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最終更新日:2022年3月31日

がいしょうせいこまくせんこう外傷性鼓膜穿孔

こちらの記事の監修医師
横浜栄共済病院
森下 大樹

概要

外傷性鼓膜穿孔は、耳かきなどで直接的に鼓膜を損傷、あるいは鼓膜に圧力がかかることで間接的に鼓膜を損傷し、鼓膜に穴があく疾患です。難聴を引き起こし、時には耳漏、めまい、耳鳴、顔面神経麻痺を引きお起こします。鼓膜穿孔の多くは自然に閉鎖しますが、自然に閉鎖しない場合や耳小骨離断など他の病態を伴う場合は、手術が必要となる場合もあります。

原因

外傷性鼓膜穿孔の原因としては大きく2つに分かれます。1つは、耳かきをはじめ、綿棒、割り箸、マッチ棒、異物(小石や虫)などで直接鼓膜を損傷するもの。もう一つは、平手打ちや頭部の打撲、ボールの直撃、爆風、マリンスポーツ時の急激な水圧など、鼓膜に圧力がかかることで間接的に鼓膜を損傷するものです。

症状

鼓膜に穴が開くこと(鼓膜穿孔)で、音の伝わりが悪くなる伝音難聴になります。鼓膜穿孔とともに、音を伝える骨である耳小骨のつながりが外れてしまう(耳小骨離断)と、伝音難聴になる場合があります。また、鼓膜の損傷により、耳から出血することもあり、鼓膜の穴から細菌が入り、感染を起こせば耳垂れ(耳漏)が出現します。外から加わった力が内耳に伝わると、内耳の中のリンパ液が漏れ出てしまう外リンパ瘻という状態になり、めまいを引き起こします。外リンパ瘻を合併すると、耳鳴や内耳が原因の難聴(感音難聴)を伴います。中耳にある顔面神経を損傷すると、顔の動きが悪くなる顔面神経麻痺になる可能もあります。

検査・診断

耳鏡や顕微鏡、内視鏡を用いて鼓膜の状態を観察し、鼓膜穿孔や耳漏、耳小骨離断があるかを確認します。難聴の程度や種類は、純音聴力検査を行います。また、耳小骨の状態や外リンパ瘻の有無を調べるために、側頭骨CT検査を行い、めまいの状態を調べるために眼振検査を行います。

治療

鼓膜穿孔は感染がなければ、その多くが自然に閉鎖します。感染による耳漏がある場合は、抗菌薬の点耳を行います。3~6カ月以上過ぎても自然閉鎖しない場合は、鼓膜閉鎖を目的とした手術を行います。鼓膜閉鎖の手術には、日帰り局所麻酔で施行できる鼓膜穿孔閉鎖術や、入院・全身麻酔が必要な鼓膜形成術、鼓室形成術があります。 鼓膜穿孔閉鎖術には、鼓膜の再生を促す薬剤を染み込ませたゼラチンスポンジを穿孔内に留置する方法があり、鼓膜再生療法とも言います。その他には、アテロコラーゲン/シリコン膜やキチン膜などの人工膜を鼓膜穿孔部にパッチとしてあてる方法があります。 鼓膜形成術は、耳の後ろの皮膚を切開して採取した自身の筋膜や結合組織を、鼓膜穿孔部に挿入して鼓膜を閉鎖します。 鼓室形成術は、耳の後ろの皮膚を切開し、外耳道の皮膚をめくって鼓膜を2層に分け、その間に自身の筋膜や結合組織を挿入して鼓膜閉鎖する方法があります。 耳小骨離断を伴う場合は、鼓膜の閉鎖だけではなく、耳小骨のつながりを作り直すが必要があるため、耳小骨の連鎖再建を伴う鼓室形成術を行います。 外リンパ瘻を伴う場合は、入院の上、安静にした状態で、内耳を保護する目的でステロイド剤を投与します。1週間ほど経過しても、めまいや感音難聴が良くならない場合は、外リンパ瘻を塞ぐための内耳窓閉鎖術を行います。 顔面神経麻痺を伴う場合もステロイド剤を投与し、麻痺が高度な場合や神経の断裂が予測される場合は、顔面神経管開放術や神経縫合が必要になります。

予防/治療後の注意

耳かき時の受傷を防ぐため、耳かきをする際は周囲をよく確認し、不意に耳かきが耳の奥まで入らないように注意をしてください。具体的には、こどもや猫などのペットが急にぶつかってきて、耳かきを奥まで入れてしまい受傷するケースもあるため、一人で安全に耳かきできる環境を整えるようにしましょう。 また、子どもは面白がって、遊びのつもりで耳に入れたもので受傷するケースがあるため、子どもが耳に物を入れないように気を付けてみてあげましょう。 鼓膜穿孔がある状態で中耳に水が入ると、感染を起こし、耳漏が出る原因となるため入浴・洗髪時に綿球や耳栓、イヤーキャップを装着するなどして耳に水が入らないようにしましょう。鼓膜閉鎖の手術を受けた後も同様に、耳に水が入らないように注意し、強い鼻かみや飛行機の搭乗は、中耳の急激な圧力の変化を引き起こし、鼓膜の閉鎖を妨げる原因となるため、術後2、3カ月は控えてください。

こちらの記事の監修医師

横浜栄共済病院

森下 大樹

〇診療科 :耳鼻咽頭科

【経歴】
2012年 横浜市立大学医学部卒業
2012年 横浜労災病院初期研修医
2014年 横浜栄共済病院 耳鼻咽喉科
2016年 横浜市立大学附属市民総合医療センター シニアレジデント
2017年 横浜市立大学附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 指導診療医
2019年 横浜市立大学附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教
2020年 横浜栄共済病院 耳鼻咽喉科

【資格】
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・補聴器相談医
・補聴器適合判定医師
・身体障害者15条指定医(言語・そしゃく機能障害、音声機能、聴覚・平衡機能障害)
・難病指定医

治療に適した診療科目

耳鼻咽喉科

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