最終更新日:2021年8月24日
甲状腺疾患の症状を解説|甲状腺疾患の種類や主な原因は?甲状腺疾患の治療法や予防法もあわせてご紹介

こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓

甲状腺は喉の真ん中、喉仏の下にある蝶のような形をした臓器です。親指程度の大きさの臓器で2つ存在します。
身体の新陳代謝や成長に必要なホルモンを分泌する大切な役割を担っています。
そのため甲状腺の機能に何らかの異常が生じると、身体に様々な不調を引き起こします。
今回は甲状腺疾患の症状や疾患の種類について詳しくご紹介します。
甲状腺疾患の症状

甲状腺疾患の症状にはどのようなものがあるのかご紹介します。
・甲状腺が腫れる
・体重減少あるいは体重増加
・動悸
・息切れ
・倦怠感・疲労感
・頻脈あるいは徐脈
・髪が抜ける
・皮膚の乾燥
・眠気
・抑うつ状態
・むくみ
・暑がありあるいは寒がり
・眼球の突出
もちろん甲状腺疾患になったからといって、全ての症状が出現するという訳ではありません。
また甲状腺機能が亢進するか低下するかによって反対の症状が出ます。
いつもと身体の調子が違う、ということに気づくのが大切です。
甲状腺疾患の種類

甲状腺疾患には、甲状腺ホルモンの異常による低下症・亢進症、そして腫瘍の3種類に分けられます。
ここでは3種類のそれぞれの特徴をご紹介します。
低下症
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌が少なく機能が低下することをいいます。
低下症の代表的な疾患や原因は以下の通りです。
・橋本病(慢性甲状腺炎)
・先天性甲状腺機能低下症
・ヨウ素の過剰または欠乏
・甲状腺摘出手術
甲状腺機能低下症の中でも代表的な橋本病は、40~50代の女性に多いのが特徴です。
甲状腺ホルモンの分泌が減ることによって、眠気・むくみ・脱毛・皮膚の乾燥といった症状が見られます。
また新陳代謝が悪くなり、体重増加や寒がりといった症状が出やすいのも特徴です。
40~50代の女性に多いので「更年期障害」「歳のせい」と思い込んでしまい、甲状腺疾患だと疑わない人もいます。
亢進症

甲状腺機能亢進症は、先ほどご紹介した低下症とは反対に甲状腺が活発に活動します。
それによって甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、身体に不調を生じます。
亢進症の代表的な疾患はこちらです。
・バセドウ病
・亜急性甲状腺炎
・無痛性甲状腺炎
・甲状腺機能性結節(プランマー病)
バセドウ病は甲状腺機能亢進症の中で代表的なもので、ご存じの方も多いでしょう。
多くの甲状腺機能の疾患は女性に多いのに対し、バセドウ病は男性の患者さんが多いというのが特徴です。
亜急性甲状腺炎は甲状腺に炎症が起こり、亢進症の症状に加えて腫れや痛みを伴います。
無痛性甲状腺炎は、その名の通り痛みがありません。
橋本病の患者さんに一過性に起こったり、産後の女性が発症したりすることがあります。
甲状腺機能性結節は、甲状腺のしこりが大きくなることにより機能が亢進するという病気です。
甲状腺ホルモンが過剰分泌される亢進症では、動悸・手足の震え・多汗・暑がり・体重減少といった症状が見られます。
またイライラや集中力の低下といった症状も低下症とは違った特徴です。
バセドウ病の場合は眼球が前に出ているように見える眼球突出という症状が出現することがよくあります。
腫瘍
甲状腺にできる腫瘍には良性・悪性がありますが、多くの場合は良性です。
腫瘍の中でも部分的にしこりができる場合と、全体が腫れる「びまん性」の場合があります。
良性の腫瘍と判断されると、腫瘍自体が小さく症状がない場合は経過観察になることも少なくありません。
悪性腫瘍のほとんどが乳頭がんで、進行が遅いのが特徴です。
甲状腺の腫瘍の初期症状はほとんどの場合自覚症状がありません。
腫瘍がある程度大きくなると首にしこり・腫れ・呼吸がしにくい・声がかすれるなどといった症状が出現する可能性があります。
甲状腺疾患の主な原因

甲状腺疾患の主な原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
先ほどお伝えしたように、甲状腺疾患はホルモンの分泌低下や亢進を引き起こします。
その原因には橋本病のような甲状腺ホルモンを低下させる疾患、甲状腺摘出手術、薬剤の影響など様々なものが関係します。
一時的な甲状腺疾患の原因としては、妊娠・出産に伴うホルモンバランスの乱れがあります。
そこで気になるのが、甲状腺機能の異常に関わる橋本病やバセドウ病のような疾患の原因ではないでしょうか。
これらは自己免疫疾患の1つで、自身の免疫機構が自分の組織を攻撃し甲状腺ホルモンの分泌に異常をきたします。
自己免疫疾患の原因は明らかになっていませんが、ストレスや感染症が関係しているのではないかといわれています。
甲状腺疾患の検査方法

甲状腺疾患を疑う場合、どのような検査を行うのでしょうか。
まずは問診や触診で甲状腺の腫れがないか確認し、甲状腺機能の検査をしていくという流れです。
ここでは甲状腺疾患の検査方法をご紹介します。
血液検査

血液検査を行うことで、甲状腺の機能が正常か異常かを判断することができます。
血液中の甲状腺ホルモンや腫瘍マーカーの数値を調べます。
主な検査の内容は以下の通りです。
・FT4/FT3:甲状腺ホルモンの1つ
・TSH:脳から分泌される甲状腺刺激ホルモン
・CEA:甲状腺がんの腫瘍マーカー
・TgAb:甲状腺への異常な免疫反応を示す抗体検査で橋本病の診断に用いる
・TRAb:甲状腺を刺激する抗体を測定しバセドウ病の診断に用いる
この他にもコレステロール値・肝機能・貧血などの数値を調べることがあります。
エコー検査
血液検査では、体内の甲状腺ホルモンや機能について調べることができます。
しかし血液検査だけで甲状腺の状態を把握することはできません。
そこで行われるのが甲状腺の形や腫瘍の大きさ、炎症の有無などを調べるエコー検査です。
この時点で腫瘍が認められた場合は、細い注射器で細胞を取り検査をすることもあります。
甲状腺疾患の治療法

甲状腺疾患の治療法についてご紹介します。
治療方法は薬物療法・アイソトープ療法・外科的甲状腺切除術の3種類です。
疾患や病状によって選択する治療法が決まります。
薬物療法
甲状腺疾患の治療法で多いのが薬物療法です。
甲状腺疾患の多くは甲状腺ホルモンの異常なので、バランスを整えるための薬が処方されます。
低下症で用いることが多いのは甲状腺ホルモン剤の「チラーヂンS」です。少量から開始して副作用の有無を確認しながら増量します。
亢進症では抗甲状腺剤である「メルカゾール」「チウラジール」を治療に用います。
亢進症の薬物療法を開始して1~2か月位で症状の改善が実感できる患者さんもいます。
しかしここで中断せず、2~3年間継続内服して経過を見ていくことが多いです。
自己判断での中断は病気の再燃に繋がるリスクがあるため、必ず主治医の医師にしたがって内服する必要があります。
また肝機能やかゆみといった副作用にも注意しなければなりません。
アイソトープ療法
アイソトープ療法とは、放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲む治療法です。
体に直接放射線を取り入れることで、甲状腺から過剰に分泌されている甲状腺ホルモンを抑える効果があります。
バセドウ病で抗甲状腺薬を使いたくない場合や、手術後に再発した患者さんに勧められることが多い方法です。
効果には個人差がありますが、1~2か月位で症状の改善が期待できます。
一時的に甲状腺機能低下が起こる可能性はあるものの、自然に回復することがほとんどです。
アイソトープ治療法を受けるためには、特定の薬剤やヨウ素の多い海藻類をとらないなどの注意点があります。
生活上の注意点もあるため、医師の指示に従い正しく治療を受ける必要があります。
外科的甲状腺切除術
薬物療法で効果が見られない場合や、甲状腺腫瘍の場合には摘出術を検討します。
状態により甲状腺の片方のみか、全てを摘出することになります。
甲状腺を切除するため、手術後一時的に低下症を引き起こす場合があります。
甲状腺疾患の予防法

甲状腺の病気になる原因で確実なものは判明していませんが、日常生活の中に原因が潜んでいることがあります。
普段から規則正しい生活を送るように心がけることが大切です。
ここでは甲状腺疾患の予防法をチェックしていきましょう。
ストレスを貯めない

ストレスによって自律神経が乱れたり、ホルモンバランスが崩れたりすることがあります。
ホルモンバランスの乱れが甲状腺に関係することは否定できません。
ストレスを貯めないために、ストレス解消法を見つけることや質のいい睡眠を取ることをおすすめします。
また適度な運動はストレス発散になるだけでなく、身体の調子を整えることにもつながります。
健康的な食生活
健康な身体を維持するためにはバランスのいい食生活も大切です。
食生活の乱れは身体の不調を引き起こし、それがホルモンに影響を及ぼすリスクがあるからです。
自己免疫疾患はストレスや感染が影響するともいわれているため、日常生活の中でできる対策を取りましょう。
どのような食べ物でも、食べすぎると栄養が偏ってしまいます。バランスのいい食事内容を心がけてください。
心配な場合はかかりつけの先生に相談

甲状腺疾患の症状は「何となく不調」「最近疲れやすい」と感じることが多いです。
そのため、症状があるからといってそれがすぐに甲状腺疾患と結びつくとは限りません。
しかし症状が長く続くと、何かの病気ではないかと心配になるのではないでしょうか。
そのような時はかかりつけの先生に相談しましょう。
放っておくと治療が遅れるだけでなく、心配と辛い症状を抱え込むことになってしまいます。
定期的に健康診断を受けて身体の状態を知っておくことも大切です。
まとめ

甲状腺疾患は、低下症・亢進症・腫瘍に分けることができます。
それぞれの種類によって症状が異なりますが、どれも甲状腺ホルモンが影響しています。
甲状腺機能低下や亢進を起こす疾患としては橋本病やバセドウ病が有名です。
どちらも自己免疫が関わっている疾患ですが、明らかな原因は分かっていません。
しかしストレスや感染が関係しているともいわれており、ストレスを貯めないことや健康的な食生活が大切です。
もし心配な症状があれば、医療機関を受診して医師に相談しましょう。

こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓
〇病院名 :すずきこどもクリニック
〇医師 :鈴木幹啓
〇アクセス:和歌山県新宮市下田2丁目3−2
〇診療科 :小児科
〇経歴:株式会社オンラインドクター.com代表取締役CEO
1975年三重県伊勢市生まれ
1995年自治医科大学入学(県からの奨学金制度)
2001年自治医科大学卒業
日本小児科学会認定小児科専門医
国家資格ケアマネジャー
三重県立総合医療センター、国立病院機構三重中央医療センター、国立病院機構三重病院、伊勢赤十字病院、紀南病院
平成22年5月、新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院
【製薬会社社外講師・CM出演等】
グラクソスミスクライン社、JCRファーマ社、杏林製薬、明治製菓ファーマ、鳥居薬品
【メディア出演・TV監修】
日本テレビ、読売テレビ、東京MX、テレビ朝日(医療監修)「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」
【著書】
日本一忙しい小児科医が教える病気にならない子育て術(双葉社)
開業医を救うオンライン診療(幻冬舎)
2020 年 10 月株式会社オンラインドクター.com を設立。
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- 和歌山県新宮市下田2-3-2地図を見る
- JR紀勢本線 新宮駅 徒歩10分
- 0735-28-0111
- 小児科 小児眼科 小児耳鼻咽喉科 小児皮膚科 小児神経内科 小児泌尿器科 アレルギー科
「すずきこどもクリニック」は、和歌山県新宮市下田にあります。こちらの院長は、親しみやすい人柄から「地域の良き相談相手」として多くの患者さんに信頼されています。院長は大病院での勤務経験や小児科医長の実績...
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