最終更新日:2021年8月24日
敗血症の症状を解説|敗血症につながる危険因子は?検査から治療までの一連の流れや対策についてもご紹介
こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓
敗血症は、細菌やウイルスなどの感染によってさまざまな臓器障害が起こる病気です。
免疫が低下している場合には、速いスピードで重症化し死に至ることもあります。
そのため敗血症の恐れがあるときは、早めの受診や適切な治療を迅速にスタートすることが求められます。
敗血症の症状や、診断が確定したらどんな治療方法がとられるか、敗血症を予防するために日常生活で心がけることなどをご紹介します。
敗血症の症状
敗血症は医学的には「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義されています。
肺や腸など、さまざまな臓器が細菌やウイルスに感染することにより多様な症状を表すからです。
それでは、具体的にどのような症状が出るのかをみてみましょう。
全身にさまざまな症状が現れる
敗血症を発症すると、全身にさまざまな症状が起こります。
具体的な症状としては、震えや悪寒・息切れ・全身の筋肉痛・発熱などがあります。
さらに心拍数の増加や血圧低下、言っていることがはっきりしないなど意識障害、尿が出ないといった症状も起こります。
また発熱とは逆に、体温が低下する患者さんも見られます。体温低下は敗血症に特徴的なサインです。
体温低下は重篤な感染症によって臓器の機能が低下していることを示しているからです。
敗血症は別名 “救急の病” とも呼ばれ、一刻も早く治療を開始することが望まれます。
これらの症状が続いたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
重篤な症状の例
敗血症が進行すると臓器の機能不全が重篤になり、「敗血症性ショック」を起こすことがあります。
敗血症性ショックは、血液中の酸素濃度を高めるなどの治療を施しても血圧が低下したままで、臓器障害が進行した状態です。
障害されている臓器が肺ならば肺炎が重症化し、呼吸困難を起こします。また腎臓なら腎不全を起こし排尿困難になるなどの症状が出ます。
さらに脳が障害された場合は意識がぼんやりする、つじつまが合わないことを言う「せん妄が」現れ、重篤になると昏睡状態に陥ります。
「敗血症性ショック」は敗血症が進行した非常に危険な状態で、4人に1人の患者さんが死亡するといわれます。
とりわけ免疫力が弱い1歳未満の新生児や高齢者は敗血症が重症化しやすいため、こうした状態になる前に適切な治療を始めることが大切です。
敗血症の特徴
敗血症が悪化する速度は非常に速く、数時間のうちに病態が変化するともいわれます。
これは感染症に冒された臓器の影響で全身に循環障害が起こり、他の臓器の働きも低下するからです。
進行速度以外に、敗血症の特徴にはどういったものが挙げられるのでしょうか。
状態が悪化しやすい
敗血症に感染すると病原体に対抗するために免疫細胞が炎症を引き起こします。
それが過剰になると起こるのが「サイトカインストーム」と呼ばれる炎症です。
炎症によって傷ついた部分を修復するため血栓ができ、それがさらに全身の臓器の循環を阻害します。
このように相乗的に重症化してゆく敗血症に関しては、疑わしいと思ったらすぐに医師の診察を受けることが必要です。
どんな感染症からも発生
感染症が原因でさまざまな臓器の働きが障害される敗血症ですが、どのような感染症からでも起こりうるところが厄介な点といえるでしょう。
感染症は病原体が体内に入ることで引き起こされます。
主な病原体は細菌やウイルス、真菌(カビ)です。
さらに細菌の種類を細かくみると、ブドウ球菌・大腸菌・緑膿菌などがあげられます。
これらによって肺・肝臓・腸・腎臓・尿路などに感染を生じると、免疫の働きが低下している状態では敗血症に進むことがあります。
また注意したいのはケガをした場合です。
小さいケガでも適切に治療されていなければ傷口から細菌が入り、敗血症になることがあります。
さらにインフルエンザなどウイルスによる感染症、真菌(カビ)が体内に入り込み感染症を発症したときも敗血症のリスクがあります。
敗血症につながる危険因子
感染症の原因となる病原体は細菌やウイルス、真菌(カビ)と解説しました。
これらの微生物は大気や土壌、水、室内環境など私たちの暮らしの中に存在しています。
つまり、私たちの日常はこれらの感染源とともにあるといっていいのです。
その中でも特に注意すべき敗血症につながる危険因子を解説します。
敗血症で多い感染源
感染源となる細菌は生活の中に存在しますが、必ずしも感染症にかからないのは人体に免疫機能があるからです。
その免疫機能が低下した場合や、感染力が強い病原体を大量に体内に取り込んだ場合、感染症が起こります。
敗血症につながる感染症で多く見られるものとしては以下のようなものがあげられます。
・肺炎
・胃腸炎
・尿路感染症
・皮膚炎
これらの感染症には、細菌性とウイルス性の2つのタイプが見られます。
日ごろから睡眠や食事をバランスよくとることを心がけ、感染症からガードしましょう。
敗血症リスクが高い人
免疫機能がまだ未成熟の新生児や、老化によって免疫力が衰えている高齢者は敗血症リスクが高いといえるでしょう。
さらに糖尿病や肝硬変など基礎疾患がある人や、妊娠中の女性もリスクが高まります。
またがん患者で抗がん剤治療中であるなど、免疫抑制機能のある薬を使用している人もリスクが上がります。
さらに病気の治療で血管内にカテーテルを留置している人や経管栄養チューブを使用している人なども注意が必要です。
これらの器具の周辺に細菌が集まりやすく、感染症から敗血症に移行しやすくなります。
検査から診断までの流れ
敗血症が疑われるときは血圧や呼吸数、心拍数などの測定を行い、過去の病歴を聞くなど全身状態を把握するとともに血液検査や血液培養検査が行われます。
血液検査で調べられるのは白血球数や血小板数、炎症の数値などです。
また血液培養検査によって原因となっている病原菌を特定します。
そして感染巣を見極めるために行われるのが胸部X線検査や全身のCT検査などの画像診断です。
診断の決め手として、「qSOFA」と呼ばれるスクリーニング法が用いられることもあります。
「qSOFA」は2016年に定められた敗血症の診療ガイドラインで、意識・呼吸・循環の3つの項目で敗血症を判断します。
・意識変容があるかどうか
・呼吸数≧22回/分
・収縮期血圧≦100mm Hg
それぞれの項目を1点とし、2点以上である場合に敗血症の可能性があるとしています。
敗血症の治療
敗血症の治療は“時間との戦い”といわれます。
迅速な治療が求められる中でどのような治療が行われるのか、具体的な治療方法について解説します。
原因となる感染症の治療
敗血症の治療では、感染症の原因となる細菌やウイルスなどの病原菌を検査で特定してから抗菌薬の投与が行われます。
迅速に治療が必要なため、抗菌薬の投与もごく初期から始めることが重要です。
最初は可能性があると思われる細菌の広域抗菌薬を投与し、血液培養検査の結果によってさらに適合する抗菌薬に絞り込んで投与します。
患者の状態が敗血症性ショックに及んでいても、ごく初期に抗菌薬を投与することで生命予後に影響を与えるといわれています。
患部が感染によって壊死するなど感染状態がひどいときは、外科的な手術により切除することもあります。
全身の状態を改善する治療
抗菌薬の投与とともに、全身の状態を改善するための治療が行われます。
まず行われるのが障害されている臓器に水分や栄養を送る薬などの点滴での投与です。
また敗血症性ショックを呈してしまったときは、血圧を上げるために昇圧薬が点滴されます。
さらに呼吸の状態が悪ければ高濃度酸素を送るために酸素吸入や人工呼吸器が用いられるでしょう。
腎不全が起きて尿が出にくくなれば、急きょ人工透析が行われることもあります。
血糖値を下げる必要があるときはインスリン静脈内注射をするなど、患者の状況に合わせた治療が速やかに行われます。
治療の経過と予後
敗血症になり治療が功を奏した人は、臓器不全も回復し退院後は完全治癒といった状態になり日常生活に復帰することができます。
しかし回復が見られずに亡くなる人、後遺症が残る人が半数以上見られることもこの病気の難しさです。
敗血症は発見が遅れるほど死亡率が高まり、回復しても後遺症が残ることが多い疾患です。
また65歳以上の高齢者では病気の再発率が高く、退院後の予後も不良で後遺症が重い傾向が見られます。
後遺症はすぐには現れず、数週間を経てわかることもあるため注意が必要です。
敗血症の後遺症には、体が思うように動かないといった身体機能障害、うつ病や頭がぼうっとして集中できないなどの精神状態の障害があります。
さらに息切れや全身の痛み、睡眠障害などの症状が継続することもあります。
病院では退院前からリハビリテーションが始まりますが、退院後も状態を見ながら一人で動いてみるなど、ゆっくり機能回復をはかる努力をするといいでしょう。
障害を受けた臓器の回復を意識することも大切です。
たとえば腎臓の感染症から敗血症を発症した場合、退院後に無理をすると腎機能が低下して人工透析が必要になることもあります。
あせらずじっくり、少しずつ体調を整えていくことが大切といえるでしょう。
敗血症の対策
敗血症は治療が遅れれば最悪の場合は死に至ることもある病気です。
この病気にかからないための予防法や、かかってしまった場合の対応など、敗血症の対策を解説します。
早期発見が重要
急速に症状が進む敗血症では、病気の早期発見が重要です。症状が現れたらすぐに対処を開始しましょう。
このとき気をつけたいのは高齢者の敗血症です。
高齢者は感染症によって発熱しても体温が上がらないなど、典型的な症状を示しにくいことがあります。
また本人の認知機能が衰えていて、体調が悪いことを周囲の人にうまく伝えられないケースもあります。
まずは高齢者の細菌・ウイルス感染の機会をなるべく減らすことが大切です。
感染症の症状が出ると重症化しやすい傾向があるので、速やかに専門の医療機関と連携をとり、敗血症に進行しないように適切に治療を行いましょう。
また高齢者が敗血症性ショックの状態になると、他の年齢層より死亡率が高いことでも知られます。
万一敗血症に罹患してしまったときも、専門家による集中的な治療を行い、早めの退院・社会復帰をめざしましょう。
感染症を予防する
敗血症に罹患しないためには、感染症の予防を心がけることが大切です。
そのための手段のひとつにワクチン接種があります。
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどをあらかじめ接種しておけば、感染が流行しても感染症になるリスクを下げられます。
また日常生活では、外出から帰ったときに手洗いやうがいを徹底しましょう。
さらに規則正しい日常生活を送り、食事の栄養バランスに気をつけて睡眠をたっぷりとるなど、免疫力を高く維持することが大切です。
一方、上手に気分転換してストレスを溜めないようにするなど、心を健康的に保つことにも配慮しましょう。
まとめ
速いスピードで症状が悪化し、回復しても後遺症が残りやすい敗血症は、非常に恐ろしい病気といえます。
しかしいたずらに恐れるのではなく、日ごろから敗血症を予防する配慮をしましょう。
肝心なことは、自分の心身を良い状態で保つことです。
暴飲暴食を避け、適度な運動を心がけ、入浴時間を充実させるなどリラックスタイムを持つといいでしょう。
心身が心地よく感じられると免疫力が高まります。それが結果的にあなたを敗血症から遠ざけてくれるのです。
しも敗血症を疑う症状が出れば速やかに病院を受診しましょう。
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こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓
〇病院名 :すずきこどもクリニック
〇医師 :鈴木幹啓
〇アクセス:和歌山県新宮市下田2丁目3−2
〇診療科 :小児科
〇経歴:株式会社オンラインドクター.com代表取締役CEO
1975年三重県伊勢市生まれ
1995年自治医科大学入学(県からの奨学金制度)
2001年自治医科大学卒業
日本小児科学会認定小児科専門医
国家資格ケアマネジャー
三重県立総合医療センター、国立病院機構三重中央医療センター、国立病院機構三重病院、伊勢赤十字病院、紀南病院
平成22年5月、新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院
【製薬会社社外講師・CM出演等】
グラクソスミスクライン社、JCRファーマ社、杏林製薬、明治製菓ファーマ、鳥居薬品
【メディア出演・TV監修】
日本テレビ、読売テレビ、東京MX、テレビ朝日(医療監修)「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」
【著書】
日本一忙しい小児科医が教える病気にならない子育て術(双葉社)
開業医を救うオンライン診療(幻冬舎)
2020 年 10 月株式会社オンラインドクター.com を設立。
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