えて、残念ながら、一度に獲得できる個数も減ってしまうのです。 前段で年齢が若い方が良い、と申し上げたのはこうした理由からなのです。
採卵手術後は、卵巣が腫れ上がることがありますので、4-5日の自宅安静が必要となりますが、次回の月経とともに改善し、通常の生活に戻ることが可能となります。
最後にお伝えしたいこと
ここまで述べてきた通り、卵子凍結は若い方にこそ適していると思われます。
がんに罹患した若い女性が、将来の妊娠の可能性を残すために卵子凍結を行うことは重要な医療行為の一つであり、我が国でもその治療に助成金を受けることができるようになったことは、大変素晴らしいことだと思います。
一方で、がん以外での卵子凍結については、賛否両論あり、日本産科婦人科学会も推奨していません。高齢妊娠を助長する、と反対の意見もあります。
しかしながら、がん以外のご病気で卵巣機能が低下することもありますし、そもそも病気でなくても、「現在、妊娠を予定できないため、将来の妊娠のために若いうちに卵子凍結を行いたい」と考える女性のニーズは少なくありません。
そこで、時間的な余裕の無いがん治療においては、「緊急性」の卵子凍結と捉え、それ以外は「計画的」な卵子凍結と捉える、という考え方も広まりつつあり、女性自身の選択肢と考えてもよいのではないか、と考えられるようになりつつもあります。
凍結された卵子を使用する場合は、相手の精子が必要になりますが、男性の老化にも気を付ける必要があります。男性も年齢の若い方が妊娠率は高く見込めるのです。
さらに、凍結卵子は将来ご自身が使用するだけでなく、他の不妊患者さんに用いることも可能です。倫理的な問題は解決されなければならないものの、今後、日本でも法整備が整えば、他者のためにご自身の卵子を提供することも可能となるかもしれません。
卵子凍結は決して安くはない医療行為であり、ともすれば、「若さ」の搾取になってしまうリスクも孕んでいます。
あくまでも卵子はご自身のもの、ご自身の「計画」として行うために正しい知識を持ってお考えいただきたいと思います。この記事がその一助となれば幸いです。
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こちらの記事の監修医師
メディカルパーク横浜
菊地 盤
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
1994年順天堂大学医学部を卒業。その後、産婦人科医として働きながら同大学順天堂医院産婦人科准教授などを経て、2015年順天堂大学浦安病院リプロダクションセンター長に就任した。同年、世界初となる公費助成による千葉県浦安市の「卵子凍結保存プロジェクト」責任者として活躍する。同プロジェクト終了後の2019年5月、不妊治療専門のメディカルパーク横浜を開院。
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