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最終更新日:2021年12月19日

朝起きられない…思春期の病気「起立性調整障害」の症状と治療法

こちらの記事の監修医師
高座渋谷つばさクリニック
武井 智昭 

(画像=PIXTA)

「起立性調節障害」という病気をご存じでしょうか。小学校高学年から中学校、高校の思春期の子どもに多くみられ、立ちくらみやめまいなどを起こしやすく、朝起きるのがつらくなって、不登校の原因にもなります。自分の意思ではどうにもならない病気のため、保護者がこの病気への理解を深め、適切な治療や生活習慣の改善に取り組んでいくことが必要だといいます。

「怠け癖」と誤解される「起立性調整障害」

「起立性調節障害」という疾患をお聞きになったことはありますでしょうか? 概要としては、思春期のお子さんが、朝、起こしているにもかかわらず起きられない、朝食をとれず学校へ行けない、立ちくらみや頭痛が持続する、倦怠感が強いという自律神経失調症に似ていて、見方を変えると「怠けている」と誤認されてしまうケースもあります。

この疾患は、体の運動機能、気分、知覚などを含めた自律神経のスイッチが、朝にうまく切り替わらない、自律神経機能不全の1つ(体質的なもの)と考えられています。好発年齢は小学校高学年から中学生・高校生で、女子の方が男子よりも発症頻度は高いです。

これまでは、本疾患は無治療であっても身体的・社会的にはおおむね予後は良いとされていましたが、近年の報告では、重症例では自律神経による循環調節障害(とくに脳や上半身への持続的な血流低下)によって、成人後でも日常生活が著しく損なわれることが示唆されました。同時に、無治療の場合では、長期の不登校からひきこもりを起こし、学校生活・社会復帰に関しては大きく支障が生じることも判明しています。

このため、本疾患の早期発見と早期治療・家庭生活や学校生活での環境調整による配慮を行うことにより、症状の悪化を予防できる可能性が示唆されました。

近年の傾向としては、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、外出自粛と運動不足により起立性調節障害の発見が遅れ、症状の悪化が懸念されています。

夕方から夜に元気になり、夜更かしの悪循環

起立性調節障害の診断基準として、まずは以下の症状のうち3つを満たした場合に、起立性調節障害が疑われます。

・立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる

・入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる

・少し動くと動悸あるいは息切れがする

・朝、なかなか起きられず、午前中調子が悪い

・顔色が悪い

・食欲不振

・臍仙痛(さいせんつう:腹痛)をときどき訴える

・倦怠あるいは疲れやすい

・頭痛

これらの症状は、暑い時期の夏には悪化する傾向があります。また立位や座位で強くなり、臥位(がい:寝ている状態)になると軽減する傾向があります。1日の中では、朝、昼は交感神経のスイッチが入らないために元気はありませんが、夕方から夜になると元気になり気分も良くなるため、パソコンやスマートフォンの使用、深夜のテレビ視聴などで過ごすことも多いといいます。

この結果、ブルーライトの刺激などで夜に目がさえて寝られず不眠症となるため、起床時刻がさらに遅くなり、昼夜逆転生活になることもあります。

これらの判断基準を満たして、起立性調節障害が疑われた場合には、朝のつらい症状を再現する「新起立試験」が検討されます。この検査は、10分臥位となり、その後10分程度立位となり、血圧、脈拍の変動を確認します。同時に、他の疾患(炎症性疾患、甲状腺機能異常、貧血、不整脈など)の可能性がないか、血液、心電図、レントゲン検査などを行うことが一般的です。

「新起立試験」により、起立性調節障害と判定された場合、以下に分類されます。

(1)起立直後性低血圧(軽症型、重症型)

(2)体位性頻脈症候群

(3)血管迷走神経性失神

(4)遷延性起立性低血圧

同時に、検査結果と日常生活状況の問診内容から重症度を判定し、学校生活や心身症としての心理社会的な関与がどれだけあるかを評価します。

怠け癖ではなく、病気だという理解が不可欠

まず重要であることは、「決して怠けているわけではなく、体のコントロールがうまくいかないという病気(自律神経失調症の1つ)」という認識と理解が必要です。ですから、両親が子どもの症状を「怠け癖」、ゲームやスマホへの没頭による夜更かし、学校が嫌いという逃避行動と考えて、叱責したり朝に無理やり起こしたりして、親子関係が悪化することがないように、さらに根性論で乗り切ることができない病気であるということをしっかりと説明しています。

日常生活における対応としては、朝はひとまず1日のリズムを作るために声かけとカーテンや窓をあけて日光や外気をあびさせることです。起きる方法としては、座位や臥位からでは、1分程度かけて頭を下げてゆっくりと立ち上がることです。

血圧低下が原因となるため水分は1日2リットルと多めにとり、塩分も12g程度で多めにとることです。具体的にはラーメンやうどんでは汁まで飲む、お寿司では醤油を多くかけるなどの方法となります。夜間の睡眠を促すため、調子の良い時間帯に散歩などの運動をおこなって身体的活動を行い、就寝1時間前からはスマートフォンやパソコンの使用を避けます。

学校に行くことに心理的負担を感じているため、診断書を発行して保健室と連携を取り、午後からの登校や保健室登校などを認めてもらうような体制作りを依頼します。近年では、本疾患に対しての理解が高まっております。

合わせて、薬物治療を併用していきます。昇圧剤(リズミックなど)の内服、めまいなどの症状に対しては苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)など、症状にあわせた漢方も有用です。

本疾患の予後ですが軽症であれば3~6カ月、重症例となると回復まで数年かかる場合もあります。また、成人後にも類似症状が残存する場合もあります。

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こちらの記事の監修医師

高座渋谷つばさクリニック

武井 智昭 

小児科医・内科医・アレルギー科医 2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。
感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。

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