最終更新日:2022年6月20日
同じ時間働いて減給か、就業時間延長で現状維持か…シビアすぎる「医師の給与事情」

こちらの記事の監修医師
高座渋谷つばさクリニック
武井 智昭

激務高給なイメージの「医師」という職業。以前は徹夜明けの外来、手術や連日の「36時間勤務」など、心身ともに疲労困憊、綱渡り状態で診療を実施していたといいます。そのようななか、本記事では、医師を取り巻く現状と、「働き方改革」で変わりつつある医療現場について、武井氏が解説します。
「徹夜で手術」も当たり前…異常な「昔の医療現場」
近年は、様々な業種においてブラック企業・過労死などの問題がクローズアップされています。その背景としては介護や育児などの家庭環境の変化や、右肩上がりではなくなった日本の経済状況があります。さらに、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大により、「社畜」とも揶揄され、美学とされてきた従来の働き方に対しての考え方が変わってきました。
一部の企業では副業・兼業も可能となり、長期の休暇や週休3日制度を導入しています。こうした状況から、医師の働き方に関しても罰則規定を設けて2024年から規制が導入されることになりました。
2019年4月から政府が主導となり「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(通称:働き方改革関連法)」が施行されましたが、医師に関しては勤務環境の改善や、医療という特殊な側面があり、5年間の猶予が与えられていました。本格的な施行と運用は2024年4月から開始となります。
皆様が患者として健診センター、クリニック、急病時に病院を受診する場合、自分の体調やコンディションを相談することが目的です。その一方で、診療を担当する医師の体調はどうか……患者側の立場としては、心身ともにコンディションが良好である医師に診療、手術などの処置をしてほしい、医療事故を減らし良質の医療を提供してほしいという希望は、もっともな話です。
近年では減少しておりますが、これまでは、ほぼ一睡もしていない当直明けの医師が外来診療・病棟処置・手術などを行うことが常態化していました。筆者も2日間連続36時間労働に関して疑問を持ちながら、心身ともに疲労困憊の、綱渡りの状態で診療を実施していました。
なにが変わる?…「医師の働き方改革」
医師の働き方改革で中心となるものは、「労働時間の上限規制」「時間外割増賃金率の引き上げ」です。2011年に実施された労働政策研究・研修機構(JILPT)による「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では、勤務医の4割以上が過労死ラインの月80時間以上の時間外労働を行い、また、本来は睡眠が確保される「宿日直業務」で、ほぼ一睡もできない、日中と同等レベルの救急外来などの業務が実施されていたことが明らかになりました。
このようなこともあり、時間外労働の上限規制は、「月100時間未満/年960時間以下」と規定されました。一部の医療機関では例外として「月100時間未満/年1860時間以下」とされています。
全国の医療機関が大混乱…時間外労働の現実
こうした時間外労働の規則が導入されると、医療現場に混乱が生じ、これまでの医療サービスの維持が困難となることが予測されます。
まずは、全国的に存在している大学病院の勤務医師です。大学病院という性格上、重症症例や緊急症例の受け入れを積極的に行っており、診療のほか教育・研究なども勤務時間としてカウントされる場合、大学病院のみの勤務で前述の時間外労働の基準に到達します。
時間外労働時間に合算される大学病院の関連病院やOBOGのクリニックなどに医師派遣が不可能となってしまいます。結果として、薄給である常勤先の給料のみで、アルバイト先(医局からの紹介、あるいは自分で探すなど)からの収入がなくなり、生活の維持が困難となるのです。
先日、東京都内の大学病院においては、経営難であることを理由に、同じ時間の拘束で減給、あるいは就業時間を延長して同額の給与の2択を、勤務するすべての医師に迫ったところ、医師が100名単位で退職しました。こうした前例から、今後も大学病院での勤務希望者は2002年の初期臨床研修導入時と同じインパクトで減少することが懸念され、診療機能の維持が難しくなる可能性があります。
さらに、当直やオンコールなどを大学病院あるいは医師派遣会社などの人材に依存してきた、地域の医療機関においても、人材確保が困難となっています。特に、産婦人科で分娩を取り扱う医療機関では、当直・オンコール医師の人員確保に難渋する可能性が高くなります。
休診日はアルバイト…開業しても安心できない理由
その遺留として近年の医師の傾向としては、働き方改革の理念にあるように、従来の職場と自宅の行き来をする病院勤務医をするよりは、ワークライフバランスを重視して時間的な裁量が可能である開業医(クリニック)の希望者が増加しています。そのため、前近代的な働き方を暗黙の了解とする医療機関においては、そのコンセプトを大幅に変えていく必要があり、病院経営維持にとっても死活問題となることが予測されます。
それでは、開業医に関しても安泰であるか……というと、実際はそうでもありません。新型コロナウイルス感染により、収益として重要である患者数が二極化し、患者数減少による収益減少・赤字経営を余儀なくされる医療機関が増加しています。その結果、スタッフの給料を支払うために休診日にアルバイト・当直をするなど、これまでの勤務医と同じ過酷な勤務を強いられる医師が増加しています。
こうした開業医にも時間外労働の規制が適応されると、時給が1万円程度とされている医師アルバイトの相場を勘案すると、月間100万円以上の赤字経営をしているクリニックでは、院長が投資をするなど新たな方法で収入を得ていかない限りは、経営難によるクリニック閉院を余儀なくされるでしょう。
開業をしていれば患者が必ず来るという時代は終わり、今後は綿密な開業計画を行わないと路頭に迷うリスクがあります。開業ブームは再燃していますが、同時に閉院の実態数も増加が見込まれます。
変わりつつある医師の働き方
働き方改革が実行された場合、今後はフリーで勤務する医師は増加するでしょう。人材確保の観点からは条件が改善し、定期非常勤やスポット勤務などの募集案件が増加する可能性はあります。ただ、採用する側もある程度の技術や知識を求めるため、採用ハードルが高くなることも予測されます。
医師にも働き方改革が導入されれば、旧態依然とした勤務体制の改善により、医療サービスの向上が望める反面、医師の給与などの金銭面の待遇の向上は難しいかもしれません。それでも、技術・知識や接遇など自分の能力を高め、セルフブランディングを向上させることで、地域住民から信頼されることが、これからの働き方として成功への近道かもしれません。
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高座渋谷つばさクリニック
武井 智昭
小児科医・内科医・アレルギー科医 2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。
感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。
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