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最終更新日:2022年7月23日

糖尿病治療の新常識…インスリン治療を補助する「新薬」驚きの効果【医師が解説】

こちらの記事の監修医師
森山記念病院
髙野 幸路

※画像はイメージです/PIXTA

日本人の5~6人に1人がかかるといわれ、もはや「国民の病」ともいえる糖尿病。糖尿病の治療はこれまでインスリンを使った治療が通常でしたが、糖尿病の治療にはより苦痛が少なく、目標が達成しやすい新薬も使われていると、森山記念病院内分泌代謝内科部長の高野幸路先生はいいます。注目の薬について、作用とメリットをみていきます。

食事量調整が患者の負担に…従来の「インスリン治療」

糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなりすぎてしまうことでさまざまな問題が起こる病気です。

筆者が研修医のころの糖尿病治療薬といえば、インスリン、インスリンの分泌を促すスルフォニルウレアという内服薬の仲間、作用の仕組みが多岐にわたるビグアナイドという内服薬などに限られており、これらの薬を使って血糖値を下げる治療をしていました。

経口薬でうまく治療できなくなると、どうしてもインスリン注射をする必要が出てきます。血糖を下げる働きをするホルモンの「インスリン」を自分で皮下注射することで、血糖を下げていたわけです。

インスリンの効果が強すぎると血糖値が必要以上に下がってしまい、意識が遠くなる低血糖発作が起こります。そのため、患者さんは毎日の食事を規則正しく摂る必要がありました。

インスリンというホルモンは本来、食後に分泌されて栄養素(デンプンが分解してできる糖類や、タンパク質が分解してできるアミノ酸など)を体に蓄える働きをしています。

消化管から血液中に入ってきたブドウ糖をグリコーゲンや中性脂肪に変えて蓄えることで、血中のブドウ糖を減らすわけです。このためインスリン治療は本来、「栄養が来たから体に蓄えるよ」という治療です。

「GLP-1作動薬」のはたらきとメリット

さて一方、GLP-1作動薬は、消化管の細胞から分泌される「GLP-1」というホルモンの作用をもつ注射薬です。

GLP-1をわかりやすくいうと、「もうおなかいっぱいになったよ」ということを体に教える働きをしてくれます。

インスリンと同様食後の分泌ですが、消化されできた栄養素が小腸の末端まで進んだとき、特によく分泌されます。そして「おなかがいっぱいになった」ということで胃の動きを止めてもう食事がほしくないようにしたり、脳に働きかけ食欲を低下させて、食べ過ぎないようにしたりします(食べ過ぎて小腸を通り越し大腸まで栄養素が入っていくと、お腹を壊してしまいますからね)。

このようにGLP-1作動薬は、おなかいっぱいになったよという指令を送る薬です。

メリット1.食事療法がしやすい

このような働きは、糖尿病の治療にあたってとてもありがたいことです。これまでの糖尿病治療では、患者さんに食事量を適正なものに調整していただく必要があり、それが患者さんの負担になってきました。もちろんこの薬を使う際にも効き過ぎにならないよう工夫が必要ですが、この薬は食欲を抑える働きがあるため、食事療法がやりやすくなりました。

メリット2.低血糖を起こしにくい

また、この注射薬(GLP-1作動薬)によって血糖が下がるのには複数の仕組みがあるのですが、インスリンと異なり低血糖を起こしにくいこともメリットです。この特徴のおかげで、1度注射したら1週間働く注射薬を作ることが可能になりました。食事を摂らない夜間に低血糖を起こす恐れがないため、注射をする患者さんにとって非常にありがたいことです。

広く使われ始めた新薬…ただしインスリンが必要なケースも

このように、インスリンに比べ多くのメリットがあるGLP-1作動薬はすでに臨床応用され、特に1週間に1回の注射薬として広く使われ始めています。多くの患者さんが使うようになったことで臨床効果も明らかになってきており、糖尿病で起こりやすい心臓の合併症や腎臓の合併症が、この薬であれば進行しにくいということもわかってきました。

ただし、ひとつ注意をしておかなければなりません。GLP-1作動薬には上に述べたようなよい特徴がありますが、極端に血糖値が高い状態で発見された患者さんについては、最初にインスリンを使うことである程度血糖を下げる必要があります。血糖値が高すぎるとさまざまある糖尿病治療薬の効果が十分に出ないことがあるからです。このような場合は、インスリンを使ってある程度の血糖まで下げてから、それぞれの患者さんに合う薬を考えていきます。

今回紹介したGLP-1作動薬のほかにも、複数の新規の治療薬が使えるようになりました。2型糖尿病の治療薬は以前に比べて使いやすく、また目標の血糖調節も得られやすくなっています。

患者のみなさんがこれら新薬の恩恵を得ることで、より苦痛の少ない治療、目標を達成しやすい治療ができるようになりつつあることは、筆者としても大変感謝している次第です。

こちらの記事の監修医師

森山記念病院

髙野 幸路

■役職
内分泌代謝内科 部長

■学歴
東京大学 医学系研究科・医学部 卒

■経歴
東京大学医学部附属病院
北里大学病院  准教授
北里大学病院  診療教授

■資格
日本内科学会認定総合専門医・指導医/日本内分泌学会専門医・指導医

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