最終更新日:2021年9月24日
肩が上がらないのはなぜ?考えられる病気や怪我を徹底解説!
こちらの記事の監修医師
フェリシティークリニック名古屋
河合 隆志
肩が上がらないことで「病気なのでは?」と不安を感じたり、怪我をした肩を「どうやって治療するのか?」といった疑問を抱えていませんか?本記事では、肩が上がらないことで考えられる怪我や病気を解説。病院での治療方法や対処方法もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
腕がまっすぐ上がらないのは四十肩や五十肩が原因?
腕が上がらない原因として多いのが、四十肩や五十肩です。肩に炎症が起こり、腕が上がらなくなったり、強い痛みが出たりするのが特徴です。ここでは、四十肩や五十肩について、詳しく解説します。
四十肩や五十肩は関節の炎症
四十肩や五十肩は肩関節周囲の炎症で起こり、痛みが出たり腕が上がらなくなったりします。肩関節の周囲には、次のような組織が存在します。
- 滑液包と言われるクッションのように柔らかい組織
- 肩関節を動かすための筋肉
- 関節包と言われる関節を覆う袋
以上の関節周囲の組織が炎症を起こし、肩に痛みを感じるのが四十肩や五十肩です。そのため肩関節周囲炎とも言われており、40~50代を中心に多くの方にとって腕が上がらない原因となります。
四十肩や五十肩は20代、30代でもなる可能性がある
四十肩や五十肩は、その名の通りに40~50代で発症するケースが多いのですが、20~30代でも発症する場合もあります。
とくに近年はデスクワークやスマホ操作で猫背になる方が多いため、肩に負担がかかりやすいと言われています。肩に負担がかかることで、関節周囲の組織が炎症を起こし肩が痛くなったり、腕が上がらなくなったりするのです。
次に肩の炎症について詳しく解説します。
肩が上がらない時の関節の炎症は3パターン
肩が上がらない時の肩関節に起こる炎症は、次の3段階に分けられます。
- 炎症期
- 拘縮期
- 回復期
各段階について、分かりやすく解説します。
炎症期
炎症期とは肩の炎症が強い時期です。炎症が強いため、痛みが顕著で夜間の就寝時に眠れなかったり、車の運転の際も支障が出たりします。この時期に腕を無理に動かしてしまうと、炎症が悪化するとも言われますので注意が必要です。
拘縮期
次に拘縮期になると痛みが落ち付いてくる反面、今度は肩が固まったようになります。たとえば着替えたり、お風呂で背中を洗ったりするのにも苦労する時期です。四十肩や五十肩は拘縮期があるため、別名フローズンショルダー(凍結肩)とも言われます。
回復期
拘縮期と言われる肩が固まった状態を抜けると徐々に動かせるようになり、腕も上げやすくなります。フローズン(凍結)した状態から、氷が解けるように肩が動かせるようになるため、氷解期とも言われます。
次に四十肩や五十肩以外で腕が上がらなくなる原因を解説します。
四十肩や五十肩以外の腕が上がらない原因
四十肩や五十肩以外で腕が上がらないのは、次のような肩の怪我や病気が関係していることもあります。
- 上腕二頭筋長頭腱炎
- 肩腱板断裂
- 石灰沈着性腱板炎
- 関節リウマチ
- 変形性肩関節症
各疾患の特徴を交えながら分かりやすく解説しますので、参考にしてください。
上腕二頭筋長頭腱炎
上腕二頭筋長頭腱炎になると、次のような症状が現れます。
- 肩の前方部に痛みを感じる
- 背中側に腕を回そうとすると痛みを感じる
- 肩に痛みがあるが、腕を上げようと思えば上げられる
上腕二頭筋とは肩から肘にかけて伸び、力こぶを作るときの筋肉です。上腕二頭筋の腱が肩の前面を通るために、痛みを肩の前方に感じるのが特徴です。腕を後方へと伸ばそうとすると、上腕二頭筋腱にもテンションがかかるため、痛みを感じます。
肩腱板断裂
腱板断裂は腕を上げる際に痛みはありますが、上げるのは可能な事が多いです。四十肩や五十肩と同じく夜間痛を伴うため、間違えられやすい疾患でもあります。
腱板とは肩の筋肉と骨の付着部のことです。腱が集まって板状になっていることから、腱板と言われます。
腱板断裂の特徴は関節が固まりにくいことです。四十肩や五十肩には肩が固まる時期があることを考えると、見分ける際のポイントにもなります。また腕を上げる際に力が入りづらく、腕を上げた状態を長くキープできないのも特徴です。完全断裂が生じると、上げられなくなることもあります。 中年以降だと日常生活の中で腱板が断裂することがあり、一方で若年層だと投球動作などで肩に負担がかかって不全断裂が起こる場合もあります。
石灰沈着性腱板炎
石灰沈着性腱板炎になると突然、夜間に肩に強い痛みを感じるのが特徴です。夜も眠れないため、睡眠不足で悩まされる方もいらっしゃいます。
40~50歳代の女性に多く見られる症状で、腱板内にリン酸カルシウム結晶と言われる物質が沈着。急性の激しい炎症が起こるため、肩に強い痛みが出たり、肩を動かせる範囲が狭くなったりします。
関節リウマチ
関節リウマチになると肩関節にこわばりや痛みを感じ、腫れることもあります。リウマチは自己免疫疾患と言われ、体の防衛機能に異常がある病気です。そのため症状が肩のみではなく他の関節に及んだり、関節痛とは別の症状を伴う場合もあります。
関節リウマチは、身体を守るはずの免疫の暴走により、関節内の細胞が攻撃されて発症。そのため肩関節に症状が出た場合には、徐々に肩の関節が破壊されて変形へと繋がります。
変形性肩関節症
変形性肩関節症になると、夜間に強い痛みを感じたり、関節内に関節液が溜まって腫れたりします。変形をともなうため、腕を上げ下げする際に、骨同士がこすれるような音を感じることもあり、痛みを伴うとともにスムーズに肩を動かすことができません。
肩関節脱臼が原因で生じた変形性肩関節症では、脱臼を繰り返すことで、関節の変形がさらに進行する可能性もあるため、適切な治療を受けることが大切です。
腕が上がらなくなる脱臼の種類
肩が脱臼すると強い痛みを伴い、腕を動かせなくなります。さらに肩の脱臼は繰り返しやすいとも言われているため、注意が必要です。ここでは肩の脱臼について2つご紹介します。
肩関節脱臼
肩関節脱臼とは肩甲骨と言われる肩の骨から、上腕骨と言われる腕の骨がズレて外れてしまった状態です。コンタクトスポーツや交通事故、転倒といった衝撃で脱臼をすることが多いのですが、一度脱臼すると比較的に軽い衝撃でも外れやすくなります。
脱臼を繰り返すことを反復性脱臼ともいい、服を着替える際や就寝中の寝返りなど日常の何気ない動作でも外れやすくなるため注意が必要です。
肩鎖関節脱臼
肩鎖関節脱臼とは、肩の肩甲骨と胸の上にある鎖骨とで作られる肩鎖関節が脱臼することです。肩鎖関節脱臼の場合は、腕を動かすことは可能ですが、運動するときにだるさや疲れを感じます。
スポーツ時の転倒で発症することが多く、鎖骨と肩甲骨をつなぐじん帯が断裂すると、肩鎖関節脱臼になります。
腕が上がらない場合に病院で行われる治療や手術
肩の痛みで腕が上がらない場合は、病院ではまずは保存療法が行われ、それでも治らなければ手術を提案されることもあります。
肩の保存療法
病院で実施される肩の保存療法は、次のような内容です。
- 三角巾で腕を吊って肩を安静に保つ
- 鎮痛剤で痛みを抑える
- ステロイド注射で炎症を抑える
- 腕を動かせるようにリハビリを行う
病院では始めに保存療法が試みられ、なかなか肩の痛みが取れずに改善しない場合は手術が行われます。
肩の手術の種類
肩の手術には次のようなものがあります。
- 関節鏡手術
- 人工骨頭置換術
- 上腕二頭筋腱固定術
肩が上がらない原因や症状に応じて使い分けて手術がなされます。各手術について分かりやすくお伝えしますので、どうぞご覧ください。
関節鏡手術
肩の関節鏡手術は、数㎜の小さな穴を肩の関節に数カ所作って、関節鏡で中の状態を観察しながら手術を行う方法です。傷が小さくて済み手術後に肩が固まって、動作範囲が狭くなることも少ないと言われています。
人工関節置換術
肩関節の人工関節置換術は、腕の上腕骨の一部である上腕骨頭や肩甲骨の関節窩といった関節を構成する部位を、人工物と交換する手術です。
肩関節は、上腕骨頭が肩甲骨にある関節窩にはまり込むことで、構成されています。変形性肩関節症や関節リウマチで肩関節の変形が進むと、上腕骨頭の軟骨がすり減ったり、肩甲骨の関節窩が破壊されたりします。
破壊や変形の程度に応じて、骨頭のみの手術、骨頭と関節窩の両方の手術といった使い分けがなされます。
上腕二頭筋腱固定術
上腕二頭筋腱固定術は上腕二頭筋腱の損傷を治療するために行われる手術方法です。上腕二頭筋腱が本来の位置からずれると、骨と腱が擦れて痛みや炎症を伴います。
そこで上腕二頭筋腱が正常な位置からずれないように、固定する手術が行われます。上腕二頭筋腱はスクリューを使って、上腕骨へと固定されるため、手術後は腱が擦れることも無く痛みの改善が期待できるのです。
肩が痛くて上がらないときの対処法
ここでは、肩が痛くて上がらないときの対処方法として、以下のエクササイズをご紹介します。
- アイロン体操
- 棒体操
- 肩甲骨のストレッチ
病院でも実施されている肩のエクササイズですので、肩の負担も少なく安心して実施できます。肩が痛くて上がらない場合は、お試し下さい。
アイロン体操をする
アイロン体操は、次の流れで実施するとよいでしょう。
- 肩が上がらない側の手にアイロンを持つ
- 他方の手はテーブルについて前傾姿勢になる
- くるくるとアイロンを回し、その遠心力で肩の運動を行う
手に持つおもりはアイロンではなくとも、ダンベルや水の入ったペットボトルでも構いません。手に持ったおもりは、始めは小さく回し徐々に回す範囲を大きくするとよいでしょう。
棒体操をする
棒体操を行う流れは次の通りです。
- 椅子に座り、棒を両手で持つ
- 両手で棒を持ったまま両腕を上げたり、下ろしたりする
- 肩を水平方向に動かしたり、横に倒したりしてあらゆる方向に身体を動かす
棒体操に利用する棒は、杖や傘、ほうきなど自宅にあるものを利用するよいでしょう。
肩甲骨をストレッチする
肩甲骨をストレッチは、次のように行うとよいでしょう。
- 両手を、それぞれ同じ側の肩前面に当てる
- 肩前面に手を当てたまま大きく肩甲骨ごと、回すようにする
- 前に回したり後ろに回したりする
肩甲骨を動かして柔軟にすることで、肩関節の動かせる範囲も広がります。肩が強く痛まない程度に、肩甲骨を前後へと大きく回しましょう。
肩の病気や怪我は放っておかずに病院を受診しましょう
今回は、肩が上がらないことで考えられる病気や怪我、原因をご紹介しました。肩が上がらない場合は、いろいろな肩の病気や怪我の可能性が考えられます。
そのため、肩の痛みでお悩みの場合は、まず病院を受診して検査を受けることをおすすめします。
病院で治療を受ける場合は、まずはリハビリや鎮痛薬などの保存療法が試みられます。とはいえ、肩の病状を悪化させてしまうと手術の必要も出てくるので、病院で適切な処置を受けて肩の状態を悪化させないようにしましょう。
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こちらの記事の監修医師
フェリシティークリニック名古屋
河合 隆志
〇病院名:フェリシティークリニック名古屋
〇医師 :河合 隆志
〇アクセス :愛知県名古屋市中区中区14 丸の内2-14-19 安藤ビル3・4階
〇診療科:整形外科・アンチエイジング
〇経歴:
1975年、愛知県出身。医学博士。
日本整形外科学会専門医
日本抗加齢医学会専門医
慶應義塾大学理工学部卒業
同大学院修士課程修了
東京医科大学医学部卒業
東京医科歯科大学大学院博士課程修了
痛み研究の最先端をいく愛知医科大学学際的痛みセンター勤務後、
米国のペインマネジメント&アンチエイジングセンターほか研修
2016年、フェリシティークリニック名古屋を開院
原因不明の痛みに悩まされている患者さんの「最後の砦」を自負し、
対処法でなく痛みを根本的に治す治療を試みている。
著書に「見るだけでしつこい痛みがすーっと消えるすごい写真」
(アスコム)、「腰痛がラクになる酸素たっぷり呼吸法」(笠倉出版社)など。
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