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最終更新日:2022年9月1日

1日20万円超も…コスパ最強の“ワクチン接種バイト”に群がった「金食い医師」と「中抜き企業」の実態【医師が解説】

こちらの記事の監修医師
高座渋谷つばさクリニック
武井 智昭

※画像はイメージです/PIXTA


新型コロナウイルス感染拡大を受けて、昨年6月に始まったワクチン接種。始まった当初は希望者が殺到し行列が道に溢れるほどでしたが、医師や関連企業といった「業者側」の環境はどうだったのでしょうか。高座渋谷つばさクリニックの武井智昭院長が、“ワクチン接種バイト”にまつわる「お金のカラクリ」について解説します。

収まらぬ第7波…ワクチン接種のいま

2021年6月に本格開始された、新型コロナワクチン接種。

オミクロン株の出現により第7波の流行が収まらず、高齢者や基礎疾患がある方では4回目のワクチン接種、そのほかの方では3回目のワクチン接種に予約が殺到しているようだ。10月からはオミクロン株に対応した「2価ワクチン」が接種開始予定とあって、注目が集まっている。

ワクチン接種のためのアルバイトについては、現在では時給10,000円程度に落ち着き人気も低下してきたものの、2021年当初はバブルが起き、1日20万円を超える案件も存在していた。

ここでは、なぜワクチンバイトが“高騰化”したのか、またこの1年半を振り返って本当の勝者は誰なのか、考察してみる。

「ワクチンバイト」のコスパが最強だったワケ

新型ワクチン接種のアルバイトは、日本医療史上初といっても過言ではない、コストパフォーマンス良好な高額時給案件だった。

この業務は、一部の副反応による対応を除き「訴訟のリスクがない、専門医資格・経験が不要、国策であり社会貢献度が高い、日中あるいは準夜の勤務」という好条件が揃っている。

このように、高い汎用性にもかかわらず高報酬という「ワクチンバイト」は、日本医療においては珍しいものであった。

高報酬だった理由としては、インセンティブが存在したからである。国策のため、ワクチン接種報酬は本来の単価に加え、高額な補助金が支給される。

たとえば、休日にワクチン接種を行う場合には、2,000円程度のワクチン接種の報酬に加えて5,000円の追加報酬が支払われ、「1回あたり7,000円強」の単価となる。集団接種で1,000名実施すれば、1日で700万円以上の収益となった。

マンパワーの面では、医師にとっても高額バイトであるため、金銭に困っている“健康診断バイト医”(フリーター医師)を中心に、セミリタイア高齢医師、ママ女医、美容崩れの医師などが、高額報酬を巡り熾烈な争いを繰り広げていた。

集団接種の“カラクリ”…巧妙に関与していた「人材派遣」

実はこの集団接種にはカラクリがある。

2021年の4月ごろ急遽決定された集団接種においては、任された各自治体のマンパワー不足はもちろんのこと、ワクチンの確保や事務作業・手続きなど不慣れの連続であった。このため、ほとんどの自治体は医療管理に慣れている健診クリニックや株式会社に、集団接種のマネージメントを依頼した。

医師・看護師などの医療者確保に関しても当然外注しており、そこに「人材紹介会社」が巧妙に関与していたのである。

ワクチン集団接種のマネージメントにより大きく収益を得た健診専門の医療機関や株式会社は、高額な業務委託費用を請求する代わりに、熟知したノウハウで円滑かつ迅速な集団接種を実施することができた。ここに医師や看護師を扱う人材紹介会社が二次委託として入り、高額な報酬をちらつかせることで、(その質は担保されていないものの)医療スタッフを確保し、報酬の25~30%とされる紹介手数料を手に入れていた。

この時期の人材紹介会社の株価が大幅に上昇していた様子からも、こうした国策による金銭の動きが読み取れる。

総括すると、医師の人件費もそうであるが、集団接種のマネージメントが可能な法人による「中抜き」と、それに付随した人材紹介会社の「紹介手数料」に公費の多くが流れていたのである。

余談ではあるが、医療者のみならずワクチン配送時においても、多重下請けによる「中抜き」が実施されていた。肝心の地方自治体もこの実態を把握できておらず、責任の所在が不明のまま、不透明な状況下でワクチン配送や管理は行われていた。

「中抜き」のエビデンスとしては、同じ集団接種会場で対応する医師の時給が異なっていたことが挙げられる。医師会等への委託による医師の時給は20,000円~40,000円であるのに対し、派遣会社経由では15,000円~20,000円と明らかな差があった。大学病院からの派遣の場合、日給60,000円という例もあった。

この報酬の差は、運営する医療機関・派遣会社等における「中抜き」が示唆されている。

淘汰された「金食い医師」

ところが、8月のお盆あたり、集団接種にも各自治体が慣れてきたころには、業務の能率はもちろん、技術や知識がない、前述の「フリーター風の医師たち」は淘汰されていった。

その理由としては、各自治体が一定技量と知識がある医師を重宝するようになったからである。各種法人への業務委託料や人材紹介会社への紹介手数料も発生しなくなり、本来あるべき医師への報酬が確保されるようになった。

9月以降、医師の報酬額は時給10,000円程度となり、2022年の春には少し上昇したが、その後バブルを彷彿する価格上昇はみられなかった。

また、オミクロン株の流行により感染者数が爆発的に増加したために医療現場がひっ迫し、医療スタッフも新型コロナウイルスに感染するなどし安全な診療維持が困難となったことから相対的にワクチンに関するアルバイト案件の相場も低下している。

前述の「フリーター風医師」はいま、以前のような健診案件を奪い合っている。

そういった意味では、この件における本当の勝者は、フリーター風医師でも、中抜き業者や人材紹介会社でもなく、名実ともに信頼できる知識・技術・経験に裏打ちされた医療のみなさんであろう。

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こちらの記事の監修医師

高座渋谷つばさクリニック

武井 智昭

小児科医・内科医・アレルギー科医 2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。
感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。