最終更新日:2021年8月24日
心房細動の原因を解説|心房細動の症状と発生する仕組みは?心房細動のリスクや治療法もあわせてご紹介
こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓
心房細動は、心臓の鼓動をコントロールしている電気信号が乱れ、心臓が痙攣する病気です。
心房細動は高齢者になると発症するリスクが高まります。
誰でもかかるリスクがあり、最悪の場合は死に至ることもある病気です。
心房細動が起こってしまう原因や症状、予防法を知り早期発見につなげていきましょう。
心房細動の原因
心臓の電気信号が乱れる心房細動は、心臓そのものが原因の場合と他の疾患が関係している場合の2通りが考えられます。
それぞれの原因について詳しくみてみましょう。
直接の原因
心臓は電気信号によって鼓動をコントロールしているため、電気信号が乱れると不整脈(心房細動)が起こります。
心臓の電気信号を司っているのが洞結節です。洞結節は右心房の上部に位置します。
通常は洞結節から電気信号が生まれ、房室結節を通りながら心室に電気信号が伝わります。
胎児の頃は洞結節以外にも電気信号を送る場所が存在していました。
基本的に、生まれるときに洞結節以外の場所は封鎖されます。
しかし、稀に胎児の頃に使われていた電気信号を送る場所が動き始めることがあり、電気信号が増えて混線することで心房細動が起こるのです。
他の疾患による併発
糖尿病によって心房細動を起こしやすいことが知られています。
はっきりとした原因はわかっていませんが、1つの仮説では合併症の末梢神経障害が原因だとされています。
末梢神経の異常によって、心臓の鼓動にも異常が生じるという仮説です。
また腎臓病や腎不全で人工透析を受けていると、心房細動の原因になるといわれています。
人工透析では老廃物だけでなく水分や電解質を体から取り除きます。
その影響で交感神経が活性化されてしまい、心房細動の引き金になるのです。
そのほか、人工透析が必要な患者さんは高血圧や糖尿病も患っているケースが多いです。
血圧が高いと心臓に負担がかかるため、心肥大などを起こしていることもあります。
つまり、心臓自体の機能が低下してしまうのです。結果として心房細動が起こりやすくなります。
心房細動の分類と特徴
心房細動は、発症する時間の長さによって3つに分けられています。
心房細動の分類とそれぞれの特徴をみてみましょう。
発作性心房細動
発作性心房細動は1週間以内に改善する心房細動です。
患者さん自身には自覚症状がないケースもあります。また発作が短いため、検査でも見つけにくい心房細動です。
持続性心房細動
持続性心房細動は1週間以上持続する心房細動です。
薬を投与するなどしないと、発作がおさまらないことがあります。
患者さんも症状を自覚しやすく、心房細動であると気付くケースが多いです。
慢性心房細動
慢性心房細動は1年以上持続する心房細動です。
慢性化すると薬を投与しても発作を止めることが難しく、手術による改善を試みることもあります。
最初は発作性で薬によって症状を抑えていた場合でも、段々と効きが悪くなり、慢性化することがあります。
心房細動の症状と発生する仕組み
心房細動になると、以下のような症状があらわれます。
- 動悸
- 息切れ
- めまい
- 疲れやすさ
- 胸部の不快感
心房細動が起こると脈が不規則になり、速くなったり遅くなったりします。それによって胸部に不快感が生まれるのです。
また脈が速くなると動悸や息切れとして症状が出ます。
逆に脈が遅くなるとあらわれる症状が疲れやすくなることやめまいです。
場合によっては失神してしまうこともあります。
心房細動のリスク
心房細動が起こっても、心室が正常に機能していればすぐに命の危険が及ぶことはありません。
しかし放置してしまうと症状が悪化し、最悪の場合には命を落とすこともあります。
そんな心房細動のリスクを詳しく解説します。
心不全を引き起こすリスク
心房細動が起こったときには、心室などがその機能を補完することで生命維持ができます。
しかし長期間にわたって心房細動が起こると、心室への負荷が大きくなり過ぎてしまい、とても危険です。
結果として心臓のポンプ機能が低下し、最終的には心不全になる可能性があります。
心不全になると全身に血液が十分に行き渡らなくなり、さまざまな不調が現れます。
心不全は急性心不全と慢性心不全という2つの種類に分けられる病気です。
急性心不全では呼吸困難を起こして顔色が悪くなり、症状が重い場合には意識が朦朧とすることもあります。
慢性心不全は疲れやすさや息苦しさなどが日常的にあらわれ、徐々に症状が悪化していきます。
体が弱った状態になるため、風邪やストレスなどが原因で症状が一気に悪化することもあるので注意が必要です。
心不全になると治療が難しくなってしまうため、心房細動の時点で早めの治療をすることが大切です。
脳梗塞などのリスク
心房細動が起きると、心房から心室に血液が流れづらくなります。
流れが悪い血液は澱み、血栓ができやすい状態です。
血栓は血流に乗って全身を巡り、細い血管に入ると血管をつまらせてしまいます。
脳内で血栓が詰まってしまうのが脳梗塞です。
脳はたくさんの血液を必要とする臓器です。
短い時間でも血液が行き渡らなくなると細胞が壊死してしまい、さまざまな障害を引き起こします。
日常生活に影響する障害が出てしまうため、脳梗塞は心房細動における最大のリスクといえます。
脳梗塞を起こさないためにも、心房細動になったら早めの対処を心がけましょう。
心房細動の治療法
心房細動の治療には、生活習慣の見直しが欠かせません。
生活習慣病が心房細動になるリスクを高めるからです。
糖尿病などの生活習慣病や喫煙などの習慣がある人は改善していきましょう。
心房細動で病院にかかったときにも、生活習慣を見直すように指導が入ります。
その上で、薬物治療・内科的治療・外科的治療という3種類の治療を行っていきます。
基本的には薬物治療から順番に行い、症状が重くなるにつれて治療法を変えていくのです。
外科手術は体への負担が大きいため、最終手段だと考えてください。
薬物治療
心房細動による体の不調を食い止めるために、薬物治療が行われます。
心房細動の薬物治療は以下の3つに分けられます。
- 不整脈をコントロール:直接的に心房細動を抑える
- 電気信号をコントロール:電気信号に働きかけて心房細動を抑える
- 血栓の予防:抗凝固薬で血栓を予防し脳梗塞などのリスクを下げる
心房細動で脈拍がどうなっているかによって使い分けます。
薬物治療を開始すると心房細動の症状が緩和され、日常生活がしやすくなります。
ただし、薬物治療は根本的な解決にはつながらないことに注意してください。
あくまでも症状を抑え、日常生活の負担を減らすために行います。
薬物治療によって楽になったからといって、通院をやめてしまうことのないようにしてください。
自覚がなくとも、心房細動の症状は徐々に進行していきます。
また薬は一生飲み続けなければならず、副作用もあります。
内科的治療
長く続いている心房細動は、薬物だけでは抑えられません。その際には内科的治療を行います。
内科的治療には以下の2つがあります。
- 電気ショック
- カテーテルアブレーション
心臓は電気信号によって鼓動するため、電気ショックを与えることで電気信号の乱れを抑えるのです。
この場合多くの心房細動は電気ショックで止まりますが、完治にはつながりません。
また、電気ショックには痛みが伴うので全身麻酔が必要です。
カテーテルアブレーションは脚の付け根に小さな穴を開け、カテーテルを入れて心臓の治療を行う方法です。
アブレーションとは「隔離・遮断」を意味する言葉で、心房細動においては肺静脈の電気信号を遮断することを目指します。
心房細動の原因は電気信号の乱れですが、多くの場合には肺静脈のあたりから不要な電気信号が発生します。
そのためカテーテルによって肺静脈の近くを焼灼または凍結すると、不要な電気信号を止められるのです。
焼灼や凍結の手段として、高周波やレーザー・バルーンなど、心房細動の症状や心臓の状態によって使い分けます。
カテーテルアブレーションは新しい技術で、従来のように開胸する必要がありません。
患者さんの負担が小さく、問題なく手術が進めば5〜7日の入院で済みます。
ただ、心房細動が長く続いたことにより心房が大きくなりすぎている場合には、カテーテルアブレーションをしても再発するリスクが高いです。
再発リスクが高い場合には、次に紹介する外科的治療で対処していきます。
外科的治療
心房細動における外科的治療は、以下2つがあります。
- メイズ手術
- ペースメーカー
メイズ手術では、胸を開いて心臓手術を行います。
出血のリスクなどがありますが、慢性心房細動でも90%ほどの確率で根治が期待できる治療法です。
1度心房を切って縫い合わせたり、焼灼や凍結をしたりして肺静脈の電気信号を遮断します。
患者さんに大きな負担がかかるため、基本的には弁の機能に異常があるなど合併症があるときにしか使われない方法です。
そのほかの治療法で効果が得られない場合には、ペースメーカーを埋め込みます。
房室結節を焼灼して心室に電気信号が回らない状態にし、ペースメーカーで電気信号を管理するのです。
仮に肺静脈からの電気信号によって心房細動が起こっても、ペースメーカーの働きで鼓動は一定に保たれます。
結果として、不整脈による息切れやめまいなどの症状がなくなります。
早期発見のポイント
心房細動は長期間続いてしまうと心臓に負担がかかり、症状が重くなって治療も難しくなっていきます。
最低限の負担で治療するためには、早期発見が大切なのです。
心房細動を早期発見するポイントは、日頃から脈をはかることと、心電図検査を受けることがあげられます。
心房細動は不整脈としてあらわれるので、日頃から脈をはかることで早期発見につながります。
手のひらを上にした状態で、人差し指〜中指の3本で手首の親指側を触ってください。
約10秒ほど脈をはかってみて、急に強くなったり急に飛んだりした場合には、心房細動の可能性があります。
1度だけの計測では勘違いの可能性もあるため、2〜3度繰り返してみてください。その上で不整脈だと感じた場合には、医師に相談しましょう。
もう1つが体に電極を貼り付けて心臓の電気信号に異常がないかどうかを調べる心電図検査を受ける方法です。
基本的には、ベッドに横になった状態で心電図をとります。
自覚症状があるにもかかわらず異常が見つからない場合には、携帯型の機械を使って24時間分の心電図をとることもあります。
また心臓の大きさや弁の異常がないかどうかを確かめるために、エコー検査も同時に行うことが多いです。
より詳細な検査が必要な場合には、MRIやCT検査も行います。
医師の指示に従って、適切に検査を受けてください。
心房細動の予防法
心房細動の予防には、生活習慣の改善が大切です。
乱れた生活習慣によって糖尿病や高血圧などになると、心房細動のリスクが高まるからです。
生活習慣病やその原因となる生活習慣としては以下のようなものが挙げられます。
- アルコール
- 喫煙
- メタボリックシンドローム
- 糖尿病
- 高血圧症
- 脂質異常症
生活習慣病だと診断されている場合には、早期に治療をしましょう。
そのほか、アルコールや喫煙なども心房細動のリスクを上げるといわれています。
いきなり禁酒や禁煙をするのは難しいので、徐々に量を減らしていくことを心がけてみてください。
まとめ
心房細動はすぐに命に関わる病気ではありませんが、放置すると心不全などの命に関わる病気につながります。
普段から脈をはかって早期発見につとめ、症状が見つかったらすぐに医師に相談してください。
また、心房細動は生活習慣の乱れやストレスが原因で起こる病気です。
特に生活習慣の乱れはさまざまな病気を引き起こす原因となります。
心房細動の症状の有無にかかわらず、生活習慣を見直して病気になりにくい生活を送りましょう。
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こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓
〇病院名 :すずきこどもクリニック
〇医師 :鈴木幹啓
〇アクセス:和歌山県新宮市下田2丁目3−2
〇診療科 :小児科
〇経歴:株式会社オンラインドクター.com代表取締役CEO
1975年三重県伊勢市生まれ
1995年自治医科大学入学(県からの奨学金制度)
2001年自治医科大学卒業
日本小児科学会認定小児科専門医
国家資格ケアマネジャー
三重県立総合医療センター、国立病院機構三重中央医療センター、国立病院機構三重病院、伊勢赤十字病院、紀南病院
平成22年5月、新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院
【製薬会社社外講師・CM出演等】
グラクソスミスクライン社、JCRファーマ社、杏林製薬、明治製菓ファーマ、鳥居薬品
【メディア出演・TV監修】
日本テレビ、読売テレビ、東京MX、テレビ朝日(医療監修)「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」
【著書】
日本一忙しい小児科医が教える病気にならない子育て術(双葉社)
開業医を救うオンライン診療(幻冬舎)
2020 年 10 月株式会社オンラインドクター.com を設立。
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